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Last-modified: 2023-04-10 (月) 10:59:32

海賊旗に口づけを

常破兄弟【新クトゥルフ神話TRPG】海賊旗に口づけを
海域ロール

01導入

[シーン:砂浜→甲板]
 連日猛暑が続く8月、探索者達は海へ来ていた。
観光、遊泳、労働、涼を求めて……理由はそれぞれだろう。
訪れて数時間ほど経った頃だろうか……朝から快晴だったが雲行きが怪しくなり、気が付くと急な大雨に襲われる。

 雨風をしのげる場所を探していた時だった。
海の方から砲撃の様な爆音が鳴り響く。
音の鳴る方を見ると、水平線から何かが近づいてきているのが見えるだろう。
雨のせいではっきりとは見えないが、それが帆船である事に気が付く。
目をそらそうとしてもそらせない、その場に立ち尽くしていると意識が遠のいていく。
………………
 耳に届く波の音で目を覚ます。
先程までとは打って変わり太陽が力強く貴方達を照らす事だろう。
倒れこんでいる貴方達を数人の男が珍しそうに覗き込んでいる。
立ち上がろうとして気が付く、貴方達は先程までいた場所から甲板の上にいる事に。
更に辺りを見渡すととあるものが目に付く、メインマストに高々と掲げられた海賊旗の存在に……

02邂逅!モーガン海賊団

[シーン:甲板]
 目を覚ました探索者達は困惑しつつも現状を理解する事だろう。
先程まで海に居たはず…それなのに見知らぬ船の上にいるという事実は、探索者達に何とも言えぬ不快感を与える。
【SANチェック】成功0で失敗1D3
 探索者達を取り囲むように海賊船の船員達が立っており、ある者は物珍しそうに、またある者は警戒心をむき出しにして眺めている。
「こいつらいつの間に船に……」
「さっき俺が甲板にいた時はいなかったぞ」
「じゃあ、何だ?急に出てきたってのか?」
その様な会話が探索者達の耳元に届くが、とある人物の登場で船員達は静かになる。
「どうした?随分と騒がしいが」
声がした方に視線を向けると、そこに立っていたのは、オールバックの水色の髪。
そこに巻かれた黒いバンダナ。
程よく焼けた肌に、吸い込まれそうな輝きを持つ黄金の瞳。
他の船員達と比べても頭一つか二つ出ている高身長な男が探索者達を見下ろしていた。
「ああ、ジョンか、実は……」
と言った感じに船員達がジョンと呼ばれる男に説明し始める。
【聞き耳】で判定を行う。
成功した場合、

船員達の話が断片的ではあるが聞き取る事が出来るだろう。
内容としては以下の通り。
「こいつら…例のあいつと似たような見た目だな」
「もしかして、関係者か?」
「となると俺達の船にやって来る理由は何だ?」
聞き取れた内容から推測すると、前にも自分達の様な存在と会った事がある様な雰囲気を感じ取れるが、
それと同時に少なくとも歓迎はされていないことも分かる。

双方戸惑いを隠せずにいるとジョンと呼ばれる男が口を開く。
「とりあえず…お前達の処遇はメアリーに任せる。付いて来い」
そう言って探索者達の達を船内へと案内する。
歓迎はされていないが、今のところ敵意をジョンを含め、他の船員達からも感じる事は無い。
ただ、暴れたり、反抗した場合はその限りではないだろう。

03交渉!船長の想い

[シーン:船長室]
 案内された部屋には、真ん中に机が置かれており、その上には海図らしきものが広げられていた。
壁には先程甲板で目撃した海賊旗がポスターの様に貼られている。
そこにこちらに背を向け、その海賊旗を見つめている者がいた。
「メアリー、連れてきたぞ」
ジョンがそう呼びかけると、メアリーと呼ばれている人物はゆっくりと振り返る。
「ありがとう、ジョン……なるほど、君達がね~」
「確かにここらじゃ見ない格好だ、どちらかと言うとあいつ側かな」
「色々聞きたい事はあるんだけど、まずは自己紹介を」
「私はメアリー=モーガン。このモーガン海賊団の船長よ」

 そこには腰まで伸びた銀色の髪。
海賊旗のマークが書かれた三角帽子を被り、小柄な体系には似つかない大きめのマスケット銃を腰に携えた少女の姿があった。
年齢は15~17辺りだろうか。
このようなか弱い少女が甲板にいた屈強な男達を従えている船長なのかといささか疑問に思う事だろう。
だが、ここが船長室であることを踏まえて考えると、疑問は解消されるはずだ。
間違いなく目の前にいるこの少女が「船長」
なのだと。
「さて、聞きたい事は色々あると思うけど、先にこっちの質問に答えてもらうよ」
そう言いながら船長もといメアリーは探索者達に近付いてくる。
「君達……この時代の人じゃないでしょう?」
この質問に対して【心理学】で判定を行う事が出来る。
成功した場合

「メアリーは確証も持ってこの質問をしている事が分かる。ただ、その確証が何かは分からない」

という事が分かるだろう。
【アイデア】で判定を行う。
成功した場合、

先程メアリーが「あいつ側」と誰かを思い浮かべながら発言していたこと。
甲板での聞き耳に成功していた場合、船員も誰かを思い浮かべた発言をしていた事を思い出す。
恐らくだが、彼女達は自分達と似たような存在に出会った事があるのではないか。
そう推測する事が出来るだろう。

「君達がこの時代の人間じゃない事や、急に甲板に現れた事に関して驚いてないと言えば嘘になるけど…そこまで衝撃的な事じゃないのよね」
「だって……初めてじゃないからね。こういったこと」
「とりあえず、君達の名前を教えてくれるかな?」
そう言って探索者達に自己紹介を求めてくる。
これ以降メアリーや他のNPCも探索者達の事を名前で呼んでくる事だろう。
続けてメアリーはこの様な提案を探索者達に投げかける。
「私達は貴方達の様な…そうね、便宜上【旅人】(トラベラー)と呼びましょうか」
「その存在を知っているし、なんなら今その人を探している」
「もしかしたらその人なら何か知っているかもしれない。
つまり、私達も貴方達も探している人物は同じ」
「だから貴方達……この海賊船の船員にならないかしら?」
 メアリーの話を要約すると、自分達はとある理由からその【旅人】を探している。
【旅人】はおそらく探索者と同じ時代から来た人物で、何かを知っているかもしれない。
探すための船と、この時代で生き残るための術を教える。
その代わりにこの船で船員として働きつつ、この船に命を預けること。
以上の事を告げてくる。
互いの共通の目的の為に命を預け合う事を要求してくる。
改めてメアリーは探索者達に尋ねてくる。
「私達と手を組む?それとも船から降りる?」
探索者達が手を組む事に同意すると、メアリーは嬉しそうに部屋の奥の壁に掛けられている海賊旗のとこへ行き、それを取り外し、こちらへ戻ってくる。
海賊旗を自分の右手に巻き付け、探索者達の前に突き出してくる。
「じゃあ、今日から私達の仲間って事で、この旗に忠誠を誓ってもらおうかしら。
この旗の元私達は一つ、皆平等よ」
「忠誠の証として……この海賊旗に口付けを」
探索者達が旗に口付けをすると、メアリーは旗を元の場所に戻すと、改めてこちらを振り向き、高らかにこう叫ぶ。
「ようこそ!モーガン海賊団へ!」

04抜錨!我ら海賊団

[シーン:船長室]
 船長こと、メアリーは嬉しそうにそう叫ぶ。
しかし、その後ろで怪訝そうな顔を浮かべる、ジョンと呼ばれている男。
一つ溜息をつくと探索達に歩み寄ってくる。
「まあ、メアリーがそう言うなら文句はない。改めて、俺はジョン・エイヴリー。ジョンって呼んでくれ。一応この船の副船長だ、よろしくな」
そう言って彼は握手を求めてくる。
一通り話し終えると、メアリーがこう続ける。
「さて、他の奴らにもお前達を紹介しないとな」
そう言いながらメアリーは船長室を出ていく、その足取りは心なしか嬉しそうだ。
それに対して探索者達の後ろからジョンが口を開く。
「今までほとんど手掛かりの無い状態で航海してきたからな、お前達と言う手掛かりになりそうな連中に出会えて嬉しいのだろう」
「もしくは……あいつはまだまだ子供だ、仲間が増えたのが純粋に嬉しいのかもな。どっちでもいいか、とりあえず俺達も甲板に行くぞ」
そう言い残し、ジョンも船長室から出ていく。
【目星】で判定を行う。
成功した場合、船長室の机の上に置かれているメモを見つけることが出来る。

