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Last-modified: 2023-04-14 (金) 21:24:38

新王国の国々

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島々 ~The Island~

〈新王国〉は、主に5つの島に分かれています。その中の3つは強力な海運国、1つは未開の地、残る1つの島は〈法〉の教義の謎に包まれています。

アシェインルーン

アシェインルーンはほとんど知られていない島で、蒸気を上げて煮えたぎる〈沸騰海〉の中央に位置しています。
海図に示されることはめったにありませんが、アシェインルーンの不毛の岩場には多塔の宮殿がそびえています。
それが、尖塔や小塔、丸屋根をもつ唯一の島の建築物です。
銃眼を備えた城を統治しているのは〈法〉の戦士、マイシェラです。
城の小部屋や丸人井の広間には多くの謎が潜み、その巨人な通廊をいったい何が徘徊しているのか知る者はいません。

パン・タン

支配者パン・タンの専制君主、ジャグリーン・ラーン
種族人間
言語共通話、マブデン語、メルニボネ語
職業備兵、神官、船乗り、兵士、暗殺者
宗教〈混沌の教会〉
好まれる武器ハンティング・ボウ、シミター
防具パン・タン式プレートまたはハーフ・プレート、スモール・シールド
文化的技能〈航海術〉〈操船〉
所持品種々の刺青。価値[1d10X50]プロンズの奇怪で不似合いな宝飾品、
あるいは装身具(イヤリング、鼻輪、ボディ・ピアスなど)。
場合により、魔力1つの下級デーモン1体を武器か防具に封印して所有しています。

パン・タンは人間の国家とよく似ていますが、実はメルニボネ同様、この世界に土着の国家ではありません。
一千年前のダルジ戦争の際、魔術が大地を揺るがし、〈新王国〉とマプデンの残虐な異界との間に亀裂が生じました。
〈新王国〉まで引きずり出された人間(マブデン人)たちは、気がつくと、名もない海に浮かぶ、嵐の吹き荒れる荒涼とした島に到着していました。
黒い岩と溶けたガラス質の物質に覆われた、その荒れはてた島はパン・タン島と呼ばれており、以来、マプデン人はパン・タン人として知られるようになったのです。
〈混沌〉の信奉者であるパン・タンの人々は自分たちこそメルニボネの魔術の後継者であると主張しています。
しかし、人間であるがゆえに洞察力を欠く彼らは〈混沌〉の邪悪な面だけしか見えていません。〈混沌〉の神秘的な美しさは目に入らないのです。
パン・タンは嗜虐的でゆがんだ人々の国であり、誰もが正気をなくしているとさえ言えるかもしれません。
ほかの人間たちは彼らを、海賊や血に飢えた神官のように恐れています。パン・タンは〈新王国〉で支配的な権力を握っていますが、それは軍事力というより暗黒の魔術によるものです。
パン・タンはまるで己の憎悪する敵メルニボネのゆがんだ鏡像のようです。パン・タンにも都市は一つしかありません。
都フワムガールは、壁や屋根の上に点在するよじれた石像から、〈泣き叫ぶ像の都〉と呼びならわされています。
これらの像は、専制若主であるパン・タンの神官王(Priest-King)の逆鱗に触れた人々の成れの果てです。彼らは主君に奉仕したあげく、石に変えられてしまったのです。
恐ろしいことに、彼らは岩と化した肉体に捕らわれて今も生き続けています。こうした呪われた魂の働哭や悲鳴がフワムガール中に絶えずこだまし、そこに虎たちの咆嗜が加わります。
虎は北方の密林から連れてこられたもので、いまは鉄で舗装された市の街路をうろつきまわっています。
現在のパン・タンの専制君主はジャグリーン・ラーンで、のちに世界に〈混沌〉の今勢力を解き放つことになる人物です。
ラーンは異国(the outside world)の訪問者を禁じており、そのため〈新王国〉のほかの国々はちまたでささやかれる噂以外、パン・タンのことをほとんど知りません。

〈魔術師の島〉

この不毛の島はかつて、またの名を「呪文の盗人」と呼ばれる悪名高き魔導師クラン・リリートの故郷であったため、このように名づけられました。
魔導師ははるか昔に亡くなりましたが、今も彼の盗んだ魔法は埃っぱい痩せた士の下で奇妙な発動機に入れられ、あたりを漂っています。
クラン・リリートがたった一人でこの島に居を構える前は、ここはルリン・クレン・アの民の故郷でした。
彼らは1万年前、〈上方世界〉の神々がやってきたとき、密林にあった都市を見捨てました。彼らもまた、はるか以前に死にたえています。
現在、〈魔術師の島〉には、クレティという獣じみた半人類の部族が住んでいます。この部族はわずか半世紀ほど前に、〈沈黙の国〉の近辺から移住してきました。
イムルイル陥落の直前、エルリックはこの島にたどりつきます。
そして、島から逃げ出す前に、配下のフィルカールの船乗りと力を合わせて、クレティ族を皆殺しにします。
その後、〈法〉に仕える一握りの孤立した隠者の魔術師が〈魔術師の島〉に住もうとやってきますが、〈世界の終末〉にパン・タン人に殺されてしまいます。

〈紫の街の島〉

支配者八家評議会(Comcil of Eight)
種族人間
言語共通語
職業商人、神官、船乗り、交易商人、交易商人
宗教法教会、特にゴルダー神;〈精霊の王〉(ストラーシャとラサ)
好まれる武器ハンティング・ボウ、ロング・スピア、シー・アックス、スリング
防具シー・レザー、スモール・シールド
文化的技能〈交渉術〉〈鑑定〉〈操船〉
所持品交易品[8d8x8d8x100]プロンズ分(商人と交易商人に限る)

〈新王国〉で特筆すべき第二の島国文明は〈紫の街〉の人間国家です。
船乗りや商人といった勇猛な人々の住む国で、その正直さと操船術で世に知られています。政治的均衡は古い貴族と新興の大商人階級との間で危うい状態にありますが、〈紫の街の島〉がイムルイルに匹敵する交易の中心地であることに変わりありません。
メルニボネにとっては〈紫の街〉の交易商人たちはありがたくない客です。
〈紫の街の島〉はかつては〈光の帝国〉の1部でしたが、おおよそ400年前の〈ロルミールの反乱〉の際、自由を勝ちとりました。
以来力を結集し、今ではその国民は〈新王国〉中、最良かつ最も信頼される船乗りとなっています。
長いあごひげをたくわえ、革の服をまとった〈紫の街〉の住民は、〈新王国〉の航海船を所有する港ならどこへ行っても見られます。
この国の貴族は年がら年中、祭りを祝い、馬を駆って島を巡り続けています。
一方、農民たちは何世代も土を耕し続けています。島の名前は、住民が家屋や建物の建材に使用する石の色に山来します。
畑や小さな農場の広がる心地よい国土で、北の温暖な低地は内陸部に行くにつれ急峻な山地になり、南部には羊の放牧される湿地が広がっています。
メニイはこの島国の近代的で垢抜けた都ですが、貴族階級が居住地に選ぶのは、もっと閑静な落ちつきのある北部のカリスです。
メニイの市場を見下ろすように、ゴルダー神の黄金色のビラミッド型神殿がそびえたっています。
ゴルダー神の神官たちはこの島で買えないものがあるとすれば、それは決して手に入らないものだとうそぶきます。
島の市場では、それほど多岐にわたる品物が〈新王国〉の隅々から運びこまれ、売られています。〈法〉の神ゴルダーは島の信仰を一身に集めており、ふたりの精霊の王〈風のラサ〉と〈海の王ストラーシャ〉に捧げられる尊敬さえかすませるほどです。
「禿頭伯爵」スミオーガンはこの島の貴族で、島を統治している評議会の主要人物です。〈紫の街の島〉に古くから定着している家系の子息であり、商人としてのおのれの信条を貫くことにより莫大な財産を築きました。
しかし、それがために、より伝統主義的で保守的な同僚からはさげすまれています。
〈イムルイルの強奪〉でスミオーガンが生命を落としたあと、島の政情はどんどん不安定になり、ロルミールとの小競り合いに巻き込まれるほどになっています。
〈世界の終末〉、すなわち〈混沌〉の軍勢が大挙して地球に押し寄せてきたとき、〈紫の街の島〉の艦隊はジャグリーン・ラーンの海軍に反旗を翻しますが、多触手のプラレイ神の超自然の〈混沌〉艦隊が現れると駆逐されてしまいます。
この最後の絶望的な闘いで、〈紫の街の島〉の船乗りは一分の勝機もない状況でも、その勇猛さを発揮します。

メルニボネ

支配者皇帝サドリック86世
種族人間(奴隷)、半メルニボネ人、メルニボネ人
職業薬師、小貴族、神官、兵士
言語共通話、ハイ・スピーチ、メルニボネ語
宗教〈野獣の王〉〈混沌の神々〉〈精霊の王〉
好まれる武器メルニボネ人および半メルニボネ人――残忍な逆とげのついたロング・スピア、メルニボネ製の骨弓、凶悪なプロードソード。
人間の奴隷――奇妙に反った儀式用短剣(ダメージ1D4+3、225br)。
防具メルニボネ人一メルニボネ式プレートあるいはメルニボネ式ハーフ・プレート(黒く重ね塗りされ、竜(ドラゴン)の意匠が施されている)、ラージ・シールド。
半メルニボネ人一メルニボネ式ハーフ・プレートとスモール・シールド
文化的技能〈百万世界〉〈ポーション〉〈魔眼〉
所持品メルニボネ人一メルニボネにある[8d8x100,000]プロンズ相当の資産(島から持ち出すことはできません)、
  家宝の剣またはその他の武器(1,000プロンズ以上の価値)、
  価値[2d8×100]プロンズの種々の財宝。
  何か1つの能力を持つ下級デーモンを1d3体所有している場合もある。
半メルニボネ人一メルニボネの資産を除き、上記と同様。
人間の奴隷―雑多な財宝、装飾付きの11質の衣服、
  価値2D8×100ブロンズの装身具(身に着けるビアスなど)。

