sen_coc7_HotelHell

Last-modified: 2024-04-18 (木) 18:48:34

地獄のホテル

このシナリオは、現代カナダのプリティッシュ・コロンビア州にある人里離れた荒野が舞台である。
3人から6人でプレイした場合、1回か2回のセッションでプレイし終えることができるだろう。
探索者の1人(複数でもよい)が古いホテルを相続する。
探索者はホテルを改装し、この地を訪れて景色を眺めたり狩りを楽しんだりする観光客を相手に営業を再開するつもりだ。
長らく放置されていた建物を修復するうちに、秘密が1つずつ明らかになり、それらによって探索者は恐ろしい真実に導かれる。
時を同じくして、外の世界は磯滅へと向かっていた。

 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

00前書き

このシナリオが生まれたのは2006年6月のテンタクルズ・コンペンションがきっかけだ。
コンベンションの最中、私は家族と友人から・クトゥルフ神話TRPGのキーパーをしてくれとせがまれていた。
そこでコンベンションの翌日にみんなでプレイすることにしたのだ。その時に気づいたのだが、プレイする日が2006年6月6日だったのだ。
もちろんこれは「6/6/6」を意味しており、かくして私は終末ものの冒険をやらずにはいられなくなったのである。
なおシナリオのかなりの部分は、世界の破滅を描くルチオ・フルチ監督の映画「ビヨンド」を土台にした。
私はこの冒険が実際にプレイした日の直前から始まっていることがわかるように心掛けた。
冒険が進むにつププレイヤーは何が起きているかを徐々に理解し始めた。
そして冒険のクライマックスを迎えた日がプレイした日と一致したところで、プレイヤーはついに「6/6/6」という数字の意味を悟ったのである。
同時に世界のあらゆる場所から事件のニュースが舞い込み、理解したのだ。本当のハルマゲドンが起きており、探索者がその中心地にいるのだと。
グームは素晴らしかった。参加者の一人は今まて一度も“クトゥルフ神話RPG''をプレイしたことがなかったのに、かなり楽しんでくれた。
残念ながらあなたがこのシナリオを2006年6月 6日 にブレイすることはできないが こればかりはどうしようもない。
「地獄のホテル」の見どころの一つは、最初プレイヤーがこのシナリオを昔の「悪霊の家」の焼き直しだと思い込むことだろう。
「悪霊の家」はどの版の“クトゥルフ神話RPG'にも収録されている(私がこのゲームのために書いた最初のシナリオだ!)。
もちろん「地獄のホテル」の結末はまったく違う。このシナリオはとても柔軟で自由な形式のシナリオなので、あなたはプレイヤーの選択に柔軟に対応しなければならない。
なので、あなたが事前に何もかも決めておくタイプのキーパーであれ,まずは別の冒険を試してみるのがいいだろう。
2017年 サンディ・ピーターセン

風祭注釈

本稿は公式シナリオ集『サンディ・ピーターセンの忌まわしき物語』に収録されている同タイトルのシナリオを日本人PCでプレイしやすくするため現場をカナダから北海道に置き換えたものである。

場所について

 カナダ、ブリティッシュコロンビア州→日本北海道
 イスクット川→ニセイノシキオマップ川
 ホードー山→ニセイカウシュッペ山
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%83%E3%83%9A%E5%B1%B1

人物等

トリンギット族→石狩アイヌ
シロアメリカグマ→エゾヒグマ
ヨハン・シーグル→変わらず
バーナバス・レヴィ(七つ星ホテル創立者)→高橋 直治
ルイジアナ州を拠点とするグッドマン・ウィンフィールド・フッツ法律事務所→大阪を本拠とする勝田芳雄法律事務所
ジェスロ・アリス・マンデン→萬田有栖、秋田県仙台市に住んでいた

01シナリオの背景

1924年のこと、ヨハン・シーグルという無名で評価も低い画象が、ヨーロッパから日本、北海道の七つ星ホテルにやって来た。
いわゆる「狂騒の1920年代」の喧騒から離れて独りになりたかったシーグルは、北海道の人里離れた荒野の風景を描くようになった。
その数十年前の19世紀の終わり頃、ゴールドラッシュがこの一帯にも押し寄せ、以来この地にやって来て住み着く新参者も現れた。
金の採掘者たちが進んだ道沿いには文明らしきものが生まれた。
七つ星ホテルは(高橋 直治という名の男によって)ニセイカウシュッペ山のふもと、その山影がのしかかる地に建てられた。
このホテルの一室を借りて長期滞在することにしたシーグルは、この地を散策して不可思議な油絵を描くことができた。
ほどなくして、ホテルの宿泊客や従業員、この地域に住むほかの入植者たちが、シーグルと彼の「邪悪」油絵のことを口にするようになった。
シーグルの油絵は暗くて嫌な感じのする代物で、周りの風景を陰気で重苦しい色で描写したり「不健全な」画題を取り上げたりしていた。
彼は数日にわたって姿を消すことがよくあり、視線の定まらぬ目をし、手に生乾きの絵の具を付けてホテル周辺の突拍子もない場所にいることもあった。
切り裂かれて本の枝にぶら下げられた野生動物が発見されたり、ホテルのあちこちで奇妙な落書き(とりわけ地下室の壁に無断で描かれたもの)が見つかったりすると、地元の者はシーグルの仕業ではないかとささやくようになった。
妖術だと言う者までいた。そしてシーグルの部屋で不気珠な油絵が見つかり、その周囲には乾いた血の付いた小瓶や絵筆があった。
もはや「妖術師」が村に害をなす前に何かをしなければならないのは明らかだ。警察や公的機関の支局は遠く離れている。
入植者たちは自らの手でこの問題を解決:することにした。
1925年4月2日の夕刻、暴徒がシーグルを襲い、ホテルから大きな杉の木まで引きずり出した。
そしてシーグルの両手を木の幹にくぎで打ちつけ、生石灰を全身に浴びせたのだ。
一人の地元民が祈りをささげているうちに、シーグルは苦痛に満ちた、むごたらしい、陰惨な死を遂げた。
シーグルの遺体は杉の根元に埋められた。
シーグルの部屋は暴徒が押し入った時のまま、鍵が掛けられ、板でふさがれた。
妖術師の油絵と持ち物に誰も触りたがらなかったのだ。
それから何力明にもわたり、この地には不幸の風が吹いているかに思われた。
七つ星ホテルの経営は破綻し、建物の持ち主はもっと有望な投資先を求めて去っていった。
ホテルの建物をカトリック教会にする計画もあったが、教会設立のために派遣された神父が謎の死を遂げたため計画はつまずいた。
数年後の1932年に建物は修復され、ホテルと先住民との交易所を兼ねた「七つ星交易所兼ホテル」として開業したが、シーグルの部屋は手つかずのまま残され、偽の壁の裏に隠された。
惨劇を隠したまま、この建物は1970年代前半まで使われていたが、その頃に開鎖されて再び放棄されることになった。以来建物は無人のまま放置されていた。

真相

シーグルはただの画家だったが、当時の人たちからすると、その作品は風変わりで恐ろしいものだった。
ホテルに滞在している間、彼の病的な好奇心と興奮しやすい気質が、ホテルの下にある地獄への問からかすかに発せられるものの影響を受けるようになった。
以前から常軌を逸した作品がゆがんでいき、これまで以上に不気味なものになったのだ。(「地獄の門」参照)。
門の影響を受けたシーグルは、地球が減びる恐ろしい悪夢に苦しむようになり、起きている間もその悪夢に悩まされた。
シーグルは門に引き寄せられ、門に近いホテルの地下室に頻繁に無断で入り込むようになった。
地下室でシーグルは壁に絵を描き始めた。そこに自分が見た悪夢を描いたのだ。
だがシーグルのそうした行動や暗い態度が、ホテルの従業員やほかの宿泊客、近くに住む地元民といった人々の注意を引いてしまった。
門は常に近くにいる者に影響を及ぼしてきたが、大多数の者はそうした出来事をただの悪夢として無視し、ほとんど気にしなかった。
ところが、ホテルを建てた高橋 直治は門の存在を強く感して、無意識のうちにこの場所に建物を建てたいという思いに駆られた。
しばらくして、高橋はホテルで自殺を試みたのか、西洋カミソリを使って自らののどを切り裂いている。
こうしてホテルは息子の手に渡った。門の力はたいてい、ごく弱いままである。
しかし特定の時期(例えば1925年)が訪れた時だけは影響力を強め、奇妙かつ邪悪な形でわずかな人々にその兆候が現れる。
シナリオの開始時、門の力は再び強くなってきている。それは闇の時代の先触れであり、世界の終焉の可能性を予兆させるものだ。
「地獄」そしてシーグルの恐ろしい姿の幻影に探索者はさいなまれるだろう。それどころか、探索者の一人は門の影響をまともに受ける重要な存在となるかもしれない(「イベント」参照)。
ホテルの地下にある地獄への門は、世界中に散らばっている7つある間の一つである(「7つの地獄の門」参照)。シナリオ中、これらの間がすべて開き始め、火山の噴火などの災害が起こる。すべての門が完全に開いてしまうと太平洋の底が抜け、世界の終わりが訪れる。
だが探索者がホテルの地下にある間を閉じることができれば文字どおり世界を救うことができる。
7つの問すべてが開かなければ終末は訪れないからだ。
すべての門が開いてしまえば地球に大災害が起こり、人類は壊減的な被害を受ける。
そしてグレート・オールド・ワンなどのクトゥルフ神話の恐怖が帰還する道が開かれる。

キーバーヘの注意:
1925年4月2日。シーグルが死亡したこの日は重要な意味を持つ。
太平洋の海底から浮上したルルイエが、再び海に沈んだ日と一致しているからだ。
このことはH.P.ラヴクラフトの「クトゥルフの呼び声」に書かれているとおりである。
どういうわけか、門の力の強弱は、「正しい星辰が近づく」という概念や、クトゥルフ神話の神々の解放と、何らかの関係があると考えられる。

地獄の門

セブン・スターズ・ホテルは地獄に通じる7つの間の一つの上に建っている。それ以外の間の場所は下記のとおりだ。
問のある1場所では、それぞれが異なる恐るべき事件によって大騒ぎとなっている。
七つ星ホテルでは死せるものが出現し、ケルマデック諸島の住民は原因不明の疫病にみまわれる、などといった事態である。
探索者はそれぞれの間の場所で何が起きているか、全容の把握とまではいかないものの、さまざまなニュース報道から、ただの地震や火山活動でないことがおぼろげに理解できる。
下記に示す7つの門の場所には、間が開くことで引き起こされた破滅的な事件が書かれている。
これらはニュース報道に反映される(31ページ「ニュース速報」参照)。ただしそれらはキーパーの好みで、自由に変更したり差し替えたりしてかまわない。
なお、これらの事件は、探索者の行動によって起こしてもよいし起こさなくてもよいので注意すること。7つの地獄の間は以下のとおり。
地獄のホテル_環太平洋火山帯.png

  • 北海道 ニセイカウシュッペ山 七つ星ホテル(・プリティッシュ・コロンピア州、セブン・スターホテル)
    死せるものが出現する。ニセイカウシュッペ山(ホードー山)が噴火する。
  • カリフォルニア州ロサンゼルス、コマース
    大陥没が起きて町がのみ込まれる。また神話怪物が餌を求めて現れる。
  • ロシアのカムチャッカ半島、ベトロパブロフスク・カムチャッキー
    半径32Km圏内にいる全員が突如として謎の死を遂げる。アヴァチンスカヤ山が噴火する。
  • ニューギニア島、パプア州の州都ジャヤプラ
    火山が費火する。クトゥルフの星の落とし子などの水に潜む怪物が餌を求めて現れる。
  • ニュージーランド、ケルマデック諸島
    伝染性の病気が急速に流行し、島々からの広域避難が実施される。近隣のカーティス島は、火山の噴火によって破壊される。
  • マリアナ諸島、サイパン
    地震および集団パニック。火山が噴火する。
  • チリ、バルパライソ
    地震。食屍鬼が餌を求めて現れる。

