怪文書(UMP9)

Last-modified: 2019-07-24 (水) 12:23:06
UMP9

「指揮官~!えへへ、ご褒美!」
「はいはい」

 

任務を終えたUMP9が飛びついてくる。任務の後はご褒美、というのが9がうちに来てから続いている習慣だ。
ご褒美と言っても何かをあげたり食べさせたりするわけではなく、ただじゃれついてくる9に構ってやるだけである。頭を撫でてやったりだとか、埃を払ってやったりだとか、軽く遊んでやったりだとか、そういう。

 

「9はご褒美がこんなんでいいのか?」
「うん!だって指揮官は家族だし?家族と遊ぶのは楽しいよ!」

 

家族。家族ね。
家族という言葉に9は妙にこだわりを見せる。なにか隠された思いがあるのか、特にそういうことも無く単に仲良くやろうということなのか。
別に追求したこともするつもりもないが、ふと思い立って尋ねてみた。

 

「なぁ、家族だとしたらさ、俺と9の関係ってどんなんだろうな?」
「…うんー?」
「ほら、45は9にとってはお姉さんだろ?そしたら俺は9にとってはどういう家族関係かなって」
「…んー、指揮官と私の関係、かぁ」

 

口元に手を当てながら考える9を眺めながら自分なりにも考えてみる。父と娘?いや自分はそれほど歳は食っていないし9も幼くはない。
そうしたら兄と妹が一番しっくり来るだろうか。9のほうが歳上はないだろう。
それとも従順でじゃれたがる9なら飼い犬と飼い主…これはさすがに失礼か。
などと考えているとふいに9がふふっと笑みを浮かべた。答えがまとまったのだろうか。こちらに向き直り話しかけてくる。

 

「じゃあさ、指揮官」
「ん?なん」

 

なんだい。と返そうとした言葉がそこで途切れる。驚きで見開いた目には9の閉じた目蓋しか映らず、唇には柔らかい感触が伝わってくる。
キスをされた、と気付くまでに数秒はかかった。
首元にはしっかり腕が回され離さないと意思表示をしてくる。もっとも驚きで抵抗しようと考える暇もなかったが。
どのくらい経ったか、いやそこまで長くもないのだろうが妙にゆっくり感じた時間の後、名残惜しそうに唇の柔らかさが離れていく。

 

「……こういう関係っていうのは、どお?」

 

うっすら朱が差した顔で訊ねる艶やかな唇。少し細められたきれいな眼。こちらの口元をなぞるしなやかな指。いつもの9では、ない。
俺はただ間の抜けた顔で呆然とするしかなく、混乱した頭をどうにか冷静にと持ち直そうとしていたが…。

 

「ぷっ、うふふ、あはははははは!」

 

突然、もう耐えられないと言わんばかりに9が笑いだした。1秒前の大人びた雰囲気はすでに消え去っている。

 

「ねぇねぇ、びっくりした?びっくりしたかな、指揮官!えへへ、冗談だよ~だ!指揮官後ろから殴られたみたいな顔でぽかーんとしてるんだもん、もうおかしくって!ごめんね指揮官!あっ、質問の答えはまた考えておくね!」

 

妙に勢いよく言葉を畳み掛けたと思うと、9は小動物のようにぴょんぴょんとこちらを離れてドアに向かう。
すっかりいつものUMP9だ。じゃあね、と手を振るとその姿は扉に遮られて見えなくなった。
嵐が去り、自分しかいなくなった執務室でまたしばらく呆然としていた俺は、ようやくひとつ大きなため息を吐いた。

 

「…9のやつめ……」

 

誰にも見られていない真っ赤な顔を、しかし必死で帽子を深くし隠す。心臓の音がやけにはっきり聞こえる。9の匂いが、まだ鼻腔に残っている気がする。

 

「次からどんな気持ちでご褒美あげろって言うんだ…」

 
 

────────────────────────

 
 

やっちゃった、やっちゃった、やっちゃった!
うわぁ、指揮官すごい顔して固まっちゃってたよ!びっくりしたんだろうな!
でもさ、指揮官がいけないと思わない?私に「家族で言うとどんな関係だと思う」なんて聞いてきて!
私が指揮官とどうなりたい?だなんてさ、そんなのひとつしかないのにね!
だから、してあげた。
私を、きょうだいや親子だなんて思わないように。血を分けた関係よりも、もっと深いものだと感じるように。
…嫌、だったかな。
…嫌われちゃったかな。
うーん、でももうしちゃったものはしょうがないよね。嫌なこと考えるのはなしなし!
そうだ、明日からもいつもみたいにじゃれついてやろう。まるで何も無かったかのように振舞ってあげよう。
指揮官どんな顔して遊んでくれるかな?うふふ、楽しみ!