メルニボネ諸島はアマシイ、キアシュ、ワーイヤオロの3つの小島とメルニボネ本島から成っています。現在では居住者がいるのは、最大の島メルニボネだけです。
メルニボネ帝国の最盛期には、4つの島すべてに居住者がいました。
本島には唯一の都市、麗しきイムルイルがあります。都の奥の洞窟に翼のある巨大な爬虫類が眠っていることから、本島はよく〈竜の島〉とも呼ばれます。
イムルイルは〈夢見る都〉という名でも知られていますが、それは日々、催眠性のあるかすみが街を覆い、人々に倦怠感を抱かせるからです。メルニボネの夏は温かく、じめじめしています。
冬には涼しくなりますが、過度な寒気に襲われることはめったにありません。通年を通してかなりの雨量があります。
近ごろではメルニボネ人は〈夢見る都〉に林立するきらめく塔からめったに離れることはなく、島のそのほかの地域はゆっくりと野生に戻りつつあります。
ケシ畑や打ちすてられた別荘、人里離れた空き地、苔むした森などには、鳥や獣のほかに住むものはありません。
時折、麻薬の精製に使用する植物を採取するために、奴隷が送り込まれるくらいです。
メルニボネ人は奴隷に依存して生活しています。奴隷の数はその人外の支配者を十倍上回りますが、麻薬づけにされ、隷属させられています。
〈竜の島〉に上陸するのは事実上、不可能です。イムルイルは迷路のように入り組んだ油断ならない海域に守られ、サンゴ礁や危険な海流が海岸沿いの断崖を取りかこんでいます。
何世紀もの間、メルニボネは誰にも邪魔されることなく惰眠を貪ってきたのです。
ほとんどのメルニボネ人は、メルニボネの過去の栄光を夢見て暮らしています。そうした人々は現実に直面することをせず過去の偉業にすがり、麻薬の垣間見せる栄光に酔いしれて日々を過ごしています。
過去の数世紀、〈光の帝国〉は世界を一少なくとも望む地域のすべてを―支配していました。
しかし現在、帝国はおちぶれ、かつては略奪の対象だった〈新王国〉と交易せざるをえなくなっています。
人間の訪問者は、貧富の差を問わず、イムルイルのごく狭い区画に閉じ込められます。
彼らがメルニボネの娯楽に触れることはまずありません。
異星人であるメルニボネ人の日には、〈光の帝国〉は今なお世界を支配しているかに映り、それと矛盾する発言ははなはだしく上品さに欠ける振る舞いだと考えられます。
メルニボネの民は人間より古い種族で、人間と共通するところはほとんどありません。長身で細身で、指は長く、美しい髪をしています。誇り高く、無道徳で、ありとあらゆる感覚に快楽を見いだします。
目は吊り目で、耳の先は針のように尖り、鋭敏な視覚と聴覚を備えています。人間の目にはけばけばしく見える派手な色彩を好み、苦痛―とりわけ他者の苦痛―を楽しみます。
メルニボネ人のやり方は人間には、恐ろしく残酷なものに映るときがあります。洗練された優雅さと垢抜けた趣味を備えたメルニボネ人は、〈新王国〉では最も文明化された種族です。
ある意味、文明化され過ぎたのかもしれません。善悪を超越した、活気や好奇心とは無縁の種族です。何世紀もそうしてきたように、麻薬で増幅された快楽のなかで生きることに満足しています。
彼らの生活を支配しているのは伝統と、怪異さときらびやかを兼ね備えた〈混沌〉の神々への信仰だけです。
エルリックは428代目の皇帝として〈ルビーの玉座〉につきます。〈エルリック・サーガ〉では、メルニボネを捨てて〈新王国〉をさまよったのち、そのいにしえの国家を減亡させるために戻ってきます。
メルニボネ人は世界で最も有能な魔術師とはいえ、現在はあらゆる魔力が衰えています。
エルリックは近年では最強の魔術師ですが、彼の呪文でさえ占代の魔術とは比べものになりません。
メルニボネ人の呪文は獣や植物の支配者のみならず、〈精霊の王〉たちをも呼びだすことができます。
メルニボネ人は〈新王国〉の多くの国家から恐れられ、忌み嫌われています。しかし、彼らの黄金の戦艦や竜、帝国軍が日外に赴くことは、もはやありません。

南の大陸~The Southen Continent~

メルニボネの統治に対して成功を収めた暴動は、まずこの人陸で発生し、その後〈新王国〉中に波及していきました。
破壊された塔、倒壊した邸宅といった〈光の帝国〉の残骸が、メルニボネの覇権の衰退を如実に示しています。
〈世界の果て〉は南の大陸の向こうに横たわっていますが、それを見たと主張する冒険者はほとんど一人もいません。
北の国々と異なり、南の大陸は豊かで人口が密集しています。

アルギミリア

支配者ジク王
種族人間
言語共通話
職業職人、商人、神官、船乗り、書記、交易商人
宗教〈混沌の教会〉、エルジス大教会(多数)、ほかの〈法〉の神々(少数)
好まれる武器プロードソードとランス(騎兵)、ロング・スピアとショートソード(歩兵)
防具フル・シールドとハーフ・プレート
文化的技能〈読心術〉〈乗馬〉
所持品エルジスの勅令をまとめた教会文書、
エルジスの14の偉業の1つが描かれた彫刻入り木の護符

南のほとんどの国と同様、アルギミリアもかつてはロルミール帝国の一部でした。
今もこの国の建築や伝統に、古代帝国の残滓を見ることができます。
往時の名残として、カドサンドリアの大学のような建物や、アルギミリアの貴族階級に見られる騎士制度が残っています。
国民の多くは海岸沿いに住んでいます。
肥沃な農地を耕したり、その地域の人の密集した都市に居を構えています。
アルギミリアの南の境界あたりには、人口のまばらな平原が広がり、たくさんの牛が牧草を食んでいます。
住民は大きな共有の屋敷に住み、世襲貴族によって統治されています。
南部アルギミリアの人牧場主は、この国の貴族階級のなかでも最大の権力を持ち、伝統に縛られています。
しかし、海岸沿いの、より裕福で退廃的な商人貴族らもそれに匹敵する影響力を有しています。
アルギミリアの財源は農場や飼育場ですが、南の大陸の海岸沿いに交易する、カドサンドリアの海王たちの艦隊も富をもたらします。
アルギミリアの支配者は無作法なしゃれ者、ジク王です。この浅薄な人物は誓学者や自由思想家、芸術家を取り巻きにし、彼らを擁護することによって、自分を実際より人物で賢明そうに見せています。
ジク王の統治はアルギミリアの〈混沌〉信仰を奨励しています。貴族の大半、少なくとも海岸沿いの領主は〈混沌の教会〉の享楽主義と悦楽に転向しています。
〈イムルイルの強奪〉でジク王が亡くなると、その弟のホゼルが王の位を継ぎます。ホゼルは近親相姦によって生まれた狂気の子供と噂される人物です。
〈法〉の修道院で育てられたホゼル王は、実は異常なほどの潔癖主義者です。そして、この国から〈混沌〉を抹殺するために血塗られた粛清に次々と着手します。
その動きが広がり、ホゼル王の狂気が明らかになるにつれ、魔術師や哲学者、それにカドサンドリアの大学の学生たちまでが、アルギミリアの粛清の血祭りに上げられます。
その亡きがらをだびに付す煙が、空を黒く染めるほどです。
アルギミリア人は礼儀正しさと洗練された物腰で知られています。
海岸沿いの都市居住者は一般的に自由な思想を持ち、因習から解き放たれ、未来を歓迎します。
一方、農夫や南部の貴族は過去ヘの回帰、すなわち〈法〉の信仰や安楽だった過ぎ去りし日々が戻ってくることを願っています。
ホゼルが即位するまでは、アルギミリアには多くの異国人が見られました。
そのほとんどが、名高いブドウ酒と教養豊かな住民で知られた都、カドサンドリアに集中しています。
〈粛清〉以前はカドサンドリアの街路を歩けば、小売店の店主がさまざまな方言や言語で哲学を語る声が聞こえたものです。
ホゼルの即位後は、そうした交流は途絶え、笑い声が聞こえることさえほとんどなくなりました。

オインとユー

支配者氏族の長
種族人間
言語共通話
職業狩人、祈祷師
宗教〈精霊の王〉、〈草木と野獣の王〉
好まれる武器ショート・スピア、スリング
防具獣皮(ソフト・レザーとして扱う)
文化的技能〈乗馬〉〈追跡〉
所持品異国風の羽根の束と色玉(ビーズ)の入った小袋[1D8X10]プロンズ分

