■ 第3節 第2小節 みっつの道-礼賛者
ウォルフガングは、モンブローの手紙を
読んでくれただろうか?
デルクフの塔にあるという研究室への
扉を開いてくれる気になっただろうか?
■ (封筒の地図に従ってバタリア入り口へ)
Wolfgang:そんなところを調べても
意味はないぞ、おまえにはな。
Wolfgang:ここだったか……。
すっかり忘れていた。
Wolfgang:昔、ジュノに2人の幼なじみの少年が
いてな。いつも一緒に街の中を走りまわっていて、
いろんなイタズラもした。ケンカもしょっちゅうだ。
Wolfgang:そんな2人が、ある日ガラスのかけらを
拾った。本当に何の変哲もないガラスだったけど、
2人にとってそれは宝物になった。
Wolfgang:そのガラスを通して見る風景は
とても不思議で、美しかったんだ。
2人は奪い合うようにして、それを楽しんだ。
Wolfgang:ついには街の中だけでは飽きたらず
父親の言いつけも聞かずに
こっそり橋を抜けてここまで来た。
Wolfgang:今のおまえや俺ならば
ここへ来るのはたいしたことでもないんだろうが、
子供にとっては大冒険だ。
Wolfgang:でも、その大冒険の先には
大きな宝物が待っていたんだ。
Wolfgang:ここからガラス越しに見る
ジュノは雄々しく、猛々しかった。
2人は自分たちの街がこんなに美しかった、って
ことにその時初めて気づいたんだ。
Wolfgang:それからも、父親の目を盗んでは
ここへ来てジュノを見ていた。
Wolfgang:だけどそんなある日、
少年の1人がこう言った……。
Monberaux:ガラスを通さなくても、
ジュノはとてもキレイに見えるよ。
(いつのまにかMonberauxが立っている)
Wolfgang:モンブロー……。
Monberaux:ここは久しぶりですね、
ウォルフ。
Monberaux:いやぁ、ホントにきれいだ……。
そう思わないか、ウォルフ?
Wolfgang:モンブロー、ここへ何をしに来た?
Monberaux:いや、久しぶりにジュノを
眺めたくなっただけですよ。
ウォルフこそ、何の用で?
Wolfgang:……たまたま通りかかっただけだ。
Monberaux:そうですか……。
Wolfgang:……。
Monberaux:ウォルフ。
Wolfgang:何だ?
Monberaux:あのガラスは僕のものですよ?
Wolfgang:なにっ!?
Monberaux:あれを2人でここに埋める時に
言ったじゃないですか、
『モンブロー、これはおまえのものだ、
俺にはもう必要ない』って。
Wolfgang:ヌッ……、俺がそんなこと言ったか?
証拠は? 証明書はあるのか? 署名付きで?
Monberaux:ハッハッハッ、変わってませんね、
ウォルフ。ウソですよ、欲しければ掘り起こしても
いいですよ。
Wolfgang:……いや、いい。
あれは2人の少年たちのものだしな。
Monberaux:ウォルフ……?
Wolfgang:それに俺は、またガラスをここに
埋めに来たんだ。いつの間にか自分が持っていた、な。
Monberaux:……。
Wolfgang:いつからか、自分が何を守って
いるのか分からなくなっていた。
Wolfgang:あの時、親父が命をかけて守っていた
ものが何なのか分かったような気がしていたけど、
何も分かっちゃいなかったのかもしれん。
Wolfgang:でも、もしかすると、今ここに来て
少しだけ、本当に少しだけ、
それが分かったような気がする。
Wolfgang:……そう思いたい。
Wolfgang:じゃあな、モンブロー。
Wolfgang:ん、あれが見あたらんな。
もしかすると、間違って埋めてしまったか……?