探索者たち

「地獄のホテル」は、あらかじめ探索者の立場が決まっているシナリオで、探索者たちの1人が最近ホテルを相続したことになっている。
もっとも、2人以上の探索者が遺産を共有することは可能で、その場合ほかのプレイヤーキャラクターは親族になる。
それ以外の探索者はおそらく親友になるだろうが、改修工事を手伝うために雇われて同行した人々であってもよい。
そのため、探索者たちは現代のどんな職業でもかまわない。
役割や仕事を決めるにあたって、プレイヤーキャラクターたちが七つ星ホテルの再建と運営に関心を持つ人々であることに注意してもらおう。
加えて、彼ちは先住民族である石狩アイヌとすでに接触しており、ホテルの改修を手伝う作業員の派遣について合意を取り交わしている。
従って探索者が建築の専門家である必要はない。ホテルを相続し、営業再開してビジネスを成功させようという意欲があるだけでよい。
新しい探索者を作成したいと思わない、あるいはすでに作成している探索者を使おうと思わなければ6人の既製の探索者が用意されている。

探索者の装備と持ち物

このシナリオは、探索者が北海道のホテルに到着するところから始まる。
彼らがここに足を踏み入れるのは今回が初めてだ。旅行の準備とこれから行なう作業のため、探索者は道具や機材をホテルに届けるよう事前に手配していた。
あとで必要になったり、まだ運んでいなかったりするものも取り寄せられ、石狩アイヌの作業員に受け取ってもらうことができる。
探索者はホテルの権利書を持参している。これは、相続の手続きをした法律事務所が前もって送ってきたものだ(28ページ「調査」参照)。
探索者が衛星電話を1つか2つ持っていることにしてよい(誰が電話を持つか決めること)。
衛星電話は電話とメールの送受信に加え、インターネットにも接続できる。
ホテルの改築・改修工事が始まればいずれは広帯域インターネットヘの常時接続も可能となる予定だ。
しかし現時点では、探索者が電話をかけたり、メールを送ったり、ウェブベージを閲覧したりすることは制限されている。

  • キーパーヘの注意:
    シナリオの途中、探索者が外の世界に連絡を取ろうとすることもありうるし、電話で誰かに助けを求めることもあるだろう。
    キーパーは探索者に、誰であろうと電話でもメールでもさせてあげよう。
    だが、都合よく到着して手を貸してくれる者はいない。距離が障壁となるばかりでなく、悪天候などの環境条件すべてがホテルの人々への助けを妨げるのだ。
    衛星電話は知つてのとおり屋内では受信状態が悪く(必要に応して〈幸運〉□―ル)、通常は空に向かつて視界が開けている必要がある。
    ただし、衛星電話は探索者がさまざまなニュース速報を得る手段の一つであるのを忘れてはならない。
    これで恐ろしい状況を強調し、より深めるのだ(31ページ「ニュース速報」参照)。
    もし探索者が電話を当てにし過ぎるように思えたなら、広範囲に起きた非常事態(まさにこのシナリオで起こることだ)によって電話が殺到し、通信システムがバンクしかねないのを思い起こそう。
    つまり電話が突然切れるかもしれないし、まつたく通しないかもしれないのだ。
  • ホテルに運ぶよう手配したのは以下のようなものである。
    ・発電機、およびその燃料
    ・電線とソケット
    ・工具類(電動工具、斧も含む)
    ・建設資材(木材、コンクリート、漆喰など)
    ・作業灯
    ・懐中電灯
    ・衣類と寝具
    ・数週間分の十分な食料
    ・救急箱
    ・8人乗用可能なミニバン、あるいはSUV
    探索者たちは乗り物を1台借りている。8人乗用可能なミニバン、あるいはSUVだ。この車の屋根には、2そうのカヌーが積んである。
    上記の一覧にない特殊な物品については、キーパーの裁量に任されている(〈幸運〉ロールをさせ、探索者が忘れずに荷物に入れたか確認してもよい)。武器については、ほとんどの探索者はナイフの類い(ベンナイフから、さや付きナイフまで)を荷物に入れているだろう。
    その種類は持っている技能やキャラクターのコンセプトしたいである。
    同様に、キャラクターの1人以上がライフルを持ってきていたとしても特におかしくはないだろう。
    とはいえ、全員が荒野に拳銃を持ち込んでいるのは変だ。
    プレイヤーたちと装備について話し合い「持って行く理由を説明できる物が何か」を考えてもらおう。
    “クトゥルフ神話TRPG"の典型的な探索者がトランクに詰め込んでいそうな物なら、もちろんその必要はない!

探索の舞台

ここからはプリティッシュ・コロンピア州や現地の情報、そして七つ星ホテル全体の詳細を述べる。
地元の先住民や、彼らを訪ねて回る伝道師に関する情報も盛り込んでいる。
重要な点として、主な場所にはそれと関連したイベントが提示されている。これは「シナリオを進める」(
27ベージ)に記された、起こりうるイベントのいくつかと合わせて活用してはしい。
このシナリオはサンドボックスになっており、プレイイヤーはシナリオを自由に探索でき、キーパーは彼らの行動に対応することになる。
「地獄のホテル」の舞台は、カナダのプリティッシュ・コロンビア州北西紙人里から離れ、極めて孤立した荒野だ。
ホテルはイスクット川沿い、ホードー山の陰に隠れるようにして建っている。ここはバンクーパーから約1,000km、南部のプリンス・ジョージから620km、イスクット川とスティキーン川との合流点から東へ30Kmの位置にある。
ホテルから北へ160km離れた、マウント・エジザ州立公園の端にあるテレグラフ・クリークが、物資や燃料などの必需品が入手できる、最も近い町である。テレグラフ・クリークの北東約110km、バンクーバーから,400km以上離れたところにはディーズ・レイクというごく小さな町があり、そこにある空港が最も近い。イスクット川の南側流域沿いに道路はない。

北海道中央部、大雪山国立公園(ブリティッシュ・コロンビア州)

(プリティッシュ・コロンピアはカナダ最西端の州だ。南の国境付近にはバンクーバーがあり、北はアラスカとユーコン準州が隣接している)

広漠なこの地に住む人口はわずかだが、山脈と氷河に囲まれた地域は雄大な景色を誇り、ハイキングやキャンプ、スキーといった荒野のスリルを味わうための夏の行楽地となっている。
大半の場所で道路が少ないのは明らかで、この地域のほとんどは自動車では近寄れない。
無秩序に広がり密生した森林や山脈があり、整備された道も十分でないため、最良の移動手段は船舶や航空機となる。
携帯電話はほとんど通じず、訪れる人は衛星電話の持参を勧められる。
これらの理由から、地域の大部分が無人である。
濃い霧が立ち込めているのが普通だ。気温は激しく変化することがあり、夏場でも気気温が10℃を下回る日がある。
自然のままの地形であるため、荒野の中で迷子になりやすい。ハイキングに行くだけでも、当日の気象状況や熊の存在などの環境要因を考慮するのが肝要である。

キーバーヘの注意:この地域にはアメリカクロクマの亜種であるシロアメリカグマ(「精霊の熊」とも呼ばれる)が生息しており珍しい潜性遺伝により10頭につき1頭は、北極熊のような白い毛皮を持つ。
この自い熊は、地域の先住民族の口頭伝承において重要な位置を占める。
北極熊のように見える動物をシナリオに組み込めば、プレイヤーにさまざまな驚きを与えられるかもしれない。

ニセイノシキオマップ川(イスクット川)

(州の北西部を)、石狩川(スティキーン川)最大の支流であるニセイノシキオマップ川(イスクット川)が流れている。
この川には鮭、ヒメマス、ニジマス(5種類のサケやキタカフヒメマス、ニジマス)といった魚が生息している。
川の水は氷のように冷たく、泳ぐのは勧められない。泳ぐ人は適切な衣服を着用していなければ低体温症になる危険がある。

石狩アイヌ(トリンギット族)と聖職者

七つ星ホテルは人里離れた場所にあるが、ホテルの改修を手伝う作業員を派遣している石狩アイヌの人々が近くの村にいることを探索者たちは知っている。
以下の情報は探索者たちが地元の村を訪ねた時や、ホテルの工事で雇った人と、突っ込んだ話をする時役に立つだろう。
テキサス出身の福音派伝道師であるレブネシュ牧師は、 石狩アイヌと一緒に暮らしている。石狩アイヌの村を訪れるか、牧師がホテルを訪れるまで、探索者は彼の存在に気づかない。

この集落の人々

石狩アイヌは、北海道に住む先住民だ。 石狩アイヌの村は七ツ星ホテルから数キロ離れた、ニセイノシキオマップ川の沿いにある。
彼らの先祖伝来の言語はアイヌ語だが、 石狩アイヌの人々は日本語を話すので、探索者との意思疎通は問題ない。
歴史的に、 石狩アイヌはこの地域の石狩川沿いに居住していた。1880年代後半から、この集落の大半の者はキリスト教に改宗した。
しかし最近では、若い世代により伝統ある部族の信仰に回帰する傾向が、見られるようになった。
多数の年長者を含むほとんどの人々は、キリスト教の信仰と伝統的な文化的世界観に折り合いをつけている。
石狩アイヌの人々の工芸品の多くには、芸術と精神性の強い結びつきが見てとれる。村を訪れる人々はトーテムポールやカヌー、陶器や装飾品を目にするだろうが、そのどれもが素晴らしい技術で作られている。
村はさほど大きくなく、50名あまりの人々が住んでいる。
加えて、半年ほど前からここで暮らしているのが福音派伝道師であるレプネシュ牧師だ。実のところ、村の近くに教会を建てるためレプネシュに手を貸すこの集落の者もいる。
そのほかの者は、食料を得るため狩猟や栽培を行なったり、仕事を求めてこの地域を旅して回ったり、一帯を訪れる観光客や研究者のガイドとして働いたりしている。
ホテル周辺地図2.png

石狩アイヌの探索者に対する態度

石狩アイヌの人々は親切で、探索者にも好意的に接してくれる。
ホテルの改修工事が、彼らの求めていた雇用と収入をもたらしてくれそうだからだ。シナリオが始まるまでに、
探索者は彼らと連絡を取っている。
修復工事を始めるためだいたい10人の石狩アイヌを雇い、並行して建築資材の調達やボートによる搬入も行なっている。石狩アイヌはシナリオを通して、探索者を熱心に手助けして迎え入れてくれる、感じの良い人々として描写するとよい。
作業員は事件が大きくなるにつれどんどん用心深くなるが、探索者を「もめごとを起こす厄介者」と見なすことはない。
しかし一度大混乱に陥れlよ残った作業員の誰もが村に逃げ帰ろうとするだろう。彼らの居住地は、川から数キロほど上流にある。
キーパーは村へ行く道に、死せるものが立ちはだかるかどうかを決めること(30ページ「イベント」参照)。