・【旅人】時代を超える。杖を持ち、両手に白い手袋。
・私の父には「ユウキ」と名乗っていた。
・何かを探して父と海へ出た。それ以降父は行方不明。
・しかし【旅人】は目撃されている。それらの下に塗りつぶした様な痕跡がある。

もし先程の【目星】をハード以上で成功をしていたのなら、塗りつぶされる前に書かれていた内容を読むことが出来る。
内容は以下の通り。

・もう一度……お父さんに会いたい。

メモを読み終えると甲板の方からメアリーの声がする。
「おーい、何してるの~。早く早く!」
これ以上船長室に居続けるのも不自然だろう。
探索者達は甲板へ向かうことになる。

05航海!挑むは母なる大海原

[シーン:甲板]
 甲板へ出ると、メアリーを含む全員が待っていた。
先程も述べたが、船員はメアリーやジョンを含め8名。
大所帯とは言えないが、帆船一隻を動かすには十分らしい。
残りの6名の船員に関してだが、全員男性ではあるが、年齢は比較的若く、20代や10代後半ばかり。
推測ではあるが、歳が一番若いのは船長のメアリーの様だ。
(※このモブ船員達に特別細かい設定はないのでKP判断で性格等好きに決めてくれて構わない)探索者達が甲板へ出てきた事を確認するとジョンが口を開く。
「さっきメアリーから話があったと思うが、一応もう一度言っておく」
「こいつらは今日から俺達の仲間だ、とは言え、海や船の事をどれぐらい知っているのかは分からん。お前らしっかりと教えてやれ」
ジョンがそう言うと、船員達は各々自己紹介を始める。
一通り終えると、その内の1人が探索者達の名を聞いてくる事だろう。
ある程度の自己紹介を終えると、船員達は物珍し気に探索者達を見てくる。
ここで【心理学】で判定を行う。
成功した場合、船員達は誰一人として探索者達に嫌悪感を抱いてはいない。
それどころかむしろ、仲間が増えて嬉しいといったような好印象であることが分かる。
先程感じた敵意は、船長及び副船長2名の言葉で払拭された様だ。

 甲板で盛り上がっているとメアリーが口を開く。
「さあ、新しい仲間も増えた事だし、そろそろ航海を再開するよ!」
「目標は拠点にしている港町!いずれ変わりなく!!」
「ジョン!大体どれくらいで着きそう?」
その問いに対して、風向きや波を確認した後ジョンは答える。
「そうだな……風向きも悪くない、波も穏やかだ。夕方には着くだろう」
それを聞くとメアリーは満足気に頷き、高らかに叫ぶ。
「野郎共!帆を張れ!錨を上げろ!出航だぁぁぁ!!」
船長の合図に船員達は雄叫びを上げ、各々を鼓舞し、動き出す。
(※探索者達も一緒に叫ぶと盛り上がる事だろう)
今後航海中に特定のタイミングで「海域ロール」にて判定を行う。
(海域ロールの詳細に関してはKP向け情報に記載)KPはPLを1人選び、「海域ロール」の判定を行わせる。
その結果を踏まえ、演出を行い、シーンを進行する事になるだろう。

 海賊船は目的地に向け、大海原を進む。
何事もなく進んでいたが、しばらくすると、とある出来事が起こる。
【海域ロールでの判定及び演出を行う】海域ロール参照
以下判定終了後のシーン。

 慣れない航海に戸惑いながらも、なんとか自分達に与えられた仕事をこなしていく探索者達。
気が付けば日は傾きかけ、美しい夕日が皆を照らしている。
そんな中「よお、お前達お疲れ様。慣れない内は大変だろうけど……」
話しかけてきたジョンは夕日を指差し、こう続ける。
「船の上でしか見れない景色もあるってもんだ。いいもの見ると疲れも飛んでいくだろ?」
そう言いながら笑顔を探索者達に向ける。
その様な話をしていると見張り台に上っていた船員が声を張り上げる。
「島が見えたぞぉぉぉぉ!!!」
その声を聞いたメアリーが嬉しそうに探索者達に駆け寄ってくる。
「よし!もう直ぐ着くわ。あの島は私達の故郷でね。お前達に見せたいものとか、紹介したい奴とか!」
メアリーはテンション高めに矢継ぎ早に話しかけてくる。
「メアリー、嬉しいのは分かるが落ち着け」
「はいはい、分かったわよ。あんた達島に着いたら船倉にあるもの運び出すから手伝ってね」
そう言うとメアリーは船首の方へ歩き出し、他の船員達にテキパキと指示を出す。
その姿は船長そのものだが、さっきまで貴方達と話していた時の彼女は、年相応の少女であったと、そう思う事だろう。

 それからしばらくすると、船は港へ辿り着く。
船が帰ってきたことに気が付いたのか、島民達が建物から姿を現し、出迎えてくれるようだった。
【目星】で判定を行う。

成功した場合、島民の中に成人男性の姿が無いことに気が付く。
見渡してみても目に付くのは老人や子供、成人女性ばかりである。

その事に関してメアリ―達に尋ねようとしても、船員達は皆船倉から樽や木箱を忙しなく運び出しており、探索者達にも手伝う様に呼びかけてくる。
どうやら今はゆっくりと話を聞く事は出来そうにない。
一通り荷物を降ろし終え、島民達と何かを話した後、船員達はそれぞれ建物にその荷物を運んでいく。
港に残ったのは数名の島民とメアリーにジョン、そして探索者達だけになった。
「あれは食料や生活必需品でな、こうやって私達が定期的に運び入れているんだ」
「さて、色々話したい事もあるだろう……酒場で待っていてくれ。
その内私を含めた全員が集まるからさ」
「ジョン、こいつらを酒場まで案内してやってくれ。後、ある程度の事情なら話してくれても構わない。私は一旦家に戻って報告と準備をしてくる」
そう言い残すとメアリーはその場を去っていく。
「全く……身勝手な奴だ。何はともあれやっと落ち着いて話が出来そうだな。酒場はこっちだ、付いてきてくれ」
メアリー海賊団の拠点となっている島に辿り着いた探索者達一向。

改めて現状を振り返ると、ここは自分達がいた時代より過去であることは理解できるだろう。
生き残る為、現代へ戻る為に今何をすべきか……その様に思考を巡らせながら、酒場へと向かうことだろう。

06結束!時空も海も超えた誓い

[シーン:酒場]
 ジョンに案内され酒場へ入る探索者達。
中には幾つかの木造の椅子や机が置かれており、店の奥にバーのカウンターを彷彿とさせるスペースもあり、そのカウンターで店主と思わしき初老の男性が1人佇んでいた。
改めて店内を見渡すが、現代で偶にある「大航海時代の再現をした居酒屋やアミューズメント施設」
は割と正確だったのだと、そう思える事だろう。
「ん?ああ、ジョンか……そいつらが噂の新入りか。
この前みたいな事にはならないだろうな?」
店に入ってきた探索者達に気が付いたのか、店主が話しかけてくる。
「なんだ、知っているのか。その通りだオリビエ、こいつらが噂の新入りさ」
ジョンがそう言うと、オリビエと呼ばれる男は探索者達に近付いてくる。
さっきまで気が付かなかったが、彼は左眼には眼帯、身体の所々には生々しい傷跡が残っており、歳を取ってはいるが歴戦の猛者と呼んでも差支えの無い風格がある。
「まあ、あの嬢ちゃんがいいなら俺は何も言わんが……他の住民がどう思うかだな」
「おっと、自己紹介が遅れたな……俺はオリビエ・バス。この酒場のしがないマスターだ。よろしくな」
名乗ると同時に右手を差し出し、握手を求めてくる。
それを見たジョンは「よし、挨拶も済んだな……メアリーはまだ来てないが、とりあえず俺が話せることは話しておくか。
適当に座ってくれ」
と言って探索者達を席に促す。
「さて、何から話すか。
そうだな……」
ここでジョンが話す内容は以下の通り。
>島や海賊団について