野蛮なオインとユーは二つの異なった国家ですが、さまざまな方面で手を組んでいます。
南方諸国のなかでは最も貧しく、1つの都市を共有しています。アル河をまたいで広がる、みすぼらしい都ドズ・カムです。
市の東部はロルミール統治時代に人々が定住しました。
彫刻を施した石造建築は略奪され、いまにも崩れそうですが、腐敗した栄華の名残をかすかに残しています。
西部地区は今も普も、泥レンガと薄汚れた白色塗料の貧民窟で、奴隷や農奴が住んでいます。町は大きな湾の岸へと落ち込んでいます。
ドズ・カムの原住民は広い河口に群がる魚を採ったり、その向こうの不毛の土地を耕したりして、細々と生計を立てています。
ドズ・カムの建物はほとんどが平屋根で、みすぼらしくずんぐりしています。
窓は小さく、大きな角張った出入り口がついています。
いちばん高い建物は、ロルミール帝国の遺物です。
わずか3階しかありませんが、市のほかの建物と比べると、まさに宮殿といえるでしょう(イイルクーン王子はメルニボネから逃げだしてこの建物に住み、エルリックの復讐から身を隠します。
イイルクーンはさほど片労せずにドズ・カムを征服させますが、『メルニボネの皇子』に記されているように、その治世ははかなく終わります)。
この町の暮らしに耐え、オイン人やユー人の労働力を利用するためにここを住みかに定めた異国人が、人口のかなりの部分を占めています。
どんなに貧しい商人でさえ、掛け値なしに低いドズ・カムの基準に照らせば、王候のような暮らしができるでしょう。
オインとユーの海岸線は〈沸騰海〉の蒸気流に包まれています。その結果、海岸線には熱帯雨林のような青々とした森が茂っています。
さらに、熱気と湿気がその不快な気候に拍車をかけています。雨はめったに降らないのに、海岸線は午前中ほとんど濃い霧に覆われています。
一方、内陸部は驚くほど乾燥しています。
オイン人とユー人は迷信深く、未開の人々です。密林には悪魔たちが徘徊すると言い張り、それを恐れて暮らしています。
森にはさまざまな生き物が生息しており、中には危険な肉食獣も存在していますが、もちろんそれらはすべて自然界の生き物だと証明されています。
希少な材木や動物の皮、そのほかの交易品を求めて密林の境界を越える勇敢な人々もわずかながらいますが、入り組んだ森の奥地の秘密は知られていません。
オインとユーの民はほとんどが遊牧農民で、痩せた土壌を利用しつくすと、転々と土地を移動します。
それ以外は狩人で、内陸の`r原をさまよう鹿や水牛の群れを追っています。
オイン人とユー人はたくましく、ずんぐりとした体つきをし、無教養で迷信深い人たちです。組織化された宗教や中央政府は存在しません。
彼らの生活にとっては、家族に対する忠誠心が最重要のものです。氏族の長には、男女を問わず拡大家族の最長老がなります。
長が法を定め、家族はそれに従います。氏族間の血で血を洗う争いは頻繁に起こります。
信仰は原始的なものですが、〈精霊の王〉、特にグロームやストラーシャ、ラサが信仰され、豊穣と降雨が祈られます。〈野獣の王〉たちもまた信仰されています。
人々は不器用に染めた革や毛皮を身にまとい、鮮やかな羽根や色玉で体を飾りたてます。織物や刺しゅうといった技術はほとんど知られていません。
昔から、彼らの宿敵は大陸の奥地からやってくる、同じく未開なドレルの略奪者たちです。

ドレル

支配者部族の長
種族人間
言語鼻にかかった共通語
職業狩人、祈祷師、兵士
宗教〈野獣の王〉、〈精霊の王〉
好まれる武器ハンティング・ボウ、ショート・スピア、スリング
防具シールド、ソフト・レザー
文化的技能〈航海術〉〈追跡〉
所持品先祖の親指の骨の入った薬袋(ドレル人にとっては、親指こそ自分たちと獣を区別するものです)

毒のある黒蛇や、雄叫びを上げて戦車を操る未開の蛮人部族の住まうドレルは、〈世界の果て〉にあります。その地形は荒涼とした湿地や点在するむきだしの岩、細く急な小川、ひどくねじ曲がった木々から成っています。一年の半分以上、雪に覆われ、夏の盛りでも北の温暖な国々に比べれば、かなり低気温です。不毛の大地のあちこちから巨大な板状の岩が突き出し、尖った花向岩が日のくらむほどの高さにそびえたっています。そのうちのどれかに登れば、(世界の果て〉やさらにその向こう、地球を取り囲む逆巻く(混沌〉までをも見下ろせるでしょう。ドレル人は略奪者として南部中で恐れられています。適時、部族同上が手を組んで、大陸中の集落を襲撃し、時には海岸沿いに足の速い細身の船を走らせ、北方まで進出します。服装は格子柄のラシャや毛織物、巻きスカート、ズボン、L着、外套(クローク)などで、それを金具や紐で飾っています。ドレル人は都市を持たず、一時的な野営地しか設営しません。国Lの苛酷さが生活に反映された結果です。ドレル人は高齢者や弱者を精霊の手にゆだねて、見捨てます。捕虜を取ることはありません。風のように荒々しく自由な彼らは、〈風のラサ〉と〈大地の王〉グロームを信本します。〈世界の果て〉に近いため、ドレル人は〈混沌〉を恐れ、憎んでいます。非常に迷信深い民です。

ピカレイド

支配者マルヴォス王
種族人間
言語共通語
職業狩人、神官〈混沌〉、祈祷師(〈精霊の王〉、〈野獣の王〉)、兵士、盗賊、暗殺者
宗教〈野獣の王〉、〈混沌の教会〉、〈精霊の王〉
好まれる武器ハンティング・ボウ、ショートソード、ショート・スピア
防具ラージ・シールド、レザー&リングス
文化的技能〈登攀〉〈捜索〉
所持品上質のキルト、価値300~1500プロンズの分厚い外套(打ち出し細工の銀の胸飾りつき)、過度な刺青、ずる賢い犬

ピカレイドは〈新王国〉の最東端に位置しています。国土はとつぜんの嵐や厳しい冬の冷気で荒れはてた丘陵と、松や樫のうっそうとした森に覆われています。南部の天然の国境、〈死の丘〉に近づくと、次第に荒涼とした湿地帯に変わり、深い沼が点在し始めます。伝説では、ビカレイドの荒れ地では世界と世界の境界が弱いといわれています。狭い海岸沿いの平地には、交易場が点在しています。ピカレイド人は異国人に寛容ですが、この国の高地に住む偏狭な民は異国人に屈辱的な態度を示すことがあります。ピカレイドの氏族は自らの氏族に篤い忠誠心を棒げているため、氏族間の反日や侮辱、憎悪は熾烈なものになります。ピカレイドは最初はメルニボネの属州、ついでロルミールの属州として、常に反抗心の強い好戦的な地域でした。伝統的にピカレイドの王はすべての氏族から人質をとり、使者として使ったり、あるいは彼らに対する自らの権力や国全体を強化するのに利用しています。各地方の統治者や氏族長はよく異国の備兵団を雇います。高名な英雄エルワーのムーングラムはピカレイドの歴史の後半、そうした部隊の1つを率いて南方を偵察することになります。だいたいにおいて傭兵団は氏族間で頻繁に生じる小競り合いの際に雇われます。かつてピカレイドの民は〈精霊の王〉を崇拝していました。ここ百年以上の間は〈混沌〉を崇拝する強大な教団が国内の都市から都市へと勢力を伸ばしています。教団の代表者は〈教皇〉として知られ、近ごろは、自身も〈混沌〉の信者である専制君主的なマルヴォス王に匹敵する権力を振るっています。抑圧された人々には、王は残酷な「血に飢えたもの」として知られています。〈イムルイルの略奪〉の二年間、マルヴォス王は自らの息子コルサック率いる長く激しい革命の渦に巻きこまれます。革命の勃発は、カリスマ的な預言者にして奇跡の具現者である。一人の人物が国内に〈天秤〉の教義を広めようとしたことに起因します。この新しい社会秩序は〈混沌〉が世界を征服し破壊すると同時に終わりを告げます。ピカレイドの民はキルトとスカート、チュニック、分厚い羊毛の外套を身に着けています。防具には氏族の飾り紋章を描き、男女を問わず派手な刺青を身体に彫りこんでいます。ピカレイドの民は、非常にずる賢い人を連れた狩人や罠師、カラス麦や毛深い牡牛を育てる農夫、有能な戦士です。チャラルの街は射手を輩出することでで有名です。高地の氏族は小剣(ショートソード)を持ち、その扱いには恐ろしいほど長けています。

フイルカール

支配者ジャーンド王
種族人間
言語共通話
職業大芸人、神官、船乗り
宗教〈法の教会〉(大多数)、〈混沌の教団〉(少数)
好まれる武器プロードソード、フィルカール式パイク、ハンティング・ボウ
防具ハーフ・プレート、スモール・シールド
文化的技能〈乗馬〉、各種の信仰
所持品上質の鮮やかな色彩の衣服3着そろい、うち1着は礼服。
上等の指輪またはそのほかの宝飾品[1d10X100]プロンズ分