石狩アイヌの情報

石狩アイヌの作業員に聞けば以下のことがわかる。
ニセイノシキオマップ川におけるゴールドラッシュに沸いた1880年代の半は高橋という名の入植者が最初のホテルを建設した。
ホテルは一度閉業したが、のちに交易所とホテルを兼ねた場所として再建された。
しかし長い年月の間に旅行者が減り、1970年代には営業を終えたため、建物は倣棄された。
以来、誰もこの建物を利用していない。
ホテルの作業員は細かなことをほとんど覚えていない。ただし部族の年長者たちに話を間けばホテルが閉鎖する直前の1920年代に、
入植者が彼らの同胞をホテルで殺害したと教えてくれるだろう。詳しいことまではわからない。
年長者たちは、ある者が妖術を使った疑いで告発され、生きたまま火あぶりにされた、としか言えないだろう。
そのはかには、ある神父が一度この地を訪れ、ホテルの跡地に教会を建てようとしたことも覚えている。
しかし、首をねじ曲げられた神父が見つかったことで、教会の建設計画は自紙になった。
ニセイカウシュッペ山について、地元の者は多くを語りたがらない。
もし無理に聞き出すなら、多くの者はあの山が呪われているというよくある話を述べるだろう。
作業員に対して〈威圧〉〈言いくるめ〉〈説得〉ロールのいずれかに成功すれば、ある者が
ニセイカウシュッペ山がさまよえる魂の居場所で、山に長く住むと悪い夢に苦しめられると明言する。
伝説、とりわけ世界の終わりや地獄への間といったことに関する話を聞いた時、おそらく部族の年長者たちは部族の伝承と同じくらい簡単にキリストの福音を引用するだろう。
もし〈説得〉や〈魅惑〉ロールを用いて、この地の伝説のことだとわかってもらえたのであれば探索者は「盗まれた日の光」(プレイヤー資料2)の話を聞ける。
この物語はワタリガラスにまつわる話だ。このカラスは星々や月、太陽の詰まった箱を開け、中身を空に解き放ってしまう。
〈オカルト〉ロールに成功すれば、この物語は天地創造に関係した寓話だと推測できるだろう。
また〈クトゥルフ神話〉に成功すると、老人とはアザトース、カラスとは太陽系を創造したニャルラトテップの暗示だとわかる。
推察するに、太陽と月、星々は「元の箱に戻る」ことがある。これによって世界に新しい暗黒が、つまり地球とその住民の終わりが、もたらされるかもしれない。

プレイヤー資料2 盗まれた日の光

ワタリガラスは星々や月、太陽を盗んだ。
老人は大金持ちで、星々と月、太陽が入っている3つの箱を持っていた。
ワタリガラスはなんとこれらを自分のものにしたいと思った。
そこでワタリガラスはツガの針のような葉に姿を変え、老人の娘がベリーを摘んでいる時に、水の入った娘のコップに入り込んだ。
カップの水を飲み終えた娘は身ごもり.男の子の姿になったワタリガラスを産み落とした。
老人はこの孫を溺愛したが、赤ん坊は延々と泣き続け、ついに老人は孫をなだめようと星々の箱を与えた。
赤ん坊(ワタリガラス)が箱のふたを開けると、星々は煙突を伝って空へ解き教たれた。
その後、赤ん坊は月の箱を欲しがって泣き叫び、大騒ぎの末、老人は煙突をふさいでから箱を与えた。
赤ん坊が箱をもてあそんでいると、 ドアから箱が転がり出てしまい、そうして月は空へ解き放たれた。
それでも赤ん坊は泣さ続け、太陽の箱を欲しがった。老人は我慢していたが、ついには根負けして赤ん坊に箱を与えた。
とはいえ.今度は、老人も赤ん坊からまったく目を離さなかった。
見張られていた赤ん坊は皆が寝静まるまで待つと、鳥に姿を変え、くちばしに太陽をくわえて、煙突から飛び出した。
ワタリガラスが箱を持ち出したのは、自分を信じようとしない連中に太陽を持っていると証明して見せるためだった。
こうしてワタリガラスが箱を開けると、太陽は空へ飛び立った。それ以来ずっと太陽は空にある。

レブネシュ牧師

この牧師はテキサス州からやって来たベンテコステ派の伝道師である。
半年はど前から石狩アイヌと一緒に暮らし、村の中で奉仕活動を行なったり新しい教会の建設を計画したりしている。
レプネシュは地獄のような激しい説教を行なう牧師で、年齢の割りには大きな力強い声で話すことが多い。
そのため探索者にはやや狂気しみた人物に映るかもしれない。
シナリオの序盤、探索者が石狩アイヌの村を訪れると会えるかもしれないが牧師が早い段階でホテルを訪れ、あいさつしたり自己紹介したりする可能性のほうが高いだろう。
最初こそレプネシュは探索者力何をするのか、ホテルでをしようとしているかを聞きたがる。
そして石狩アイヌが友好的であり、彼らにホテルの修繕の仕事を頼めば快く引き受けてくれるだろうと助言する。
一方シナリオが進むにつれ、レブネシュは探索者が危険に手を伸ばそうとする夢を見る。
またどういうわけか、このホテル周辺や世界中で起きている奇妙な出来事を、神からの警告と受け止める。
そのためレブネシュはあらゆる手段を使って、探索者が自分の過ちに気づき、ホテルにもう関わらないようしつこく言い寄る。
レプネシュは外の世界からの重要な情報を、キーパーが探索者に伝える役割を担っている。彼は衛星電話を持っており、
世界中で火山が噴火し始めたという重大ニュースを探索者に伝えようとする(31ページ「ニュース速報」参照)。
状況が悪化するとレプネシュはホテルに向かい、探索者に最後の審判の日が迫つていると告げ、それは自然災害の増加から見ても明らかだと述べる。
死せるものがうろついている事実を牧師がつかんだり目撃したりした場合は、死者がよみがえったという事実も織り交ぜて話をする。
いくつもの出来事が起きるにつれ、レブネシュは次第に狂気に陥っていく。そして牧師の話を聞く探索者や石狩アイヌに対して、聖書の一節を引用しながら(囲み記事「聖書からの引用」参照)、村に戻って一緒に死者の冥福を祈ろうと言う。
これをどう展開させるかは、探索者の行動にキーパーがどう対応するかに委ねられる。
ありそうなのは、レプネシュがホテルを出たものの、時間がたっても教会に着かない。
何かのせいで遅れている。死せるものに妨害されて教会にたとり着けなかったのだ。
牧師はホテルに引き返そうとする。もしそうなったら、レブネシュはクライマックス間近で死せるものの犠牲者となってしまうだろう。
聖書の文句を叫びながら殺りく者の群れにのみ込まれてしまうのだ。
あるいは門にとりつかれた探索者が牧師を殺そうとするかもしれない(28ページ「門にとりつかれる」参照)。

聖書からの引用

レフネシュ牧師が探索者たちといる時、以下のような聖書からの引用を口にすることがある。
発言の中に引用を織り交ぜてみよう。ただしシナリオが進むにつれ、彼の公言する内容がどんどん荒々しく、常軌を逸したものになることを忘れずに。

  • 「ダニエル書」第9章26~27節
    62週ののち、聖油を注がれた者は町を支配してない時に倒される。
    そして来たる指導者の民が聖所を破壊する。
    その時、終わりが激流のことく押し寄せる。
    終わりまで戦争が行なわれ、荒廃は定められた。
    彼は1週の間、多くの者と同盟を結び、半週で生け費とささげ物を廃止する。
    神殿の翼の上に恐ろしい忌まわしきものがいて、定められた破減が恐ろしいものに注がれる。
  • 「ダニエル書」第12章2節
    そして大地のちりの中に眠る者の多くが目覚める。
    ある者は永遠の生命を、ある者は恥辱と永遠の侮蔑を。
  • 「エゼキエル書」第12章20節
    そして人々の住む都市は荒れ果て、その地は荒廃するであろう。
    -「マタイによる福音書」第24章15~ 16節
    預言者ダニエルの言われた荒廃をもたらす忌まわしきものが聖なる場所に立つのが見えたなら(読者よ悟れ)、その時……人々は山へ逃げよ。
    -「ヨハネの黙示録」第13章7節
    そして獣には聖なる人々に戦いを挑み、打ち勝つ力が与えられ、さらにあらゆる種族、あらゆる言葉、あらゆる国々を支配する権力も与えられた。
    -「ヨハネの黙示録」第18章22-23節
    たて琴弾きたちや楽師たち、笛吹きたちやラッパ吹きたちの音は、もはやお前の中でまつたく聞かれぬ。
    いかなる仕事の職人たちも、もはやお前の中で何も見られぬ。ひき臼の音もまた、もはやお前の中でまったく関かれぬ。
    そして灯火も、もはやお前の中でまつたく輝かぬ。花婿や花嫁の声も、もはやお前の中でまつたく蘭かれぬ。

七つ星ホテル

かつては美しい建物だったかもしれないが、今はすっかり古びてしまっている。
長く放置され、雨風が建物の構造や外観にひとい損傷を生じさせている。
宿泊客を迎え入れる状態にするには、明らかにかなりの作業が必要だ。
敷地や館内の詳しい説明は以下のとおり。

ホテル案内図.png

ホテルの外

ホテルはニセイノシキオマップ川の北岸に接している。船着き場の本製デッキは朽ちているがまだ使えるため、ボートを係留できる。
草木はまばらにしか生えていないものの、伸び放題で手入れされていない。
とげのある茂みがホテルを囲んで生い茂り、古木が空に突き刺さるかのように高く伸びている。
遠くにはニセイカウシュッペ山が、空と大地の間に見渡すかざり広がっている。
ホテルの西の外れに納屋がある。
納屋の東側の地面には、朽ち果てたドアがある。これは荷物用のシュート(滑り台)でホテルの地下室とつながっている。
ここは探索者が工具類や資材、そして発電機とその燃料を置いた場所だ。
納屋の東側の地面には、朽ち果てたドアがある。これは荷物用のシュート(滑り台)でホテルの地下室とつながっている。
これを使え,表木材などの資材を地下室に降ろすことができる。
ドアは、さびた鉄の鎖と南京錠で施錠されている。 ドアを開けるにはハードの(鍵開け)もしくはSTRロールに成功する必要がある。
ただし、てこなどの道具を使うならボーナス・ダイス1つを与える。
ホテルの北東の端には、この近隣で最も古く巨大な木がある。
この杉の本は高さ60m近くあり、幹も根元ではかなり太い。
ここは暴徒たちがシーグルを襲撃し、その両手をくぎで木に打ちつけて生石灰を浴びせたあげく、彼の遺体を埋めた場所だ(探索者が本の根元を1.8mほど掘ればシーグルの遺骨が見つかる。32ページ「シナリオの終了」参照)。
この木を調べる探索者が〈目星〉ロールに成功すれば、 2本の古い鉄くぎが幹に深く食い込んでいるのに気づく。
長年にわたる木の生長のため、くぎの頭だけしか見えていない。 石狩アイヌの作業員はこの本をできるだけ避けているが、それに気づくのは難しい。
ホテルの外で作業員の様子を見ていてハードの〈心理学〉に成功すればそれに気づく。
作業員におかしな態度について尋ねるなら、この木はとても古く、悪い「波動」を放っており、これは邪悪な行ないを目の当たりにしたからだと答える。
探索者が1人きりで木の近くにいると、くぎを打ち込まれ、生石灰を浴びて苦痛にもだえるシーグルの幻を見る危険がある。幻を目撃した場合は〈正気度〉ロールを行ない1/1D3正気度ボイントを失なう。
ニセイノシキオマップ川を渡って探索者が東に向かうと、そこは石狩アイヌの村(13ページ「石狩アイヌのの人々」参照)である。
北東に向かえばニセイカウシュッペ山(%ページ「ホードー山」参照)にたとり着く。
川の北岸に沿って東へ進めば長いこと放置されて廃墟となった木造の小屋が建ち並ぶ場所に出る(25ベージ「昔の採掘者たちが寝泊まりした小屋」参照)。
川岸に草木はほとんど生えていないが、水辺からほんの数m離れると、木々が生え始め、密生した森になることに注意すること。
森の中をただ歩くだけなら、ホテルの帰り道を探すためのロールは不要だ。だが追いかけるなどの劇的状況に陥り、方角を見失なう可能性があるようなら〈ナビゲート〉を求められる。