・この島はメアリーやジョンを含めた海賊団全員の住処。
・メアリー以外はここが生まれ故郷。
・この島の周辺の海域はとても不安定で、よく海が荒れる。
・その為海路で食料等を運搬するのが非常に困難で、5年前まで島民は飢えと貧困に苦しんでいた。
・それを解消したのが、5 年前この島に訪れたメアリーの父親で探検家の「サミュエル・モーガン」
・探検家のサミュエルが何故この島に来たのかは分からない。
・彼は荒れていた島民をまとめ上げ、航海術や海で生きていく術を皆に教えた。
・色々問題はあったが、生き残る為、島を守る為に島民達はサミュエルに従った。
・そして結成されたのが「モーガン探検団」と呼ばれる今現在の「モーガン海賊団」の前身となる組織。
・先程のオリビエも探検団の一員で、昔は「ルール無用のオリビエ」と呼ばれる程の荒くれ者だったが、サミュエルと出会ってからは比較的落ち着いている。
・ジョン自身もそこの見習いで、サミュエルからは様々な事を教わった。

>【旅人】について

・約半年前、この島に【旅人】と呼んでいる男性がやって来た。
・彼は帽子を被り、杖を持ち、両手に白い手袋を付けており、歳も若い。
・サミュエルには「ユウキ」と名乗り、この時代の人間ではないと言っていた。
・確かに旅人はこの時代の技術を遙に上回る様々な物を持っていた。
・探索者達はその【旅人】と風貌が似ていた為、直感的にこの時代の人間ではないと判断した。
・何回かは探検団と共に航海をし、船員達の信頼も得ていた。
・だが、とある航海以降、サミュエル達含め船員全員が行方不明になる。
・その航海は何かを探すものだったらしく、サミュエルが選抜したメンバーで行われていた。
・そして残ったメンバーや島民で海賊団を結成。
・海賊にした理由は目立ちやすく、情報を集めやすいから。

「サミュエル船長の航海術は凄かった……ここらの不安定な海域を完全に理解し、この島への海路での物品の搬入を可能にした」
「まさにこの島の英雄だよ。あの人が居なかったら、この島は滅んでいただろうな」
そう言って語るジョンの顔はどこか誇らしげで、楽しそうだ。
どうやら心の底からサミュエルと言う男に感謝し、尊敬の念を抱いているのだろう。
「でも、父さん達は姿を消した……半年前にあの【旅人】と一緒にね」
声のした方を振り返ると、いつの間にかメアリ―が酒場に入ってきていた。
どうやら先程の話を少し聞いていたようだ。
「なんだメアリー、聞いていたのか」
そう問いかけるジョンに対して、メアリ―は少し笑いながら席に着く。
「随分と楽しそうに父さんの事話してたから、邪魔しちゃ悪いかなと思って」
「それに娘の私としても、聞いてて悪い気はしなかったしね」
自宅から持って来たと思われる横型の封筒を机の上に置く。
「【旅人】が残していった手紙なのだけど……私達には何て書いてあるのか読めなくて」
「もしかしてあんた達なら読めるかもしれないと思って持って来たの。見てくれないかしら?」

 探索者達が封筒から手紙を取り出し、内容を確認するとそれは日本語で書かれた手紙だった。
以下手紙の内容。
「バミューダ諸島にて諸君らを待つ。そこに今回の異変の答えがある」
探索者達は問題なくこの日本語で書かれた文を読むことが出来るだろう。
ただ、日本とは縁も所縁もないメアリ―達が読めないのは当然であり、この手紙は【旅人】が自分と同じく現代日本からこの時代へやって来る者達がいることを想定して書き残したのだと、理解する事だろう。

 メアリーとジョンは興味深げに探索者達を見つめている。
「もしかしてあんた達……これが読めるのか?もし読めるのなら教えてくれ!私達にはそれしか手掛かりが無いんだ!」
何かを察したのか、メアリ―は探索者達に詰め寄ってくる。
探索者達が内容を告げるとメアリーは目を輝かせ、語りだす。
「バミューダ諸島……そこに行けば何かが分かるのね。ありがとう!あんた達が来てくれたおかげでなんとかなりそうだわ」
「水を差すようで悪いが、そこへ行くのは容易じゃないぞ」
嬉しそうなメアリーとは異なり、ジョンは冷静な態度で口を開く。
「ここからバミューダ諸島まではかなりの距離だ。それだけじゃないあの海域は……」
「魔の海域……そう呼ばれているのはお前も知っているだろ」
【知識】もしくは【アイデア】で判定を行う。
成功した場合、

現代で語られているバミューダ諸島及び、バミューダトライアングルに関する情報を思い出す。
フロリダ半島の先端、大西洋に存在するプエルトリコ、そしてバミューダ諸島の三点を結ぶ、三角形の海域。
ここでは船や飛行機、果てはその乗務員のみか消えると言った現象が昔から多発している魔の海域。
科学が発展した現代でも、解明できない現象が起こりえる場所。
要は今も昔も不気味な場所であるとされている。

ジョンが怪訝な顔をしているのも納得がいくだろう。
「そんな事は百も承知よ。でも、私は行くわ」
「それに、海賊が海にビビってどうするのよ」
とあっけらかんとした表情でメアリーはジョンに言い返す。
その眼には期待と覚悟が見て取れた。
それを見てジョンは深い溜息を付く。
「まあ、お前ならそう言うと思ったよ……俺も同行するぜ」
「そうこなくちゃね!さて、貴方達も勿論来るわよね?」

 そう言って探索者達に問いかけてくる。
危険は百も承知だが、探索者達も真相を知る為、付いて行くしかないだろう。
だが、ここで一つの疑問が探索者達の脳裏を過ぎる。
自分達も【旅人】と似たような立場。
メアリーやジョンはともかく、他の船員達が自分達の事を信用してくれるのか。
その様な事を考えていると、何かを察したのか、メアリーが言葉を続ける。
「ああ、他の連中が四の五の言うかもしれないけど……心配しないで!」
「私が皆を納得させてみせる。
新入りとは言えあんた達も大事な仲間、家族なんだから」
と胸を張り、自信満々にそう告げる。
もはや探索者達が次の航海に同行するのは彼女の中では決定事項の様だ。

 その様な話をしていると、酒場に男達が次々と入ってくる。
よく見ると彼らは海賊団の他の船員達であった。
どうやら一通り荷物の運搬が終わったのだろう。
一瞬の内に酒場は騒がしくなり、各々は酒や料理を注文し始める。
探索者達のいるテーブルにも他の船員達がやって来る。
どうやら船員達は未来からやって来た貴方達に興味津々の様だ。
入れ替わり立ち代わり探索者達の席にやってきては、矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
そんな中、メアリーはいつの間にか皆の前に立ち、声を上げる。
「さあ、野郎共!今回の航海もご苦労だった!無事に物資を届ける事が出来ただけではなく、新たな仲間や……父さん達に関する情報も手に入った!」
その言葉を聞き、船員達は騒めき始める。
「【旅人】が残していった手紙を新入り共が解読してくれた」
「次の目的地はバミューダ諸島。そこに【旅人】がいるとの事だ」
バミューダ諸島、その名前をメアリーが出した時、船員達はより一層騒ぎ出す。
「諸君らの反応はごもっともだ」
「新入り共を信用していいのか、バミューダ諸島に向かって生きて帰ってこられるのか……」
「保証何てものは一つもない……だが、今までの航海の中で保証があった時なんてあったか?」
「保証も安全も何一つ無い!風の吹くまま気の向くまま、それが海賊ってもんだろ!」
そう叫ぶと持っていた酒を一気に飲み干し、こう続ける。
「自由に生きて自由に死ぬ。新たな真実を求め海に出る。それこそが私が父さんから学んだことだ!」
「私に続く意思のある者は、明日の朝港まで来てくれ。今回の航海ばかりは無理強いはしない。もし船を降りたとしても責めやしないさ」
そう告げるとメアリーは探索者達の席まで戻ってくる。
「今晩は私の家に泊めてやるよ。一通り騒ぎ終わったら来な」
彼女は自分の家の大まかな場所を探索者達に教えると店を出ていく。
残された船員達は各々が自分の意見を語りだす。
主な内容としては、「この情報は信用に値するのか」
「バミューダ諸島の噂」
に関してである事は分かるだろう。
「メアリーのいう事はごもっともだが、信用に命を賭けろと言われて、二つ返事出来る奴の方が少ないよな」
「それに俺達が全滅すれば、この島に物資を運び入れる手段がなくなり、島は数年前の悲惨な状況に逆戻りだ」
「自分達の家族の事を思うと二の足を踏む連中もいるだろうよ」
酒が入ったコップを片手にジョンがそう呟く。