 

…もしも、指揮官が嫌じゃなかったら。
もしも、指揮官が私と同じ気持ちだったら。
いつか、本当の家族になれるかな?
なれるといいな。

UMP9

髪を撫でる手が止まったのはいつごろのことだったか、話すことに夢中になっていたUMP9は気付かなかった。
自分の話を目を細めながら嬉しそうに聞いてくれていた彼女の家族は今、安らかに寝息を立て始めている。
ここからが面白いところだったのに…とすこし残念がったUMP9だが、そもそも自分は指揮官を寝かしつけに来たのだと思い直すと、少し体の位置をなおして正面からその寝顔を見つめる。
日中の苦役から開放されたその顔は無垢とさえ言え、それを見る彼女は自分の心の高鳴りを確かに感じていた。
指揮官は自分にとって、姉と同じくらい大切な「家族」だ。
遊びに付き合ってくれる兄であり、見守ってくれる父であり、こうして無防備な姿を晒している姿は年下の弟のようだ。
いつからだろう。
そう思えば思うほど、それでは満足できない気持ちに気付いたのは。
指揮官のことを思うと、機械じかけの胸は確かに熱くなり、優しく苦い痛みを覚える。
それが何なのか、自分にはそれがまだわかってはいない。嫌い、ではないとおもうのだけれど。
…ふと、頭に触れていた彼の手が動いた。少し後ろに回された手はゆるやかに力をこめ、胸元にUMP9の頭を閉じ込める。
急に抱きとめられた9の顔は一瞬で紅くなり…そして、満面の笑みを浮かべた。
指揮官に触れてもらうだけで、自分はこんなにも幸せで、こんなにも満たされる。自分の想いの名に気づくのは、もう少し先になりそうだけれど。
「…おやすみなさい、指揮官。私の大好きな家族…」
今はまだ、それでいい。

UMP9_独占欲強い9の場合

「やだやだ9とイチャラブしたいよぉ!」
いいよ!指揮官がそうしたいなら私も指揮官といーっぱい仲良く遊ぶね!
だけど…一つ約束して欲しいことがあるなー

 

それはね…45姉よりも私が好きだって行って欲しいの
あのM4やAR-15の特別な人形達よりも私が大好きだって
グリフィンの中で誰よりも私が大好きなんだって
人間より戦術人形のUMP-9が世界で一番大好きなんだって

 

言って、言ってよ
いってったら

 

ねぇ

 
 

…うん!私も指揮官のことだーーーーーーーーーい好きだよ!
じゃあ一緒に遊ぶ前に私!欲しいものがあるの!私のことがだーいすきな指揮官なら分かるよね?
よーし!あの教会にレッツゴー!

 

絶対に貴方のことは誰にも渡さないから

 
 
UMP9_ごほうび

「あー…9、そろそろ離れてくれないか?後方支援部隊が帰還報告に来る時間だから」
「えー?まだいいでしょ?あと10分だけ!」
「“ご褒美は迷惑にならない時間まで遊ぶのとおやつひと袋”が約束だろ?守らないともうあげないぞ」
「むー、なんか妙に子供扱いされてる言い方ね?それに私に抱きつかれてるの見られるのがそんなに迷惑?」
「…まぁあんまり見せつけたいものでもないかな…名目上はまだそういう関係でもないしな」
「…ふーん?そうなんだ…そっかそっかー、じゃあ邪魔だって言われるのも嫌だしここでやめてあげよっかなー?」
「悪いな…今度また任務が終わったらご褒美あげるから………っ!?」
「あはは!結構はっきり跡がつくんだねー!これは虫刺されじゃ説明できないかなー?」
「な、ないん、おまえ…」
「“そういう関係じゃない子”にこんなことされたなんてバレたらまずいよね?ちゃんと首元隠してお仕事してね指揮官!うふふふ!じゃあねー!」
「………………あ、おい!お、おやつ忘れてるぞ!」
「いらなーい!もう食べたから!」