フィルカールは、いねむるロルミールと活気にあふれたアルギミリアに挟まれた国家です。国土は小さいものの、〈南の人陸〉で最も豊かな国の一つです。海抜の低い湿地帯の海岸には、海洋生物が豊富に生息しています。大規模な漁船艦隊がラスキル沖合いの海域で、はえなわ漁を行なっています。一見、平らで際立ったところがないように見えますが、フィルカールの沼地や肥沃な谷は実り豊かです。丘陵地帯にはブドウやそのほかの果実が栽培され、羊や山羊、牛が放牧されています。海岸沿いの豊かな漁場からは、甲殻類やそのほかの魚介類が車宮に水揚げされます。豊かな自然の恵みのため、フィルカール人は傲慢です。狭い国土もまた、その原因となっているのかもしれません。国上の狭さは国民の愛国心によって補われています。フィルカールは〈新王国〉の中でも最も人日の密な国で、人々の群れあう都市には誇り高い住民がひしめいています。フィルカール人は肥えた舌と料理の腕前で世に知られています。ロルミールの格言では「フィルカール人にやせたウサギを渡したら、素晴らしいご馳走を作ってくれるだろう」と言われています。フィルカールのどこでも、〈法〉の神々が崇められています。〈混沌〉が法で禁じられているわけではありませんが、主流を外れた時代遅れのものとみなされています。フィルカールを統治しているのは、若いジャーンド王ですが、この工はある意味、めかし屋です。王の服装は、たとえ先の尖った靴であれ山羊ひげであれごてごてした股袋であれ、国中で真似されます。ジャーンド王の統治する国は非常に文明化されており、国民はたけだけしくせっかちで、よく怒り、よく笑います。フィルカールの貴族は異常なほど見た目や衣服にこだわり、退廃と快楽を求めます。それに対抗できるのはアルギミリアの貴族くらいでしょう。フィルカールでは農夫でさえ、他国の基準からすれば身なりに気を使いますし、生活水準も高度です。アルギミリアの血塗られた粛清が始まると、多くの避難民がフィルカールに逃亡してきます。アルギミリアとフィルカールは常に緊密な関係にあります。

〈不浄の城塞〉

〈不浄の城塞〉は〈新王国〉の地図には記載されていません。そのlli確な場所は〈混沌〉の信奉者たちだけが知っています。彼らは漢然とした、しかし確かな心の声に導かれ、危険を冒してその地にたどり着いたのです。〈不浄の城塞〉はピカレイドの東、砂漠の境界の内側に存在するとも言われています。その存在を知っているわずかな学者たちは、〈不浄の城塞〉はむしろイェシュポトゥーム・カーライという名で知られ、邪悪なものが美しく変わる場所だと言います。また、〈不浄の城塞〉はつややかな石で出来た悪夢の城で、永遠の薄闇に包まれていると主張するものもいます。あるいは、この世界の未来を神託によって預言した神の亡きがらだといも言われています。いずれにせよ、〈不浄の城塞〉は謎に包まれ、未知なるがゆえに恐怖を引き起こす場所です。

ロルミール

支配者ファダン王
種族人間
言語共通語
職業芸人、狩人、神官、船乗り、交易商人、兵士
宗教〈法の教会〉
好まれる武器プロードソード、ロルミール式アックス
防具ハーフ・プレート、スモール・シールド
文化的技能〈回避〉〈捜索〉
所持品〈ドンブラスの剣〉を意匠したベンダント。
ドンブラスは〈混沌〉の勢力に対抗するのに必要な不寝番の代表者。

400年前、ロルミールはメルニボネの支配から最初に独立した活気にあふれた国家でした。その記念すべき出来事に続く数十年間、ロルミールの覇権は急速に広がり、女王エロアルドの治世が始まるまでには、南の国々はすべてロルミールの統治下にありました。女王の(戦士〉であり恋人でもある英雄、マラドールのオーベック伯爵はロルミール独立戦争で功績のあった人物ですが、エロアルドの統治に力を貸しました。オーベックは不定形の〈混沌〉から新国上を作り出した最初の〈法の戦士〉です。女工の崩御と同時に、ロルミールは共和国となり、徐々に近隣諸国への支配権がゆるんでいきます。それから200年後に、ロルミール共和国は消滅します。以来、ロルミールは〈新王国〉の中でも最も快適で平穏な場所となり、南部では今なお優勢を誇っています。現在は、恰幅のよい慎重なファダン三がロルミールを統治しています。〈イムルイルの強奪〉で工が生命を落としたあとは、灰色の顔と灰色の髪、灰色のひげをしたモンタンが即位します。モンタンは〈世界の終末〉の際、南方諸国を裏切り、パン・タンと〈混沌〉の軍に加勢します。〈沸騰海〉からの海流が海岸沿いの岸壁や砂利浜を暖めるため、ロルミールは温暖な気候に恵まれています。内陸部のロルミール草原ではかなり気温が低くなります。秋の終わりから、内陸地域は雪に覆われますが、海岸地帯は一年を通して穏やかな気候です。海岸付近では、ブドウ畑や果樹園が見られます。ゆるやかに起伏する、心地よいロルミールの丘陵地帯には、白い石の壁に藁葺き屋根の村が点在しています。ロルミールのどこでも〈法の神々〉が信仰されています。〈混沌〉信仰は禁じられていますが、じっさいに抑圧されることはめったにありません。南部ロルミールの大草原は、謎めいたカネルーン城に向かって高くなっています。この城は〈新王国〉の究極の〈法の戦士〉、「暁の女工」マイシェラの居城でした。かつては、〈世界の果て〉に建っていましたが、いま〈世界の果て〉ははるか南に移動しています。マイシェラは〈新王国〉での〈混沌〉の力を弱める責を担い、長らくメルニボネと敵対し続けています。セレブ・カーナによってマイシェラが殺害されると、再び地球では〈混沌〉が勢力を増すことになります。ロルミールの河川は有名で、この国の生命の源です。交易商人や鉱夫、毛皮の罠師は河川を利用して、国境から他国へと旅をします。漁師たちは、もっと流れの穏やかな流域ではえなわ漁を行ないます。ロルミール人は概して無口で温厚な民で、金髪と血色のいい顔をしています。しかし、過去もそうだったように、ロルミールを守るためなら喜んで農共を捨て、剣や斧槍(ハルバード)を手に戦います。ロルミールの貴族階級は、騎士道に従った振る舞いで知られています。ロルミール人は迷信深いとはいえ、人懐っこく開けっ広げな人々です。・面に刺しゅうを施した亜麻布(リネン)や革、分厚い羊毛のil着、毛皮などを着ています。

北の大陸 ~The Northen Continent~

〈北の大陸〉は南に比べて人口が少なく、貧しい大陸です。かつて、この北方の大陸ではダルジ帝国が最盛期を迎え、国土を〈溜息の砂漠〉のさらに先まで拡張しました。〈北の大陸〉では、どこを探せばよいかさえ知っていれば〈獣の民〉の古ぼけた遺跡を発見することができます。同様に散在する〈光の帝国〉の遺跡や遺産も発見されます。

イルミオラ

支配者イルミオラ元老院
種族人間
言語共通話
職業職人、芸人、商人、神官、交易商人、兵士
宗教〈法の教会〉
好まれる武器ハンティング・ボウ、ショート・スピア、スリング
防具まばゆく磨かれたハーフ・プレート、スモール・シールド
文化的技能〈芸術〉〈交渉術〉〈読心術〉
所持品上等な刺しゅう入リチュニックとタイツ。
芸人――最低500プロンズの価値の楽器一つ。
兵士――200プロンズの価値の儀式用の刻印入り革鎧(ソフト・レザーとして扱う〉。

〈法の神々〉がイルミオラのなだらかに起伏する草原や都市国家を支配しています。イルミオラの南部や海岸沿いでは激しい雨が降ります。北部は乾燥しており、草原は〈溜息の砂漠〉の砂地へと変わります。南部イオミオラ全域では、朝夕ほぼ毎11のように霧が発生します。気候は温暖ですが、めったに暑くなることはありません。古代の森の木立ちが草原に点在しています。海岸沿いではそうした木立ちはほとんど切り払われています。イルミオラの都はイルマーです。イルマーの港は丘陵に囲まれ、その上には急な板ぶき屋根の家屋が建ち並び、各家屋は狭い砂利道で仕切られています。この国ではそうした建物が一般的です。イルミオラは多数の都市国家から形成され、それぞれの国家から選出された元老たちの会議によって統治されています。バクシャーンは最も裕福な都市国家です。元老の称号は世襲制で、各都市の最も古い家系が所有しています。元老たちは国全体を統治すると同時に、連帯しておのおのの都市国家を支配し、正義を行きわたらせ、国の法を支えています。都市国家間の商人たちの反目は日常茶飯事ですが、同盟を結んだ都市の結びつきは強力で、内乱のためにそれが敗れたことはいままでありません― もちろん、貴族たちの言う、貪欲な商店主同士のいざこざは起こっていますが。元老として普遍の影響力を得ようとする豪商に、バクシャーンのニコーンと、〈嘆き野〉の近くにあるカーラークのヴォアシューン氏族がいます。カーラークは翡翠の塔の建つ美しい都市です。ヴォアシューンー族は氏族長のヴォアシューン卿がカーラークの元老長でもあるため、三倍の影響力をもっています。広大なイルミオラは若い国で、国民は活気に満ち、開放的です。国上の多くは野蛮で未開のままです。都市と都市、町と町が遠く離れているため、イルミオラ人は非常に進んだ独立心をもっています。交易は都市国家間でふつうに行なわれていますが、標準的な隊商は目的地と目的地の間で何週間も過ごすことになります。イルミオラ人は身長も体格も平均的です。肌は白く、髪の色は明るい茶色から金色まであります。赤い衣裳は伝統的にイルミオラの葬儀の際に身に着けられます。踊りや歌といった芸術は貴族の誰もが学びます。農民でさえ、労働歌のような単純なものの中にも創造に喜びを見いだします。イルミオラ製の革はほかの国で高く評価されており、イルミオラでは農夫も貴族もみな、凝った装飾を施した革や裏皮の衣服を身に着け、毛皮の帽子をかぶっています。牛の大きな群れはイルミオラの果てしない草原で草をはみ、この国の富と誇りの大きな源となっています。イルミオラでは神々でさえ牛の乳で慰撫されます。

