<魔族>の話
みんなが怖がっとる<魔族>ちゅうのは、もともとは<妖精>だったそうじゃ。
どっちも魔法に長けとるし、ほれ、よく見ると、顔つき、体つきも似とるじゃろ。まあ、それでも眼が全然ちがうがの。
むかーし昔に、とんでもなく大きな戦争があっての、戦を好まぬ<妖精>たちも、それには否応もなく巻き込まれてしまった。しかしかれらには、戦いはむかん。
そんな時、どこのだれが云いだしたのかはわからんが、戦いにむいたあたらしい<妖精>をつくりだそうっちゅう声があがったそうじゃ。
殺戮を厭わず、破壊をためらわぬ、強靭で冷酷な<妖精>がつくりだされた。そいつらの成れの果てが、<魔族>というんじゃな。
連中は戦いのためだけに造り出されたからの、その内側には破壊と憎悪しかないんじゃよ。
やがては、自らの同胞のはずの<妖精>をも殺し、さらなる戦いをよびよせ、災厄をまき散らすようになった。
この一連のできごとは、<妖精王>の怒りをかった。
<妖精>たちは、禁忌を犯してしまったんじゃな。
結果、<妖精>は恩寵の一部を失った。つまり、かつては何千年とあった彼らの寿命は、人並みに縮められてしまったというのじゃ。
そういうわけで、稀に<魔族>のなかにも、本来の<妖精>の気質が上に出てくるようなおかしな存在もおるっちゅう話じゃ。
先祖帰りっちゅうことかの。
もっとも、そいつが<妖精>に戻りたいと思っても、もはやその体も性質もあまりにも、もとの<妖精>からはかけ離れてしまっとってな、もはや相容れないもの同士、交わることもできんようじゃ。
その当時は、世界中が戦争に巻き込まれた時代が長くつづいとったからな、あちこちで、おかしなことが起こっとったようじゃ。
誰もが、戦いに勝つことだけを考えて、あやしげなものをたくさん造り出した。今いる魔物や、怪物の多くも、ほとんどがその時代につくられたり、異界からよび出されたりしたものっちゅう話じゃ。
ほんとうかどうかは知らんがの。