■ 第3節 第2小節 みっつの道-羅針の示すもの
ナグモラーダが告げた真実に苦しみ
ながらも、神獣フェンリルの導きに
従ってソ・ジヤ遺跡を目指すテンゼン。
彼の後を追おう。
■ ソ・ジヤ遺跡南の塔
Tenzen:[Your name]殿!
来てくださったのでござるか!?
Tenzen:まことに、かたじけないでござる。
Tenzen:元はといえば我輩が
霊獣の話など持ち出さねば、そなたも皆も、
霊獣に利用されることなどなかったものを……
Tenzen:鳳凰丸は、ナグモラーダが
語ったことを認めたでござる。
Tenzen:「楽園の扉」開かれたとき、
霊獣たちは獣と成り果て……
Tenzen:そして我らの暮らす
ヴァナ・ディールは楽園となり、眠れる神々が
目覚めて祝福を満たすということを……。
Tenzen:しかしそれは、
死せる神が復活を迎えると同義。
Tenzen:それが悪しきこととなるか、
それとも善きこととなるか。
霊獣フェニックスにもわからぬとか。
Tenzen:……わからぬ、か。
そのわからぬことのために、ひんがしの国では
あまりにも多くの血が流れてしまったでござる。
Tenzen:この鳳凰丸は
「虚ろなる闇」を打ち払うために、命の霊獣
フェニックスの聖なる残り火にて打たれた刀。
Tenzen:しかし、その役目を
果たすには力が足りず、より強き力を与えんが
ために、罪なき人々の「命」を要した……。
Tenzen:その数は、ひとかたならぬもの。
Tenzen:それは、咎人や蛮族を狩ることから
始まり、貢租を納められぬ村々より貢租のかわりに
生にえが募られ……
Tenzen:ついには、
「虚ろなる闇」によって眠りについた人々が、
その意志なきまま、この刃にかけられたので
ござる。
Tenzen:……。
中の国に暮らすそなたの耳には、それこそ
ひんがしの帝による暴挙と聞こえような?
Tenzen:しかし、ひんがしの民は皆々、
それこそ天命であり、抗えぬ定めだとして
受け入れていた……。
Tenzen:何故なら、その死は、
世界の終わりを止めるための糧となり、
Tenzen:その子、その孫、
その血に連なる子孫のための
ものだと信じていたがため……!
Tenzen:[Your name]殿……、
我輩は帝より大命を受け、この地へ参った。
Tenzen:その大命に、自らの命にかえても
鳳凰丸を守る旨の一項がある。
Tenzen:我輩は、この大命に逆らえぬ身。
だから、そなたに託しておきたい。
Tenzen:この先、万が一、
霊獣フェニックスが人の義に反する導きを示し、
我輩が人の敵となりしときは迷いなく……
Tenzen:……。
Tenzen:先に参るぞ、
[Your name]殿。
Tenzen:この塔の最奥に封じられている
霊獣フェンリルの力を解き放てば、
霊獣フェンリルに見まえることができるとか。
Tenzen:我輩の気力。
ほむらのごとく、たぎり出んことを……
■ 最下層・Avatar Gateの奥の魔導器
Fenrir:……我が名は……
フェンリル……。我が理体は……失われ……、
今や彷徨える星となりし身……。
Fenrir:我が力……
もはや、消え行く……暁星のごとく……。
あとはただ……空のみ残る……。
Tenzen:霊獣フェンリル。
我が名はテンゼン。霊獣フェニックスの息吹
宿りし鳳凰丸と共に、ひんがしの国より参った。
Tenzen:4つの母なるクリスタルは、その力奪われる
ことにて「虚ろなる闇」をまとい、世界には
「世界の終わりに来る者」が現われている。
Tenzen:ヴァナ・ディールを
救うがため、その尊いお力、その尊い知識、
我輩とこの鳳凰丸に託していただきたい。
Fenrir:……そうか……。
そなたは……またも……
人と共に……生き……死ぬか……。
Fenrir:……それも……
……ひとつの……道……。
我ら……霊獣の……、人の……選んだ道……。
Tenzen:……?
恐れながら、
おっしゃることが、よく聞き取れぬでござる!
霊獣フェンリル、そなたは何を語らんと!?
Fenrir:……1万年前……
我が……教えた記憶……。
それが……そなたに……道を示す……。
Fenrir:……見よ……
過去の契りを……古に……定めしことを……。
我……、空に……消える前に……。
(月夜、古代人たちと狼が対峙している)
Tenzen:ここは……!?
Tenzen:これは……
霊獣フェンリルの見せている幻影でござるか?
Tenzen:[Your name]殿、
ここは、古代の民の時代だとか……。
Tenzen:……となれば、
あそこにて霊獣フェンリルと
対峙しているのも古代の民……?