Wolfgang:まぁいい、始末書と減俸で
すむだろう。モンブロー、その時はおごって
もらうからな。
Monberaux:フフッ、喜んで。
Monberaux:本当に変わってませんね……、
やっぱり。安心しました。
Monberaux:さぁ、あそこを掘ってみると
いいでしょう。きっとあなたに必要なものが
埋められてます。
Monberaux:でも、ガラスは持っていかないで
くださいね。あれは2人の少年の、とても大切な
思い出ですから。
何かのアイテムの下にガラスのかけらが埋めてある。
ガラスはこのままにしておこう……。
※だいじなもの:デルクフ解除キーを手にいれた!
「デルクフ解除キー」
デルクフの塔の奥の扉を解除するもののようだ。
■ ジュノ上層・モンブロー医院
Monberaux:やはり彼は来ましたね。
さぁ、きっとテンゼンさんが困っているでしょう。
それを持ってデルクフの塔へ急いでください。
Monberaux:その塔の北側に、地下へ下りる階段が
あるのです。そしてその先には……
■ デルクフ下層・北端の研究室入り口
巨大ななにかが襲いかかってきた!
(Disaster Idolとの戦闘)
Tenzen:[Your name]殿!
Tenzen:そのカギをどこで?
Tenzen:なんと、ジュノ親衛隊隊長殿が!?
かたじけないでござる!
???:くっくっく、これはこれは……。
Tenzen:!?
Nag'molada:気が会うな、
[Your name]、テンゼン。
Nag'molada:おまえたちに
助けられることになろうとは思わなかったぞ。
Nag'molada:ちょうど良い。
その扉の先、私も重要な用があるのだ。
(クリスタル・ターミナルに入る3人)
Tenzen:ここは……
なんと広く、不思議な場所でござろう……。
Nag'molada:ヴァナ・ディールの
地底に眠る、5つの母なるクリスタル。
ここは、そのクリスタルを見守る場所だ。
Tenzen:クリスタルを見守る場所?
このような塔の真下で、でござるか?
Nag'molada:そうだ。
5つの母なるクリスタルは「クリスタルライン」
によって、ここで1つに結ばれている。
Nag'molada:私たちは永い間、
そのクリスタルラインを監視し、
その輝き、その力を見守ってきた。
Nag'molada:しかし、霊獣バハムートが
ヴァナ・ディールに現れたとき、
5つ目のラインが暴走し……
Nag'molada:あのセルテウスは
突然、ここに現われたのだ。
Tenzen:ここに、あの少年が!?
Tenzen:ナグモラーダ殿!
それはつまり、あの少年はそのラインとやらを
通って、ここへ来たということでござるか!?
Tenzen:……となれば、そのラインを遡れば、
第5のクリスタルの御許にいけるということでは!?
Nag'molada:短絡的に言えばそうなるな。
しかしあのラインは、人が通るためのもの
ではない。
Nag'molada:あれは、母なるクリスタルの
輝きを集めるためのライン。
Nag'molada:セルテウスが
通ることができたのは、クリスタルの加護深き
「霊獣」の助けがあったからとされている。
Tenzen:霊獣の助けが?
Tenzen:なるほど。
フェニックスが我輩をここに導いたは、
神都アル・タユへの道を我らに開こうとして?
Nag'molada:なに?
それは残念だ。それこそソ・ジヤが再び
起動される前であれば良かったのだが。
Tenzen:ソ・ジヤが……?
それはいったい、どういう意味でござる?
Nag'molada:あの遺跡は、もとはクリューの
住みか。ジラートとクリューの戦いが起きたとき、
5霊獣たちの力を借りて要塞化されたもの。
Nag'molada:……その地下にある、
クリスタルラインの流れを妨害する設備。
エシャンタールは、その設備を起動して
しまったのだよ。
Tenzen:なんと!
エシャンタール殿はなぜ、そのようなことを!?
Nag'molada:奴らの真意が
どこにあるかは、私にはわからぬこと。
なにしろ、それを探るために私はここへ
来たのだから……。
Nag'molada:くくく、不思議か?
