Book18:エルネストがティエリーに宛てた手紙。ジュリア=ルシーヌ姫の死は、あるオレニア人のせいだと述べている。

Last-modified: 2008-11-26 (水) 20:30:04

虹孔雀の月22日

 

親愛なるティエリー

 

ジュリア=ルシーヌ姫が亡くなられたということは、あの方が王に背かれたと云うことだ。
でなくば、このアウレーヌの地でルシーヌが消えたりするものか。
王の恩寵を失うような、なにかおそろしい裏切りがあったのだよ。
王は、地上でもっとも高貴な意思。本来であれば、われら妖精の血をもつものが逆らうことはありえない。

きっとこれは、あのオレニア人の仕業にちがいあるまい。
ジュリア=ルシーヌ姫をそそのかし、王に背かせたのだ。
姫は、あの男にだまされて命を失われたのだ。
たとえ<光の黒龍>とて、触れてはならぬものがあると云うことを、彼は知らなかったのだろうか。
王の意思を阻み、ルシーヌの名をもつ者を死に追いやるなど、どのような理由があろうとも赦されぬ大罪だ。
彼は必ず、その報いをうけることになるだろう。

きみの云うとおり、アウロラは光を失ったのだ。アウロラだけではない、ユーフラニア全土が光を失い、闇の時代に入ろうとしている。
これが即、ユーフラニアの崩壊に繋がるとは云わないが、世界が多大な損失を被ったことに変わりはない。
ティエリー君、これは本当にひどい話なのだよ。
いずれ闇は払われるかもしれないが、それまでにわれわれは、多くの苦しみを味わわなければならないだろう。

それにしても、ガブリエル様がついていながら、このようなことが起こるとは……。
ガルネリは本当に、予測もつかないような悪戯をするものだ。
このさき、アウロラにどのような運命が待ち受けているのか、想像するのも恐ろしいよ。

 

エルネスト