 ここでジョンの家族に対して尋ねた場合、彼の家族はジョンがまだ幼い頃に自己で亡くなっており、天涯孤独の身であることを教えてくれる。
「ま、俺達の事はいいから、一通りしたらメアリーのとこへ行ってやってくれ」
「強がってはいるが、あいつもギリギリだと思うからよ」
探索者達は酒場を出て、先程聞いたメアリーの家へと向かう。
幼き船長の覚悟と真意を確認するために。

07真意!船長としての覚悟

[シーン:メアリーの家]
言うならばこの少女の小さな背中には、幾つもの命が乗っかっている状態なのだ。
本来ならこの様な少女に重荷を背負わせるわけにはいかない。
しかし、探索者達が未来へ戻る為、その手掛かりを得る為には彼女達の協力が必要不可欠である。
数時間前にこの島に来たばかりの探索者達だが、確かに分かる事がある。
船員達はメアリーに信頼を、島民達は海賊団達に感謝の念を抱いている事は貴方達にも分かる。
出会って間もない探索者達が感じることが出来るのだから、それらの感情は本物だろう。
その事をメアリーに伝えるか否かは探索者達の自由だ。
伝えた場合メアリーは「そうだといいんだけどな」
とぼそりと呟く。
「ま、考えていても仕方ない!明日は明日の風が吹くってもんだ!」
何か吹っ切れたかのように立ち上がり、探索者達の方を向く。
「ずっと聞きたかったんだ!お前達がいた時代の話をしてくれよ」
そう言う彼女の眼は好奇心に満ちており、とても輝いていた。
探索者達が話す内容を持っている手帳に書き写していく。
「この手帳を私の子孫に引き継がせていく。何代も何代もだ」
「そうすればいずれお前達の時代にこいつが辿り着く!それこそロマンってもんだろ」

 メアリーの家に辿り着いた探索者達。
鍵はかかっておらず、そのまま中へ入る事が出来る。
探索者達に気が付いたのか、部屋の中に置かれている椅子に座るよう促す。
他の船員達の様子が気になっているのか、自分が退店した後の店の様子を尋ねてくる。
酒場の状況を教えると予想していたのか、深い溜息を付いた後、天井を眺める。
「私に父さんの様なカリスマがあれば、あいつらも二つ返事で……」
どこか寂しそうにメアリーは呟く。
探索者達が見ている分には彼女は船長として十分な働きをしていたように思えるだろう。
「ところで、あんたら気付いているか?」
不意にメアリーが問いを投げかけてくる。
【アイデア】で判定を行う。
成功した場合とある事に気が付く。

この時代に来て、メアリーと船員達のやり取りを見たり聞いたりしていたが、誰一人としてメアリーの事を「船長」と呼んでいない事に。

「私は所詮……形だけの船長さ」
「そんな奴の我が儘に、何人が付いてきてくれるのか……」

 船員達の前では船長として気高く振舞っていた彼女だが、今の姿は年相応の少女そのものだ。
よくよく考えると普通の少女なら背負う事の無い重荷を背負っている。
船旅と言うものは船長の判断一つで全滅する可能性もある。
彼女は生き生きと語りながら書き綴る。
もし仮に探索者達の元の時代までこの手帳が受け継がれたとしても、メアリーの子孫と自分達が会えるかは分からない。
しかし、彼女はそんな事想定済みだと言わんばかりにこう続ける。
「合わせてこう書いておく、日本って国に私の仲間がいるから探しに行けってな」
「こうすれば意地でも会いに行くだろうよ。
さ、話をもっと聞かせてくれ」

 今、探索者達の目の前にいるのは海賊でもなく、船長でもない。
ただただ好奇心と探求心に身を任せた、1人の少女がそこにいた。
貴方達は時間も忘れ語りつくす。
メアリー・モーガンと言う一人の少女と。
(KPはこの時の会話をある程度記録しておく)

08出航!今日の風は何処へ吹く1

[シーン:メアリーの家→船着き場]
 探索者達が目を覚ますと、メアリーは既に身支度を済ませていた。
「お、やっと起きたか。準備ができたら船へ向かうよ」
ここで探索者達の持ち物を確認する。
この島で用意、入手出来そうな物であれば、新たに獲得しても構わない。
準備を終え、メアリーと共に港へ向かう。
海賊船の前に居たのは……
「よう、遅かったな」
副船長のジョンの姿があった。
しかし、他の船員達の姿は見当たらない。
それを見たメアリーは少し、肩を落としたかの様に思える。
【目星】で判定を行う。
成功した場合、停まっている海賊船のメインマストに帆が張られており、積み荷も既に積み込まれている様だ。
探索者達は分かっていいだろう。
とても、ジョン1人で準備できるような事ではない事に。
「まあ、お前1人でも来てくれた事に……」
「あ?何言ってんだお前」
ジョンがそう言った瞬間、海賊船の方から声が聞こえる。
「ジョン、積み荷は……あ、メアリーに新入り共、やっと来たか」
声のした方を見ると、海賊船の甲板から次々に船員達が顔を出す。
1人、また1人と顔を出し、気が付くと6人、船員の全員が既に船に乗り込み、出航の準備をしていた。
そう、全員が覚悟を決め、メアリーと共に航海に出る事を選んだ。
船員達は腹を括ったや、海賊が海にビビってどうするだの各々が決意を語る事だろう。
「さあ、メアリー……いつでも行けるぞ」
メアリーは探索者達を連れて船に乗り込み高らかに叫ぶ。
「野郎共!!出航だぁ!!」
その叫びに各々応える事だろう。
探索者達も叫ぶ様に促すと盛り上がるだろう。
港を出て、バミューダ諸島を目指して北へ向かう。
今のところ海も落ち着いており、航海も順調だ。
甲板で波風に吹かれていると、ジョンが話しかけてくる。
「昨晩メアリーと何を話したかはあえて聞かないが、あいつが元気そうなとこを見ると、いい夜だったんだろうな」
「そう言えば、昨晩酒場でオリビエから預かった物があってな」
「どうやら【旅人】から預かっていたみたいだ」
ジョンがポケットから何かを取り出して、探索者達の前に差し出す。
彼の手のひらにあった物に貴方達は見覚えがあるだろう。
それは現代の日本で使われている通貨、500円玉であった。
記されている元号は探索者達が居た現代のもの。
よく見ると一部分に印が付けられていることに気が付く。
【目星】ではこれ以上情報は得られない。
【知識】で判定を行う。
成功した場合、

印が付けられている場所に描かれているのは橘であり、その花言葉は「追憶」

どの様な意味があって【旅人】が印を付けたのかは分からない。
だが、1つ分かる事があるとすれば、【旅人】は自分以外にも何者かが日本からこの時代にやって来ると確信していたのだろう。
「何かは分からんが、とりあえずお前達に預けておくよ」
そう言ってジョンはその場を離れる。
【海域ロールでの判定及び演出を行う】海域ロール参照
騒動も落ち着き、再び航海も安定してくる事だろう。
気が付くと日も沈み、辺りは暗闇に包まれる。
船倉はある程度の灯りがあるが、甲板は月明かりのみとなっている。
海域が安定しているとは言え、夜間の航海はリスクを伴うので、今日はここで停泊との指示が全船員に通達される。
それと合わせてメアリーが夜間の見張りに関して説明をしてくれる。
何でも数時間おきに船員が交代で見張りをしているとの事だ。
いきなり1人での見張りは難しいものがあるだろうから、特定の時間探索者達全員で見張りをして欲しいと告げてくる。
時間までは寝るなり何なり好きにしてくれとのこと。
探索者達が何もしない場合は夜中まで時間を飛ばす。
500円玉の情報を得ていない場合はここでもう一度調べる事が出来る。