Nag'molada:そうだな。おまえたちから見れば、
古代人はジラートもクリューも同じなのだろう。
しかし、その違いは実に大きい。
Nag'molada:彼らジラートの民が持つ共鳴能力
……「心の言葉」は、彼らを繋ぐ揺ぎない絆。
Nag'molada:その力を失ってしまった民
クリューは、その絆の外にある傍観者に
過ぎないのだよ。
Nag'molada:しかし傍観者だからこそ、
私は虚実を見極め、1万年前の聖戦を生き残る
ことができた。そして今もまた……
Nag'molada:ジラート、霊獣、セルテウス。
3つどもえの戦いは再び、ヴァナ・ディールと人を
大きく傷つけるだろうがな。
Tenzen:そんな!?
ナグモラーダ殿、そこまで知りながら何故、
この戦を止めようとはしないのでござるか!
Tenzen:人と霊獣が戦うなど、
あやまった戦。ヴァナ・ディールの敵は
「虚ろなる闇」を撒き散らすあの少年のみ。
Nag'molada:……フン、なにを言うかと思えば、
おまえも霊獣に振り回され、ご苦労なことだ。
Nag'molada:いいか、前にも言ったはずだ。
セルテウスは、ただの裏切り者に過ぎない。
Nag'molada:1万年前、奴に妨げられた
ジラートの悲願、奴は再度、その成就を
妨げようとしているに過ぎない。
Nag'molada:ここにある監視装置の記録が、
奴がなんのために母なるクリスタルを巡るのか、
その理由を教えてくれたよ。
Nag'molada:奴は母なるクリスタルに触れることで、
クリスタルの輝き、その力を吸収しているのだ。
Tenzen:クリスタルの力を?
Nag'molada:そうだ。
我らの悲願を成就させるためには、
5つの母なるクリスタルの力を集結させ、
融合させなければならない。
Nag'molada:それを成すがために
我らは、ジラートの設備を復旧させつつ、
徐々にクリスタルの輝きを汲み出してきた。
Nag'molada:しかし、それを妨げようと、
ヤツが母なるクリスタルから急激にエネルギーを
吸い出したがために、その周囲の空間は歪み……
Nag'molada:世界を照らす
クリスタルの輝きが失われた場所、クリスタルの
「影」……「虚ろなる闇」が現われてしまったと
いうわけだ。
Tenzen:しかし、あの少年セルテウスが
現われたのは、バハムートが現われたのと同じ頃。
Tenzen:我らが故郷、
他の者々の口端にのぼる辺境に忍び寄る
「虚ろなる闇」は、より以前より……
Tenzen:……!
そなたたちも「徐々にクリスタルの光を
汲み出してきた」と言ったでござるな?
Tenzen:まさか、ひんがしの果てに現われた
「虚ろなる闇」は、そなたたちの……!?
Nag'molada:フフフ。
おまえの思っているとおりだ、テンゼン。
Nag'molada:しかし無論、
我らは、ヴァナ・ディールを「虚ろなる闇」にて
傷つけるがために行動を起こしたわけではないぞ。
Nag'molada:我らが眠っていた
1万年の間に、母なるクリスタルを取り巻く
状況は、大きく変化してしまっていた。
Nag'molada:特に、
神都アル・タユの奥にあった
第5のクリスタル……。
Nag'molada:あれは、
神都消滅の打撃を受け、今や深海の底に
沈み、異常なデータを返してきている。
Nag'molada:しかし、安心するがいい。
「楽園の扉」さえ開かれれば、クリスタルもまた
再生するだろう!
Nag'molada:そうすれば「虚ろなる闇」も
晴らされ、我らが悲願も成就される!
Nag'molada:それを邪魔する霊獣たちさえ、
この世から消し去ればな!?
Tenzen:……黙せ、ナグモラーダ!
我輩がそなたを切り捨てる前に、今一度、
霊獣ディアボロスの忠告を思い出すといい!
Tenzen:おぬしたちは
「男神プロマシア」の呪いに操られているのだぞ!
Tenzen:「楽園の扉」が
開かれしとき、「世界は終わる」!
Nag'molada:しかしそれは、
「始まり」でもある!
Nag'molada:テンゼンよ、
霊獣フェニックスに尋ねてみるがいい!
