「指揮官?またそうやって私の反射神経を試そうというのですか?」
戸惑いの表情で指揮官の手首をひねりあげるのはKSGだ。何が試すだ立派に下克上しているじゃないか…。
いたがっていることに気づいたのか、彼女はぱっと手を離し、うつむく。
シューティンググラスに隠れがちな彼女の表情は、よく見ないと気付きにくいが目元がよく感情を表している。
杓子定規でお堅い。トレーニングバカのSG人形。
それがよく彼女が評されるところではあるが、それらすべて、表情に色濃く出にくいだけで合って、こうして触れようとしたりするとそれは如実に表れる。
不安げだったり、ほっとしたり、むっとしたり。
だからこうして構ってしまうのも無理ない話だろう。
ともあれ、いててと手首をさすりつつ、食事をとりに向かう。
するとKSGはつかず離れずの距離をついてくる。
指輪だって渡した仲なのにあんまり仲良さそうに見えないね、と人は言う。
とんでもない。これが指揮官と彼女の距離感なのだ。
いつでもつかず離れず。互いを信頼し合う安心する距離。
これがKSGと指揮官の関係だ。
とはいえ、ずっと熟年夫婦のようなノリというわけでもない。
当然デートにだって行くし、夜の生活だって順風満帆だ。
例えばこの前なんて、ショッピングと映画を見にデートに出かけるさまを見た人形はこう語る。
「KSGが白かったの」
白いドレスを着て、小さなポーチを片手に目貸し込んだKSGは何やらそわそわと何度も手鏡を確認する。
その鏡に向かって百面相をしたかと思いきや、唐突にいつもの表情に戻るものだから傍から見ていると少し怖い。
そして10時の少し前、指揮官が到着する。その時だった。
彼女の顔が花開くような素敵な笑顔になったのは。
気を這っている執務中は絶対に見られない表情だ。腕を組んで歩きだす二人。
これ以上みていると糖分で関節がおかしくなりそうだから帰ったの、とのことだった。
「なあKSG,どうする?絶対言いふらすぞあれ」
「放っておきましょう。一分一秒が惜しいです。それに私はデートだからと言って普段と違う格好はしていても何ら変わることはありません」
「ふーんへーえあっそー。まぁいいけどね」
二人の休日は始まったばかりだ。
「パーカーの下が見たい?」
KSGはオレンジ色のシューティンググラス越しに、指揮官の提案というか頼みごとの意図を探ろうとしている。
しかし裏など読めるはずがない。指揮官はただパーカーが損傷したときに見える白い服がどんなものか気になっているだけなのだから。
「はぁ…仕方ないですね…べつにいいですけど、ただの服ですよ?」
パーカーのフードを下ろし、シューティンググラスを机に置いたKSGはジッパーに手をかけ…ようとして止まる。
「後ろを向いてはいただけませんか?」
「え?ごめん、まさかそのした下着なの?そんなつもりじゃなかった撤回するよ」
「い、いえそういうわけではないのですが……むぅ」
よくわからない問答ののち、KSGはパーカーを脱ぎ、それも机に置いた。
「白い服だとやっぱり印象変わるなぁ。いつもの黒いパーカーはかっこいいけど白い服も似合っててかわいい。
「か…かわ…そ、そうですか。白い服は好きなのですが、汚れやすいのでインナーとしてきているんですよ…」
そうだったのか。
しかし、着やせするというか着ぶくれしているのか?黒いパーカーではわかりにくかったが
白い服だと、ボディラインがくっきりと見え、形のよく、意外と育った胸の迫力というか、美しいラインに目が引き寄せられる。
シューティンググラスを外すと目元もはっきりと見えてかわいらしい。意外と童顔だ。
「あの、指揮官?気のせいか、目つきが少しいやらしいような気がするのですが…」
気にしなくていい。見とれているだけだと返すと、KSGの白い肌が紅潮していた。
手を伸ばして撫でようとすると
「し、指揮官!?私の反射神経を試そうとしないでください!」
と自身の身体を抱きしめて避ける。KSGはかわいいな。