ホテル内部

地上2階、地下1階のこのホテルは、外観とは対照的に内部は比較的良好な状態を保っている。
ただし内装は古く色あせている。
壁紙は破れ、燭台(ろうそくを立て)はなくなるか壊れている。
ところところ窓をふさいでいた板張りがはがれ、ガラスが割れたまま放置されている。
割れた窓から風雨が吹き込んで荒れ放題の部屋もある。
床はおおむね無傷だがキーパーが望むなら、探索者や作業員が腐ったり朽ちたりしている板を踏み抜く危険があることにしてもよい。
このホテルはほこり、泥、クモの巣で飾られているのだ。

一階

正面には受付ロピーがあリホテルの公共エリア(ダイニング・ルームやラウンジ、書斎など)に続いている。
中央にはオフィスと備品室、そして物置が1つある。奥には客室が3部屋ある。
東側の奥には、厨房と食料貯蔵室がある。ほとんどの部屋には、暖炉かストープがある。主な部屋の説明は以下のとおりである。

  • 旧トレーディング・ポスト(交易所):
    すり切れたはこりよけの布の下には先住民族との交易所の名残があるが、ほとんどのものはかなり昔に撤去されている。
    空のバケツや古いサービスカウンター、ロープの東、壊れて放置されたほうき、シャベルの頭部、壁に取り付けた数個のフックなど、わずかに本来の用途がわかる程度の手掛かりが残るだけだ。
    散らかった床には、狸の死体という不愉快なものも見つかる。
    壁には1枚の古い写真が画びょうで留められている。
    写真は1960年代に撮影されたもので、建物の持ち主たちがホテルの正面を背に写っている。
  • 書斎/ラウンジ:
    書棚はその半分ほどが、クモの巣に覆われほこりをかぶった古本で理まっている。
    棚板には死んだハエが散乱している。
    本をよく見ると、聖書力2冊、狩猟や釣りのガイドプック、北海道の歴史書(1970年代に書かれたもの)、
    ベーパーバックの小説などがある。中でも驚きなのは美術関係の古書が多いことだ。
    1800年代後半に書かれた美術史、ヴィクトリア朝時代後期の彩色図録本、さらにはここの地元の風景を木炭で描いた古いスケッチプックがある。
    図録本をしっくり眺めると、中の絵はどこか陰気で、見る者の気分を落ち込ませる。特に、狂気の夢や悪夢の情景または死や拷間の一場面、おまけに7つの地獄を描写したようなものまであり、人の心をかき乱す作品と言える。
    ある白紙のページには「近づく不心得者に災いあれ。門を開く者に災いあれ。邪悪が世界に解き放たれるであろう」と書かれている。
    スケッチブックにはすべて「J.S」という頭文字が添えられている。いくつかの作品には1924年から1925年ごろの日付が記されている。
  • ダイニングルーム:
    この部屋の臭いはひどく、ハエが集まってきているようだ。古い木製のテープルと椅子には、ほこりよけの布が掛けられている。
    〈目星〉ロールに成功すると、床の新しい血痕に気づく。血痕はシーツの1枚の下に続いている。
    シーツの下には、まだ新しい狸の死体があり、腹部の傷から内臓がこばれ落ち、腐り始めている。医師や獣医、経験豊富なハンターなどの専門家が詳しく調べれば傷は熊のかぎ爪などによるきれいな切り口ではなく、長く伸びた爪によって切り裂いたようだとわかる。
  • 厨房:
    まきを使う大型のかまど(ストープ)があり、ほこりとクモの巣に覆われているものの、部屋の多くの面積を占めている。
    そのほかのスペースの大半に木製の調理台が占めている。引き出しには、さびた包丁などの調理器具が並んでいる。
    かまとに火を入れれば、すぐに煙が立ち込める。煙突の中には、何らかの理由で身動きの取れなくなった鳥40羽の死骸が詰まっている。
    死骸の状態はまちまちで、自骨化したものから最近のものや腐っているものまである。
  • 食料貯蔵室:
    貯蔵室に通じるドアを支えているのは蝶番1つだけだ。誰かがドアに触れると、いきなり外れて倒れてくる(〈回避〉ロールに失敗すると、1ポイントのダメージを受ける)。
    シマスカンクが1匹この貯蔵室に穣み着いている。
    探索者の誰かが突然入ってくると、危険を感じたスカンクは悪臭を放つ分泌液を浴びせかけるだろう(6m以上離れていれば分泌液は届かない)。
    とりわけ優しいキーパーなら〈回避〉ロールを許可してよい。成功すればひとい日に遭うのを避けられる。目に分泌液を浴びると、一時的に焼けるような痛みを負う4ラウンドの間、一時的に目が見えなくなる)。
    室内に入ると、壁にははこりをかぶった棚が並んでいる。
    棚には桃の古い缶詰が数個と、空になった出荷用の木箱が2つあるが、見つかるのはそれだけである。桃の缶詰りを開
    けると、すさまじい臭いが鼻をつく。中の果物は、どろどろの黒い液体と化している。いちばん奥に小型の冷蔵庫があるが今は空っぽだ。
  • オフィス:
    ここには、はこりをかぶったさまざまな廃品が雑然と置いてある。
    机の上に散らばっているだけでなく、床にも山積みで、引き出しや整理棚の中にもある。
    大半は古い陶製の箱、請求書や書類、台帳、乾ききったインクつぼなどである。
    散らかったこの場所を調べると、黄ばんだ宿泊台帳が数冊見つかる。
    台帳を開くと、宿泊客の名前と住所が記入され、かつてこの施設が繁盛し活気のあったことがうかがえる。
    いちばん古い記載は1863年からのもので、最新は1927年からだ。
    J.S.またはヨハン・シーグルという記述を探すと、彼の署名とドイツのケルンの住所が1924年8月のベージに記されている。
    時間をかけて、さまざまな古い請求書や書類、台帳を詳しく調べるなら〈図書館〉ロールをさせること。
    成功すれば1925年までさかのぼった台帳から、謎めいた書き込みを見つける(プレイヤー資料3)。
    さらに、1932年 の日付がある不動産譲渡書にも、同じく一風変わった条項が盛り込まれている。
    広いオフィスの壁には小さなベルがいくつも並び、天井裏を伝うワイヤとつながっている。
    これは以前使われていた呼び出しベル装置の名残で、
    部屋で宿泊客がひもを引くと、該当する部屋のベルが2回鳴るという仕組みだ。
    この仕組みは今でも機能し、ベルのひもはすべての客室に備え付けられているのが確認できる。
  • キーパーヘの注意:
    ホテルの不動産譲渡書に記された条項は、誰かが杉の木の周囲を掘り返さないよう設けられた。
    要はシーグルの遺体が見つかるのを防ぐためである。
    石狩アイヌの誰かに、この本が彼らの信仰の中で神聖なものなのかどうかを尋ねると次の回答を得る。
    キリスト教以前の部族の信仰では、あらゆる自然を神聖なものとして捉えている。万物は偉大なる精霊の本質を宿しているからだ。
    とはいえ近隣のほかの木と比べて、その木が特に重要ということはない。
  • キーバーヘの注意:
    シナリオ中、思いもよらないタイミングで客室207からベルの音が鳴る。特に客室7を「発見済み」でその部屋に誰も居ない時に起きる。
    原因不明のベルの音は、シナリオのクライマックスが近づくにつれ大きく鳴り響くようになり、狂気に陥った探索者にベル恐怖症(ベルの音が怖い)を引き起こす。
  • 物置および備品室:
    ほとんど空っぽで、あるものと言えば古いリネンやタオル、ろうそくを入れた箱、使い込んだモップやほうきである。
  • 客室(101~103 ):
    どの部屋も似たり寄ったりで、暖炉またはストープ、ベッドフレーム、いす、鏡台がある。そのほとんどに、ほこりよけの布が掛けられている。ただし、客室1および3は窓が割れて室内が外気にさらされている。そのため吹き込んだ落ち葉、ごみ、雨によって家具や内装が傷んでいる。
  • WC(トイレと浴槽):
    ヴィクトリア朝時代と20世紀半ばの設備が入り混じった部屋だ。
    水を流すと、使器が茶色に濁った水であふれそうになり、パイプが詰まっているのがわかる。
    そばに設置されている浴槽は、長年使われたため水垢がこびりついている。

2階

  • 廊下:受付ロピーから階段を上がると、真ん中の廊下に出る。
    東側の奥では、シャッター付きの窓から光が差し込んでいる。
  • キーパーヘの注意:廊下から東側の奥に目を向けて〈目星〉
    ロールに成功すれば北側の壁が廊下に5cmほど出っ張っているのに気づく。
    1925年にシーグルの部屋を封印し覆い隠すために偽の壁が作られたのだ。
    外からホテルの北東角を眺めると、明らかに「隠し部屋」があることがわかる
    (カーテンの掛かった黒い窓が2つ見える)。
    これがプレイヤーにわかるのはシナリオのかなり早い段階だろう。
    客室207から何度も呼び鈴が鳴るという事実も、シナリオを進める上で役立つかもしれない。
    探索者が気づかないのであれば石狩アイヌの作業員の一人が(適切な時点で)偽の壁だと見抜く。
    そして探索者のところにやって来ると、壁を取り壊してその奥にある部屋に行きたいかどうか尋ねる。
    探索者の興味を引くにはこれで十分だろう。
  • 客室204~6および208~211:
    客室204、206、210を除き、 ドアに鍵は掛かっていない。客室204、206、210の鍵はないため無理やり開ける(STRロール)か、
    (鍵開け)ロールに成功しなければならない。1階の客室と同じく、部屋には暖炉またはストープ、ベッドフレーム、鏡付き化粧だんす、いすがある。
    一部の部屋屋には衣装だんすもある。鋭い探索者なら、客室7に何があったのか疑問に思うかもしれない。
  • トイレ:1階のトイレと同じく、水を流すパイプが詰まっている。
  • 客室207:木でできた偽の壁によって隠されている。偽の壁はさほど時間をかけずに引き剥がすか、壊すことができる。
    その向こうには本物の壁とドアがあり、207という数字が取り付けられている。
    ドアには自い十字架が乱暴な筆使いで描かれている。描かれたのが数十年前なのは明らかだ。
    ドアには鍵が掛かっており、部屋の中に入るには〈鍵開け〉もしくはハードのSTRロールに成功する必要がある。
    あるいはキーパーの任意で、何か目に見えない力が働いているかのように、 ドアが閉ざされたまま動かないことにしてもよい。
    斧でドアをたたき壊すか壁を突き破るかすれば中に入ることができる。
    そうなった場合は、おそらく探索者が中に踏み込む直前、なぜかドアがひとりでに開く。
    部屋の中は散らかっている。
    ホテルのほかの部屋と違って、古くなったはこりよけの布が調度品に掛けられているが、この部屋を片付けた形跡はない。
    2つある窓には、ほこりまみれの濃い色をしたカーテンが掛かっている。
    はこりよけの布をめくると、画家の使う絵筆や古い絵の具のチュープ、イーゼルが見つかる。部屋の一角には油絵のキャンバスが何枚も積み重なって立て掛けられ、壁には数枚の油絵がくぎと麻ひもでつるされている。鏡付き化粧だんすの中には1920年頃の男物の衣類が収められている。仕立ての良い完全なよそ行きの服で、採掘者や荒野を旅する者の持ち物には見えない。「J.S」という頭文字の入ったトランクの中には何着かの衣類に加え、使い込まれた聖書(「ヨハネの黙示録」の部分が自然に開いてしまう)が入っている。
    絵を描く道具をざっと眺めて、ふたのない小さなガラス瓶が1本あるのに探索者は気づくかもしれない。瓶には黒に近い暗褐色の膜がこびりついている。〈知識〉ロールに成功するか、何らかの手段で分析すれば、その膜が乾燥した血液ではないかと思いつく。
    壁に掛かった油絵を確認するなら〈目星〉をロールさせる(ほこりよけの布を取り外すまではロールできないので注意すること)。ロールに成功すれば、1枚のキャンバスの後ろの壁に何か印がある。よく見ると印は文字のようだが、ほとんどキャンバスに隠れていて読めない。油絵を動かすとその文章が読める。
    「そして大地のちりの中で眠る者の多くが目覚める。ある者は永遠の生命を、ある者は恥辱と永遠の侮蔑を」。
    〈知識〉ロールに成功すると、この文言が聖書からの引用だとわかる(ハード以上の成功で、その探索者は旧約聖書の「ダニエル書」からの引用であることを思い出す)。
    この時、油絵を動かした探索者は、キャンバスの裏に別の作品が描かれているのに気づく。それは完成した絵ではなく、スケッチあるいは構図だけを描いたもののようだ。そこに描かれているのは火山(ニセイカウシュッペ山)が噴火し、燃え盛る炎が大勢の人々の頭上に降り注いでいる様子だ。不思議なことに描かれた人々は落ち着いた様子で、まるで自分たちに降りかかっている災害に誰も気づいていないかのようだ。この作品の中央には変わった幾何学模様が摘かれている。円の中に円が描かれ、円の中で・建した直線が奇妙な角度を形成している。この作品を見ると0/1正1気度ポイントを失なう。
    この部屋に飾られていたり重ねてあったりする残りの油絵を探索者がしっくり時間をかけてひととおり確認するのであれは20ページの囲み記事「シーグルの絵」を参照のこと。
  • キーパーヘの注意:
    ここはヨハン・シーグルの部屋だ。
    1924年から1925年の間、恐怖に駆られた入植者の暴徒たちに殺されるまでシーグルはここに滞在していた。
    探索者や作業員が一人でこの部屋にいるとシーグルの幻を見る可能性がある。幻は、壁のそばや化粧だんすの鏡の中、油絵の中に現れる。
    幻は音も立てす―瞬だけ見え、青ざめた表惰のヨーロッパ人男性の姿をしている。その口は叫んでいるかのようで、両目は真つ白だ。男性の肉体は酸を浴びたかのように燃え上がつている。目撃した者は激しい不安に満ちて、唐突に身も凍るような寒さを体験し、1/1D4正気度ポイントを失なう。
  • 主賓室:
    広い主賓室で専用のトイレがある。ほこりよけの布が外されて、古い、バネの飛び出たベッドのマットレスの隅に集められている。まるで鳥の巣のようだ。明らかに誰かがこの部屋で寝ていたようで、ほこりよけの布を寝具代わりに使ったのだろう。たしかに暖炉には燃え残りがある(他の場所にある暖炉はホテルが閉鎖された時に掃除されたままのようだ)。正体不明の客が廃墟となっていたホテルを暫くの間、避難所として使っていたのは間違いない。ほこりよけの布でできた巣を調べ、〈目星〉ロールに成功すれば、傷みの激しいおもちゃの笛を発見する。笛はこのシナリオで何の役割も果たさないがプレイヤーを混乱させるかもしれない。

