EPID GAMES 対 EPIC Games 異議申立て

Last-modified: 2025-08-08 (金) 18:31:08

EPID GAMES 対 EPIC Games 異議申立て

2025年2月から現在まで発生しているEpid GamesとEpic Gamesの商標権異議申立てに関する文書。

紛争の概要

2025年2月、韓国の中小ゲーム開発会社EPIDGames(エピドゲームズ、대표:한정현)と世界的なゲーム企業Epic Games(エピックゲームズ)の間で商標権紛争が発生した。この紛争は、EPIDGamesが自社のモバイルゲーム『Trickcal Re:VIVE』の海外進出に向けて「EPIDGames」という英文商標を出願したことに対し、Epic Gamesが異議申請を行ったことから始まった。

紛争当事者

EPIDGames(申請者側)

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  • 設立年: 2013年3月
  • 代表者: 한정현(ハン・ジョンヒョン)
  • 事業内容: モバイルゲーム開発・運営
  • 主要作品: 『Trickcal Re:VIVE(トリッカル・もちもちほっぺ大作戦
  • 従業員数: 約125名(2025年6月基準)
  • Google Play実績: 『Trickcal Re:VIVE』韓国版は35,000件のレビューで5つ星評価、50万ダウンロード達成

Epic Games(異議申請者側)

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  • 概要: 世界最大級のゲームプラットフォーム企業
  • 主要事業: Unreal Engine、Fortnite、Epic Games Store運営
  • 代理人: 韓国の大手法律事務所

紛争の経緯

  • 2025年2月: Epic Gamesが韓国特許庁にEPIDGamesの「EPIDGames」商標出願公告に対する異議申請書を提出
  • 2025年7月25日: 韓国特許庁がEpic Gamesの異議申請を却下し、「EPIDGames」商標の登録を決定。最初の裁判の終了。
  • 2025年8月7日:エピック・ゲームズの不服申し立て。韓国の主要な法律事務所(キム・アンド・チャン *1)を起用し、2回目の異議申し立てを実施。
    • EPIDGamesが公式発表を通じて紛争事実を公開し、法的対応を開始すると発表

Epic Gamesの主張

Epic Gamesは異議申請書において、EPIDGamesの「EPIDGames」商標出願に対して包括的な反対論理を展開した。まず視覚的類似性の観点から、両商標は4番目の文字が「D」と「C」という単一文字の違いのみであり、その他の文字部分である「EPI-Games」が完全に同一であると指摘した。この微細な差異により、一般消費者が両商標を区別することは困難であり、全体的な外観において類似性が認められると主張した。

聴覚的類似性については、「EPIDGames」が「エピドゲームス」として呼称される一方、「EPIC GAMES」は「エピックゲームス」として呼称されるが、全体6音節中で異なるのは3番目の音節のみであると強調した。特に韓国語における発音特性上、「エピド」の「ド」音節が弱く発音される傾向があるため、実際の聴感においては両商標が非常に類似していると論じた。この聴覚的類似性により、消費者が音声を通じて両ブランドを接した際に混同が生じる可能性が高いと主張した。

さらにEpic Gamesは、EPIDGamesの商標出願が不正な目的に基づくものであると疑念を提起した。EPIDGamesが既に市場で確立されたEpic Gamesの商標と営業上の名声を認識していながら、意図的に類似した商標を出願したと主張し、これは先行商標権者の営業実績に「ただ乗り」しようとする不当な行為であると指摘した。この主張は商標法上の不正競争防止原則に基づくものであり、後発出願者の真の意図に対する疑問を提起したものである。

EPIDGamesの反論

EPIDGamesはEpic Gamesの主張に対して体系的かつ論理的な反駁を展開した。視覚的識別可能性の側面でEPIDGamesは、自社の商標が大文字「EPIDG」と小文字「ames」の結合で構成されており、特に「EPIDG」部分が視覚的に際立って表現されているため、一般需要者が商標に接する際「EPIDG」を優先的に認識するようになると主張した。このような視覚的構成の違いにより、両商標は外観上十分に区別可能であり、消費者が混同を起こす可能性は著しく低いと反駁した。

聴覚的識別可能性については、EPIDGamesが「エピドゲームス」、Epic Gamesが「エピックゲームス」として呼称される明確な違いが存在すると強調した。特に「エピド」と「エピック」の間の音声的差異は韓国語話者にとって十分に区別可能なレベルであり、これは出所の誤認や混同を引き起こす蓋然性が全くないと主張した。また、実際の市場において両会社が同一のゲーム業界で活動しながらも消費者混同なく共存してきた実績がこれを裏付けると付け加えた。

商標の意味論的差異については、根本的な観念の相違を浮き彫りにした。「EPID」は「Every Person Is Different」の略語として個性と多様性を尊重するゲーム会社という哲学を表現している一方、「EPIC」は「叙事詩」を意味し壮大な大叙事詩のようなゲームを提供する会社という観念を持つものであり、両商標の観念は完全に異なると主張した。この意味論的差異は単純な音声や外観の類似性を超越する本質的な区別要素であると強調した。

