原文 = http://ankisrs.net/docs/dev/manual.html#filtered
目次
Ankiの通常の単語帳で勉強する場合、限られた数のカードのみが表示されます。即ち ユーザーが忘れそうだとAnkiが判断したカードと、その日の制限内の新規カードです。これはユーザーが必要以上に勉強に時間を割かないことを保証し、一般的に便利です。しかしテストのための復習や、特定の分野の重点的学習など、時に通常の制限の枠を外したほうが便利な場合があります。このような用途のため、Ankiではフィルター単語帳 (filtered deck)という異なったタイプの単語帳を用意しています。
フィルター単語帳により、非常に多くのことが可能になります。カードの試し閲覧 (preview) や、テスト前の詰め込み学習、特定のタグの付いたカードの学習、特定の順序で学習の遅れを取り戻すこと、スケジュールを前倒ししての復習、その日間違ったカードの繰り返し学習などです。
カスタム学習
フィルター単語帳を作成する最も簡単な方法は カスタム学習 (Custom Study) ボタンです。このボタンは単語帳をクリックした際に画面下に表示されます。このボタンを押すと、その日間違ったカードの復習といった、よくあるタスクのための複数の便利な設定が表示されます。これにより "カスタム学習セッション(Custom Study Session)" というフィルター単語帳が作成され、その単語帳を自動的に開きます。
カスタム学習セッションという単語帳が既に存在する場合には、その単語帳は新しいものの作成前に空にされます。もし(既にある)カスタム学習セッションという単語帳をそのままにしておきたい場合には、単語帳リストから名前を変更してください。
以下はそれぞれのオプションの概要です:
- 今日の新規カードの最大出題数を上げる (Increase today’s new card limit)
- 現在学習している単語帳に新しいカードを追加します。他のオプションと異なり、このオプションは新しいフィルター単語帳を作らず、既存の単語帳を変更します。
- 今日の復習カードの最大出題数を上げる (Increase today’s review card limit)
- 1日の復習数制限によりすべての期限切れのカードが復習できなかったとき、このオプションでより多くのカードを復習することができます。新しいカードオプションと同様、このオプションは既存の単語帳を変更します。
- 忘却したカードを復習する (Review forgotten cards)
- 指定した日数以内にAgain (1)と回答したカードを全て表示します。
- 先取りして復習する (Review ahead)
- 近い将来(指定した日数以内)に期限切れになるカードを表示します。これは休暇の前に古いカードに取り組んでおく場合などに便利ですが、最近学習したカードに対しては有効ではありません。詳しくは 先取りして復習する を参照してください。
- 新規のカードをプレビューする (Preview new cards)
- 最近追加したカードを表示します。
- カードの状態やタグを選んで学習する (Study by card state or tag )
- 現在の単語帳からある枚数の学習するカードを選択します。新規カードのみ、期限切れカードのみ、全てのカードのいずれかを選択できます。"Choose Tags" をクリックすると、選ばれるカードをタグによって制限できます。単語帳の全てのカードを見たければ(例えば大きなテスト前に学習するなど)、単語帳の全カード数よりも大きな枚数を指定してください。
ホーム単語帳
カードがフィルター単語帳に移動したとき、カードは元あった単語帳とのつながりを保持します。この元あった単語帳をそのカードの ホーム単語帳 (home deck) とよびます。
フィルター単語帳で学習したカードは、自動的にそのホーム単語帳へと戻ります。復習 1 回で戻るか、複数回の復習後に戻るかは、設定に依存します。
全てのカードを一度にホーム単語帳に戻すこともできます:
- 学習概観 (study overview) の "空にする" (Empty) ボタンは、フィルター単語帳にある全てのカードをそれぞれのホーム単語帳に戻しますが、空になったフィルター単語帳は削除されません。これは後でフィルター単語帳を再度満たす("再構築" (Rebuild) ボタン)場合に便利です。
- フィルター単語帳の削除は "空にする" と同様のことを行いますが、さらに空になった単語帳を単語帳リストから削除します。フィルター単語帳を削除しても、カードが削除されることはありません。
ノート
