概要
1999年2月に【集英社】より刊行された【Vジャンプブックス】の一つでGB版DQM1の攻略本。
正式名称は「エニックス公認 DRAGON QUEST MONSTERS FINAL EDITION FOR MASTERS!!」で、略称は「FEFM」。
「FINAL EDITION」と付くのは、同じ集英社Vジャンプブックスから1998年11月に刊行された攻略本「ドラゴンクエストモンスターズ」との区別であろう。
そちらの正式タイトルは「ドラゴンクエストモンスターズ:テリーのワンダーランド」であり、同名書籍の【ドラゴンクエスト モンスターズ】とは別物。
公式、非公式問わず当時上位モンスターのみで固められて煮詰まりぎみだったパーティー編成について、
新しい対戦ルールを設けることで色々な【モンスター】に可能性を与えることを試みた一冊。
コンセプトは「最強のダークドレアムよりも一体のスライムが必要なことがある」。
内容の多くはデータや対戦における戦法解説であり、ゲーム本編の攻略にはほぼ触れられていない。
データとしては特に、全モンスターの【耐性】が完全に網羅されていることが大きい。
本書以前の攻略本では「ドラゴンクエストモンスターズ」はもちろん、【公式ガイドブック】にも耐性の情報が無かったため、多くのプレイヤーに重宝された。
この本の影響か、以後のDQMシリーズでは公式ガイドブックでも詳細な耐性データが載せられるようになった。
Vジャンプブックスの攻略本は基本的にソフト発売直後に出版されるため、
「ドラゴンクエストモンスターズ」ではネタバレ防止などのために中途半端なデータしか載っていなかったが、
「FINAL EDITION」のほうはソフト発売後半年近く経ってからの発売のため、ネタバレ云々関係なく非常に情報が充実している。
この時既に公式ガイドブックが上下巻に分けられて【エニックス】より刊行されていたが、
同じくデータ集である下巻、究極モンスター育成編を内容面で大きく上回っている。
その後発売された公式ガイドブック3、最強マスター究極データブックもこれに比べると若干見劣りする。
まさにGB版DQM1におけるデータブック、対戦指南書の極北と言っていい存在であった。
新対戦ルール、MR
本書では全てのモンスターにMR(モンスターレート)と言う値を設定している。
エニックス公式大会のルールではパーティー編成に関して「各系統一体まで」と言う縛りがあったものの、
大抵のプレイヤーの編成は上位魔王系、【ゴールデンスライム】、その他系統最上位種とほぼ固定化しており、
ルールなしの対戦の場合魔王系二体にゴールデンスライムで事足りた。
対戦も攻撃面では基本的に【ばくれつけん】、【まじんぎり】、【マダンテ】と言った特技しか使われず、
結果、どのプレイヤーも同じような戦法しか行わないような状況になっていた。
そこに一石を投じるため、パーティー編成を制限するためのルールとして制定されたものがMRである。
MRは基本的に各モンスターの基本耐性ごとに決められた数値を割り振ることによって決められ、
そこにステータス成長の不足や浮遊、会心率などに基づき修正値が加えられる。
属性ごとに弱耐性、強耐性、完全耐性に与えられる値は異なり(無耐性は全て0)、
より勝敗に直結する特技系統ほど、与えられる値は高いものとなっている。詳しくは後述。
基本のルールとしてはこのMRがパーティー内合計で1200以下になるように設定されている。
この場合、ダークドレアム(MR990)など強力だがMRの高い種を使うと、残りのMRの枠が一気に狭くなり、
耐性の穴が非常に多い下位モンスター二体で残りの枠を埋めなくてはならない。
このように、ただ強いモンスターを使えばいいという従来のパーティー編成法の常識は通用しない。
パーティー編成のためにはほぼ全てのモンスターの耐性を把握する必要があり、耐性面で穴のないパーティ編成にすることがほぼ不可能であるため、相手は必ずその穴を突いてくる。
そのため、パーティ編成の時点でできる限り耐性面の穴を少なくし、空いた穴にはできる限りの対策をしておくことが求められる。
様々な【特技】への対策を練る必要があるルールであると言える。
また、MRの制限値は対戦ごとや大会などによって1200から変えても構わないため、
800にしてより制限をきつくした対戦や、1600にしてよりパーティーを自由に組める対戦、