シーグルの絵

客室207の壁を飾っている、あるいは積み重なっているキャンバスの油絵を見ると、その題材が多岐にわたっていることがわかる。
全部で30枚ほどの絵がある。うち7枚が部屋のあちこちに飾られ、残りは重ねて壁に立て掛けてある。
絵の多くは風景画だが、人物画も数枚ある。加えてシュルレアリスム風といっていい、悪夢のようなぞっとする幻想を描いた絵もある。
風景画はどれも上手に描かれ、ホテルのある土地の風景を余すところなく表現しているように見える。
数枚はまさに風光明媚な絵画と言えるだろう。どこの家にも飾られていそうで場違いな絵には見えない。
しかし、それ以外の絵は健全とは程遠い不気味な作品だ。
どんよりした空を覆い尽くす鳥の群れの影、間に染まり不吉さの漂うニセイカウシュッペ山、黒い空いつぱいに広がつた目玉の下のホテル。
いずれも底知れぬ不安が感じ取れ、目に見える景色の向こう側に何か邪悪なものが潜んでいるかのようである。
人物画はわすかしかない。1枚はヴィクトリア朝時代の服を着た老人で、自らののどを西洋かみそりでかき切る最中を描いている。
自殺する老人の表情は恐怖て凍り付いたままだ。
別の1枚には、血の気がない引き締まった体つきの若者らしき男性が描かれている。
悲鴫を上げているかのように口を大きく開け、両目は完全に自目をむいている。
以前にホテルの周辺でシーグルの幽霊じみた姿を見かけていた場合、若者の絵がシーグルの自画像だと気づいて0/1正気度ポイントを失なう。
異様な油絵は人物画より多く(重なつたキャンバスの陰に隠れて見えないが全部で7点ある)、熱に浮かされた時にでも見るような変わつた夢の数々を描いている。
美術の知識を持つ者なら、シュルレアリスムとヒエロニムス・ポスのぎよつとさせる作品の両方を掛け合わせたような、身の毛のよだつ絵に例えるかもしれない。
油絵のほとんどは単調な灰色の景色を描いているようだ。目や口が灰色の地面に溶け込んで描かれている。またこれらの風景のあちこちに、趣の違う絵が混在している。
幾何学的な形の集合体が描かれ、獣のように恐ろしい悪魔が人らしき姿をもてあそび、すさまじい拷間を加えている。
星型の頭をした悪魔は人の頭を切開し、人魚のような姿をした者はおびえた人々の皮膚を丸こと剥いでいる。
これらの異様な油絵すべてに、2匹の怪物が空中で巻物を掲げる様子が描かれており、その巻物には奇妙な言葉が未知の言語で記されている。
シーグルの絵をすべて見てしまうと1/1D3正気度ポイントを失なう。
重要なのは、7点の絵に描かれた悪夢の風景に記された文字が、儀式の一部となつていることである(プレイヤー資料4)。
文書を正しい順序に並べ、その言葉を声に出して唱える行為が、ホテルの地下にある地獄への間を閉じる鍵の一つ。
もう一つの鍵は、キャンバスの反対側に描かれている奇妙な幾何学模様を写し取ることで、これはシーグルの部屋の壁を飾る油絵に隠された情報である。
この幾何学模様はある種の防護として働き、できるだけ門に近い場所に描かなければならない。要するに幾何学模様を描いて文言を唱えれば、地獄への間を開じることができる(さらなる詳細は32ページ「シナリオの終了」参照)。
  • プレイヤー資料4 儀式の文言
    ングアアアアア ングアアアアア
    アザトース! イア!
    フイン・アイ イガク・ロゥル ングルクドルゥ
    イグアイイ イグアイイ トートグングア!
    ヨグ=ソトース!
    イブトゥンク ヘフィエ―――ングルクドルゥ
    エエ・ヤハアアァ エヤヤヤヤアアア
    ヒン・ラグガァル イェスタ イェスタ

地下室

ホテルの下には大きな地下室がある。れんがやセメントの壁、本で作られた部屋の仕切りといったものはすべてぼろぼろだ。
古ぼけてカピの生えた広告ポスターが壁のあちこちに張ってあるが、きっと陰気な地下室にわずかな彩りと活気を添えるためだったのだろう。
照明はない。探索者が地下に降りればすぐにわかるが、部屋全体に水が90cmの深さまでたまって、悪臭を放っている(大小のネズミの死骸が浮いてい
る)。
北側の奥には燃料にする薪を備蓄していたが、その多くは水に浮いて漂っている。壁で区切られたトイレはパイプが詰まっているため使えない。
ほかには空っぽの棚と、浸水で駄目になったりカビが生えたりした廃品の類いがある。まさにごみの山だ。
密封したままの、さびついた金属製の樽が1つ、雑多な廃品の山に紛れている。たるには死をもたらす恐れのある危険な粉末、生石灰(24ページの囲み記事「生石灰」参照)が入っていることを示すラベルが鮎ってあるが、ほとんど判読できない。たるは長い間ここにあつたため、浸水した地下室から運び出すと中身が漏れる可能性がある。そうなったら生石灰が水と反応してしまい、衣類など周囲の可燃物が発火する原因となる。
ホテルにあるすべてのトイレで水が流れない理由は、排水を地下室に隣接する汚水だめに流す本管が詰まっているためだ。地下室の壁の一部を取り壊して汚水だめを見つけられれば、本管の詰まりを解消できる。

南側の壁にはハ―シーのチョコレート、そしてボリス・カーロフ主演の映画「ミイラ再生」の大きな広告ポスターが張ってあるものの、どちらも壁から剥がれかかっている。

  • 地下室に10分以上いる者はPOWロールを行なう。成功すると、かすかなうめき声と嘆き悲じむ声を耳にする。
    この嘆きは周囲のあらゆる場所から関こえてくる。えたいが知れないこの音を聞くと1/1D4の正気度ポイントを失なう。
  • キーパーへの注意:探索者が地元の作業員の1人か2人に、地下を片付けるよう依頼することも考えられる。作業員は電線を引いて照明を設置し、浸水の原因を突き止め修理しようとする。いずれ作業員は南側の壁から浸水しているのを見つけるだろう。理想的にはシナリオ開始から1時間ほどたった時点が望ましい。次に作業員はれんがの壁を壊し、水漏れを突き止めてふさこうとするだろう。作業員が壁を壊し始めて隙間の奥に光が当たれば、取り壊している壁の向こうにもう1つ壁があり、そこに何か大きな壁画のようなものが描かれているのがわかる。シーグルは地下室の本来の壁に絵を描いた(下記「壁画」参照)が、あとに作られた偽の壁によって隠されたのだ(28ページ「地獄への間が開かれる」参照)。

重要なのは、探索者(や作業員)がシナリオの早い段階で偽の壁を壊し始めて壁画を見つけないよう、その発見を遅らせることである。最初は、電線と照明を持ち込むだろう作業員の一人がシーグルの幻を目撃する。恐怖のあまり逃げ出した作業員に、階下に戻るのを拒否させよう。しばらくすれ,よその作業員はいくぶん冷静になって地下に戻る(もしくは別の作業員と交代する)。シナリオの適切な時点になったら作業員の一人に水漏れの場所を見つけさせよう。作業員は地下室の南側の奥にあるれんがの壁を取り壊t始める。その時探索者が近くにいれば〈目星〉ロールをさせ、成功なら壁の背後にある壁画に気づく。そうでなければ作業員が気づいて探索者を呼び、壁画を見せる。あるいはキーパーは地獄の問から現れた死せるものの一体に作業員を殺させ、事態を複雑にすることもできる。その場合は、探索者が作業員の様子を見に行こうと思わないかぎり、偽の壁やその背後にある壁画は発見できない。また死せるものが出現すれ|よ少なくともその中の1体は地下室を離れ、ホテルをうろつき始める。はじめは地下室以外の場所で死せるものと遭遇させると、探索者の注意を地下室からそらすことができる。
壁画の発見後、キーパーは壁を取り壊すのにかかる時間を決める。
そうしてクライマックスに向け、イベントをタイミングよく起こしていく。
ひとたび壁画を見つけたなら探索者は事態を把握し始め、世界中で起こる出来事が何らかの形で壁画に描かれていることだと理解するはずだ。
なお、すでに地獄への間が開き始めているなら、死せるものはホテル内だけでなく、建物から出てその周辺地域にも出現できるため注意すること。