ヴイルミール

支配者ナクロン王。
 ただし枢機卿ギャリックがかなりの影響力をもっています。
 ほとんどの市民はこのいずれかを支持しています。
種族人間
言語共通話
職業職人、技術者、神官、書記、船乗り、兵士、徴税人
宗教ギャリック枢機卿の統括する〈法の教会〉。そのほかの教義はまったく勢いがありません。
好まれる武器ハンティング・ボウ、ロング・スピア、スリング
防具ハーフ・プレート&メール、フル・シールド
文化的技能(技工術〉〈読心術〉
所持品価値500プロンズのギャリック枢機卿の小さな青銅像。
素晴らしい出来栄えの役に立たないからくり装置。
 取っ手を回すと、網糸と紡ぎ車が動きます。
 ただ網糸と紡ぎ車がかみあうのをながめて楽しむためだけの装置です
 (通常は価値200 プロンズ、〈交渉術〉ロールに成功すれば3倍になります)。

ヴィルミールは国土のほとんどが平らな草原で、温かく快適な気候に恵まれています。300年前には、いたるところに森が茂っていましたが人間が開拓しました。人間は材木を使って火をおこし、開拓地に穀物を栽培しました。いまはほとんどが平原になっています。ヴィルミール人の採用していた焼き畑式農耕が国土を疲弊させ、乏しい穀物や浸食、砂嵐に苦しめられています。ヴィルミールの低い丘陵に蜂の巣のように張りめぐらされた鉱山は、いまはほとんど役に立たなくなり、精錬場や精製所から溢れ出した廃液が河川を汚染し続けています。不毛の僻地に残った農夫は思うにまかせない収穫に苦しみ、しかも収穫の大部分が貢物として〈法の教会〉や貴族に召しあげられてしまいます。ヴィルミールの農夫が服従するのは、飢餓のゆえです。疲れきり、そうした権力者に抗う力もありません。
この国の貴族にとっては、人生は楽しいものです。気難しいナクロン王に雇われた私掠船の船員たちは、故郷に持ち帰る品物を探して、海をあさりまわっています。彼らはただ国の発行した免許状をもっているというだけで、実態は海賊と同じです。ヴィルミールの貴族は自分たちの分け前を楽しみ、権力者や好戦的な〈法の教会〉に奉仕することに時間を費やします。多くのヴィルミールの貴族は近親婚によって虚弱体質となり、優柔不断で意気地がなく、吃音です。虚弱体質などの遺伝的な疾患はヴィルミールの貴族の間ではよく見られるものです。
事実上何の権力も持たないわずかな商人階級を除いて、ヴィルミール人はほとんどが農夫です。彼らは浸食や葉涸れ病と闘いながら、やせ細った農地で身を粉にして作物を育てています。あるいは、街の工場や〈法の教会〉の薄暗い水車場で奴隷のように働かされています。
〈法〉を信仰しているため、ヴィルミールは技術的には〈新王国〉で最も進歩しています。大きな町ならば、水力を利用した粉挽き装置や織機がごくふつうに見られ、さらにぜんまい仕掛けの騎士といった素晴らしい装置が寺院を警遅しています。ヴィルミールの主導者は〈法の枢機卿〉、冷酷なギャリックです。ギャリックは王よりもはるかに絶大な権力を有しています。〈イムルイルの強奪〉でナクロン王が死去すると、ヴィルミールは王位継承戦争に突入します。ナクロンの世継ぎは〈教会〉によって詐称者の烙印を押され、代わりに枢機卿ギャリックの選んだ後継者が上位につきます。数年後、埋まれたばかりの赤子が王に即位して、ようやく継承権争いは決着します。しかし、その即位から1年も経たないうちに、〈世界の破減〉がヴィルミールを襲います。
奇抜さや個性は、ヴィルミールでは歓迎されません。どの街も住民も一様に、灰色やくすんだ茶色をしています。〈法の神殿〉はピラミッドのような形に建てられ、それを模した巨大な三角形の防壁が人口過密の街をぐるりと取りまいています。そうした寺院を除けば、ヴィルミールの建物はみな砂岩でできており、一定の大きさと高さに建てられています。ヴィルミール人はその大多数が〈法〉を狂信していることを除けば、おそろしく個性のない人々です。灰色のチュニックをまとい、髪を短く切り、彼ら自身の顔も青ざめて生気がありません。
もちろん、すべてのヴィルミールがそうとはかぎりません。けれど、いつ異端審間が行なわれるかわからないという恐怖が、そうした傾向を強めています。
占フロルマーのアヴァン・アストラン公爵は〈法の教会〉の勅命に従わなかった数少ないヴィルミール人の一人です。公爵の統治下、古フロルマーは自由思想家や芸術家、冒険者、哲学者などの集まる、一風変わった大都市となります。残念なことに、アヴァン公爵は、放浪の旅に出ていた白子の皇子エルリックの手によって殺害され、古フロルマーの繁栄ははかなく終わりを告げます。

タネローン

支配者なし。民の合意による統治
種族人間
言語共通語
職業職人、技術者、芸人、狩人、医師、書記、兵士;奴隷はいない
宗教〈天秤〉
好まれる武器さまざま(住民と同じく変化に富んでいる)
防具さまざま(住民と同じく変化に富んでいる)
文化的技能さまざま
所持品さまざま(住民と同じく変化に富んでいる)

永遠の都タネローンは時折、刻々と変化する〈溜息の砂漠〉の海岸に出現しますが、どの地図にも記されていません。その所在を知るものはほとんどいません。というのも、タネローンは〈法〉にも〈混沌〉にも愛でられていないからです。
そうした神々は住民の許しがなければ、タネローンの低い防壁を超えることができません。〈混沌〉は可能なら、その都市を破壊しようとするでしょう。
タネローンは世界の苦難と神々の強要を逃れてきた避難民たちの街であり、人々はそこに安寧を見いだします。
この街は住民に〈天秤〉の力を与え、自信とおのれを信じる強い精神力をうつろな彼らの心に与えます。苦′h画し、悲嘆に暮れた人々は、タネローンの穏やかな通りや低い家並みに安らぎを見いだします。この謎めいた伝説の都で、休息を得られないさすらい人は、メルニボネのエルリックだけです。タネローンは〈天秤〉の都です。住民は指導者も信ずる神ももちません。タネローンはこの世界よりも長く生き続けるでしょつ。
タネローンはさまざまな姿で、あらゆる世界に存在しています。外見はそれを発見したいと願う人々の先入見によって変化します。〈新王国〉では、タネローンは黄色い砂の砂漠に囲まれた美しい姿をしています。平屋根の家々、砂利敷きの路地、穏やかな噴水の音、鳥のさえずり、淡い色の丸屋根の建物、優美な尖塔といった町並みが、住民の心を癒します。
住民はみなタネローンの場所を外界の誰にも明かさないと誓いを立てています。どれほど奥義を極めたものでも、タネローンの場所を突き止めるのは非常に困難です。
この永遠の都は自尊心よりも平和を求めるすべての定命の人間の心に生じる秘密です。そのことに気づいているものはほとんどいませんが、タネローンは共通の善に奉仕するために人々が集う場所すべてに存在します。たいていは、実際にその町を求める旅に出る前に、自身のなかにタネローンの栄華を見つけ出さねばなりません。

〈溜息の砂漠〉

支配者部族の族長、またはハーン(〈放浪の民〉)
種族人間
言語共通語、レシュ語
職業狩人、蛮族、祈祷師
宗教〈天秤〉〈野獣の王〉〈精霊の王〉
好まれる武器砂漠用の上方に沿った弓、シミター
防具バーバリアン・レザー&ウッド、スモール・シールド
文化的技能〈航海術〉〈乗馬〉
所持品小柄なポニー1頭。
価値[2D6X100]プロンズの遊牧民の持ち物を載せた権を引いています。

〈溜息の砂漠〉の砂まみれの荒れ野と乾燥した河岸は、太陽の容赦ない熱にあぶられています。
絶えず風が悲しげなうなりを上げて砂丘を吹きわたる風の音が地名の由来となっています。
北の海岸沿いでは、砂漠は急な丘陵地に姿を変えます。
〈溜息の砂漠〉に霧や雨が訪れることはめったになく、ほとんどこうした丘陵地の海側に限られています。
その先には荒れはてた単調な砂漠の光景が広がり、砂漠の涯はゆるやかに南方へと広がっています。
学者たちは〈溜息の砂漠〉が悲惨な結果に終わった呪文の産物であることを知っています。
二千年前、この砂漠にはクォルツァザート帝国が栄えていました。
その帝国の一人の魔術師が過って呪文を唱えた結果、帝国は砂に埋もれ、メルニボネ軍の侵略を許してしまったのです。
美しい都クォルツァザートだけがその砂嵐を生き延びましたが、すっかり外界から孤立し、いまではその存在は伝説となっています。
〈溜息の砂漠〉の焼けつく砂地から、ところどころ尖った岩が突き出し、遠く北方には〈世界の果て〉が広がっています。
軍隊や隊商の残骸が乾いた砂に埋もれて横たわり、哀しげに吹きすさぶ風が時折その姿を暴いていきます。
砂嵐に吹かれて姿を現した古クォルッァザートの遺産や、希少な金属や宝石を発見したという報告がたまに旅人から届くことがありますが、絶えず姿を変える荒野はすぐにまたそうした場所を隠してしまいます。
苛酷な環境にあるとはいえ、〈溜息の砂漠〉は決して生気のない場所ではありません。
そこに住む自然の生き物の多くが、夕暮れから夜明けの間に活動します。
たくさんの哺乳類や爬虫類、鳥類が水のない荒野に順応してきました。
遊牧民の部族もこの砂漠に住んでいます。長身で気品と威厳に満ちた人々は、その勇敢さとシミター〈偃月刀〉の扱いに長けていることで知られています。
彼らは自ら〈放浪の民〉と名乗り、たくましい顔つきとくぼんだ目をしています。
肌はたいていは濃い色をしていますが、部族によってはもっと明るい金色がかった黄褐色の肌をしているものもいます。
服装はぴったりした絹の半ズボンに大きめの上着、紋織物か天鵞絨の外套、ゆったり垂らしたターバン、頭巾付き外衣です。
砂漠の戦士は革で覆われた分厚い木製の鎧と、毛皮で縁どりされた鉄の帽子を身に着けています。
短弓とシミター、鷹の羽を失羽根にした失を携えています。エルリックは彼らの特異な言語レシュをメルニボネ語より古いものと考えていました。
遊牧国家の氏族の多くは、咲き誇るサポテンの花から名前をとった〈銀の花のオアシス〉に年に一度、集まります。
彼らは神を持たず、瞑想と自我の覚醒を通して悟りを開こうとします。
遊牧民の歴史によれば、彼らははるかな昔、メルニボネの怒りを逃れて、この砂漠にやってきたと言われています。それ以来、ずっと砂漠を故郷としています。
〈溜息の砂漢〉はまた、高名な預言者ラムサールの生まれ故郷でもあります。ラムサールは〈混沌の神〉ナージャン率いる物乞いの群れからタネローンを守って功績を上げます。
堕ちた神、憂鬱な巨人のモルダガもまた、この砂漠の砂地を根城にし、ぼつんとそびえる山の頂上で孤立して暮らしています。