適法な出願根拠に関しては、EPIDGamesが韓国語商標について既に登録を完了した状態であり、継続して使用してきた法人名称をそのまま出願したものであると説明した。これまで異議申請人と同じゲーム業界で出所の混同なく共存してきた商標として、不正な目的による出願ではないと断固として主張した。12年以上にわたる営業実績と市場での独立した地位確立が、その適法性を証明する客観的証拠であると論じた。

特許庁の判断

2025年7月25日、韓国特許庁はEpic Gamesの異議申請を却下し、「EPIDGames」商標の登録を決定した
特許庁は以下の理由でEpic Gamesの主張に理由がないと判断:

  • 商標の類似性が認められない
  • 消費者混同の可能性が低い
  • 不正な目的による出願であるとする根拠不十分

2回目の異議申し立て

ただし、今回の2回目の異議申請については、大部分がEpic GamesがEPIDGamesという名称に実質的な脅威を感じたというよりは、一種の機械的で防御的な対応として解釈する向きが強い。特に大企業が自社のブランド希釈を防ぐために類似商標に対して無差別的に異議申請を行う慣行は、以前から批判を受けてきた部分である。

類似事例1:Epic Games vs. Nreal

Epic Gamesの商標権防御戦略の典型例として、2018年から2021年にかけて発生したNreal社との紛争が挙げられる。Epic GamesはAR(拡張現実)企業であるNrealが開発したMRグラス「Nreal Light」の名称が、自社の「Unreal」商標と類似しているとして商標侵害訴訟を提起した。Epic Gamesは「Nreal」と「Unreal」の音韻的・視覚的類似性を根拠に、消費者混同の可能性があると主張した。

この紛争は長期間にわたる法的攻防を経て、最終的に両側の非公開合意で終結した。合意後の2023年、Nrealは公式的に社名を「Xreal」に変更し、これは商標権紛争が企業のブランド戦略に与える実質的な影響力を示す代表的な事例として記録された。この事件は、グローバル大企業の積極的な商標権防御が中小企業のブランディングにどのような制約を課すことができるかを明確に示した事例であった。

類似事例2:少女前線の命名問題

同種業界に関連したもう一つの代表的事例として、中国のゲーム会社Sunborn Networkが開発した戦略シミュレーションゲーム「少女前線(Girls' Frontline)」の日本進出時における商標問題が挙げられる。このゲームは中国では「少女前線」という名称で大きな成功を収めていたが、日本市場進出の際に既存の商標権との衝突により「少女前線」という名称を使用することができなかった。

結局、日本サーバーオープン時には「少女前線」ではなく「ドールズフロントライン」という名前に変更せざるを得なかった。この事例は、既存のブランド認知度や中国市場での成功にもかかわらず、日本市場の商標権構造により全く異なるブランド名を採用しなければならなかった典型的なケースである。このような命名変更は単なる表面的な変更を超えて、マーケティング戦略の全面的な修正と追加的なブランディング費用の発生を意味し、中小ゲーム開発会社にとって重大な負担要因として作用した。

現在登録が完了したEPID GAMESの商標一覧

韓国

  • EPIDGames : S121002, PCゲーム施設提供業、ゲーム施設提供業、ゲームサービス業、ゲームイベントの企画・運営業、モバイルゲーム大会の企画・運営業、モバイルを通じたゲーム提供業など10種類 (EPIC GAMES 異議申し立て)
  • 에피드게임즈
  • TRICKCAL
  • TRICKCAL:REVIVE
  • ROLL THE CHESS (商標権の放棄)
    など25件

日本

その他の商標許可対象国

オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、シンガポール、タイ、イギリス、EU
WIPO(Trickcal)
WIPO(TRICKCAL REVIVE)

EPIDGames勝訴

2025年8月4日、韓国特許庁において「EPIDGames」の商標登録が最終的に承認された。これにより、エピドゲームズは『トリッカルリバイブ』の海外展開に向けて商標権を確保することに成功した。一方、エピックゲームズは同年2月に異議申立てを行ったものの、追加の法的手続きを進めず、韓国内における争いは事実上終結した。

その後、8月25日にソウル・江南区のCOEXで開催された「アンリアルフェスト ソウル2025」のメディアラウンドテーブルにおいて、エピックゲームズ代表のティム・スウィーニー氏はこの問題に言及した。同氏は「エピドゲームズに対して訴訟は起こしておらず、今後もその予定はない」と述べ、英語では「Epic」と「Epid」が似て見えるものの、韓国語では「에픽」と「에피드」は明確に区別されると説明した。そして、韓国においてもその点が認められたため、法的措置を取らずに受け入れたと語った。さらに、海外で類似の事例が発生すれば反対意見を提出する可能性はあるとしつつも、今回の韓国での決定により海外でも法的対応の可能性は低いとみられている。

結論

この紛争は韓国特許庁のEPIDGames勝訴判定で一段落したが、グローバル市場での商標権紛争の複雑性と中小企業が直面する挑戦を示している。特に、大企業の積極的な商標権防御戦略と中小企業の海外進出準備過程での法的リスク管理の重要性が浮き彫りになった事例として評価される。

EPIDGamesは法的勝利を収めたものの、今後海外市場進出過程で類似した挑戦に直面する可能性があり、継続的な法的対応準備が必要な状況である。


*1 主要な出身者:元韓国国務総理、ハン・ドクス顧問