  • 生石灰
    吸い込むとせきやくしやみ、呼吸困難を引き起こすと同時に鼻の中を焼いてしまう。また腹痛や吐き気を催す。
    皮膚に付着すると、痛みを伴う火傷を負う。十分な量の生石灰を人間にかけると重度の火傷を負い、死に至ることもある。
    一般に生石灰として知られる酸化カルシウム(CaO)は、無臭で灰色がかつた白い粉末である。
    吸い込んだり皮膚の粘膜や日に入つたりすると、重度の炎症を起こすことがある。
    皮膚に付着すると、痛みを伴う火傷を負う。十分な量の生石灰を人間にかけると重度の火傷を負い、死に至ることもある。
    吸い込むとせきやくしやみ、呼吸困難を引き起こすと同時に鼻の中を焼いてしまう。また腹痛や吐き気を催す。
    重要なのは、生石灰は水と反応し周囲の可燃物が発火するのに十分な熱を発生させることだ。
    ゲーム上では、生石灰を吸い込むと1D6ポイント、皮膚の粘膜に少量が付着すると1D4ポイントのダメージを受ける。
    粉まみれになつた不運な人間は、生石灰が取り除かれるか死亡するまで毎ラウンド1D4ポイントのダメージを受け続ける。
    湿度の高い、あるいは濡れた場所で生石灰を投入した場合、キーパーは衣類や周囲の可燃物が自然発火するだけの熱が発生したと宣言してよい。
    そうでなければ(幸運)ロールを用いて、衣類などに火がつくかどうかを判断する。
    燃えている探索者は、火が消えるか死亡するまで毎ラウンド1D4ポイントのダメージを受け続ける。

壁画

壁画は長さが約1.8m、高さが約1.5mある(22ページ参照)。
淡い色彩で、ほとんとがグレー、黒、自を基調としている。
ただし描くものによっては、赤、オレンジ、黄といった、鮮やかな色が使われている。
この絵は、世界をジオラマ風に表現していて、7つある情景にはそれぞれ特定の場所が詳細に描かれている。
すべての情景に災厄や災害、恐怖が見て取れるのだ。これは荘厳な啓示であり、世界の終わりである。
荒廃した情景の中央にあるいびつな円環には7つのアイコンが配置されている。アイコンはそれぞれ7つの恐ろしい情景に接しており、各地の災害を模式化したもののようだ。
アイコンと情景は、下記のように区分される。ほとんどの探索者は各アイコンカイ寸けられた地域をだいたい特定できるが、キーパーははっきりしない地域の具体的な場所や都市を思い出させるために〈知識〉ロールを求めてもよい。

  • カリフォルニア州ロサンゼルス、コマース
    (大陥没が起きて町がのみ込まれる。また神話怪物が餌を求めて現れる。)
    都市が地面に開いた巨大な穴にのみ込まれつつある。穴から伸びる触手が逃げまどう人々を捕まえている。
  • ロシアのカムチャッカ半島、ベトロパブロフスク・カムチャッキー
    (半径32Km圏内にいる全員が突如として謎の死を遂げる。アヴァチンスカヤ山が噴火する。)
    辺りー面に死体の山がいくつも見える。火山から流れる溶岩が、死体の山を焼き尽くしそうだ。
  • ニューギニア島、パプア州の州都ジャヤプラ
    (火山が噴火する。クトゥルフの星の落とし子などの水に潜む怪物が餌を求めて現れる。)
    近くの火山の光で鮮やかな赤色に照らされて、巨大な怪物の一群が沸き立つ海から出現している。
    怪物は恐ろしい姿で、頭部は触手の塊のようだ。怪物は逃げ惑う人々をむさばり食らい、すべてを破壊し尽くそうとしている。
  • ニュージーランド、ケルマデック諸島
    (伝染性の病気が急速に流行し、島々からの広域避難が実施される。近隣のカーティス島は、火山の噴火によって破壊される。)
    描かれている部族の全員が伝染病に苦しんでいるようだ。その背後では火山が噴火している。
  • マリアナ諸島、サイパン
    (地震および集団パニック。火山が噴火する。)
    噴火している火山のふもとで、人々が互いに争っている。声も出せずにそれを見守る者、パニックになって逃げ回る者もいる。
  • チリ、バルパライソ
    (地震。食屍鬼が餌を求めて現れる。)
    地震が都市を襲い、大地が引き裂かれている。地面の裂け日から、背を丸めた人間に似た何かが現れ、死体を見つけては食らっている。
  • 北海道 ニセイカウシュッペ山 七つ星ホテル(・プリティッシュ・コロンピア州、七つ星ホテル)
    (死せるものが出現する。ニセイカウシュッペ山(ホードー山)が噴火する。)
    頂上の平らな火山が噴火し、落下する岩石が木々を破壊している。
    山のすそ野では無数の無表情の人々がこちらを向いて立っている。
    よく見ると人々の顔はドクロのようで、死者の大群にも見える。

壁画を眺める者は不安をかき立てられる。そしてアイコンを取り囲むさまざまな情景の細部を見つめ続ければ壁画全体がより恐ろしいものに感じられる。
壁画を見つめる者にはPOWロールをさせよう。成功なら、すさまじいうめき声ときが聞こえて1/1D4正気度ポイントを失なう。
ただしすでに死せるもののうめき声を聞いていた場合は3/1D4+2正気度ポイントを失なう。シナリオが進むにつれ、死せるもののうめき声と嘆きはより大きく、はっきり聞こえるようになる。

  • キーパーヘの注意:壁画はシーグルが描いたものだ。
    ホテルの以前の持ち主は、地下室にあるこの即興の不穏な作品を毛嫌いしていた。当初は壁から洗い落とそうとしたものの、どうしても壁画を消すことができなかつた。ついには絵を隠すための壁が作られた。そしていつの間にか、壁画の存在が忘れられたのである。

その他探索できる場所

ニセイカウシュッペ山

ニセイカウシュッペ山は噴火の可能性がある火山である。専門家はこの火山が最後に噴火したのはおよそ9千年前だと考えている。
山頂の平らな岩を氷帽が覆い、その下には氷で満たされた火口がある。標高は1,800mを超え、山容は圧倒的である。
ホードー氷河、ツイン氷河と呼ばれる2つの谷氷河が、南側を除く山肌を覆っている。(これはホード山の説明のまま)

ニセイカウシュッペ山を訪れる

探索者がホテルから北へ長く険しい道を進むと、山のふもとにたとり着く。ここでは硫黄の臭いが強く漂っている。到着した探索者には〈聞き耳)ロールをさせる。成功なら恐ろしい嘆きやうめき声、金切り声が聞こえる。それはまるで地獄に落ちた迷える魂の叫び声のようだ。
その音がとこから間こえてくるかはよくわからない。
その上、すでにホテルの地下室で嘆きを聞いたことがある者にとって、覚えのある不気味な音であり、1/1D4正気度ポイントを失なう(間く順番が逆の場合も同じである)。
山の斜面を登っていくと、この世のものではない叫び声が激しさを増していくがく正気度)ロールの必要はない。
山の頂上まで登ろうとする者は〈登撃)ロールを300m登るごとに1回行なう(合計6回のロールが2硬汎登ることは難しくはないが、激しい疲労を感じる。〈追跡〉や(ナビゲート〉ロールに成功すればもっと楽な登山道を発見できるかもしれない(必要な〈登攀〉ロールは3回で済む)。
シナリオが進むにつれ、この山の近くにいる者はゴロゴロと鳴る低い音を耳にする。これは地震動と火山活動の兆候があることを示している。
このような音はやがて、ホテルの中にいても聞こえるほど大きくなる。

昔の採掘者たちが寝泊まりした小屋

探索者がイスクット川近くの森を歩いていると、川沿いに点在する音の採掘者たちが寝泊まりした小屋を見かける可能性がある。
ホテルから最も近い小屋は、川の南岸にある。小屋は長いこと放置されており、朽ちた丸太の山と化している。
ただしキーパーが望むならいくつかの小屋が多少なりとも元の姿を残している。このような構造物は理屈の上では避難場所や隠れ家として利用できる。
この小屋は、ニセイノシキオマップ川で金が発見されたあとの1860年代に建てられた。金を探す者の大半は石狩川沿いに狙いを定めていたが、少数の大胆な者は内陸を目指し、石狩川の支流であるニセイノシキオマップ川をさかのぼつた。小屋には、そのような入植者の希望と夢の跡がまだ残っている。
一軒の小屋を調べてく目星〉ロールに成功すると、腐った革布に包まれた日記を見つける。名前のわからない入植者が1920年代に書いた日記だ。時間の経過と風化によって大半のページ蒼読めなくなっているものの、いくつかの短い段落なら読めるところがある。プレイヤー資料5「入植者の日記」を参照すること。

プレイヤー資料5「入植者の日記」

  • 1923年10月29日
    昨日はホテルの仕事だった。川の水が地下室に流れ込んでいる。
    どうにか壁を直して水漏れを塞いだ。何かと物入りなので金をくれるのはありがたい。
    ただ、またあの悪い夢を見た。地下室で仕事をさせられるたびに、あの地獄に落ちた夢を見てしまう。
    直治が呪われた土地にホテルを建てて成功する訳がないと先住民たちは言っている。たしかに直治の父親は成功しなかった。
    朝に自分ののどを引き裂いて、息子に発見されたのだから。こんな見捨てられた場所に私はどうして来てしまったのだろう?
  • 1925年4月2日
    われわれはやつを部屋から引きずり出し、大木まで連れて行った。
    やつはののしり声を上げていたが、黒魔術を警戒してきつく縛り上げた。
    呪いをかけられないように両手に二本のくぎを打ち込んでから、私はやつに生石灰をぶち撒けた。
    悲鳴が夜空に響き渡り、やらねばならぬ事に動揺する者もいた。
    神よ、赦したまえ。あれを終わらせねばならなかった。これで悪夢が消えるといいが……。

シナリオの導入

探索者のうち最低1人は、1遠い親戚から遺産を相続した者である。
その探索者(たち)は見知らぬ親族からホテルを譲り受け、新たな持ち主(たち)としてすべての権利を手にしている。
そして相続した建物を使って人生を変えようと考えた。
ホテルを改装し、再建して経営しようと計画したのだ。
探索者はこの予期せぬ突然の贈り物が自分たちの人生を好転させ、大きな成功をつかむチャンスだと信じている。
北海道、旭川に着いた探索者たちは、荒野を車を走らせてホテルに到着する。
探索者がシナリオ開始の前日に到着したことにすればもう落ち着いた頃であり、 石狩アイヌの作業監督と会って、改装作業に取り掛かる準備を済ませている。
探索者は昨日ざっと見て回っただけで、ホテルのあちこちをきちんと確認したわけではない。
現在、すべての資材はホテルの西端にある納屋に置いてある。
シナリオ開始の前日の夜、探索者はテントを張りそこで眠る(探索者が望めば、あとでホテル内のとこかの部屋に移動する可能性がある)。
導入の際、ホテルの再建は探索者が大きな成功をつかむチャンスであることを説明する。
ホテルを開業して観光客がたくさん押し寄せるようになれI資金も集まるというものだ。
ホテルの館内図(19ページのプレイヤー資料1)を渡す。
そしてプレイヤーに今後の作業について話し合ってもらう。
最初に手をつける仕事は何か、石狩アイヌの作業員にどんな仕事をさせたいかをプレイヤーに尋ね、話し合ってもらおう。
作業員は早い時間にやって来る。
あらかじめ作業内容を決めておけば、どんな仕事をしてもらうか探索者が考える間、作業員を立たせたままにさせるという気まずさを避けることができる。
以下は考えられる仕事の内容である。16ページの「ホテルの内部」を参照すること。

  • 地下室の水漏れを修理して排水する。
  • 地下室を含むホテル内部に配線を引いて照明をともす。
  • 家具や廃品を片付ける。
  • ほこりよけシートの布を補修する。
  • 窓の採寸を行なって交換用のガラスを注文する。
  • 木で作られた外壁や内壁を剥がして交換する。
  • 外の草木を刈り取る。