09遭遇!運命を握る鍵

[シーン:船室→甲板]
 船員室で休んでいた探索者達を船員が呼びに来る。
どうやら見張りの交代の時間の様だ。
灯りを手に甲板へ、時間まで他の船の接近や、異変が無いかを見張る事になるだろう。
【聞き耳】で判定を行う。
成功した場合、背後から何者かが近付いてくる足音を聞き取る事が出来る。
出目がハード成功以上の場合、追加で更に情報を得る事が出来る。
足音と合わせて杖を突く音も聞き取れるだろう。
振り返り、背後を確認すると、そこに立っていたのは、タキシードを身に纏い、両手には白い手袋を付け、白い帽子を被り、左手に杖を持った男がそこにいた。
月明かりに照らされたその男の姿を改めて確認する。
この男の特徴がメアリー達が語っていた【旅人】の特徴と一致している事に探索者達は気が付くだろう。
「最初に警告しておく、騒ぐことはおススメしない」
その場にいる誰かが声を上げる前に彼はそう呟く。
「お前達がここの連中にどれ程信用されているかは知らないが、この状況を見て、お前達が俺を連れ込んだと思われるかもしれないぞ」
【アイデア】で判定を行う。
成功した場合、

【旅人】は探索者達だけになるタイミングを見計らって出てきたのではないかと思えるだろう。
ただ、船内に居た形跡は無かった事も思い出す。

おそらく、小舟か何かで乗り込んできたのだろう。

 船の周辺を見渡す場合は【目星】で判定を行う。
ハード以上の成功の場合、

海面に浮かぶ小舟を見つける事が出来る。

更に【心理学】で判定を行う事が出来る。
成功した場合、

【旅人】に敵意が無いことが分かる。
少なくとも今ここで探索者達に襲い掛かったりはしてこないだろう。

ハード以上の成功の場合、追加で以下の情報を提示する。

・彼の立ち振る舞いや雰囲気から察する事が出来る。
もし仮に全員で襲い掛かったとしても、勝てるか分からない。

その様な「凄味」がこの男にはある。
「お前達相手ならこっちの言語の方が都合がいいな、誰かに聞かれても内容までは理解されまい」
そう言って彼は「日本語」
で話始める。
「そう言えばまだ名乗っていなかったな、俺の事は、そうだな……ユウキとでも呼んでくれ」
「色々聞きたい事もあるだろう……とは言え、全てを話してやる事は出来ないが」
【旅人】もといユウキの話す内容及び反応は以下の通り。

・自分も探索者達と同じく、現代日本からこの時代にやって来た。
・元居た時代は、探索者達の時間と同じ。
・何故時代を越えてきたのかに関しては答えないが、探索者達と違い自分の意思でこの時代にやって来た。
・自分以外にも現代日本からやって来る者がいると推測し、メッセージを残した。
・メアリー達はバミューダ諸島に来るべきではないと思っているが、彼女達も真実を知る権利があるとは思っている。
・手助けもしないが、邪魔もしない。無事目的地に来ることが出来たら真実を話す。
・現代に戻りたいのなら、バミューダ諸島まで来ること。
・ここから先の海域はより一層注意するように警告してくる。
・【旅人】と呼んだ場合、「俺はそう呼ばれているのか」と言った反応を示す。

※ここで船員達と【旅人】を会わせるのは推奨しない。
「さて、あまりここに長居するわけにはいかない」
「俺はここの連中に、それこそあの嬢ちゃんに恨まれているからな」
「人ならざる者に気を付けな、命があればまた会おう!」
そう言うと【旅人】は甲板から飛び降り、姿をくらます。

10出航!今日の風は何処へ吹く2

[シーン:船室→甲板]
 昨晩、【旅人】と別れた後、見張りを他の船員と交代し、眠りにつく事だろう。
翌朝、目が覚めると既に探索者達以外は甲板に出ていた。
天気は快晴ではあるが、波は高い。
そして水平線の向こうから何やら禍々しい気配を感じる。
メアリー達もそれを感じているのか、皆険しい顔をしている。
だが、覚悟は出来ているようで、その表情に迷いはないことが分かる。
探索者達も覚悟はしてきたはずだ。
とは言え、航海になれている海賊とは違い、海が放つ独特の雰囲気に慣れてはいない。
その何とも言えない不気味さに圧倒される事だろう。
【SANチェック】成功で0失敗で1の喪失。
その様な探索者達を気遣ってか、船員達は貴方達を励ましてくる。
【聞き耳】で判定を行う。
成功した場合、ジョンがとある船員に買い出し用の小舟が海面に浮かべたままになっていた事に対して、確認をしているようだった。
ただ、誰も使った覚えはなく、寝ぼけて間違えて海面に出したのではないか、その様な会話が聞き取れる。
昨晩【旅人】との遭遇時、小舟を目撃していた場合気が付く事だろう。
昨晩、【旅人】が使用していたと思っていた小舟は、この海賊船のものであった。
となると、彼はどの様な方法でこの船にやって来たのだろう。
考えに耽る間もなく、メアリーから出航の号令がかかり、今日の航海が始まる。
【海域ロールでの判定及び演出を2回を行う】
 航海中、否が応でも気が付く事だろう。
今自分達の船が深い霧に包まれている事に。
甲板にいる船員達を目視する事は出来るが、船の周囲を見渡す事は困難な状況。
羅針盤を頼りに慎重に進む事だろう。
【聞き耳】で判定を行う。
成功した場合、

魚の様な匂い、ペタペタとした足音を聞き取る事が出来る。

匂いや音のする方に視線を向けると、そこにいたのは全体的に灰色がかった緑色の皮膚を持ち、背骨は鱗に覆われている。
姿形は人間に似ているが、頭部は魚であり、首にはエラ、手足には水かきと思われる部位が付いていた。
明らかに人間ではない事は瞬時に理解できるだろう。
この世のものとは思えない禍々しい生き物(深きもの)を見た事による【SANチェック】成功で0失敗で1D6のSAN喪失。
いつの間にか甲板には複数の深きものが甲板に現れていた。
流石の海賊と言えどこの様な事態は初めてらしく、戸惑いや驚きを隠せていない。
パニック寸前といったところで銃声が鳴り響く。
どうやらメアリーがマスケット銃を空に目掛けて発砲したようだ。
その音を聞き、船員達は一旦の落ち着きを取り戻す。
「騒ぐな野郎共!海の上では冷静さを欠いた奴から死んでいく!」
「今やるべき事はただ1つ!私達の航海を邪魔する奴を……」
「誰であろうとぶっ潰す!!」
鬼気迫るメアリーの叫びに船員達は正気を取り戻したのか、各々武器を構え、目の前の化け物に挑み始める。
戦闘開始。
探索者達と深きものとの戦闘の処理を行う。

 戦闘の処理終了後、下記のシーンに移行する。
辺りを見渡すと、丁度他の船員達も戦いを終えたのか、深きものの死体と思われるものが、いくつも甲板に転がっていた。
しかしそれは気が付くと溶ける様に消えていくことだろう。
怪我をしている者も何名かいるが、見たところ軽症であり、命に係わる様な事態になっている者は一人もいない。
「全員無事か?!怪我をしている者には手当てを急げ」
船員達に指示を出しながら探索者達の元へ近付いてくる。
「お前達も無事か?一体何だったんだあいつら……」

 更に彼女は化け物に関して何か知っているのか、また過去に会った事があるかを聞いてくる。
探索者達の答えを聞いた後こう呟く。
あの様な化け物は生まれて初めて見たが、何故かどこか既視感と言うか懐かしさを感じた。
彼女の言葉の真意は分からない。
ただ1つ確かな事は……この海はやはり、普通ではないという事だ。