Fenrir:……人よ。
黄昏を迎え入れる定めを受け入れ、
なお、生きることを選択した者たちよ……。
Fenrir:我が警告の通り
クリスタルの光は陰り、混沌たる
命の波乱が起きようとしている……。
Fenrir:そなたたち人と
語り合うことは、もはや意味のなきこと。
Fenrir:そんたたちも
人の姿でありたいのならば、
すみやかにこの地を去れ。
Fenrir:セルテウスと
我ら霊獣が交わした契約が果たされるまで、
人にとっては十分な時間が残されている。
Fenrir:永く短きその営みを繰り返し、
最後の命の炎を燃やし尽くすといい。
Esha'ntarl:お待ちください、
霊獣フェンリル。私たちの未来はいまだ、
決定されたわけではございません。
Esha'ntarl:私たちはあなた様に、
新たな定めを生み出して
いただくために来たのです。
Fenrir:……なに?
新たな定めを……?
Fenrir:もう一度言おう。
そなたたち人と語り合うことは、
もはや意味のなきこと。
Fenrir:母なるクリスタルが
出した答えは、世界の理となる。
石の記憶は告げた。それは誰にも変えられん。
Esha'ntarl:はい。
あなた様の言わんとしていることは、
よくよく存じております。
Esha'ntarl:時が経つにつれ、
人の命は汚れ、闇が生み出され……
Esha'ntarl:そして、いつしか
闇をその身に宿し者「世界の終わりに来る者」が
現われ、人すべてを黄昏へと導く……。
Esha'ntarl:それは
あなた様が定めることもなく起こる必然。
定めを決める星月の力をもちいても、
その必然を打ち消すことはできない。
Esha'ntarl:しかし、故国にて果てた
セルテウスより、私は伺いました。
Esha'ntarl:霊獣たちと交わされた契約は、
「世界の終わりに来る者」を打ち破ることにて
反故とされると。
Fenrir:確かに、我らの
結んだ契約はそれだ。人に課せられた呪縛、
それに逆らうことができればな。
Fenrir:しかし、
今、その役目を負いしセルテウスは亡い。
ならば、人のうちの誰がそれに逆らえる?
解のない問いに、答えられる者があるというのか?
Eshan'tarl:……はい。
私が、その答えを見出したと思います。
Esha'ntarl:セルテウスが、
何故、最後に私にああ告げたのか……。
それは私に、この使命を与えるがため。
Fenrir:……なに?
まさかそなたは……。
Fenrir:そうか、そなたこそが
「虚ろなる闇」から解き放たれた奇跡の存在。
Fenrir:今ここで
そなたと話すことができるとは、
さすがの我も、詠みきれなかった。
Esha'ntarl:……。
Fenrir:人の命の循環より
外れたそなたならば、世界の終わりまで、
人の定めを見届けられるかもしれん。
Fenrir:しかし
そのときが訪れたとき、そなたひとりでは、
「世界の終わりに来る者」に何もできまい。
Fenrir:そなただけを置いて、
人は、黄昏へ向かって進化の一途を辿るぞ。
驕慢、嫉妬、怯懦、無知、憎悪の一途をな。
Esha'ntarl:わかっています。
けれども私には、永く久しく続く年月があり、
そして人には、永く久しく続く血の縁がある。
Esha'ntarl:霊獣フェンリル、
「その時」を作ってください。「定めの時」を。
「世界の終わりに来る者」が生まれ落ちる
「定めの地」を……
Esha'ntarl:それさえ
定められれば、私たち人にも勝機がございます。
いいえ、人は必ず、勝機を作り出すでしょう。
Fenrir:「定めの時」、「定めの地」……。
Fenrir:……フフフ。
人よ、定めを担うは、そなたが想像するより
遥かに重く険しいことよ。
Fenrir:しかし、そなたのまがつみに
これ以上の業報はあるまい。人の定めを
そなたひとりで担えるかな?
Esha'ntarl:……。
Fenrir:ならば我は、
そなたたちの行く末を見極めてやろう。
さぁ、月詠みを始めようではないか。
Fenrir:……そして……
……定めは……
……下された……
Fenrir:……1万年の時を経て……
……「世界の終わりに来るもの」は……
……生まれ落ちる……
Fenrir:……「定めの地タブナジア」に……
Tenzen:……
……[Your name]殿……。
Tenzen:……これは、
霊獣によるたぶらかしでござるか?
それとも、受け入れがたい真実でござるか?
Tenzen:霊獣フェンリルは、
「世界の終わりに来る者」が生まれ落ちる地を
タブナジアに定めた……? 1万年前に……。
Tenzen:タブナジア……。
忌むべき子……。しかし……、しかし……。
Tenzen:……。
バストゥークに戻るでござる……!
ウルミア殿に尋ねなくてはならんでござる……!
■ バストゥーク大工房・シド研究室
Tenzen:シド殿!
ウルミア殿はお戻りか!?
それに……プリッシュ殿は……!?