〈トルースの森〉

支配者ガセラン王
種族退化した人間
言語共通話
職業狩人、兵士、暗殺者
宗教なし
好まれる武器梶棒、ショート・スピア、スリング
防具レザー&リング、よくてスモール・シールド
文化的技能〈乗馬〉〈追跡〉
所持品倒した敵のしなびた手で作ったベルト

オルグ王国はさながら・癌細胞のように、イルミオラの草原の一部を占拠しています。その国のことはほとんど知られていませんが、ずんぐりした野蛮な人々が住んでいることはわかっています。彼らの体は変形し、態度も粗暴です。オルグ人はめったに国境の外には出ませんし、そもそも国境を越えるとまず歓迎されません。オルグとその国民については、死霊術(ネクロマンシー)や腐敗に向かう悪い力など、不吉な伝説がささやかれています。多くの人は、放っておけばオルグもその獣じみたよろよろ歩きの住民も、いずれ完全に腐れ落ちるだろう期待しています。イルミオラの最も勇敢な豪商でさえ、オルグの都と交易しようとはしません。オルグの都は陰気な〈トルースの森〉の奥深くに隠されており、オルグの民よりなお恐ろしいものが潜んでいると言われています。
不吉な〈トルースの森〉がオルグ王国の境界線となっています。不気味な葉音が響き、生きた獣や昆虫の気配はまったくありません。ぼってりとした多肉質の花がたわみ、ゆがんだ薄気味悪い木々はまるで独りでに動きだすかに見えます。
伝説によれば〈トルースの森〉は前の〈周期〉の最後の名残であり、オルグ人は〈呪われた民〉の末裔だと言われています。
〈トルースの森〉は豊富な薬草や魔法の植物に恵まれていますが、その忌まわしい森の奥にわけいり、そうした卓木を探そうとする勇気ある無法者はほとんどいません。
ガセラン王は、堕落し額廃したオルグの支配者です。オルグ国内や〈トルースの森〉で見つけたものは残らず切り捨てるよう、背中の曲がった奇形の戦士たちに命じています。ガセランとその近親者たちはやがて、破滅をもたらす白子の皇子エルリックが浄化の戦火でオルグを席捲したときに、その皇子に殺害される運命にあります。

〈嘆き野〉

支配者部族の族長、またはハーン(〈放浪の民〉)
種族人間
言語共通語、モン
職業狩人、蛮族、祈祷師
宗教〈精霊の王〉〈野獣の王〉
好まれる武器砂漠用の上方に沿った弓、シミター
防具バーバリアン・レザー&ウッド、スモール・シールド
文化的技能〈航海術〉〈乗馬〉
所持品小柄なポニー1頭。
価値[2d6X100]プロンズの遊牧民の持ち物を載せた橇を引いています。

ヴィルミールの東に〈嘆き野〉として知られる、霧に包まれた広大な高地が広がっています。その岩だらけの急な斜面を登りきると、旅人は柔らかな芝に覆われた台地を見渡すことができます。雨が絶えず降り続けているため、草は青々と茂り、地面はしっとりと湿っています。その波打つ緑の海に、銀色の湖や湿地が点々と散らばり、そこここにうっそうと茂る森の木立ちが見えます。この荒野には多くの動物が生息しています。マンモスやクマ、穴居性の捕食動物モール・ワームまでいます。山地と荒れ地だけの名もない地帯が、〈溜息の砂漠〉と〈嘆き野〉をへだてています。
〈嘆き野〉の蛮人たちは、毛度のついた帽子に格子模様の外套(クローク)、羊毛か縁飾りつきの皮の分厚い服を着ています。宝石の代わりに、体に儀式用の傷を彫りこんでいます。
奇妙な言語モンには書き文字がありません。蛮人の多くは素晴らしく乗馬に長けています。ほとんどのものが歩けるようになる前に乗馬を習い始めます。また、追跡や弓の製造にも非凡な才能を示します。乗るのは〈嘆き野〉原産の小さな毛むくじゃらの小馬で、〈西方〉でよく見られる乗馬用の馬より小型で頑丈です。
〈嘆き野〉の部族は遊牧の民で、雨に洗われた青々した大草原を移動します。ある季節が来ると集まって祝祭を執り行ないますが、それが済むと再び小さな血縁集団に分かれ、巡礼の道を引き返して〈嘆き野〉をさまよいます。彼らは精霊を含めて、さまざまな自然の霊魂を崇拝し、祖先を敬います。
異国人を信用せず、中でも迷信深いものは〈嘆き野〉だけが真実の世界であり、霧と雨の幕の向こうには地獄、すなわち〈混沌〉の世界がある、と主張します。

ナドソコル

支配者「七本指の」ウリシュ王
種族人間
言語共通語
暇業物乞い、盗賊、暗殺者
宗教すべての民一 〈物乞いナージャン〉。この世界に皮肉を求めるもの一 〈道化師バロ〉
好まれる武器物乞いの包丁(ハチェットとして扱う)、松葉杖(梶棒として扱う)、盗賊のこん棒
防具不潔なぼろ布(ソフト・レザーとして扱う)、または不ぞろいな寄せ集め(リング&レザーとして扱う)
文化的技能〈隠蔽〉〈言いくるめ〉〈錠開け〉
所摘品どこかに埋めた[1D8 X1D8]の青銅貨入り金庫。
特殊なポーション(GMの裁量による)一日分。
物乞いや窃盗で手に入れた種々の硬貨や小さな装身具。

ナドソコルの壊れた塔や傾いだ防壁はヴィルミールの北西部を荒廃させています。しかし、荒れはてた光景に目を奪われるより先に、人々はこの物乞いたちの街を覆う悪臭に吐き気を覚えるでしょう。数世紀前、ナドソコルはヴィルミールの一部でした。しかし、猛威を振るう痘清に多くの生命が奪われたあと、市民たちは町から逃げ出しました。壊減的なその疫病から民を守ることは〈法の神々〉にも〈混沌の神々〉にもできませんでした。街が見捨てられた直後、物乞いの群れがここに移住し始め、この街を自分たちのものだと主張しました。
ナドソコルは〈新王国〉で悪名をはせています。疫病にかかって体の変形した乞食たちは朽ち果てた建物から忍びだし、}H界中で物乞いしたり盗みを働いたりしています。彼らは常に卑しい領主「七本指の」ウリシュ工に奉仕しており、戦利品を携えてこの安息の地ナドソコルに戻ってくるのです。
汚物にまみれた街路、半壊した塔、疫病に侵された貧民窟をもつこの街の物乞いたちは、世界のほかの地方からの嫌われものです。ナドソコルは精神面でも外面でも、タネローンの対極にあります。二度、物乞いの群れはナドソコルから進軍して、その永遠の都を襲撃します。ウリシュ王の崩御にはエルリックも一役買いますが、王の死後、〈混沌の神〉ナージャンとその人間の愧儡が物乞いたちを導くことになります。

西の大陸 ~The Western Continent~

凍てついた〈蒼白海〉の向こうに波瀾に満ちた未開の〈西の大陸〉の海岸が広がっています。人口はまばらです。
広大な原野、とりわけその極北地域は人も住まず、探検もされていません。
一方海岸沿いでは、絶え間ない略奪のために生命を落としたものの亡きがらが累々と積まれています。
山並みを越えた西部にはもっと暑い地方がありますが、その地域についてはムアコックも触れていませんし、〈新王国〉の人々にも知られていません。
ターケシュの北部は広大なトウヒや松の森林地帯になっています。こうした原生林を旅するものは、最後には荒涼とした凍土に行きつくことになります。
凍土はさらに氷と雪に凍てついた原野に代わり、〈世界の果て〉へと続いています。

〈霧の沼地〉

この不気味な沼地はシャザールと〈沈黙の国〉の境界になっています。名前から推測される通り、この沼地は絶えずじめじめした蒸気と、まとわりつくような霧に覆われています。
真夏の陽光でさえも、それを蒸発させることはできません。
沼地やじめじめした湿原からなるこの湿地帯には、蛇や肌を刺す昆虫、水棲鼠、沼地熊といったおびただしい数の生き物が生息しています。冒険者たちはここで、悪臭を放つ黒い泥の底なし沼や、苔の垂れさがった幽霊のような枯れ木に、そして果てることのない霧のとばりに迎えられるでしょう。
伝説では、腐敗物と悪臭を放つ泥砂に満ちた、かすかに光るこの沼地は、一万年前〈沈黙の国〉の住民がメルニボネの軍勢の侵略を防ぐ障壁として掘ったものだといわれています。