或いはモンスター単体のMR上限を決めて上位モンスターを制限するなど楽しみ方は幅広い。
また、MRは熟練者と初心者のハンディキャップにも使えるなど、より奥深い対戦の楽しみ方を提示している。
MR算定基準
モンスターごとのMRは以下の耐性値、修正値を合計したものとなる。
合計時下一桁が5になった場合は、下一桁を切り捨てた値をMRとする。
- 特技耐性
各特技系統への耐性に対する耐性値。上限として耐性ごとの最大値を合計するとMRは1000となる。
※略号特技系統 火 閃 爆 風 雷 氷 死 自 暴 炎 雪 仲 斬 完全耐性 75 10 10 15 30 10 90 60 ‐ 15 15 50 30 強耐性 60 5 5 10 15 5 65 20 70 10 10 30 15 弱耐性 15 0 0 5 5 0 35 0 10 5 5 5 5 無耐性 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 特技系統 幻 眠 吸 封 乱 守 速 毒 麻 呪 休 踊 息 完全耐性 20 50 5 30 80 35 40 10 80 10 70 70 20 強耐性 10 25 0 15 60 15 20 5 60 5 35 40 10 弱耐性 5 15 0 5 40 5 10 0 40 0 15 15 5 無耐性 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
火:メラ系、閃:ギラ系、爆:イオ系、風:バギ系、雷:デイン系、氷:ヒャド系、死:ザキ系、自:メガンテ系、
暴:マダンテ、炎:火炎ブレス系、雪:吹雪ブレス系、仲:仲間を呼ぶ系、斬:ギガスラッシュ、
幻:マヌーサ系、眠:ラリホー系、吸:マホトラ系、封:マホトーン系、乱:メダパニ系、守:ルカニ系、
速:ボミエ系、毒:毒系、麻:麻痺系、呪:呪い系、休:1ターン休み系、踊:踊り封じ、息:息封じ
- ステータス修正値
Lv.99になってもカンストしないステータスを持つモンスターはMRが下方修正される。
下表におけるマイナス値はLv.99におけるカンスト値からの差分。
なお、HPと攻撃力は+値が上がるほど上方のステータス補正がつくが、ここではそれは考慮していない。
HP マイナス値 −420 −220 MR修正値 −70 −25 MP マイナス値 −420 −320 −260 −230 −220 −210 −110 MR修正値 −25 −20 −15 −10 −5 攻撃力 マイナス値 −260 −230 −220 −210 −110 MR修正値 −40 −30 −25 −20 −10 守備力 マイナス値 −320 −260 −230 −220 −210 −110 MR修正値 −80 −70 −60 −55 −50 −20 素早さ マイナス値 −190 −100 −40 −10 MR修正値 −50 −20 −10 −5 賢さ マイナス値 −70 MR修正値 −10 - その他の修正値
- 飛行修正
- 会心修正
- 会心率はモンスターごとに4段階で設定されている。
この内、最も高い会心率のモンスターにMR+10、やや高めのモンスターにMR+5の修正が入る。
- 会心率はモンスターごとに4段階で設定されている。
- ゾンビ修正
- 完全自由修正
全モンスターMR表
耐性強化法
各モンスターのページには、耐性やステータスなどの情報だけでなく、
耐性を上げるために最適である親モンスターどうしの組合せを示した最適配合と、
それには劣るが手軽、または別方向の強化ができる組合せである代用配合が記載されている。
また、耐性を上げられない場合はステータスの底上げできる配合パターンなどが記されている。
ちなみに、本書はDQM1の耐性強化について初めて情報が書かれた本でもある。
両親の耐性値合計と子の基本耐性から実際に生まれてくる子個体の耐性上昇パターンがまとめられている。
子の+値が上がると耐性上昇率も上がるが、本書の中には+値に応じた正確な上昇パターンは記されていない。
ある特技系統に対して親の耐性が完全耐性:3、強耐性:2、弱耐性:1、無耐性:0とした時、
子の+値が99だった場合以下の表ような上昇パターンになる。
両親の耐性値合計 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||
子の基本耐性 | 完全耐性 | 完 | 完 | 完 | 完 | 完 | 完 | 完 |
