【住民】/堕竜ヴィエテンスコーパ

Last-modified: 2020-04-17 (金) 04:19:37

▼ローマ字表記:Vetenskapa
読み:ヴィエテン - スコーパ
人種:堕竜
性別:女性
年齢:推定1400歳前後
職業:実業家
危険度等級:B(Sと見做されている)
生息域:エルネセトア大陸全域
発案者:飄凜然
扱い:伝聞のみ
Tag: 住民 堕竜 真竜類 亜竜類 “妖賢”ベルウィド 竜の三類 発案:飄凜然

「私が鋼の哲人? 誰だ、そんな大それた呼称を付けた者は。私はただの実業家だよ」

半生

護りたい者を得て真竜に至った亜竜は、護りたかった血統を失って堕竜となった。“妖賢”語りて曰く、守るべきものを間違えた愚かな賢者。ヴィエテンスコーパはこの言葉を紡ぐ者を絶対に許さない。
 
彼女は生まれながらにして完全な竜玉石が備わった、非常に強力な亜竜だった。その上、幼い内に完全な竜紋鱗を獲得し、いずれは真竜に至るだろうと周囲の期待を集めていた。だが、二類を持つ天童と持て囃されながらも、守護本能である護竜魂を長い間獲得できずに燻る日々を過ごす。護竜魂を得ていれば既に貴竜へと至っていたであろう時を経た頃に、開拓の民の少女との出会いに恵まれた。これが彼女の転機だった。
 
開拓の民の少女もまた天童だった。聡明怜悧なその知性は、ありとあらゆる事柄の謎を難なく解き明かし、その賞賛もほしいままにした。だが、少女はそれだけでは満足できなかった。その因果の流れの根源が明らかになるまで、問い尽くさねば気が済まない性分だったのだ。その無限の問いに付き合わされて翻弄される周囲の者たちは、ただただ疲弊するしかなかった。そうして少女を取り巻く者はいなくなった。少女はその頃に彼女と出会った。
 
ヴィエテンスコーパにとってこの出会いは衝撃的だった。少女の無限の問いを浴びせられた時、彼女はそれまで瞳に映していた光景に彩りがなかったことに気付かされた。与えられた天賦の才が当人の生来の資質に相応しいとは限らないことを知った。極彩色の世界の中で少女の言葉の渦に翻弄される。それが堪らなく楽しかった。彼女が初めて笑った瞬間だった。二類を捨て、竜の姿まで捨てて、少女の生涯に寄り添おうとした時、彼女は護竜魂を獲得した。
 
真竜へ至る道を切り開いた者にとって、開拓の民の一生はあまりにも短かった。それが楽しい一時であったともなれば、過ぎ去るのも早かった。ヴィエテンスコーパにとって初めての友の死は悲しかったが、悲しみはそう長くは続かなかった。友が残していった者たちが無限の問いを投げ掛けてくるからだ。友の面影を色濃く残した彼女たちの求めに応じる彼女もまた、無限の問いを彼女たちに投げ掛ける。思索の探求は終わりを知らない。
 
ヴィエテンスコーパはとうとう真竜へと至った。だが、その頃にはもう友の血統は細っていた。初めての友の面影を色濃く残す思考をする最後の一人が息を引き取った。友は最後の最後まで彼女に無限の問いを投げ掛けた。彼女にとって友との別れはいつだって楽しかった。みんなそうだったからだ。そんな彼女たちとの営みがとうとう終わりを迎えた。それでもヴィエテンスコーパの思索の旅が終わることはない。その生命が尽きる最後の瞬間まで、友から貰った心の焔が燃え尽きることはない。たとえ護竜魂を失おうとも、ヴィエテンスコーパの心と思考に彼女たちの面影が深く刻まれている限り。そして、今日もまた無限の問いに臨む。

為人

“妖賢”語りて曰く、我に到達し得る唯一の識者。彼女は“妖賢”に気に入られている。面識の有無はおろか間接的にすら関わったことがなかったヴィエテンスコーパにとって、この事実はまさに寝耳に水、傍迷惑極まりないことである。“妖賢”自身は聖なる呪縛によって、妖魅の森に縛られている為に、森の外へは出られないはずだというのに。彼は森の奥からありとあらゆる噂を駆使して、彼女が森へと訪れなければならないように仕向ける。特に彼女を怒らせた噂は「守るべきものを間違えた愚かな賢者」「“妖賢”の後継者」の二つであった。それでも彼女は“妖賢”に挑まない。
 
「どれだけの悪逆を成し尽くせば、数多の聖なる存在たちが形振り構わず、その存在を貶めてまで全霊を懸けて奴を呪うに至るというのか。その事を鑑みるだけでも、奴の性質と力の全貌が窺い知れてしまう。奴の前では根拠という言葉が余りにも虚しく響く」
 