ジャーコル

支配者ダーミット王
種族人間
言語共通話
職業芸人、商人、神官、船乗り、書記、兵士、盗賊、暗殺者
宗教〈法の教会〉
好まれる武器ハンティング・ボウ、ロング・スピア、スリング
防具レザー&リング、スモール・シールド
文化的技能〈乗馬〉〈操船〉
所持品血縁者や恋人から贈られた暗号のメッセージ入リロケット、
通常の硬貨や安価な宝石を少なくとも100 プロンズ分、
 秘密の隠し場所に隠しています。万が一のときのために……。

ジャーコルは西方の強大な国家です。その大規模な海軍と商船艦隊は〈新王国〉の海域のどこででも見られます。ジャーコルは若く活気に満ちた国で、さまざまな下位貴族によって統治されるいくつかの行政区から成っています。貴族たちは交代で忠誠の義務を果たします。
過去一度ならず、貴族階級が農民を巻きこんで暴動を起こし、ジャーコルの指導者を失墜させてきました。〈エルリック・サーガ〉の開始時には、細面のダーミットが王です。しかし、〈イムルイルの略奪〉で王が死去したあとはその妹、みだらで冷笑的なイシャーナが王座を継ぎました。
ジャーコルの海岸沿いは、ほとんどが低い岸壁になっており、内陸に向かってなだらかな丘陵が続いています。丘陵を超えると、乾燥した険しい地勢に変わり、小麦などの穀物の栽培に適しています。一方、海岸地帯は降雨量が多く、豊富な植生に恵まれています。西部の地域ではいくらか暑くなりますが、気候は温暖で適度な降雨があります。雪に覆われた細長い連山がジャーコルの西の国境になっています。
首都ダコスは海岸沿いにある巨大な都市で、大きな港があります。1日市街の建物にごてごてと尖塔がとりつけられていることから、ダコスは〈尖塔の都〉とも呼ばれます。都市部は防壁に囲まれた旧市街の周辺まで広がり、スレートぶきの家並みが連なっています。宮殿と〈法の大聖堂〉は旧市街の大きな青空広場の前にあります。その広場では、犯罪者たちが礫にされています。
超一流の戦闘部隊、〈白豹隊〉が王の身辺を警護しています。
ジャーコル人の猜疑心と秘密好きは有名です。彼らはおおっぴらに魔法が使われることに慣れておらず、今なお魔術を不自然で、おそらくは邪悪なものだと考えています。迷信深く、〈白き法の神々〉の規律をかたくなに信じています。
ジャーコル人は長身で、どちらかといえば黒い肌をしています。貴族は気候に適した、流れるような絹や上質の衣服を身に着けています。一方農夫たちはくすんだ茶色の動きやすい衣服を着ています。多くのジャーコル人にとって、陰謀と策略は人生そのものです。優秀な暗殺者や書記、学者、神官になる素質を備えています。

シャザール

支配者馬上のオハダ
種族人間
言語共通話
職業芸人、商人、神官、兵士、盗賊
宗教〈法の教会〉
好まれる武器ハンティング・ボウ、シミター
防具スモール・シールド、レザー&リング
文化的技能〈乗馬〉〈追跡〉
所持品シャザール産の馬(騎兵、または裕福な個人のみ。
 乗用馬と同等ですが、CONが+2、NTが+1されます。
 特に裕福な、個人は同等の品質の、価値2,500プロンズの予備の馬を持っています)。

シャザールの豊かな草原はこの大陸の南部に広がっています。シャザールの海岸沿いの岸壁や砂利浜から絶えず吹きつける海風に、まばらな草がなびいています。内陸部のなだらかな高地には柔らかな芝が厚く茂り、春と夏には花が咲きみだれます。〈沸騰海〉に隣接しているため、シャザールでは霧や豪雨がよく見られます。
〈霧の沼地〉がシャザールの西の国境になっています。国境付近は豊かで肥沃な地帯ですが、人は住んでいません。その向こうにある〈霧の沼地〉や〈沈黙の国〉にひそむ危険を恐れるためです。
シャザールの馬は〈新王国〉で最高の軍馬の評判をとっており、シャザール人は勇敢で巧みな乗り手として知られています。ディオペルダやアフリタンの騎士はこの国で最もよく訓練された騎兵で、男女を問わずシャザールの多くの若者はその一員として働くことを夢見ています。シャザールとシャザール人にとって、馬はその誇りと喜びであり、非常に大切にされています。
馬肉を仕入れるため、多くの商人が〈蛇の牙〉の絶えることない危険を冒して、シヤザールを訪れます。〈蛇の牙〉は山がちな岩山地帯で、シャザールの海岸沿いに長々と続き、岸からわずか百メートルのところまで山が迫っている場所もあります。変わりやすい海流と〈竜の海〉や〈沸騰海〉からの嵐があいまって、毎年、多くの船が〈蛇の牙〉にたたきつけられています。

ターケシュ

支配者ヤリス王
種族人間
言語共通語
職業狩人(北部)、蛮族(北部)、神官、交易商人(南部)、兵士、盗賊
宗教〈精霊の王〉〈ストラーシャ&グローム〉
好まれる武器プロードソード、ハンティング・ボウ、シー・アックス、スリング
防具レザー&リング、スモール・シールド
文化的技能〈登攀〉〈回避〉
所持品上質の布地を数反。合計、[1D8+200]プロンズの価値。

ターケシュは二面性のある国です。国の最北端や西部は山がちで、うっそうとした森が茂っています。海岸は峡湾になり、無数の小島がちらばっています。南部と東部はもっと穏やかで、農地や草原が広がり、夏は高温で乾燥します。北部には〈蒼白海〉から嵐が襲来し、特に冬は厳しい気候に見舞われます。
ターケシュの山岳地帯は農耕に適した土地がほとんどなく、南部の平原に比べて苦しい生活を余儀なくされます。北部ターケシュ人は狩猟や漁、略奪をして生計を立てています。まばらな狭い大麦畑からは、たまにわずかな穀物が収穫できます。
南部の住人は、小麦や大麦が豊富に収穫され、多くの家畜を飼育しているため、交易によって生計を立てています。南部では、ターケシュ人は鮮やかな絹や派手な色合いの羊毛、天鵞絨、紋織物の服を着ています。一方北部の衣服は毛皮や厚手の羊毛でできています。南部の戦士はダリジョール人にならって、青い漆塗りの鎧を重たげな羽根飾りで飾っています。それに比べて、北部の衣裳は粗雑で簡素なものです。ターケシュ人は一様に背が低く、色黒です。男性は伝統的に髪やひげに油を塗ります。職業はは木こりや農夫、狩人、戦士などです。ストラーシャやグロームに対する信仰は、息をのむほどめまぐるしい踊りに特徴があり、〈新王国〉中で有名です。
南部ターケシュ人は、同属の北部人に比べて、自分たちをより文明的だと感じており、隣国のダリジョールやジャーコルの様式に大きく影響を受けてきました。北部人は南部人を覇気のない弱者、退廃的な都会人とみなし、南部人は北部人を無知な野蛮人だと考えています。南の人々はほとんど都市や小さな町や農場で暮らし、北部の人々は孤立した一族の土地か、狭い緊密な共同体で暮らしています。
ターケシュの南部と北部には明らかな反目があり、集落同士の略奪や小競り合いは11常茶飯事です。北部の戦士の多くは、竜の舶先のついた海賊船で、険しい海岸沿いを航海し、襲撃の際に生命を落としてきました。南部人は北部人の海用斧によって切り殺されてきました。
ターケシュは若く不安定なヤリスエに統治されています。
ヤリス王は若くして父親をなくし、その重責を担う準備が整わないうちに王位につきました。ヤリスは自信のなさを、虚勢と傲慢さでごまかしています。王の治世に、ターケシュの南部と北部の間で内乱が勃発します。
ヤリスが〈イムルイルの略奪〉で生命を落とすと、従兄弟のヒルランが即位します。ヒルランは対立する北部と南部の仲裁役となり、前工よりはるかに優れた手腕を発揮して、自国を強大な統一国家とします。

ダリジョール

支配者サロスト王
種族人間
言語共通語
職業傭兵、神官、船乗り、兵士、暗殺者
宗教〈混沌の教会〉
好まれる武器プロードソード、ランス
防具ラージ・シールド、ハーフ・プレート&メイル
文化的技能〈言いくるめ〉〈乗馬〉
所持品若者はその豪胆さや勇敢さ、大胆さを証明するために傷や刺青を体に彫りこんでいます。
戦士は死後チャードロス神に出会ったとき贈り物にするために、常にブーツに銀の破片を忍ばせています。

