Book16:<魔族>に関する本。<魔族>がいつごろどのようにして生まれたのかについての云い伝えが記されている。

Last-modified: 2008-11-22 (土) 21:42:27

<魔族>の話

 

みんなが怖がっとる<魔族>ちゅうのは、もともとは<妖精>だったそうじゃ。
どっちも魔法に長けとるし、ほれ、よく見ると、顔つき、体つきも似とるじゃろ。まあ、それでも眼が全然ちがうがの。

 

むかーし昔に、とんでもなく大きな戦争があっての、戦を好まぬ<妖精>たちも、それには否応もなく巻き込まれてしまった。しかしかれらには、戦いはむかん。
そんな時、どこのだれが云いだしたのかはわからんが、戦いにむいたあたらしい<妖精>をつくりだそうっちゅう声があがったそうじゃ。
殺戮を厭わず、破壊をためらわぬ、強靭で冷酷な<妖精>がつくりだされた。そいつらの成れの果てが、<魔族>というんじゃな。
連中は戦いのためだけに造り出されたからの、その内側には破壊と憎悪しかないんじゃよ。
やがては、自らの同胞のはずの<妖精>をも殺し、さらなる戦いをよびよせ、災厄をまき散らすようになった。

この一連のできごとは、<妖精王>の怒りをかった。
<妖精>たちは、禁忌を犯してしまったんじゃな。
結果、<妖精>は恩寵の一部を失った。つまり、かつては何千年とあった彼らの寿命は、人並みに縮められてしまったというのじゃ。

 

そういうわけで、稀に<魔族>のなかにも、本来の<妖精>の気質が上に出てくるようなおかしな存在もおるっちゅう話じゃ。
先祖帰りっちゅうことかの。
もっとも、そいつが<妖精>に戻りたいと思っても、もはやその体も性質もあまりにも、もとの<妖精>からはかけ離れてしまっとってな、もはや相容れないもの同士、交わることもできんようじゃ。

 

その当時は、世界中が戦争に巻き込まれた時代が長くつづいとったからな、あちこちで、おかしなことが起こっとったようじゃ。
誰もが、戦いに勝つことだけを考えて、あやしげなものをたくさん造り出した。今いる魔物や、怪物の多くも、ほとんどがその時代につくられたり、異界からよび出されたりしたものっちゅう話じゃ。
ほんとうかどうかは知らんがの。