上陸!真実と狂気が眠る島

[シーン:船室→甲板]
 未知の生命体との遭遇と言った前代未聞のトラブルがあったせいか、航海は今まで以上に慎重なものとなる。
ただ、相変わらず深い霧に包まれてはいるが、先程の襲撃以降、特に大きなトラブルもないまま、航海は続く。
そして数日後、霧の向こうに島を見つける。
海図や羅針盤で確認したところ、どうやら目的地であるバミューダ諸島で間違いない様だ。
船員達により一層の緊張が走っているのが見て取れる。
船を港に着け、錨を降ろす。
「ここが目的の島か、何とかたどり着けたな」
辺りを見渡しながらジョンが呟く。
たどり着いたが、生きて帰れるかは分からない。
誰も口にはしないが、心の中でそう考えた事だろう。
「何が起こってもおかしくない島だ。
まずは偵察も兼ねて私と新入り達で島を見てくる」
そう言ってメアリーは探索者達を連れて、船を降りようとする。
ジョンを含めた他の船員達は不安そうに眺めているが、船長の顔を立ててか、誰も引き止めたりはしない。

 船を降り、周囲を見渡すと、いつの間にか霧は晴れていた。
視界は良くなったが、周囲に人の気配は無い。
【目星】で判定を行う。
成功した場合、

近くに酒場がある事に気が付く。

「情報を得るのは酒場って相場が決まってるもんだ」
と入る事に関して乗り気である。
中に入ると部屋は薄暗く、床には埃が積もっており、長らく使われていない事に気が付く。
ここで調べる事が出来る場所は以下の通り。
■バーカウンター
 【目星】で判定を行う。

成功した場合、カウンターの床にコイン一枚分程の窪みを見つける事が出来る。

■店内の床
 【目星】で判定を行う。

成功した場合、埃が溜まっているが、よく見ると足跡が残っている事に気が付く。
数種類の足跡があるが、その中の一つに杖で突いた様な跡が幾つか残っている事にも気が付く。

■酒場周辺
 【聞き耳】で判定を行う。

成功した場合、窓を開け、周囲を見渡していると、記憶にある匂いが微かにだが鼻を衝く。

数日前、船上で化け物と出会った時に嗅いだあの匂いだ。
辺りを見渡すが化け物の姿は見当たらない。
過去に化け物がここを通ったのだと、推測出来ることだろう。
バーカウンターの床にあった窪みに500円玉をはめると、床が動き出し、地下へと続く隠し扉を見つける事が出来る。
バーカウンターに置かれている蝋燭を灯りにすれば、問題なく降りていくことが出来るだろう。
階段に残っている足跡は2種類。
内1種類は横に杖らしき跡も見つける事が出来る。
500円玉が鍵となっていた事で否が応でも気が付く事だろう。
この地下室に【旅人】が関与している事に。

11追跡!残された痕跡

[シーン:廃酒場→地下室]
 地下室へ降りるとそこには机と椅子が1つずつ、更に本棚が置かれているだけの狭い部屋だった。
部屋に物は少なく、全体的に片付けられている。
技能で判定を行わなくても見つける事が出来るだろう。
机の上に置かれた「日記」
と書かれた冊子を。
それ以外には本棚に規則正しく並べられた、航海日誌や海図が置かれている。
その他に目ぼしいものは無く、技能で判定をしたところで、新たに得られる情報はない。

 日記の最後は半年前の日付となっており、どうやら【旅人】との出会いからここへたどり着くまでの日記らしい。
内容としては以下の通り。
■で1日毎の内容の区切り。
重要な箇所のみ抜粋。
>日記の内容

今日、「ユウキ」と名乗る男が島にやってきた。
見慣れない格好をした奴だが、俺達の知らない知識を持っており、実に興味深い男だ。是非とも一緒に航海をしたい。

あの「ユウキ」と言う男、何故俺達一族の秘密を知っているのか……本人が言うにはこの時代の人間ではないとの事。
いささか信じがたい話ではあるが、奴の話は妙に信憑性がある。

そろそろ時間かもしれない……俺自身ここまで海の男として、人間として生きてこれたのは実に幸運だった。
2代目の俺が変容せず、この歳まで人間の姿を保つことが出来たんだ。
3代目となるメアリーもおそらく大丈夫だろう。確証はないが。
「ユウキ」が言うには奴らがバミューダ諸島の近くで目撃されたらしい。
忌々しい血統との因縁を終わらせるとしよう。

明日遂に出航だ。
何人かの仲間達は付いてきてくれるそうだ。
真実も聞かないで付いてきてくれる……我ながらいい仲間に恵まれたもんだ。
今回ばかりは本当に命の保証が無い。
おそらく生きて帰れないだろう。
死ぬ事は怖くない……ただ、心残りがあるとすれば、唯一の家族メアリーの事だ。
あいつは、出来る事なら海には出て欲しくない。
奴らに見つかればどうなる事か分かったもんじゃない。
ただ、流石は俺の娘だ。
年々海への好奇心が強くなってやがる。
俺が死んだり消息を絶ったら探しに来るだろうな。
そうなったら俺には止められない。
あいつにも良い仲間がいる。
大丈夫だろう。
それに賭けて見よう。

深い霧を抜け、何とかこの島へたどり着いた。
道中何度もあの化け物と遭遇したし、仲間も失った。当初無数に居るかと思われたあの化け物も明らかに数が減ってきた。
あと少し、あと少しだ。あの化け物は俺達が止める。もう1つの方は「ユウキ」が何とかしてくれるだろう。
……やはり、俺は生きて帰れそうにない。
来てほしくは無いが、俺の娘、メアリーは俺を探してこの島まで来るだろう。
俺の時みたいに新たな仲間でも連れてそうだな。
メアリーへ馬鹿な親父を許してくれ。
お前は呪われた運命に縛られず生きてくれ。
お前はもう独りじゃない。
愛してるぞ、最愛の娘メアリー。
俺達はこの島の裏にある、小島の洞窟へと向かう。
全てに決着を付けるために。

 日記に書かれていた禍々しい内容に探索者達は何とも言えぬ感情を抱くことだろう。
【SANチェック】成功で0失敗で1D3の喪失。

 メアリーの方に目を向けると彼女は震える声で話し出す。
「私がまだ知らない事があるみたいね」
「お父さん……来ちゃったよ私。ごめんね馬鹿な娘で」
そう言いながら帽子を深く被り、目元を隠す。
しばらくすると目をこすり、帽子を被り直す。
「さあ、向かうべき場所は分かった!船に戻ってそこへ向かうよ」
そう言って地下室を後にしようとする。
その間際に小声で呟く。
「私が泣いてた事は……秘密にしててくれ」
これ以上この部屋で得られる情報はない。
新たな謎を抱えた探索者達は全ての真実を知る為に、今一度船に戻っていくのであった。

 船に戻って来た探索者達は異変に気が付く。
船の至るとこに損傷が見て取れる。
甲板やマストに引っかき傷や血痕が残っている。
探索者達が困惑していると、船内からジョンが姿を現す。
「やっと戻って来たか……どうだ?何か手掛かりはあったか」
そう言う彼の姿は傷だらけで、左肩から流れる血を右手で押さえている。
「ジョン!大丈夫なの?一体何が……」
「別に大した事は無い……あの化け物共が襲って来ただけだ」
「心配すんな、連中は追い返した。
ただ、船員と船が多少損傷したが」
それを聞いてメアリーは明らかにショックを受けている様だ。
「馬鹿かお前は、俺達は覚悟してこの航海に付いて来たんだ。誰もお前を責めやしないよ」
ジョンがそう言うと船内から次々と他の船員達が姿を現し、ジョンと同じ様な事をメアリーに告げる。
その内の1人が探索者達にも同意を求めてくる。
探索者達や船員達の言葉を受け、メアリーも改めて覚悟を決めたようだ。
今まで何度も聞いた台詞を彼女は再び叫ぶ。
「野郎共!出航だぁぁぁぁ!!」