霊獣の言う「世界の終わり」とはなにか!
そしてそのとき、なにが起こるか!?
Tenzen:……なに!?
Nag'molada:そうだ。ヴァナ・ディール。
この世界は、本当の世界ではない。
Nag'molada:絶対なる
価値観は揺らぎ、認識に費やす時間は膨大、
告白すら齟齬をきたし、自らの居場所は曖昧、
粛清には犠牲が伴う……!
Nag'molada:おまえたちは
この世界に生まれ、この世界しか知らぬ。
だからこそ、この世界の終わりを惜しむべく
惜しみ、抗うだけ抗おうとする。
Nag'molada:その習性を、
霊獣どもは利用した。何故ならば霊獣たちは、
ヴァナ・ディールで生まれた命であり、
楽園ではただの「獣」と成り下がるからだ!
Tenzen:……し、しかし……。
……。
Nag'molada:さぁ、
霊獣に操られし現世人よ。「真実」を見極められず
いいように操られる、くぐつなる者よ。
Nag'molada:人の本当の敵は、
その霊獣自身だったと知ったところで、
おまえたちの旅は終わり。
Nag'molada:あとは私に
任せるといい。おまえたちのかわりに
私がすべてを見極めてやる。
Tenzen:……!
Nag'molada:セルテウスが
集めた母なるクリスタルの輝き……。
神都アル・タユが存在するのならば、
ジラートどもの企み……。
Nag'molada:この監視装置に
残されたクリスタルの記憶、石の記憶が
すべてを教えてくれるはず。
Nag'molada:さぁ、クリスタルよ、
第5の母なるクリスタルが残した記憶を、
私の望む「真実」を示すのだ……!
(ナグモラーダがコンソールを操作すると、5つのクリスタルを
壁面に配した施設で横たわるエシャンタールのビジョンが見える)
Nag'molada:……クッ……
なんだ今の断片的なデータは……
やはり、第5の母なるクリスタルは
ノイズが酷い……
Nag'molada:しかし……
あれは「虚ろの器」か、そしてエシャンタール……。
Nag'molada:そうか、
もしや……!?
(ターミナルを後にするナグモラーダ、残された二人)
Tenzen:……。
Tenzen:どういうことでござる?
Tenzen:霊獣が、我らを
たぶらかしていたというでござるか……?
人の覚醒を防ぐがために……?
Tenzen:しかしそれならば
我輩は……、この火のために死んでいった民は……。
Tenzen:……ッ……
霊獣フェニックスよ、答えよ!
Tenzen:そなたを得るために
いくつもの村々が滅ぼされ、我が故郷も
皆死にの憂き目にあったのでござるぞ!
Tenzen:おまえがすすった
命の火は、世界と人の再生を求むる旅の
糧となるのではなかったのか!?
Tenzen:……。
Tenzen:クッ……
それでもなお、おまえは
霊獣フェンリルに会えと繰り返すのか?
Tenzen:ソ・ジヤの南、
フェンリルの扉を叩けと……!?
Tenzen:良かろう!
Tenzen:最後の霊獣が
我らにどのような真実を明かすのか、
もしくはどのようにたぶらかすのか、
しかと見極めてやろうではないか!
■ソ・ジヤ・60制限塔地下
(アバター・ゲートを開くPC)
(魔導機を起動させると、光り輝く球が現われる)
Fenrir:・・・・・・我が名は・・・・・・
フェンリル・・・・・・、我が理体は・・・・・・失われ・・・・・・、
今や彷徨える星となりし身・・・・・・。
Fenrir:我が力・・・・・・
もはや消え行く・・・・・・暁星のごとく・・・・・・、
あとはただ・・・・・・空のみ残る・・・・・・。
Tenzen:霊獣フェンリル。
我が名はテンゼン。霊獣フェニックスの息吹
宿りし鳳凰丸と共に、ひんがしの国より参った。
Tenzen:4つの母なるクリスタルは、その力奪われる
ことにて「虚ろなる闇」をまとい、世界には
「世界の終わりに来る者」が現れている。
Tenzen:ヴァナ・ディールを
救うがため、その尊いお力、その尊い知識、
我輩とこの鳳凰丸に託していただきたい。
Fenrir:・・・・・・そうか・・・・・・。
そなたは・・・・・・またも・・・・・・
人と共に・・・・・・生き・・・・・・死ぬか・・・・・・。
Fenrir:・・・・・・それも・・・・・・
・・・・・・ひとつの・・・・・・道・・・・・・。
我ら・・・・・・霊獣の・・・・・・、人の・・・・・・選んだ道・・・・・・。
Tenzen:・・・・・・?