地下室の浸水を引き起こした水漏れを修理するのが優先事項である。
現地の作業員の何人かにはできるだけ早く水漏れに対応してもらい、その間、残りの作業員には探索者が判断した、ほかの仕事をしてもらう。
ほとんどの場合、探索者は作業員に割り振った仕事を任せ、その間に敷地内をじっくり見て回ることになる。

シナリオを進める

このシナリオをプレイするコツは、プレイヤーにイベントや手掛かりを着実に提供し、それらの情報を組み合わせれば全体像が把握できるようにすることである。
サーストン(ラヴクラフトの「クトゥルフの呼び声」における語り手)のような立場に探索者を当てはめるとわかるだろう。
謎を解いたり地獄への間を開ざしたりするための手掛かりは分散させ、答えをすべて一度に出していないか確かめよう。
このシナリオはゆっくり物事が進むにつれ、小さな出来事から大きな事態に発展していくようにするとよい。
シナリオが世界の終わりというクライマックスを迎える可能性があるため自由度の幅が大きく、思い切ったやり方でキーパーは物事を展開できる。
プレイヤーが特定の手掛かりや場所に目を向けるのが早すぎる場合は、ほかの出来事や遭遇を起こすことで注意をそらしたり混乱させたりできる。
起こりうるさまざまな物事はイベント」にまとめられており、キーパーは現在の状況や経過時間に応じてそれらを拾い上げたり選択したりできる。
これらのイベントは、なるべく「ニュース速報」にまとめられた記事と関連付けるといい。キーパーは「イベント」と「ニュース速報」の2つから、ふさわしいものを選んで使う。
このシナリオはサンドボックス形式となっている。場所(および場所に関連したイベント)や数人のノンプレイヤーキャラクター(NPC)はシナリオの「味付け」だ。
それ以外のさまざまなイベントやニュース記事が「肉」となる。
グームプレイの中で「謎を解く」瞬間は欠かせない。
その瞬間、プレイヤーは起こっている出来事がより広い世界と結びついているのを知る。
そして自分たちの行動で、人類の最期を防ぐことができるのを理解するのた。
これこそプレイヤーとその探索者が、地獄への門を閉じようと奮い立つ力となる。
ゲームが進んでなお、プレイヤーが全体像を把握しきれていない場合は、代わりにレブネシュ牧師から情報を伝える。
複雑な事情、例えば探索者の1人が門の陰険極まりない力に影響されたり(「門にとりつかれる」参照)、死せるものがホテルをうろつき回ったり(「地獄への門が開かれる」参照)ということ力重なると、探索者に問題や困難が起きる。
そうなったら探索者は謎を解明しつつ事態を切り抜け、自分の身を守らねばならない。

調査

★初期の調査(ホテル到着前後で実施てきること)
技能ロールの必要なく、以下のことがわかる。

  • 相続の手続きは、仙台を拠点とする勝田芳雄法律事務所が行った。
  • 亡くなった親族の氏名は萬田有栖である。秋田県仙台市に住み、直近の家族はいなかった。
  • 萬田の遺言に、探索者以外の遺産相続者の名前はなかった。

★2回目の調査(ホテルで実施できること)
〈図書館〉ロールの成功で、以下の情報が見つかる。

  • 萬田有栖が秋田県仙台市に住んでいたことを示す書類や記録はない。
  • 家系図サイトを使って先祖を探したものの、探索者は自分の血筋の中に萬田有栖という名を見つけることができなかった。
  • 勝田芳雄法律事務所は3日前に営業を停止したようだ。事務所の電話にかけても鳴りっばなしで、事務所やその提携先についての詳しい情報は得られない。

キーパーヘの注意:遺産相続の話は仕組まれたものだ。萬田有栖(ジェスロ・アリス・マンデン)という人物はおらず、法律事務所は表看板にすぎない。探索者をホテルに向かわせ、そうと知らずに地獄への間を開かせるための策略だつたのである。本物のカルトの一員がこれら架空の人物に扮していたのか、それとも説明のつかない何か闇の力(門の力なのかもしれない)が悪意ある宇宙的なたくらみの手先として探索者という手駒を集めていたのか。すべてはキーパーの判断に委ねられる。

門にとりつかれる

ホテルに滞在している間、シーグルは地獄の間の悪影響に支配され始め、常軌を逸した行動や悪事を働くようになった。
それが引き金となり、しまいには魔女の仲間だと恐れた人々によって彼は殺されてしまった。
ただ殺される前、シーグルの精神は門の力に対抗しようとして混乱状態に陥り、地獄の門を開じることのできる手掛かりをキャンバスに描く。
キーパーの任意で、探索者の一人を門の魔力の支配下に置くことを検討するといいかもしれない。
どのキャラクターを選ぶのかは最終的にキーパーが決めるが、おそらくPOWの最も低い探索者が良い選択となるだろう。
キーパーはプレイヤーに、自分のキャラクターが門にとりつかれていると実際に伝える必要はない。悪事を働いたり、lまかの探索者の邪魔をしたりする行動は無意識のうちに起きるからだ。
多分そのキャラクターが眠っている時だろう。そのような行動は失敗につながるものでなくてよい。実際のところ、さりげないくらいでちょうとよい。
例えば物を動かしたり、ほかのキヤラクターを部屋に閉じ込めたり、気をそらそうとしたりする、などだ。
これらは門を開じるのを妨害するだけでなく、疑惑の種をまいて偏った認識を広めることもできる。
また重要なのは、門にとりつかれた探索者が地下室の壁を壊し始め、門を開こうとしてもよいということだ。
それと同じくらい効果的な選択は、シナリオの中で暗躍する探索者を設け、その役を誰よりも楽しんでくれるプレイヤーを選ぶことである。
この場合、裏で暗躍するプレイヤーは、門の邪悪な意り思にとりつかれていること、ほかの探索者の利益に反する行動をとったはうがよいこと、門が開いたたままとなるよう立ち回ることをひそかに教えられる。
これで、ほかの探索者にとって解決はより困難となる。やつてのけるにはちょっとしたこつがいるものの、適任のプレイヤーとキーパーからの良い指示があればまったく新しい次元の体験を味わえるだろう。
必要ならキーパーの判断で、門にとりつかれた探索者が邪悪な行動をとる状況に追い込まれた場合、ハードのPOWロールに成功すれば門の邪悪な意思を振り払うことができるとしてもよい。
クライマックスが近ければこのダイス・ロールをより高い難易度であるイクストリームにしてもよい。
それ以外の選択として、狂気に陥った探索者が少しの間だけ門にとりつかれるということも考えられる。その場合、狂気の発作に陥った探索者の行動は、門を守ったり隠したりすることに限定されるだろう。

地獄への門が開かれる

キーパーは、作業員(もしくは探索者)が地下室の偽の壁を突破した時点で、地獄の間がどのくらい開いたのかを決める。
最初は小さな亀裂が入る程度にすぎないが、シナリオ中は進行に応して、直径3m以上の穴になるまで広がっていく。
門が開けばキーパーは望む時にいつでも、死せるものをホテル周辺に出現させることができる。
怪物が実際に門を「通り抜ける」必要はないが何体かにはそうさせるといいだろう。
死せるものは最初1~2体で現れ、次に3~4体の一団、それ以降もとんとん数を増していく。クライマックスではホテル全体やその周辺地域が死せるものであふれかえっているはずだ。
前に述べたように、シナリオの早い段階で壁画や門を発見させないほうがよい。
発見されそうになったら注意をそらそう。何かホテルで不思議な現象を起こしたり(後述の「イベント」参照)、ホテルの別の場所に1体または数体の死せるものを出現させて探索者をおびき寄せたりするのだ。
注意をそらすのにことことく失敗した場合は、死せるものの集団を使い、探索者が偽の壁にたどり着くのを阻止する。
死せるものの不可解な外見と攻撃は、次にどうするかをプレイヤーに考えさせ、探索者を地下室から遼ざける時間稼ぎとなるはずである。
そして探索者が地下室で壁画や門を見つけ出す絶好のタイミングだとキーパーが判断した時、死せるものはその場からすぐ去るか、あるいは単に消えたとしてよい。
死せるものは後からでも突然現れて、探索者を門から追い返すことができる。死せるものに関する詳細は、シナリオの最後にある「NPCと怪物」を参照すること。
シナリオのクライマックスでは選択肢の一つとして、探索者が地獄への間を通ることを認めてもよいだろう。
門を抜ければ何か良い解決策が見つかるとプレイヤーが思うかもしれない。問を通って「向こう側」に行くには1マジック・ポイントおよび1正気度ポイントのコストが必要である。
到着すると、そこに見えるのは生命の存在しない荒れ地だけだ。
灰一色の不毛の景色に、煙と霧が渦を巻いている。黒ずんでねじ曲がった木々には死体がつるされている。その胴体は枝に突き刺さり、不気味な飾りのようだ。
遠くからは嘆きやうめき声、それ以外の何か安心できない音も聞こえてくる。空気は凍てつくような寒さである。
濃い霧の中から、暗い影が見え隠れしたかと思うと探索者のほうへやって来る。
探索者の生命力をうらやんで死せるものが寄ってきたのだ(キーパーの裁量で、それ以外の神話的恐怖もやって来るだろう)。
すぐに探索者が引き返すなら、ホテルの地下室まで逃げ帰ることができる。
そうせずにこのまま進めば、探索者はこの「地獄」の次元で、迷うか死かという危険にさらされる。
それがどのような展開になるかはキーパーに任されている。(親切なキーパー向けの)選択肢の一つは、探索者が円を描くように歩き続け、ホテルに戻る出口にたとり着いたとすることだ。
このように、地獄に来た間違いに気づいた探索者の脱出手段は残されている。
もちろん、生き残った探索者を通って移動し、この暗黒の次元に問し込められてしまったことに気づくという結末も考えられる。
探索者を「地獄」に閉し込めてしまい、このシナリオの続きをプレイするアイデアについては33ベージの「結末」を参照すること。