現在の実装では、学習中のカードがまだあるときにフィルター単語帳を空にしたり削除したりすると、学習中のカードは新規カードに戻ります。In the case of failed reviews in relearning, 残っている再学習ステップはすべてスキップされます。
手動での作成
上級者は、プリセットに頼らず、任意の検索文字列によりフィルター単語帳を作成することができます。手動でフィルター単語帳を作るには、ツール>フィルター単語帳を作成 (Tools>Create Filtered Deck) を選択してください。
作成 (Build) ボタンを押すと、Anki は指定された設定にマッチするカードを検索し、現在の単語帳から新たなフィルター単語帳へと一時的に移動させます。
同じフィルターオプションで再度カードをとってきたければ(例えば、特定のタグのカードを毎日学習したい場合)、単語帳の概観画面の下にある 再構築 (Rebuild) ボタンを使用してください。
検索 (search) エリアは Anki が集めるカードをコントロールします。ブラウザーから可能な全ての検索はフィルター単語帳でも可能です。例えばタグの限定、ある回数忘れたカードの検索などです。その他に可能な検索の詳細については 検索 を参照してください。
ノート
フィルター単語帳には、保留した(suspended)カード、延期した(buried)カード、すでに他のフィルター単語帳に入っているカードを含めることはできません。このため、ブラウザーで検索したカードとフィルター単語帳に含まれるカードが一致しない場合があります。
最大枚数 (limit) オプションは何枚のカードが単語帳に集められるかを設定します。選択した順序は、カードを集める際の順序と、カードを復習する際の順序の両方に適用されます。例えば "忘却回数が多い順" を選び枚数を 20 枚に制限した場合、忘れた回数の多いほうから 20 枚のカードのみを表示します。
効率上の理由により、1000 枚以上のカードを含む詰め込み単語帳では、単語帳リストと学習画面からは 1000 枚のカードのみが期限切れとして表示されます。
順序
出題方法 (cards selected by) オプションはカードが表示される順序を設定します。選択したカードの最大数がフィルタの基準にマッチするカードの数よりも少ない場合、この順序で最後尾のカードから除外します。
- 表示が古い順 (Oldest seen first)
- 復習で最も長期間見ていないカードを最初に表示します。
- 無作為 (Random)
- フィルターの基準にマッチするカードをランダムの順番で表示します。
- 間隔が小さい順 (Increasing intervals)
- 復習期間が最も短いカードを最初に表示します。
- 間隔が大きい順 (Decreasing intervals)
- 復習期間が最も長いカードを最初に表示します。
- 忘却回数が多い順 (Most lapses)
- 忘却回数が最も多いカードを最初に表示します。
- 追加した順 (Order added)
- 最初に追加したカード(作成日が最も古いカード)を最初に表示します。
- 復習期間が古い順 (Order due)
- 期日が最も早いカードを最初に表示します。
- 追加時期が新しい順 (Latest added first)
- 最後に追加したカードを最初に表示します。(「追加した順」の逆の順番です。)
- 期日超過が相対的に大きい順 (Relative overdueness)
- 現在の復習期間との関係で、最も期限が過ぎているカードを最初に表示します。(たとえば復習期間5日で2日遅延しているカードは、復習期間5年で1週間遅延しているカードよりも先に表示されます。)このオプションは、復習すべきカードがたまってしまっていて一度に全て復習を終わらせることができず、最も忘れる可能性が高いカードを最初に復習したい場合に便利です。
学習ステップ と ホーム単語帳への返却
学習ステップがどのように作用するのかを知るには、学習(learning) を参照してください。
デフォルトでは、カードのホーム単語帳の学習ステップが使用されます。新規カードが学習時に 2 回復習される場合、フィルター単語帳での勉強時にも同じことが起こります。
カードは学習完了時にホーム単語帳へと戻ります。よって学習ステップが 3 回のときは、3 回 "Good" を押すか、1 回 "Easy" を押すと新規カードはホーム単語帳に戻ることとなります。
カスタム学習ステップ ('custom steps) オプションではホーム単語帳の学習ステップを上書きし、代わりに特別な学習ステップを設定することができます。ここで設定した学習ステップは、学習中のカード、忘れてしまった復習、先取りした復習に適用されます。
カウント
フィルター単語帳では、既に期日に達している復習カードは、通常通り復習カードとしてカウントされます。学習中のカードと、まだ期日に達していない復習カードは、実装上、新規カードとしてカウントされます。