彼女は己の思考が“妖賢”に届き得るなどとは露程も思っていない。彼我の差は、思考の積み重ね数十万年分の断絶、であると理解している。その溝を如何にして埋めて奴を問い殺すか、それが彼女の主要な命題である。彼女は自身の脳に住まう歴代の友たちとともに命題に取り組み、延々と思考に磨きを掛け続ける。その思考が“妖賢”の喉元を切り裂く刃となるその日まで。
 
ヴィエテンスコーパは護竜魂を失ったために真竜としての力も失っている。おまけに残りの二類も竜の姿も自ら捨てて、開拓の民の女性の姿しかとれない。そんなざまで“妖賢”の喉元を切り裂こうなどと〝思って〟いるとは、と嘲笑う者が後を絶たないが、本人は至って真剣に〝考えて実践して〟いる。“妖賢”もまた彼女をどう迎え撃つべきかを真剣に〝考えて実践して〟いる。既に久遠にも等しい遠大な情報戦の火蓋は切られているのだ。彼女たちは“妖賢”を滅ぼせる武器が情報を措いてないことに気付いている。その言葉を真に受ける者は誰もいない。今はまだ。

特徴

腰まで伸ばした長い黒髪がトレードマーク。その黒さは光を捉えて離さない。その髪色をじっくりと眺めると、盲点が拡がった、あるいは網膜剥離を起こしてしまった、と錯覚してしまう。だから、視覚器官に頼る生物たちは、彼女を長い間見つめていると、目がしょぼついて仕方なくなってしまう。竜紋鱗も髪と同じ色をしていた。かつては竜紋鱗で捉えた光を常に竜玉石に蓄積していて、それをブレスに転用していた。
 
見た目はほっそりとした比較的長身の美女であるが、その振る舞いの印象は弱々しさとは無縁。かつての竜の姿も同様で、その身体つきはサイトハウンドを思わせる美しい姿態をしていた。運動能力も体格に準じていて、高い敏捷性を武器にした強力な存在であった。しかし、その速さも彼女の思考速度の前では霞んで見える。この敏捷性も思考速度も蓄積した光の恩恵をある程度受けているものと思われる。
 
危険度等級Sに指定されているが、Bと見做す者も多く、見解が割れている。実際、彼女は対S級装備に身を包んだ精鋭一個大隊に惨敗している。重傷を追いながらも包囲から逃げおおせてはいるが、それも反撃を放棄してまで逃走に徹していたからできたことだった。そういった議論の中で、そもそも危険度等級を当てること自体が間違っているのではないか、と唱える者は非常に少ない。それでも彼女は気に病まない。それこそが“妖賢”の力で思惑だと気付いているから。
 
平時の彼女は、エルネセトア大陸全土に網を拡げるサプライ・チェーンの一つを取り仕切るサプライヤーで、同じく大陸全土に拡がる酒場併設の宿屋をチェーン展開するアンティルーマースの創立者でもある。アンティルーマースが提供する料理と安らぎは、利用した顧客を尽く魅了しているという。貴族とのいざこざから大腕を振って街を歩けなくなった者たちや、九大州のどの政体や組織にも馴染めずに大陸を放浪しているような者たちも、ここに寝泊まりする時だけは安らぐという。酒場での噂話も自然と興が乗って弾むというものである。それと知らずに彼女の世話になっている者は多いのだ。大陸全土の噂はどんな些細なものでも全て彼女の下に集まってくる。それは魔北地方であっても例外ではない。無限の情報の渦の中で、無限の問いに耽溺する。彼女の堕竜としての凶悪なまでの狂気は、全てそこに注がれている。
 
ちなみに、大陸商業連合会や大陸同盟から一目置かれていて、事あるごとに提携を打診されているが、彼らとは一定の距離を置いている。とはいえ、流通経路の維持という共通の目的においては積極的に協力している。魑魅魍魎跳梁跋扈する大自然を抱えるエルネセトア大陸で、九大州を繋ぐ流通経路を維持し続けるのは、並み大抵のことではないのだ。その際、冒険者に顔が広い彼女の人脈が力を発揮する。

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相談コメント欄

  • 追加での調整・確認内容です。  1.「堕竜」でリンクを張ってる箇所は「堕竜」でお願いします。個別記事は作らず、真竜類内部の内容として済ます予定なので。  2.冒険者についてのニュアンス、承知しました。常習犯かどうかというと割とそちらよりといえばそちらよりですので、冒険者のみに限定してしまうのはちょっと危ういかなあ、という気がします。要するに秘境開拓免許などを持てず無免許・無許可で秘境に入ったり、民間トラブル請け負ったりするのが冒険者なので。秘境開拓者のみならず冒険者も御用達、という方がよい気がします。 問題なければ以上でお願いします。あと、コメントは基本残しておいてもらえるとありがたいです。 -- tocoma110? 2020-04-10 (金) 00:13:08