12決着!航海の終わり

[シーン:甲板→小島]
 日記に書かれていた小島を目指し、船は進む。
襲撃を受けたが、致命傷を受けた船員はおらず、船の損傷も普通に航海する分には問題なさそうだ。
目的の小島に、明らかに探索者達の目を引くものがある。
大きな損傷を負い、何とか岸辺に浮かんでいる帆船を見つける。
辛うじて浮かんでいるようで、航海等はもっての外。
そんな状況だ。
探索者達は見覚えは無いが、メアリーを含む海賊船の船員達はあの船に見覚えがあるようだ。
「あれは……あの船は……父さん達の船だ」
船には人の気配はなく、廃船一歩手前と言ったところだろうか。
損傷も激しく、乗り込むのは困難だと分かるだろう。

 その船の向こうに日記に書かれていた洞窟を見つける事が出来る。
洞窟へ向かう為に船を岸へ寄せようとした時だった。
【聞き耳】で判定を行う。
成功した場合探索者達は認識する、あの化け物の忌々しい匂いを。
そして理解する。
その匂いは四方八方から漂っており、この船は水中にいる化け物に囲まれている事に。
5D10をロールし、その数の深きものが海賊船を囲っている。
手負いの船員達でこの数の化け物を撃退できるのか、このままでは船に乗りつけられてしまう。
そう考えた時だった。
船を激しく揺らす様な衝撃と、ここ数日で聞きなれた音を聞く事だろう。
大砲から放たれた砲弾が、水中にいる化け物に命中したようだ。
高く登った水柱が、海賊船に降り注ぐ。
この船の誰も大砲を触っていない。
では、一体誰が……そう考えて辺りを見渡すと、直ぐに答えは出た。
ただ、目に飛び込んできたのは信じ難いものだった。
廃船寸前で、大砲を撃つどころか、航海すら困難。
海面に浮いている事すら奇跡と言っても過言ではない。
誰もがそう思っていたメアリーの父親の船の姿がそこにあった。
砲弾は間違いなくその船から放たれているが、相変わらず船に人影は無い。
ただ、今の砲撃で化け物達に隙が出来た。
今なら数名は島に上陸出来るだろう。
それに気が付いたのか、ジョンが叫ぶ。
「メアリー!新入り共!今の内に島へ行け!」
「ここは俺達が引き受ける!!」
どうやら先程の砲撃で化け物達も負傷しているようだ。
それを見て今の自分達でも足止めが出来ると判断したのだろう。
他の船員達も島へ向かう様促してくる。
「早く行け!俺達はこんな化け物には負けたりしない!俺達を信じろ!知りたかった真実を知ってこい!」
そうジョンが叫んだ後、全船員が口を揃えこう叫ぶ。
「さあ、行ってくれ……船長!!」

 船長……その言葉を聞いたメアリーは島へ上陸する準備を始める。
「野郎共!ここは任せたぞ!新入り!付いて来い、真実を知りに行く。これは船長命令だ!!」
そう言って船に備え付けられていた小舟を海面に浮かべ、飛び乗る。
探索者達も乗り込んだのを確認すると、島へ向けて船を漕ぎ出す。
ジョン達が足止めをしてくれているので、問題なく島へ辿り着き、洞窟へ向かう事が出来るだろう。
この航海の目的地へ辿り着いたモーガン海賊団。
そこに隠されているのは宝か、はたまた残酷な真実か……

13覚悟!己の運命

[シーン:洞窟]
 洞窟はそれほど深くはなく、少し進んだところで、広がった場所に出るだろう。
そこに居たのは……
「遂にここまで来たのか……やはり、人の好奇心と言うものは恐ろしい。パンドラの箱も開けてしまう」
杖を突き、タキシードを纏った【旅人】いや、ユウキと呼ばれている男の姿がそこにあった。
「やっとだ……やっと会えたな【旅人】!」
そう叫びながらメアリーはマスケット銃の銃口を向ける。
ただ、それに対して眉一つ動かすことなくユウキは続ける。
「そう騒ぐな……静かに眠っている奴もいるんだ」
そう言ってユウキが視線を移す。
その先にあったのは、何かにもたれ掛かる様にして倒れている白骨死体だった。
【SANチェック】成功で1失敗で1D6の喪失。
「誰の死体か……言わなくても分かるよな?」
探索者達もメアリーも察する事だろう。
この死体はメアリーの父親
「サミュエル=モーガン」
であることに。
「誤解が無いように言っておくが、こいつを殺したのは俺ではない」
「こいつは……最期まで戦った。護るべきものの為に」
【心理学】で判定。
成功した場合、

ユウキの発言に嘘が無いことが分かる。

メアリーは動揺を隠せていないが、銃口は真っすぐユウキを捉えている。
以前変わりなく。
「俺はこいつの遺言を預かっている。これ、お前達なら分かるよな」
そう言ってユウキはポケットからボイスレコーダーを取り出す。
メアリーは何が何だか分からない様子だが、探索者達が説明をすれば、とりあえず納得はする事だろう。
「とりあえず、これを聞いてくれ。話はそれからだ」
そう言ってユウキはボイスレコーダーに保存された音声を再生する。

>サミュエルの遺言
 ボイスレコーダーに保存されていた遺言は下記の通り。

・自分はこの島にいる化け物を殲滅する為そして、とあるものが世に出ないようにするのが目的。
・化け物と戦う中で自分とユウキ以外は全滅した。
・自分が化け物を殲滅しようとした理由は自分の一族にはこの化け物の血が流れているから。
・自分の母親、つまりメアリーの祖母はこの化け物と人間の間に産まれた。
・そうやって生まれたの人間の大半は生まれて10年程度で姿が化け物へと徐々に変化していく。
・自分もメアリーも薄くはなっているとは言え、その血を受け継いでいる。
・この歳まで人間の姿を保っているのとメアリーに至っては全く泳げない体質もあるので、血はかなり薄く問題は無いと思っている。
・しかし、この血はどれだけ薄くなろうと化け物を引き寄せてしまう。
・メアリーが海に出ない様にしていたのはこの化け物との接触のリスクを増やさない為。
・化け物をこの世から消し去り、呪われた運命に終止符を打ちたかったが、力及ばずここで、自分は終わってしまう。
・最後にメアリーへの謝罪と礼で締めくくられていた。

 ボイスレコーダーの遺言を聴いたメアリーは力なくその場に崩れ落ちる。
自分の身体に流れるその血の真相を知ってしまったのだ。
うずくまったメアリーに話しかけても反応は無い。
ここでメアリーに【対人技能】【精神分析】で判定、もしくはRPで発破をかける事が出来る。
判定に成功もしくは、KPが状況に相応しいRPだと判断した場合、メアリーは正気に戻る。
どうやら己の運命を受け入れたようだ。
それを見てユウキも口を開く。
「己の身体に流れる血は、時に運命と言う名の地図を描く事だろう」
「だが、必ずしもその地図に沿って歩く必要はない」
「人生ってのは、与えられた地図を見て進む事ではない。己の手で地図を作り出し、進む事だ」
「さて、続きを話す前に、奴らを片付けなければ」
そう言ってユウキは杖で入り口の方を指し示す。
そこにはこちらへ向かって歩いてくる例の化け物の姿があった。
(ここでの深きものの数はこの場にいる探索者とNPCの数と同じ)ジョン達の足止めが失敗したのか、それとも別の所からやって来たのか。
今の探索者達に判断する術は無い。
「話の続きは奴らを倒してからだ!1人1匹、さっさと片付けるぞ!」
【深きもののとの戦闘開始】演出はPC+メアリーで進行する。

14エンディング

戦闘終了後以下のシーンへ移行する。
全員死亡した場合ED1へ。
メアリー死亡の場合はED2へ。
全員生存の場合はED3へシーンを移行する。

ED1「上書きされる歴史」

 遥か過去で勇敢に戦ったが、力及ばず命が尽きてしまう。
時代を越え、海を越え、様々な冒険をしてきたが、真実を知る事も無く、何かを得る事も無く、今後何が起こるのかも知る事無く消えていく。
どの時代も共通しているのかもしれない。
敗者には何も残らない。

ED2「船長船頭に戻らず」

 年端も行かない少女、船長として海賊船を率いて、数多の海を越えてきた。
例え何があろうと、船に船員達、家族の元に戻ってきた船長だったが、今回ばかりは戻れそうにない。
彼女の命はここで尽きる。
船に残してきた船員達がどうなったのか、彼女は知る事もできない。
ユウキの案内で探索者達は現代日本に戻る事は出来るだろう。
ただ、何か心に大きな喪失感を抱えたまま……

