レバー遅延ブローバック

Last-modified: 2024-03-15 (金) 18:03:06
 

ボルトをボルトヘッドとボルトヘッドキャリアに二分割し、撃発後ボルトヘッドキャリアがボルトヘッドより大きく動くように上手いことテコを噛ませた機構。
そもそも遅延ブローバック自体があまり多くないのだが、その中では比較的著名な銃がある方だと思う。

 
かんたんな説明

この動画見て……

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  • ストレートブローバックより包底面の後退速度を遅らせたものが遅延ブローバックである。
  • ガス遅延ブローバックサベージ・ローテーティングバレル式遅延ブローバックは、ガス圧やバレルに掛かるトルクのような力をボルトを前進させる力に変換して、薬莢の後退を遅らせている。
  • 一方レバー遅延ブローバックでは外部から別途何らかの力を導入するのではなく、ボルト形状を工夫することで包底面の後退を遅らせている。
    • 前述したように、ボルトヘッドとボルトキャリアに二分割し、この2つをテコで連結している。
    • そしてボルトが動き始めたとき、ボルトキャリアの方が大きく動くように工夫してやると、ボルトヘッドの動きを小さくしてやることができる。
    • ボルトヘッド+ボルトキャリアで見たときの運動エネルギーの総量は、ストレートブローバックのボルトのそれと変わらないが、要は一時的に包底面の後退が遅れればそれでいいのである。
  • レバー遅延ブローバックの長所は、ある程度シンプルな構造で、かつある程度強力な実包が使えることである。
    • ショートリコイルはハンドガン程度なら問題ないが、サブマシンガンくらいになるとバレルの前後動による振動が無視できなくなるだろう。
    • ガスオペレーションもガスブロックやピストンがスペースを取る上に、構造も複雑になりがちである。
  • 短所はある程度強力な実包しか使えないことである。
    • ボルトを機械的に閉鎖しているわけではないので、自ずと対応可能な実包の強さの幅が小さい。
    • これは特にFAMASで顕著な問題だったことで有名。
  • そんなレバー遅延ブローバックだが、賢明な「」揮官は既にお気付きの通り、やっていること自体はローラー遅延ブローバックと変わらない。
    • レバーよりローラーの方が形状的に丈夫そうなのは、なんとなく分かるだろう。
    • そんな事情もあってか、G3ファミリーに比べると些かならず小所帯になってしまった。
 

SMG、MG、ARと銃種がバラけてしまったが、もっとも年上の43MがSMGでかつ、構造上の適正も考えてページはSMGの枠に置くことにした。

 
43M?
291 43m.png主な弾種9x25mm Mauser
生産期間1943-1945
備考1910年ごろにペダーゼンデバイスで有名なペダーゼン氏が特許を取っていたレバー遅延ブローバックだが、本格的に採用した銃ではこのダヌビア43Mが初めて(?)っぽい。
開発者のキラーイ氏はこれより以前にSIGに在籍しており、当時生産されていたSIG MKMO (1930)からデザインを借用している。こちらはヘジテーションロックというショートリコイルとブローバックの間の子めいた機構が特徴。
一見すると43MとMKMOの作動方式には何の関係もないようだが、このヘジテーションロックを開発したのも先述のペダーセン氏である。キラーイ氏は恐らく彼の期限切れ特許を読み漁っていたのだろう。
43Mの中身

ボルトアセンブリはこんな感じ
43m bolt.png

  • 下側に出っ張っているのがレバー、右側がボルトフェイス
  • レバーが右側に倒れると、左側のボルトキャリアが大きく左方向へ後退する
  • 写っている手はお馴染みガンジーザスである
  • 以下のAA-52とFA-MASのボルトは、上の動画で詳しく説明されているので省略!
 
AAT-52?
111 aat52.png主な弾種7.5x54mm
生産期間1952-
備考直接の前身みたいなのは見当たらないが、キラーイ氏の設計を参考にしていてもおかしくはない。
しかし機関銃弾薬をブローバックで受け止めるとは、フランス人の度胸はなかなかのものである。
 
FAMAS
069 famas.png主な弾種5.56x45mm NATO
生産期間1975-
備考フレンチなレバー遅延ブローバックファミリー第二弾だが、使用する実包を選り好みする問題が致命的だったのか、我が道を行くフランスも次世代制式ライフルにはHK416が選定された。
 
Five-seveN
142 five seven.png主な弾種5.7x28mm
生産期間1993-
備考P90のサイドアームとなるべく開発された5.7mm口径の自動拳銃である。
構造自体はレバー遅延ブローバックに分類されるが、一般的なそれとは異なる、より複雑な構造となっている。
簡素なストレートブローバックを採用したP90とは対照的だ。
 
Five-seveNのレバー遅延機構

パテントの文書があるならそれを当たるべき
US5347912-drawings-page-2.png

  • 要約すると、銃身を錘にすることでスライドの後退を遅延させているらしい。
    • 日本語資料では抜弾抵抗*1を利用した遅延ブローバックと説明しているものもあるが、FN社のパテント文書からはそうした意図は全く読み取れない。
  • 副次的だが、薬莢のネック部分に掛かる前向きの圧力も、スライド後退を遅らせているそうだ。
    • 上記の抜弾抵抗云々は、この部分を読み違えたのかもしれない。
 

 
 

 

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*1 弾丸が銃身を通過するときに受ける抵抗。銃身から見ると前方に引っ張られるような力を受ける。