恐れながら、
おっしゃることが、よく聞き取れぬでござる!
霊獣フェンリル、そなたは何を語らんと!?
Fenrir:・・・・・・1万年前・・・・・・
我が・・・・・・教えた記憶・・・・・・
それが・・・・・・そなたに・・・・・・道を示す・・・・・・。
Fenrir:・・・・・・見よ・・・・・・
過去の契りを・・・・・・古に・・・・・・定めしことを・・・・・・。
我・・・・・・、空に・・・・・・消える前に・・・・・・。
(鳳凰丸に近づいていく光の球)
Tenzen:ここは・・・・・・!?
(夜のサルタバルタ。星降る丘のように幽かに光っている)
(宙に浮くフェンリルと古代の民が対峙している)
Tenzen:これは・・・・・・
霊獣フェンリルの見せている幻影でござるか?
Tenzen:[Your name]殿、
ここは、古代の民の時代だとか・・・・・・。
Tenzen:・・・・・・となれば、
あそこにて霊獣フェンリルと
対峙しているのも古代の民・・・・・・?
Fenrir:・・・・・・人よ。
黄昏を迎え入れる定めを受け入れ、
なお生きることを選択した者たちよ・・・・・・。
Fenrir:我が警告の通り
クリスタルの光は陰り、混沌たる
命の波乱が起きようとしている・・・・・・。
Fenrir:そなたたち人と
語り合うことは、もはや意味のなきこと。
Fenrir:そなたたちも
人の姿でありたいのならば、
すみやかにこの地を去れ。
Fenrir:セルテウスと
我ら霊獣が交わした契約が果たされるまで
人にとっては十分な時間が残されている。
Fenrir:永く短きその営みを繰り返し、
最後の命の炎を燃やし尽くすといい。
Esha'ntarl:お待ちください。
霊獣フェンリル、私たちの未来はいまだ、
決定されたわけではございません。
Esha'ntarl:私たちはあなた様に
新たな定めを生み出して
いただくために来たのです。
Fenrir:・・・・・・なに?
新たな定めを・・・・・・?
Fenrir:もう一度言おう。
そなたたち人と語り合うことは、
もはや意味なきこと。
Fenrir:母なるクリスタルが
出した答えは、世界の理となる。
石の記憶は告げた。それは誰にも変えられん。
Esha'ntarl:はい。
あなた様の言わんとしていることは、
よくよく存じております。
Esha'ntarl:時が経つにつれ、
人の命は汚れ、闇が生み出され・・・・・・
Esha'ntarl:そして、いつしか
闇をその身に宿し者「世界の終わりに来る者」が
現われ、人すべてを黄昏へと導く・・・・・・。
Esha'ntarl:それは
あなた様が定めることもなく起こる必然。
定めを決める星月の力をもちいても、
その必然を打ち消すことはできない。
Esha'ntarl:しかし、故国にて果てた
セルテウスより私は伺いました。
Esha'ntarl:霊獣たちと交わされた契約は、
「世界の終わりに来る者」を打ち破ることにて
反故とされると。
Fenrir:確かに、我らの
結んだ契約はそれだ。人に課せられた呪縛、
それに逆らうことが出来ればな。
Fenrir:しかし、
今、その役目を負いしセルテウスは亡い。
ならば、人のうちの誰が逆らえる?
解のない問いに、答えられる者があるというのか?