強耐性 | 強 | 強 | 強 | 強 | 強 | ※1 | 完 | |
弱耐性 | 弱 | 弱 | 弱 | ※2 | 強 | 強 | 強 | |
無耐性 | 無 | 無 | 無 | 弱 | 弱 | 強 | 強 |
※1 49.5%の確率で完全耐性、50.5%の確率で強耐性
※2 99%の確率で強耐性、1%の確率で弱耐性
大抵は+値を99にすれば問題なく耐性は上がるが、一部は確率で上がり、場合によっては下がってしまう。
特に上位モンスターは多くの特技系統に強耐性をもつが、これを全て完全耐性にしようとすると、
【配合】の度に上下しうる耐性の数だけ望む耐性を得られる確率が半々になっていく。
上位モンスターを使う場合は上げるべき耐性を絞って配合に臨んだ方がいいだろう。
その他の内容
データ以外は基本的に対戦までの準備と対戦における戦術指南である。
エニックス公式ルールに比べ使用できるモンスターの耐性が全体的に低くなったため、
物理攻撃とマダンテのゴリ押しだけでなく、様々な特技にスポットが当てられている。
このような物理攻撃に頼らない戦術は、MRの上限値が低い対戦ほど有効に働くだろう。
特技データに関しては非打撃系攻撃特技に関しては耐性ごとの与ダメ期待値まで掲載されている。
習得するために必要なレベル、ステータスも正確に記されているため、非常に参考になる。
配合表もモンスターごとでそのモンスターを生み出すための配合方法だけでなく、
配合時に親として使った場合に特殊配合で作れるモンスターも載っている。
それ以外にも、対戦でよく使われる特技を習得するモンスターのリストや、【性格】のリスト、
成長タイプごとのステータス成長グラフ、他国マスターの連れているモンスターリストも掲載されている。
また、ゲーム本編の攻略にはほぼ触れられていないと前述したが、巻末付近に攻略フローチャートがあり、
【旅の扉】における出現モンスターや入手可能アイテム、出現する特殊フロアの種類などのデータや、
【格闘場】の相手の使用モンスターと特技、【道具屋】の取り扱いアイテムなど、データ自体は詳細に記されている。
さらに、自発的に大会を開くための運営方法なども掲載されている。
本書の表紙カバーは裏がモノクロのポスターと広告に、カバー下の裏表紙はエントリー用紙になっている。
これらを利用することで、大会の事前告知や大会運営を行えるようになっている。
大会運営方法に関しても色々な面から多くのアドバイスが書かれているため、
これに従っておけば少なくとも自宅で開く身内大会程度なら子供でも開けるだろう。
ちょっとした問題点
本書は非常に作り込まれているが、唯一不親切な点がある。
それは「耐性遺伝は親種の基本耐性でなく親個体の耐性を利用する」ということが書かれていないことである。
基本的に各モンスターの最適・代用配合についても親種の基本耐性だけを参照しているだけで、
二代以上前の親個体からの耐性遺伝方法は記されていない(掲載スペース的な問題もあるが)。
例えば、ゴールデンスライムは【ギガスラッシュ】耐性の強化について言及されていないが、
以下のような配合ルートを用いれば、他の耐性を強化しつつギガスラッシュ耐性を完全耐性に上げられる。
- ぶちキング×グレイトドラゴン→ギガスラッシュ強耐性のキングスライム
- ギガスラッシュ強耐性のキングスライム×キングレオ→ギガスラッシュ完全耐性のぶちキング
- ギガスラッシュ完全耐性のぶちキング×ゴールデンゴーレム→ギガスラッシュ完全耐性のゴールデンスライム
このように、数世代前から強化を続けることで最適配合以上の耐性強化を行うことは可能である。
実際、本書内でのエニックス公式ルールの最適パーティー例にはダークホーンが含まれていたが、
記載されていたダークホーン以上の耐性を得られるモンスターは数種程度だが存在する。
また、前述したがMRを利用したルールは「ほぼ全てのモンスターの耐性や、特技への対策」を熟知する必要がある。
さらに使用モンスターの耐性の穴を完璧に埋めようとすると、数世代前から配合ルートの考察が要求され、
親の組合せによっては完全耐性を得るのは確率に左右されるため、何度も同じ配合を繰り返す羽目にもなる。
以上のように、やり込み量と知識量が問われる非常に敷居が高いルールであることが言える。
このためか、コンセプト自体は面白いのだが、そこまで大きい反響は得られなかった。