すでに期日に達している復習カード
フィルター単語帳内に、すでに期日に達している復習カードが含まれている場合、それらのカードは元の単語帳にあるときと同様に表示されます。つまり、画面下のカードカウントでは復習カードの数(緑色の数字)に下線が付き、どの程度覚えていたかを回答する画面では選択肢が4つ表示されます。「もう一度」以外を回答した場合、カードはホーム単語帳へと戻され、次回の復習間隔はホーム単語帳の設定に基づいて調整されます。一方、「もう一度」を選択した場合は、ホーム単語帳で定義された再学習ステップに基づいた間隔の後、そのカードは再び表示されます。
先取りして復習する
検索条件に該当するカードの中に、期日に達していない復習カードが含まれていた場合、Anki はこれらの復習カードを期日より先に表示します。Anki は、これらの復習カードには、どれだけ先取りして復習したかを考慮に入れた特別なアルゴリズムを用いています。
例えば、期日に近いカードを先取り復習した場合、期日通りの日程で復習した場合に近い、新たな復習間隔が与えられます。一方、前回の復習のすぐ後に復習した場合には、前回の復習間隔に近い復習間隔が与えられます。同様の計算が、復習タイミングに応じて適用されます。
ノート
スケジュールされたすぐ後のカードの復習は、次のスケジュールにほとんど影響をもたないため(例:復習期間1日で明日に期日となるカードを早く復習しても、期日は通常明日のままです)、"先取りして復習する" のカスタム学習は継続的に使うには適しません。次の一週間のカードを旅行前に復習すると、成熟カードは長い復習期間でスケジュールし直されますが、新規カードは未だ定着が弱いため小さい復習期間のままとなります。翌日にも先取りして復習すると、同じ新規カードを再び学習することに終始し、あまり意味がありません。
先取りした復習カードは、復習カードのカウントではなく新規カードのカウントに含められ、ホーム単語帳で定義された再学習の学習ステップの数に従って表示されます(カスタム学習ステップが有効な場合を除く)。これはホーム単語帳で再学習の学習ステップの数をカスタマイズした場合、期日に達していないカードは 2 回以上表示されるということです。
複数の学習ステップを設定している場合、Anki は次回の復習間隔の決定に最初の回答のみを考慮します。また通常の単語帳の再学習中カードと同様に、"普通" と回答しても "簡単" と回答しても、その回答は学習ステップでの前進・後退にのみ影響し、次回の復習間隔には影響を与えません。
スケジュールの仕直し
デフォルトでは、ホーム単語帳にカードを戻す際、フィルター単語帳での成果に基づいてスケジュールを変更します。この単語帳の解答に基づいてカードをスケジュールし直す (reschedule cards based on my answers) オプションを無効にした場合、フィルター単語帳にカードを移動したときと同じ状態のまま、カードをホーム単語帳に戻します。この機能は、カードを素早くめくるような使い方をする場合に便利です。
スケジュールの仕直しを無効にした場合、"Good" と "Easy" ボタン上には時間が表示されず、ボタンを押した際には元のスケジュールのままカードがホーム単語帳へと戻ります。
新規カードは新規カードキューの最初ではなく、最後に戻されるという点に注意してください。
復習遅れを取り戻す
フィルター単語帳は復習が滞ってしまった場合の遅れを取り戻すためにも便利に使うことができます。ある Anki ユーザーは、遅れの取り戻しのため次のフィルター単語帳の使い方を提案しています:
800以上の復習がたまってしまったのでフィルター単語帳を使い、私の場合はとてもうまくいきました。
1. Just Due(期日すぐ)フィルター:"is:due prop:due>-7"
2. Over Due(期日遅延)フィルター: "is:due prop:due<=-7"
Just Due単語帳は過去一週間に期日となったカードを含みます。この単語帳のカードは通常通りに期日となったカードのため、毎日学習すべきです。この単語帳により、滞りがない場合と同様に学習ができます。
Over Due単語帳は復習が滞ったカードを含みます。これらのカードは新規カードを学習するのと同様に学習できます。この単語帳のカードは復習により通常のカードに戻るため、復習遅延のカードはJust Due単語帳の学習を進める限り増えることはありません。
取り戻しにどのぐらいの期間がかかるかは、通常の期日切れカード学習に加え、毎日何枚の遅延カードを学習してゆくかによります。やりたいときに一気に遅れを取り戻すこともできるし、新規カードと同様に毎日特定の枚数を取り戻してゆくこともできます。あなた次第です。