Esha'ntarl:・・・・・・はい。
私が、その答えを見出したと思います。
Esha'ntarl:セルテウスが、
何故、最後に私にああ告げたのか・・・・・・。
それは私に、この使命を与えるため。
Fenrir:・・・・・・なに?
まさかそなたは・・・・・・。
Fenrir:そうか、そなたこそが
「虚ろなる闇」から解き放たれた奇跡の存在。
Fenrir:今ここで
そなたと話すことができるとは、
さすがの我も、詠みきれなかった。
Esha'ntarl:・・・・・・。
Fenrir:人の命の循環より
外れたそなたならば、世界の終わりまで
人の定めを見届けられるかもしれん。
Fenrir:しかし
そのときが訪れたとき、そなたひとりでは、
「世界の終わりに来る者」に何もできまい。
Fenrir:そなただけを置いて
人は、黄昏へ向かって臣下の一途を辿るぞ。
驕慢、嫉妬、怯懦、無知、憎悪の一途をな。
Esha'ntarl:わかっています。
けれども私には、永く久しく続く年月があり、
そして人には、永く久しく続く血の縁がある。
Esha'ntarl:霊獣フェンリル、
「その時」を作ってください。「定めの時」を。
「世界の終わりに来る者」が生れ落ちる
「定めの地」を・・・・・・
Esha'ntarl:それさえ
定められれば、私たち人にも勝機がございます。
いいえ、人は必ず、勝機を作り出すでしょう。
Fenrir:「定めの時」、「定めの地」・・・・・・。
Fenrir:・・・・・・フフフ。
人よ。定めを担うは、そなたが想像するより
遥かに重く険しいことよ。
Fenrir:しかし、そなたのまがつみに
これ以上の業報はあるまい。人の定めを
そなたひとりで担えるかな?
Esha'ntarl:・・・・・・。
(頷くエシャンタール)
Fenrir:ならば我は、
そなたたちの行く末を見極めてやろう。
さぁ、月詠みを始めようではないか。
(満月に吠えるフェンリル)
(シーンはタブナジアの大地に)
Fenrir:・・・・・・そして・・・・・・
・・・・・・定めは・・・・・・
・・・・・・下された・・・・・・
Fenrir:・・・・・・1万年の時を経て・・・・・・
・・・・・・「世界の終わりに来る者」は・・・・・・
・・・・・・生れ落ちる・・・・・・。
Fenrir:・・・・・・「定めの地タブナジア」に・・・・・・。
(幻影は消え、元のソ・ジヤに戻る)
Tenzen:・・・・・・
・・・・・・[Your name]殿・・・・・・。
Tenzen:・・・・・・これは、
霊獣によるたぶらかしでござるか?
それとも、受け入れがたい真実でござるか?
Tenzen:霊獣フェンリルは、
「世界の終わりに来る者」が生れ落ちる地を
タブナジアに定めた・・・・・・? 1万年前に・・・・・・。
Tenzen:タブナジア・・・・・・。
忌むべき子・・・・・・。しかし・・・・・・、しかし・・・・・・。
Tenzen:・・・・・・。
バストゥークに戻るでござる・・・・・・!
ウルミア殿に尋ねなくてはならんでござる・・・・・・!
■バストゥーク大工房・シド研究室
Tenzen:シド殿!
ウルミア殿はお戻りか!?
それに・・・・・・プリッシュ殿は・・・・・・!?
Cid:ウルミア君は戻っているが、
プリッシュ君は行方がわからないままだが・・・・・
なにか重大なことがあったのか?
Cid:霊獣たちが、そのようなことを言ったと
いうのか? にわかには信じられぬが・・・・・・
Cid:しかし、
ナグモラーダの言うことには
思い当たる節が幾つかある。
Cid:各地の岩から伸びている
ライン状のクリスタルの反応・・・・・・。かねてより
わしも、そのラインについて研究を行っていた。
Cid:古代人の生き残りたちが、
あのラインを使ってクリスタルの力をひとつに
しようなどと、大それたことを考えているとは
思わなかったがな。
Tenzen:そしてそのとき、
「楽園の扉」が開くという・・・・・・。
Cid:ふぅむ。神がかったはなしだが、
その論、ありえんことではない。
Cid:なんといっても
ジュノには黒衣の研究者たちがいる。
あれだけの技術をもつ奴らが言うことだ。
Cid:ただ、奴らの神都アル・タユとやらは、
その試みが失敗して、消滅の憂き目にあった
わけだろう?