好戦的な騎士と狸猛な私掠船を有するダリジョールは、〈西の大陸〉で最も強大な国家です。二百年と少し前、ダリジョールは西方の大部分の地域と同様、メルニボネの領地でした。
ダリジョールはフウェム・オメヨとして知られる地域の一部でした。現在はダリジョールはあちこちに散らばる行政区からなり、たけだけしい支配者サロストエに統一されています。サロスト王はこの国のほとんど伝説上の始祖、「都市を建設せしもの」アターンの子孫です。また、工は〈混沌の教会)の手先となり、パン・タンの神政官に採られています。サロスト王の宮廷ではパン・タン人の相談役たちがよく見かけられます。その暗黒の島の神官たちは何のとがめも受けずに国中を移動しています。
グリジョールは地理的には小さな国ですが、人口は多く、木々の密生する海岸沿いに人が集中しています。
内陸部はほとんど人の住まない草原と平野で、ところどころに瘤だらけのゆがんだ木が生えています。鹿や玲羊(レイヨウ)の大きな群れが平野を移動し、黒いたてがみのライオンがそれを捕食しています。
ダリジョールの戦十はその海賊行為で怖れられています。さらに、武装した小さな部隊がターケシュとジャーコルの境界を越えて村々を略奪しています。ダリジョール人は血に飢えた人々で、その多くは暴力を国民の気晴らしと見なしています。戦士の階級は、ダリジョールでは神官と貴族に次ぐ地位を占めています。
裕福な戦士はひらひらした羽根飾りのついた豪華な武具をまとい、一般の兵士は黒くて重い鉄の鎧を着ています。たとえ戦に従事することはなくともごダリジョール人の多くは戦闘的な衣服を身に着けています。
商人はダリジョールではあまり好まれません。戦や争いごとより、もっと穏やかな活動、例えば芸術や詩歌などを好むものは低く見られます。芸術家や詩人はダリジョールの社会では農夫や奴隷、肥料収集人よりさらに地位が低く、底辺の暮らしを強いられます。
ダリジョール人の多くは日焼けし、黒い瞳をしています。
太陽のせいで色褪せた薄い色の髪もよく見られます。傷痕や失われた手足、そのほかの不具は魅力的なものと見なされ、高い自律心と強い個性の証と考えらえています。

〈沈黙の国〉

〈沈黙の国〉の人ならぬ住人の起源は、メルニボネの統治どころか、この世界を今日われわれの知る姿に変えた〈精霊戦争〉以前にまでさかのほります。〈トルースの森〉の退化した原始人を除けば、彼らが〈呪われた民〉の最後の生き残りですが、彼らは〈トルースの森〉の民のことは知りません。
大昔、〈沈黙の国〉の住人は世界を統治していました。ここでいう「世界」とは〈新王国〉の世界が生まれる以前のもののことです。彼らの怒りが世界を破壊したあとも、〈呪われた民〉は生きながらえ、手を触れたすべてのものをゆがめていきました。〈呪われた民〉の介人は、クラカーとして知られる獣を進化させ、マイルーンを生み出しました。
〈新王国〉はいずれも、この地を避けています。この地の住人の存在は恐怖に満ちた謎なのです。いままでわずかの冒険者が〈沈黙の同〉に入っていきましたが、間に包まれた山脈から帰ってきたものは‐人としていません。青白く、逃げ足の速い住人は、その山脈の光の射さない荒れ野で人に見られることも知られることもなく暮らしています。彼らが自分たちの領域を越えてやってくることはまずありません。
〈沈黙の国〉が〈光の帝国〉の統治下に入ったことは一度もなく、メルニボネがこの呪われた種族を征服しようとしたこともありません。

〈ニレインの亀裂〉

岩に刻まれた街ニレインは、まどろむイムルイルよりさらに歴史の占い都市です。ニレインは世界の大きな謎の一つで、天然の岩に掘り込まれています。西方の山脈にある、大きな亀裂の奥深くに存在しています。この山脈は〈新王国〉最占の山並みです。この地域にまばらに住む村人たちは、ニレインには近づこうとしません。彼らにとって、ニレインの掘り込まれた垂直の亀裂は地獄への入り口であり、どんな犠牲を払っても避けるべきものなのです。ニレインはどの地図にも記されていませんし、事実上〈新王国〉では未知の場所です。
ニレインはその都市と種族の両方を指します。都市には異様に巨大な像や、大きく弧を描く螺旋階段、丸天丼の部屋、高さ数十メートルの窓、回廊、円柱、支柱などがあり、すべてが奇妙な紋章や複雑な浮き彫りで飾られています。いずれも、ニレインのある亀裂の岩に彫られたものです。
ニレインの住民はメルニボネより古い種族の末裔で、〈天秤〉のしもべです。セピリズという名で知られる人物に導かれて、いまはニレインの北の火山の奥でまどろんでおり、やがて〈世界の終末〉が来ると覚醒します。ニレインはかつてメルニボネに手を貸し、さらに〈天秤〉が定めたほかのものたちも助けてきました。ニレインの住人は黒い肌に、目鼻立ちの整った美しい容貌をしています。彼らはこの世界のものではない馬に乗り、ごく人間に近い奴隷に奉仕されています。奴隷たちは主人に呼び起こされるまで、岩に刻まれた都市で眠っています。ニレインは魔法を使いませんが、その優れた芸術は〈新王国〉の人々には魔法のように見えるかもしれません。

マイルーン

支配者長老フロック
種族マイルーン人
言語マイルーン語
職業狩人、神官、盗賊
宗教〈風の女王〉ラサ(精霊の王)
好まれる武器ハンティング・ボウ、ロング・スピア、マイルーンの襲撃棒、スリング
防具ハーフ・シールド、レザー&リング(背面は半分だけ防護されています)
文化的技能〈飛行〉〈有翼のマイルーン人のみ)〈捜索〉〈追跡〉
所持品敵をおびえさせるため、禍々しく鮮やかな絵を翼に描いています。
寝ぐらから持ち出した巣づくりの材料を肩掛け鞄に詰めています。
 中には、平均的な風の精霊を使い魔として封印しているものもいます。

マイルーンの有翼人は北の山脈の高所にある、岩だらけの高巣に住んでいます。
マイルーンは〈新王国〉に発生した最古の文明で、メルニボネがこの世界に登場するより前に、クラカーとして知られる野蛮な生き物から進化した種族です。
風説では、マイルーンと〈沈黙の国〉の住民とは何らかの関連があるとされています。
この有翼人は特異な言語を持ち、その言語自体もマイルーンと呼ばれています。
文字は象形文字です。
マイルーン人は翼を持ち、高山の頂きや断岸に住んでいるため、その文明に車輪が登場したことはなく、またその必要もありませんでした。
彼らの文明は二千年をかけて、ゆっくりと衰退してきました。
マイルーンは一度も帝国を形成せず、好戦的な国家となったこともありません。
マイルーン人は巨大な翼を除けば、人間に似ています。
男性も女性も同じように骨格が細く、すらりとしていますが、筋肉は発達しています。
肩幅が広く、胸は厚く、肩甲骨から翼が生えています。肌は青白く、赤から茶色の髪をしており、瞳は緑灰色です。
噂ではマイルーン人は卵を産むとされていますが、それは誤りで、人間と同様の方法で生殖します。
ただし、女性の妊娠期間は人間よりずっと短くなります。
住居のある山の寒冷な気候に適応しているため、あまり寒さに悩まされることはありません。
むしろ暑い気候を嫌います。
自分たちの領地では、マイルーン人は毛皮の下帯だけを身に着けています。
マイルーンの社会は拡大家族と群れからなっています。
この有翼人はこれといった農業は行なっておらず、兎や鹿などの狩りの獲物や、さまざまな苔類、根菜、木の実などを食べて暮らしています。
静かな孤立した生活を好み、近寄りがたい威厳を備えています。
マイルーンの天敵は、いまでは絶滅したと信じられていますが、巨大な白猿でした。有翼人はロング・スピアでその敵と戦ってきました。
マイルーン人が外界と交流することはほとんどありません。
地理的に隔離されているためもありますが、自給自足の社会を築いているのがその原因です。
マイルーン人は複雑な空中の儀式を行なって、信奉する〈風の女王〉ラサに捧げます。

そのほかの地域~Elsewhere~

〈知られきる東方〉

〈北の大陸〉の〈溜息の砂漠〉の東に、少なくとも〈新王国〉の人々には知られていない、地図にない広大な地域があります。
はるかけ、この東の地はメルニボネの領地でした。
しかし、約・千年間〈新王国〉から切り離され、その間に特異な国家と文化を生んできました。
例えば、輝かしいエシュミールがあります。
騒がしいその都エルワーからは英雄ムーングラムが生まれます。プムは〈混沌〉の神官戦士の一派の本拠地です。
ほかにもオカラやチャングシャイなどがあります。
これらは〈未知なる王国〉の中にあります。〈新王国〉の技能を参照してください。

〈名のない大陸〉

〈沸騰海〉の向こうに、謎に包まれた〈名のない大陸〉が横たわっています。
この大陸は地図にはなく、人跡未踏の地です。
現在知られているところでは、うっそうとした熱帯雨林が大地を覆い、その中にはあらゆる種類の色とりどりの珍奇な猛獣が住んでいます。
この大陸には未開人が住んでいると信じれられています。そうした未開人は人間とは異なるという噂があるため、人々はこの大陸に近づきません。
エルリックはそのさすらいの旅の間に「禿頭伯爵」スミオーガンとアヴァン・アストラン公爵と共に、この地を訪れ、広い河の上流に長らく打ち捨てられた街を発見します。
エルリックは最初、その街ルリン・クレン・アの住民がメルニボネの始祖となったのだと信じます。
しかしのちに、エルリック自身の民がたどっていたかもしれない末路を彼らの姿に見出します。
静まりかえったルリン・クレン・アの遺跡は、メルニボネが最初にこの世界にやってきたときに仕えていた〈天秤〉をこの町の住民が信奉していたことを示しています。
〈名のない人陸〉を訪れたとき、エルリックはほかにもオラブを発見します。
オラブは狸猛で血に飢えた人ならざる種族で、おそらくは古代メルニボネ人との交配から生まれたものでしよう。
そして、ほかのもっと狩猛な部族や獣によって大陸の奥深くにあった本来の領土から追いやられてきました。