ミステリの犯罪や事件を大きく2つに分けるならば、可能犯罪と不可能犯罪に分けられると思う。
前者は、誰でも犯行をおこなう事ができる(犯行方法と犯人は分離している。)。しかし、○○の痕跡や理由で、犯人はAであるとする場合である。
後者は、誰にも、あるいは筆頭容疑者のAには犯行を行えないとする不可能性を強調する場合である。
着地点は見えていないが、前回の記事で挙げた唯一解のジレンマ問題で、謎のありかたを検討する為色々な角度からミステリの謎を分析してみようと思った次第である。
基本的には不可能犯罪の方がとっかかりやすく、キャッチーだし、面白い。
1、問題点が明白であるため、読者が挑戦しやすい。どこに着目すればよいか集中して読める。
2、不可能性を強調して焦らすことで、真のトリック説明時の、解決のカタルシスが高まる。
叙述トリックのように、見つけられなくとも気づかなくとも物語として成立するような場合には、読んでいる間は、それほど集中していないだろう。
タイトルや帯で、叙述トリックの作品とでも告知されていれば、多少は目を皿にして読むかもしれないが。事件現場は密室だった!?の一言以上の効果はないだろう。
また、Aという方法なら、密室を突破できないか? いやできない。こういったやり取りを作品内で繰り返すうちに、その不可能性に魅了されていくと思う。
不可能犯罪と主要関連トリック
不可能犯罪を定義するならば、
常識として認識している人体の構造限界、また、科学水準とも関連する人体の行動限界から、当該事件又はその前後に起こった出来事を、人間には不可能であると判断すること。また、判断した犯罪だろう。
ただし、実際は人間の手によって構築された事件である事がほとんであるため、ミステリにおいて不可能犯罪という言葉が使われるときには、偽装不可能犯罪とでも呼ぶほうが厳密には正しいのかもしれない。
事件に関わる要素別にみてみると、
who → 誰でも(人間には)不可能=以下すべての事柄の結論みたいな立ち位置
whom → 一人ではできない。共犯トリック?
when、where → 容疑者の時間や場所に不可能性=アリバイトリック、死体の場所に不可能性=人間にはいけない、届かない、越せない場所。運搬・移動トリック、密室トリック
what、why → 誰にも何も出来ない=そもそも事件にならない、なぜかはわからない=不可解性でこの2つの項目は不可能性として扱えない。
how → 殺され方が不可能(人間技じゃない)=凶器トリック、殺害方法トリック、死体工作
how many、how much → 数がオカシイ、あわない=消失・出現トリック
帰納法的にまとめたトップページの主要トリックの項目と当然似通ってくるわけだが、あまり意識していなかった新発見もある。整理する。
理論的には、これらが不可能犯罪の7類型であり、これらいずれかのトリックで何か思いつけば、新しい不可能犯罪を成立できるかもしれない。
- 共犯トリック
- アリバイトリック
- 密室トリック
- 運搬・移動トリック
- 奇妙な凶器、殺害方法トリック
- 奇妙な死体、死体工作トリック
- 消失・出現トリック
可能犯罪とその構造分析
一方で可能犯罪は、問題点を把握しそれが人間や犯人に可能であることを示す不可能犯罪と全く異なり、
この状況で犯人を特定するにはどうすればよいか。”犯人特定方法論”の理解と、それを本文中で発見し結びつける洞察力が試されるのだと考える。
- 現場の状況を知らないはずの人物による発言
- 死体、死因、凶器
- 部屋の中の物の様子
- 犯行状況(痕跡)が指し示す犯人条件に合致する
- 時間的条件(アリバイ、作業時間の確保、移動時間)
- 空間的条件(順番、立ち位置、居た場所、調べた場所、距離)
- 筋力や体格や体重。
- 外見的特長(衣服、被害者と同じ色の服等、年齢、容姿)
- 内面的特長(神経質、几帳面、筆跡や文章のクセ)
- 資格や技能や能力(車の免許、ヘリコプターのライセンス、格闘技や腕力、肩など)
犯人の失言に注意するパターンと、現場に残っていた1本の傘、現場に残っていたカッターの折れた刃から・・・と、一見何の価値もないように見える痕跡から、犯人は丸々であるという条件を導くロジックを考え付くパターンが存在する。これまでまとめていなかったが、痕跡から条件特定もいずれまとめてみようとおもう。
中途半端というか、完成度の低い記事で申し訳ないが、不可能犯罪の類型をまとめていくにあたり、7つの方向性の視点で整理・深掘りする、一方、可能犯罪追求には、失言の分類と、痕跡→条件のロジック分類をもうすこし煮詰めてみようと思う。