Cid:楽園というものもよくわからぬのに、
古代人のもくろみを、このまま捨て置くわけには
いかぬが・・・・・・。
Tenzen:確かにそうでござるが、
それよりもシド殿。我らの憂い事は
「世界の終わりに来る者」でござる。
Tenzen:我輩、「世界の終わりに来る者」は、
かの少年セルテウスだと思っていたでござる。
しかし霊獣フェンリルが言うには・・・・・・。
Cid:・・・・・・。
タブナジアに「世界の終わりに来る者」が
生れ落ちるという話か・・・・・・。
Cid:おぬしはそれが
プリッシュ君のことを指すと言いたいのだな?
Cid:おぬしの話を聞くに、
タブナジアでの彼女の扱い、
尋常なものではなかったようだからな。
Tenzen:そうでござる。
しかしそこは、鳳凰丸に尋ねても、
わからぬと繰り返すのみ。
Tenzen:ただ、もしも
プリッシュ殿がそれだというのならば、
非情なれど、我輩はプリッシュ殿を・・・・・・。
Cid:待て待て!
まだ、プリッシュ君のことを指すとは
決まったわけではないぞ!
Cid:おぬしも、まさかあの子が
恐ろしい男神の意志を継ぐような
ものとは思わなんだろ? なぁ?
Tenzen:しかし・・・・・・
聖獣フェンリルが見せた、古のやりとり。
霊獣のたばかりだとは思えないでござる。
Tenzen:楽園への扉が開かぬことを願う
彼らにとって、それを願う「世界の終わりに
来る者」は、まごうことなき彼らの敵。
Tenzen:もしかしたら、プリッシュ殿は、
目覚めていないだけなのかもしれぬでござる。
その身に宿る、男神の意志に・・・・・・。
Cid:・・・・・・。
Cid:わかった。
しかしルーヴランス君が戻るまで
ウルミア君にその話をするのは
避けたほうがよかろう。
Cid:彼女は、プリッシュ君を見つけ出しながら
連れ戻せなかったことで自分を責めている。
これ以上、追い詰めてはかわいそうだ。
Tenzen:・・・・・・そうでござるな。
そのことに触れぬと約束するでござる。
Tenzen:それでウルミア殿は、
今どこにいるのでござるか?
Cid:ライバート、
テンゼン君を案内してやってくれ。
(シドと二人だけになる)
Cid:[Your name]君。
正直言って、わしらはとんでもないことに
首を突っ込んでいるようだ。
Cid:今までは、ただ自分の知識欲やら
正義感やらを満足させるために進んできたが・・・・・・。
ここからは用心せよと、長年の勘が囁いている。
Cid:特に、おぬしたちの言う古代人の生き残り。
奴らが、ジュノの底まで根を下ろしているのならば、
彼らを止めるのは厄介なことだ。
Cid:真龍や獣人たちの脅威をよそに、
ジュノとの戦争などゾッとせん。
Cid:しかも実はな。
わしにはもうひとつ気がかりなことがある。
Cid:テンゼン君の来た「東の国」。
海賊たちの話を聞くにしても遠く閉ざされた国ゆえ
謎ばかり。信用してもよいものか・・・・・・。
Cid:嫌な雲ゆきだな。
誰が真実を語り、誰が真実の友かわからんぞ。
下手に動けば、転覆させられそうだ。
Cid:おぬしも自分の国を守りたいのならば、
人に流されず、自分の目で見、自分の頭で
考えねばならんぞ。
Cid:・・・・・・さて、と。
わしの説教はここまでだ。
End