ED3「誇り高き海賊」

 化け物を撃退した探索者達の前にユウキがあるものを持ってくる。
それは木と金属で作られた宝箱であった。
「これが、サミュエルが世に出ないよう必死に護っていた物だ」
「メアリーお前は見ない方がいい。逆にお前らは見た事がある物だ」
そう言って探索者達に視線を向ける。
この発言からおおよその推測は出来るだろう。
この箱に中に入っている物は、この時代にはまだ存在していないが、探索者達が居た時代には当たり前に存在している物だと。
「この時代にこれが世に出回れば、世界はひっくり返る。歴史は大きく修正され、世界は創りかえられる」
ユウキは探索者達に宝箱を開ける様に促してくる。
中身を確認すると、そこに入っていたのは折りたたまれていた紙。
それを広げて見る。
「世界の答えがそれには記されている。この時代ではまだ明かされていない答えが」
世界の答え、数多の冒険家が大陸を渡り、海を越え、この世の真実を記したもの。
「世界地図」
それも正確に書かれたものがそこに入っていた。
もしこれがこの時代に出回れば、常識は上書きされ、航海技術は急速に発展し、歴史の分岐点となるだろう。
「これをどうするかはお前達に任せる。
メアリーに見せるなら俺は止めたりしない」
ユウキはその様に言うが、サミュエルが命を賭けて護った遺志を無下にする事は出来ないだろう。
「ねえ、新入り達。それもう一回箱に閉まってくれる?」
「私はそれを見る気は無い。
世界の答えってのには興味があるけど。
それは自分の船で見つけるから」
そう言って彼女はユウキの方を向く。
「と言うわけでお父さんの遺志は私が引き継ぐ。安心して、この世に出回らない様にするから」
「そうか……好きにしな」
「後、それともう一1つ。お父さんと一緒に戦ってくれてありがとう」
そう言ってメアリーは深々と頭を下げる。
「目的が一致しただけだ。ただ、こいつとの航海は楽しかったよ」
その言葉を聞くとメアリーはどこか満足気だった。
「さて、お前ら。そろそろ時間だ。あと少しでお前達を強制的に現代へ戻す。別れの挨拶ぐらいしてきたらどうだ」
その言葉を聞いて、メアリーは宝箱を持って外で出る様に探索者達を促す。

 洞窟から出るとそこに既に化け物の姿は無く、モーガン海賊団の海賊船だけがそこにあった。
「役目を終えた船は眠ったか……主人の元へ逝けるといいな」
「さて、お前達……その宝箱を海に放り投げろ」
そう言ってメアリーはマスケット銃を抜く。
「それを私がこいつで撃ち抜く!」
「世界の答えは海底に眠ってもらおう!」
そう叫ぶ彼女の顔はどこか嬉しそうだ。
探索者達が宝箱を投げると、メアリーものの見事にマスケット銃で撃ち抜く。
銃声が鳴り響き、それに続くかのように宝箱が海面にぶつかった音が響き、沈んでいく。
「終わったのか船長」
そう言いながらジョンが甲板から顔を出す。
「船も船員も一応全員無事だ。
また航海出来るぞ……やる気があるのかは知らんが」
「新入り共!船長を護ってくれてありがとうな!本音を言うとお前らとこれからも冒険をしたいが……どうやらお別れの様だな」
ジョンにそう言われ、探索者達はある事に気が付く。
自分達の身体がゆっくりと光に包まれている事に。

 それに気が付いたメアリーが大急ぎで船に戻り、何かを手に持ってもう一度探索者達の所へ戻ってくる。
「ありがとう……本当はもっとお話したいけど、時間は無さそうね」
そう言って彼女は手に持っていたモーガン海賊団の海賊旗を探索者達に差し出す。
「私達とお前達との友情の証だ。受け取ってくれないか」
おそらく船長室の壁に飾ってあった海賊旗だろう。
それを探索者達に受け取って欲しいとの事だ。
「私達とはこれでお別れだけど……また必ず会えるわ。
私の子孫に絶対お前達を見付け出させる!」
「お前達と言う最高のお宝を!」
「だからこの旗は目印!私の子孫がお前達を見つけられるように」
ここから先は自由にRPをして頂いて構わない。
RPが終了した時点で以下のシーン威移行する。

 探索者達は完全に光に包まれ意識を失う。
意識を失う間際まで、貴方達に聞こえる事だろう。
海賊達の感謝と貴方達の幸福を祈った歌声が。
………………
 探索者達は波の音で目を覚ます。
気が付くと貴方達は訪れていた海の浜辺にいた。
意識を失う前に振っていた雨も止んだようだ。
時計を見て確認するが、タイムスリップした時から1時間程度しか経っていない。
あれは夢だったのか。
一瞬そう考えるが、直ぐに夢では無かった事に気が付く。
貴方の手にはしっかりと海賊旗が握られていたのだから。
やはり夢じゃなかったのか。
その様な事を考えていると、背後から何者かの声が聞こえる。
「あー!!その旗ってもしかして」
声のする方を振り返る。
そこに立っていたのは、モーガン海賊団船長のメアリーにそっくりな少女だった。
歳も同じくらいだろうか。
探索者達がメアリー?と呼びかけると「メアリー?ああ、ご先祖様の名前か!私はアン!アン=モーガンよ」
そう言う彼女の手には古い手帳が握られていた。
探索者達はそれに見覚えがある。
最後の航海前夜にメアリーが持っていた物だ。
どうやら本当にこの手帳は代々受け継がれ、探索者達を探していたようだ。
「いやーまさか私の代で見つかるとは」
彼女はメアリーと違い流暢な日本語を話している。
おそらく探索者達を見つける為に勉強したのだろう。
「ねえ、その旗貸してくれる?いや、元を辿れば私の家系の物だけど……」
探索者達から海賊旗を受け取るとアンはそれを右手の手首に巻き付けて、探索者達の前に突き出してくる。
「ご先祖様の時もやったみたいだし、分かるでしょ?今回は忠誠を誓うというより……再開を祝してかな?さあ、この」
「海賊旗に口づけを!」

クリア報酬

■ SAN 値回復
・シナリオクリア:1D8
・ED3 を迎えた:1D3
・海賊旗に口づけをした:1
■クトゥルフ神話技能
・シナリオクリア:5

海域ロール

1.穏やかな海だ、心地良い風が貴方達を包み込む。何も起こらない 。
2.食料がネズミにやられてしまった。やはり船乗り猫は必要だったか食糧不足により空腹となる。次の技能ロールにPダイスを1つ追加。
3.魚の大群に遭遇。大量!大量!満腹になるまで食事をした事でHP が1d4回復する。
4.急な竜巻で打ち上げられた鮫が降ってくる。船長空か鮫が!!原因は不明だが上空から鮫が降ってくる。【砲】で判定を行い誰か1人でも成功すれば撃退成功。全員失敗すれば全員1D3 のダメージ
5.いい風が吹いている。全速前進ヨーホー!いい風に乗る事が出来、気持ちのいい航海になる。全員HP とSAN 値を1d4回復する。
6.揺れがひどい。こんな状態では船酔いしてしまう。揺れが激しく船酔いを起こしそうになる。全員CON で判定を行う。成功すれば何も起こらない。失敗した場合はHP1の減少及び次の技能ロールにPダイスを1つ追加。
7.知り合いの商船と出会う。いい取引だ!探索者が望むもの(商船で扱っている範囲内)が手に入る。
8.急な嵐だ!油断すれば海へ投げ出されるだろう。全員STR ロール。失敗した者は【水泳】で判定し、失敗した場合1D3のダメージを受ける。
9.海で生き残る術を教わる。忘れない様にしよう。【砲】【操縦(帆船)】【所持している戦闘技能】いずれかの技能を+10。
10.敵海賊船発見!全砲門開け!!敵海賊船との戦闘開始。【砲】もしくは【操縦<帆船>】で対抗ロールを行う。敵海賊船の数値は両方30 で判定する。同じ達成値の場合PL側の勝利。PL勝利の場合HP を1D3回復。敵海賊船が勝利した場合、全員1D4 のダメージを受ける。