<銀の卵>を置いた直後
「ルシーヌ…あなたが私のことを思い出すのは久しぶりだ。この指輪をここにもたらしたのは、あなたか?」
- 「多分……。教えてくれ、その指輪はいったい何?」
- 「この指輪はオレニア大公家の第一大公子の証だ。かつて私がジュリア=ルシーヌに預け、その後、私たちの結婚の証として彼女に贈った。しかしジュリアは地上から消え、以後この指輪は人の世界では行方知れずとなっていたのだ」
- 「ジュリア=ルシーヌ?アウロラの聖公爵か?」
- 「そうだ。彼女は大災厄時代終熄の秘鍵としてつくられ、そのために聖龍王との婚姻を――正確にはその血肉と魂とを取り込み、あらたな聖龍王の母体となることを定められていた」
- 「しかしジュリアはそれを拒み、妖精王は彼女を地上から消し去った。後に、ジュリア=ルシーヌは異界に堕ちて心を閉ざし、私は彼女を連れ戻す為に、この身と魂とを銀竜に捧げたのだ」
- 「では聖公爵家の姫が黒龍に辱められて死んだというのは?」▽
- 「あなたが聖公爵を殺してその血を飲んだというのは本当か?」▽
- 「なるほど、わかった。もう聞きたいことはない」▽⇒×終了
「では聖公爵家の姫が黒龍に辱められて死んだというのは?」
- 「ある者にとっては、それも真実だろう。私がジュリアに触れなければ、彼女はそのまま聖龍王のもとに嫁いだかもしれず、そうであれば妖精王によって消し去られることもなかっただろうから。妖精の立場から見れば、私は一介の人間の身でありながら神性を抱いた、畏れ知らずな冒涜者にすぎぬということだ」
- 「実際、ジュリアが死んだと聞いた時、私は激しく己の軽率さを悔いた。しかし、おそらくジュリアはそうなることを知っていた。ルシーヌの運命を拒むことを妖精王が許すはずがないのだ。ジュリアはすべてを知っていて、それでも敢えてあの時、私を望んだのだと思う。だから私も後悔はしないと決めた」
- 「結局、何を見るか、またそれをどのように見るかは、人によって異なる。ジュリアと私にとっては、あの瞬間に互いが感じた充足がすべてだが、他の者たちにとってはそんなことは無意味な空想か、あるいは忌まわしい悪夢かもしれない。物語とはそのようなものだ」
「あなたが聖公爵を殺してその血を飲んだというのは本当か?」
- 「それは違う。しかしジュリアの血を飲んだのは事実だ。もっともその当時、私はまだジュリアが真に何者であるかを知らなかったが。私がアウロラにいた頃は、ジュリアのおかげで随分とおかしな事件に巻き込まれたり酷い目にあったりしたものだが、ある時、かなり危機的な状況に陥ったことがあった」
- 「ジュリアと私は追われていて、私は普通の人間ならば死に至るほどの重傷を負っていた。魔道に耐えられる状態ではなく、発見されて殺されるのも時間の問題だった。ジュリアだけならば逃げることができたかもしれないが、彼女はとどまり、そして私に彼女自身の血をあたえたのだ」
- 「その力は絶大で、私の傷は驚異的な治癒を見せたが、同時に私は生涯の呪いを受けた。更に三年後、私は<黒龍の剣>を巡る戦いで死に瀕し、おそらくその時もジュリアは大量の血を私にあたえたはずだ。呪いは決定的になり、私は常の時の流れから引き離され、その後死ぬまでほとんど老いることがなかった」
「それで……」
「それで、ルシーヌ、あなたは何のためにこの指輪をここまで持ち来たのだ。あなたの王が、ジュリアと私の婚姻についてあなたに語るとはとても思えない。ましてやここで私を呼び覚ますことを望むとは」
- 「……私は、ここに来るべきではなかったのか?」▽⇒×終了
- 「ある絵が<黒龍の剣>を使う為にはあなたの助力が必要だと…」▽
- 「北の王国を滅ぼせし銀竜、氷姫と呼ばれしカリス=ルシーヌの肖像か。<黒龍の剣>を使いたいということは、あなたは妖精王に背こうというのか?」
- 「そんなつもりはない。ここに来たのは単なる気紛れだ」▽⇒×終了
- 「王から私を、ルシーヌの心を護りたい。それだけだ」▽
- 「王のものとなることを拒むのか? その意味を知らぬわけではないだろう。苦痛は大きく、悦びは皆無かもしれない。それでも構わないのか?」
- 「やはりやめておく」▽⇒×終了
- 「構わない。どうか力を貸してくれ」▽
- Knowledgeが全て揃った場合
- Knowledgeが揃っていない場合
Knowledgeが全て揃った場合
- 「あなたが望むなら、私は否とは云わない。そのかわり、ひとつあなたに頼みたいことがある。もしあなたがあなた自身の主として人の世界に降り立つことが出来たなら、ジュリア=ルシーヌと私の血をひく者が本当にいるのか確かめてほしい」
- 「かつて私たちの子として現れた若者はそうではなかったが、ガブリエルは、銀竜と黒龍、妖精と人、それらすべての血をひく希有な存在が生まれ、妖精王はその新たな命をどこかに隠したと私に告げた」
- 「もしその話が事実ならば、そしてその者か、あるいはその子孫にあたる者がまだ地上に存在しているのならば、オレニア大公家の指輪と私の持つアウロラ聖公爵家の指輪とを渡してほしいのだ。もちろん、無理にとは云わないが」
- 「そんな面倒な約束は出来ない」▽⇒×終了
- 「わかった。約束しよう」▽
- 「ありがとう。では、あなたに二つの指輪を預けよう。オレニア大公家の指輪には、私の意思をこめた。この指輪をはめて<黒龍の剣>に触れれば、<黒龍の剣>は一時的にあなたに仕えるだろう。ただし、その剣であなたの王に挑んではいけない」
- 「妖精王にその刃を向ければ、<黒龍の剣>は私の手からはなれ、私の魂を滅ぼし、もはや何者もあなたを護ることはできなくなる。そして、あなたのものである<銀竜の剣>はこの世界に置いて行くのだ。異なる<竜剣>を一度に一人が所有することは許されていない。くれぐれも気をつけるのだよ」
- 「わかった。ありがとう。プトレメウス=レピドゥス」▽
- 「わかった。ありがとう。プトレメウス=レピドゥス」▽
Knowledgeが揃っていない場合
- 「わかった。では、あなたがもたらした指輪に私の意思をこめ、あなたに託そう。この指輪をはめて<黒龍の剣>に触れれば、<黒龍の剣>は一時的にあなたに仕えるだろう。ただし、その剣であなたの王に挑んではいけない」
- 「妖精王にその刃を向ければ、<黒龍の剣>は私の手からはなれ、私の魂を滅ぼし、もはや何者もあなたを護ることはできなくなる。そして、あなたのものである<銀竜の剣>はこの世界に置いて行くのだ。異なる<竜剣>を一度に一人が所有することは許されていない。くれぐれも気をつけなさい」