The Trickcal/第4章-3

Last-modified: 2025-06-28 (土) 16:29:43

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2. 侵攻

方舟は狂ったように荒野を疾走した。

【うおおおお!!】

方舟最下層で、マスクを着けた住民が咆哮した。その叫びには痛みの混じりけなどまったくなく、まるで非常に重い岩を持ち上げるときのような、全力の気合だった。

【うわああああ!!!】

それに応えるように、数多の気合が方舟を揺るがした。

これまで仕方なく命をつないでいた住民たちは、ついに自身の炎を燃やす道を見つけ、壮烈に燃え上がった。長い間堰きとめられていた情熱が一斉に解放されるようだった。

方舟は本当に狂ったかのように荒野を駆け抜けた。

ほとんどすべての住民が自発的に魔力を注いだ。逆に、方舟の魔力回路が破裂するのではと心配になるほど、多くの者が力を貸した。

その中心にはメイールがいた。レインに徹底的に叩かれ、住民の前で公然と辱めを受けたメイールは、惜しみなく動力源となった。

しかし彼女は、かつてないほど安らかな心で方舟に力を注いでいた。

メイールの望みどおり、方舟は急速にエリアスの森へと近づいていった。

レインは武器と防具に魔力を込める作業を終え、先頭に立っていた。彼女はメイールが着ていた黒い鎧に身を包み、兜まで被っていた。そして腰には、あの斧を携えていた。

メイールの言葉のせいだった。

「鎧を着てください」

「嫌だよ。邪魔くさいし」

「レイン様は魔法がかかった武器に弱いでしょう。おそらく魔法攻撃も防げません。私の鎧を着てください。世界樹でなければ貫かれません」

「でも、兜は苦しいし視界が悪いよ。兜だけはなしでダメ?」

「レイン様のお姿は私たちと違います。私たちを思うなら、どうか被ってください」

「どうして? 私の顔が、君たちがかつて失った姿に似ているから? 私の顔を見たほうが、むしろ失ったものを思い出して闘志が湧くんじゃない?」

「確かにそれも私たちの怒りです。ですが、もし私を友と呼ぶなら、私たちの怒りさえ利用しないでください」

「……ごめん。私の考えが浅かった」

「問題ありません。そして、この斧をお使いください」

「何の斧?」

「この斧だけが世界樹に傷を負わせました。魔法で放った炎にも溶けず、荒野と化した大地でも損なわれなかったのです。おそらく、世界樹を斬った際にその力を吸収したからでしょう。ともあれ、この斧なら世界樹を傷つけられるはずです」

メイールの言葉を思い返し、レインは斧を手に取った。見た目はまるで博物館に展示されていそうな、古ぼけて頼りない斧だった。

「こんな古い斧で本当に効くのかな? 威力さえあれば使うけど……見た目がちょっとなあ」

黒い鎧はいかにも格好よかったが、斧はまったく好みではなかった。レインは首を振りつつ斧を振り上げ、力を込めた。

「礼代わりだ」

レインはそのまま斧を振り下ろした。

緑深い森が、長き荒野の終わりを告げるように広がっていた。その林を薄ぼんやりとした結界が包んでいた。レインの斧から伸びた気が、その結界を正確に切り裂いた。

チーン!

結界は脆くも、まるで薄い硝子が砕けるように崩れ落ちた。その隙を方舟は何の抵抗もなく通過した。

「イエアー!!!」

森に入ると、住民たちは突然身体に力が満ちるのを感じた。彼らが長い間忘れていた感覚――命に満ちた世界樹の気が、肌に染み渡ったのだ。

同時に、方舟も暴走した。魔力回路は今にも爆発しそうなほど紅蓮の色に染まった。しかし誰も止めようとしなかった。

彼らは風の導きに従い、心の赴くままに走った。ついに手が届きそうなほど近づいた、彼らを見捨てた親――巨大な世界樹へ。

「全員、衝撃に備えろ!」

メイールの部下で副隊長を務めていた住民が号令をかけた。方舟の住民たちは各々安全な場所に身を寄せ、しっかりとつかまった。

レインは依然として先頭に立っていた。彼女は方舟に結界を張り巡らし、最善を尽くした。自身はともかく、方舟が衝突の衝撃で住民を巻き込むわけにはいかなかった。

ピーーーッ!

紅蓮に燃え盛る魔力回路が、鋭い悲鳴をあげた。疾走する方舟の轟音が四方を震わせる。世界樹に近づくほど、その轟音は増幅された。

――それはすでに、方舟と一体化したメイール自身の歓喜のように響いた。

「いいぞ! 一撃をぶちかませ!」

レインの言葉を合図に、方舟はそのまま巨大な世界樹の幹へと衝突した。

ドォォォォォンーーー!!!!!!!