地獄の門のその向こう

ただ行って返ってくるだけでは芸が無いのでこちらに地獄の門の向こうを拡張する(風祭)。
ゲート1~7の光景は、ヨハン・シーグルの絵で予告されていたものだ。ちらっと見ただけではSANCは不要だが、良く状況を確認するのであればSANC:0/1d4
目星成功:よく見ればゲート7以外はあまりに小さく薄い鏡のようなもので、破壊しようと思えばたやすく破壊できそうだ。
なお、ゲート7以外は通り抜けることが出来ない。どうやら移動のための門ではなく遠見のためのもののようだ。
森4x4.png
①*ゲート7:北海道 ニセイカウシュッペ山:頂上の平らな火山が噴火し、落下する岩石が木々を破壊している。山裾では多数のドクロの人間達がうごめいている
②気がつけば闇に紛れて多くの死せる者が周囲を取り囲んでいる。発砲すれば集まってくるだろう。BD1で半数以上が隠密に成功すれば死せる者の群れを撒くことができる。
③何かを守っているかのように、大きな死せる者が前方を塞いている。通りたければ戦闘だ。
④特になにもない細い通路がつづいている。
⑤特になにもない細い通路がつづいている。あまりに何も無いので本当に前に進んでいるのか確信が持てなくなる。SANC0/1
⑥*ゲート1:カリフォルニア州ロサンゼルス、コマース:第一のニュース現場。地面陥没とその奥から触手が溢れ出し、人を巻き込んで捕食していく
⑦真ん中に大きな何者かが氷漬けになっている。氷が黒く濁っていて全体像が見通せない。よーく覗き込むなら目星/成功すればSANC1d4/1d10&クトゥルフ神話1P上昇。なにかに気がついてしまったようだ。
⑧真ん中に大きな何者かが氷漬けになっている。氷が黒く濁っていて全体像が見通せない。よーく覗き込むなら目星/成功すればSANC1d4/1d10&クトゥルフ神話1P上昇。なにかに気がついてしまったようだ。
⑨真ん中に大きな何者かが氷漬けになっている。氷が黒く濁っていて全体像が見通せない。よーく覗き込むなら目星/成功すればSANC1d4/1d10&クトゥルフ神話1P上昇。なにかに気がついてしまったようだ。
⑩*ゲート2:ロシアのカムチャッカ半島、ベトロパブロフスク・カムチャッキー:半径32Km圏内にいる全員が突如として謎の死を遂げる。アヴァチンスカヤ山が噴火する。
⑪真ん中に大きな何者かが氷漬けになっている。氷が黒く濁っていて全体像が見通せない。よーく覗き込むなら目星/成功すればSANC1d4/1d10&クトゥルフ神話1P上昇。なにかに気がついてしまったようだ。
⑫*ゲート3:ニューギニア島、パプア州の州都ジャヤプラ:火山の光で鮮やかな赤色に照らされて、巨大な怪物の一群が沸き立つ海から出現している。怪物は青白く、口から触手をはやしている蛸のような頭部に筋骨粒々の四肢、背中に蝙蝠のような翼を生やしている。
⑬*ゲート4:ニュージーランド、ケルマデック諸島:部族の全員が伝染病に苦しんでいるようだ。その背後では火山が噴火している。
⑭*ゲート5:マリアナ諸島、サイパン島:第二のニュース現場:噴火している火山のふもとで、地震がおこり揺れている。人々は皆鬼の形相で互いに争っている。
⑮*ゲート6:チリ、バルパライソ:地震が都市を襲い、大地が引き裂かれている。地面の裂け日から、背を丸めた人間に似た何かが現れ、死体を見つけては食らっている。
⑯遠くで何者かがうごめいている。10から20mはあるだろうか。闇が深くよく見えない。が、遠巻きに眺めるだけでなにか恐ろしいモノのような気がする。SANC0/1d6。さらに近づくのであれば(3回ほど念を押せ)SANC1d10/1d100ニャル本体にまみえてしまう。

イベント

27ページの「シナリオを進める」で書いたように、以下のイベントは恐怖と緊張を高め、通常は騒ぎに探索者を巻き込んでドラマを生み出すため用いるものである。
イベントは小規模なものから使い、シナリオが進むにつれて規模や衝撃を大きくするとよい。
それらの起きる順番はキーパーが決める。
以下に列挙したイベントをすべて使う必要はない。これらはあくまで提案であり、キーパーの発想を刺激するものだからだ。
列挙した中から好きなものだけを選んでもよいし、キーパーの考え出したものがゲームに最適な場合もあるだろう。
言うまでもないが、地下室の壁が突破されれば地獄への門は開き始める。その役目は作業員または探索者のどちらかが担う

小規模のイベント

  • 鳥が窓ガラスに激突し、落下して死ぬ。
  • 部屋の片隅に昆虫が群がっている。
  • 悪臭が漂うが、どこから臭ってくるかはわからない。
  • 鏡や窓ガラス、壁などに、ぼんやりした幻のようなシーグルの顔が一瞬浮かび上がる。
  • 事務所で客室207からの呼び出しベルが鳴る。
  • 死せるもののうめき声と嘆きが聞こえる。0/1正気度ポイントを失なう。
  • ドアや窓が勝手に開いたり閉まったりする。
  • 事故が発生する(材木が割れる、何かが落ちてくる、など)。DEXロールに失敗すれば1ポイントのダメージを受ける。

中規模のイベント

  • 事務所で客室207からの呼び出しベルが断続的に鳴る。
  • シーグルの遺体の幻影が、客室の壁にくぎで打ちつけられている状態で見える。・
  • ホテルの周辺にカラスの大群が集まる。
  • プラックウィドウ(クロゴケグモ)に噛まれる。1ポイントのダメージを受け、1D4時間の間は痛みと嘔吐、筋収縮がある(命に別状はないが不快である。その間、キーパーは何らかのダイス・コールに対してペナルティー・ダイスを与えることができる。)。
  • 事故が発生する(電動工具がひとりでに動き出す、はしごから落下する、など)。〈回避)かDEXロールに失敗すればlD6ポイントのダメージを受ける。
  • 古びた5寸くぎが誰かに向かって突然「飛んでくる」。〈回避〉ロールに失敗すればlD4ポイントのダメージを受ける。このくぎは、ホテルの外に立つ杉の本に刺さったものとまったく同じである。
  • 死せるものの1体がホテルの多皆をさまよい歩き、近寄ってくる者を攻撃する。34ベージの「死せるもの」を参照すること。
  • 遠くに見慣れない男たちが現れ、ホテルに向かってゆっくり歩いているように見える。死せるものの小さな一団が門に引き寄せられているのだ。死せるものは近寄ってくる者を攻撃する。34ページの「死せるもの」を参照すること。

大規模のイベント

  • 雷鴫がとどろき稲光がひらめく暗い空の下で、暴徒にホテルから引きずり出され、杉の木にくぎを打ち込まれて生石灰を浴びせかけられたシーグルのぼんやりした幻が見える。
    その幻は、音やにおい、芸術家の恐怖すら描き出すかのようだ。1/1D4正気度ポイントを失なう。
  • 1人の作業員の遺体が地下室の水面に浮かんでいるのが見つかる。遺体の両目は溶けているかのように自くなっていた。1/1D3正気度ポイントを失なう。
  • ホテルの壁から血がどくとくと流れ出す。0/1D3正気度ポイントを失なう。
  • 現地に生息する野生の生き物が、ホテルから出ようとする者を襲う。
  • さまよい歩く死体である死せるものが数を増し、地下室やホテルの周囲、その外にまで現れる。34ページの「死せるもの」を参照すること。
  • 脱出を阻む死せるもの:怪物が山道に集まって森や山をうろつき回る。逃げようとする者には誰でも猛然と襲いかかる。何体か川にも立っている。
  • 事故などのイベントは、探索者だけでなく、 アイヌの作業員を巻き込んでよい。作業員たちをイベントに巻き込むのは、探索者の注意を引くためた。

ニュース速報

キーパーは以下の大災害に関するニュース放送を、ゲームの要所に挟んでみよう。
そうすればブレイヤーが世界を揺るがす出来事に直接巻き込まれているのに気づき、実感してくれる一助となるだろう。
最初そのような報道は、断片的な「周囲にある音声や文字」にするとよい。
例えば近くで流れるトランシスタラジオの放送を聞いたり、作業員たちの雑談が耳に入ったり、衛星電話で受信した電子メールに書いてあったり、インターネットのニュースを目にしたりする。
その後、もっと詳しいニュースが直接探索者に伝わるはずだ。
例えばレプネシュから話しかけられたり、友人から世界中で次々と発生している災害についての電話や電子メールがあったり、ラジオニュースを聞くと言つた時にちょうと流れたりする。
これらの報道は意味ありげで、日に見える形にしてはしい。
そしてプレイヤーが、これらの手掛かりをつなぎ合わせられるようにするのだ。なお怪奇現象や怪物に関する報道は漠然として不確かな、信じられないようなものにすること。
以下に列挙しているニュース記事は、好みの順に伝えてかまわない。例えば、次のようにしてはどうだろうか。最初のうちは短い音声として伝える。
ニュースがふと耳に入ってきたり、後ろで流れる雑音に紛れ込んでいたりするのだ。ただしその後はさらに詳しい報道として提示する。
それまでには、探索者は外界からのニュースにしっかり耳を傾けるだろうと想定されるからだ。
これらの情報を探索者に渡すタイミングは決まっていない。キーパーは自分が適切と思う時に情報を差し挟んでいくようにしよう。
その際、シナリオがクライマックスに近づくにつれて渡す回数を多くしたり、被害の大きさを強調したりするのを忘れないように。

ニュース報道

  • 「道路が陥没し、カリフォルニア州コマースの交通は大混乱に陥っています」
  • 「サイパンで_火山噴火 死者数千人規模か」
  • 「ロシア東部の地震活動について、現地の科学者が警告を発しました」
  • 「カリフォルニア州コマースで暴動が起きています。陥没穴に建物が崩落したようです」
  • 「太平洋プレートおよびインド・オーストラリアプレート沿いで頻発する活動に、火山学者が警告を発しています」
  • 「ニューシーランドの南島で大量出国が相次いでいます。疫病は太古の呪いが原因とのことです!」
  • 「コマースのダウンタウン全体が大穴にのみ込まれています。未確認の情報によりますと、陥没穴からイカのような経物が現れるのを見たという目撃者からの証言が等せられています」
  • 「続いて急上昇のニュースです。北マリアナ諸島で最大の島サイパンにおける群発地震によって、島全域の建物や道路にまで被害力i及び、集団パニックが発生しています」
  • 「アヴァチンスカヤ山の噴火に伴い、ロシアのカムチャツカ半島は非常事態宣言下にあります。この火山はアメリカとアジアの両大陸にまたがる環太平洋火山帯の一部です」
  • 「サイバン特派員のジェイムズ・レッドバーンと中継がつながっています。(音声中断)ジェイムズ、間こえますか?(泣き叫ぶ音声)はい、どうやら接続に問題が発生しているようです……」
  • 「ニューギニア島のパプア州から緊急速報が入りました。火山の噴火により、州都ジャヤプラに住む10万人以上もの命が奪われたそうです」
  • 「このビデオ映像は、生存者の一人が携帯電話で撮影したものです。巨大なクリーチャーのように見えるものが海洋から現れ、ニューギニアの島に流れる溶岩の上を歩いています」
  • 「火山の噴火によってカーティス島が破壊されたという情報が入っています。ロシアのカムチャツカから届いた報道を受け、一部の科学者は地震活動が環太平洋火山帯と関連しており、さらに悪い事態が起こりうると警告しています」
  • 「チリにおける地震発生後、人々が負傷者や死者を食べているという情報が入っていますが、電話では確認を取れませんでした。目撃者の一人がインターネットに満騰した内容によると人狼のような男たちが地面から現れて死体の肉をむさぼり食っている。警察も恐怖のあまり逃げ出している」とのことです」
  • 「コマースの陥没穴は前触れだったのでしょうか。カリフォルニア州でマグニチュード9の大地震が発生しました」
  • 「イエール大学のマーク・ウェルズ教授と通話がつながっています。ウェルズ教授、この多発する火山活動と地震についてお話しいただけますか」(音声中断)
    「わかりましたサラ。まずすべての活動は、環太平洋火山帯と呼ばれる地域に集中しているようです。地殻変動と噴火が激しさを増すにつれ、連鎖反応を起こしているように見えます。巨大な動きが観測されていますが、これは歴史上のどの記録より大きなものです。太平洋プレート全体が動いて、とてつもなく大きな風呂の栓と言いますか、まるで太平洋の底が抜けそうな状態になつているのです。もしそんなことが起きれば大量絶減という事態にもなりかねないでしょう」

キーバーヘの注意:各地で発生する噴火や地震の影響で、太平洋の盆地の底が抜けてしまうという事実を探索者がよくわかっていない場合には、以下の文章を使うこと。
太平洋全体で噴火が起き、大変動をもたらす規模の津波が荒れ狂つている。これは世界の終わりなのだ。

シナリオがクライマックス近くであれば電話をかけようとする探索者は時折、次のようなメッセージを耳にするかもしれない。

  • 「このメッセージは自動音声です。落ち着いて避難してください。当局は状況を把握しています。救助はすぐに到着します」

もちろん、このメッセージはなぐさめ以外の何物でもない。助けなどやって来ない。世界の終わりなのである。