Cid:!? どうした!?
何か重大なことがあったようだな?
Cid:霊獣たちが、そのようなことを言ったと
いうのか? にわかには信じられぬが……
Cid:しかし、
ナグモラーダの言うことには、
思い当たる節が幾つかある。
Cid:各地の岩から伸びている
ライン状のクリスタルの反応……。かねてより
わしも、そのラインについて研究を行っていた。
Cid:古代人の生き残りたちが、
あのラインを使ってクリスタルの力をひとつに
しようなどと、大それたことを考えているとは
おもわなかったがな。
Tenzen:そしてそのとき、
「楽園の扉」が開くという……。
Cid:ふぅむ。神がかった話だが、
その論、ありえんことではない。
Cid:なんといっても
ジュノには、黒衣の研究者たちがいる。
あれだけの技術をもつ奴らが言うことだ。
Cid:ただ、奴らの神都アル・タユとやらは、
その試みが失敗して、消滅の憂き目にあった
わけだろう?
Cid:楽園というものもよくわからぬというのに、
古代人のもくろみを、このまま捨て置くわけには
いかぬが……。
Tenzen:確かにそうでござるが、
それよりもシド殿。我らの憂い事は、
「世界の終わりに来る者」でござる。
Tenzen:我輩、「世界の終わりに来る者」は、
かの少年セルテウスだと思っていたでござる。
しかし霊獣フェンリルが言うには……
Cid:……。
タブナジアに「世界の終わりに来る者」が
生まれ落ちるという話か……。
Cid:おぬしはそれが
プリッシュ君のことを指すと言いたいのだな?
Cid:おぬしの話を聞くに、
タブナジアでの彼女の扱い、
尋常なものではなかったようだからな。
Tenzen:そうでござる。
しかしそこは、鳳凰丸に尋ねても、
わからぬと繰り返すのみ。
Tenzen:ただ、もしも
プリッシュ殿がそれだというのならば、
非情なれど、我輩はプリッシュ殿を……
Cid:待て待て!
まだ、プリッシュ君のことを指すとは
決まったわけではないぞ!
Cid:彼女は確かに粗暴で粗野だが、
それは自分に正直ゆえのことだとわしは思う。
Cid:おぬしも、まさかあの子が
恐ろしい男神の意志を継ぐような
ものとは思わんだろ? なぁ?
Tenzen:しかし……
霊獣フェンリルが見せた、古のやりとり、
霊獣のたばかりだとは思えぬでござる。
Tenzen:楽園への扉が開かぬことを願う
彼らにとって、それを願う「世界の終わりに
来る者」は、まごうことなく彼らの敵。
Tenzen:もしかしたら、プリッシュ殿は、
目覚めていないだけなのかもしれぬでござる。
その身に宿る、男神の意志に……。
Cid:……。
Cid:まぁ、このことは
プリッシュ君を見つけ出してからの話にしよう。
Cid:どちらにしても、
わしらはやれることをやるしかない。
どんなに悲観的な状況となったとしてもな。
Cid:[Your name]君、
サンドリアへ発ったウルミア君の様子を
身にいってくれ。
Cid:それと、ルーヴランス君からも
連絡がないのが気になる。
Cid:彼の方は、神都アル・タユの
情報を求めて、タブナジアへ行くと
言っていたが……。
Tenzen:我輩は、今一度ジュノの様子を
探ってくるでござる。プリッシュ殿がジュノに
捕らえられるようなことになれば、手が出せぬ
ようになってしまうでござる。
Tenzen:では、ごめん。
Cid:[Your name]君、
正直言って、わしらはとんでもないことに
首を突っ込んでいるようだ。
Cid:今までは、ただ自分の知識欲やら
正義感やらを満足させるために進んできたが……、
ここからは用心せよと、長年の勘が囁いている。
Cid:特に、おぬしたちの言う古代人の生き残り。
奴らが、ジュノの底まで根を下ろしているのならば、
彼らを止めるのは厄介なことだ。
Cid:真龍や、獣人たちの脅威をよそに、
ジュノとの戦争などゾッとせん。
Cid:しかも実はな、
わしにはもうひとつ、気がかりなことがある。
Cid:テンゼン君の来た「東の国」。
海賊たちの話を聞くにも、遠く閉ざされた国ゆえ
謎ばかり。信用してもよいものか……。
Cid:嫌な雲ゆきだな。
誰が真実を語り、誰が真実の友かわからんぞ。
下手に動けば、転覆させられそうだ。
Cid:おぬしも自分の国を守りたいのならば、
人に流されず、自分の目で見、自分の頭で
考えねばならんぞ。
Cid:……さて、と。
わしの説教話はここまでだ。
Cid:それに、自分で考えろと
言ったばかりでなんなのだが、わしは一刻も早く、
プリッシュ君を探す必要があるように思う。
Cid:ウルミア君は、
サンドリアを目指すと言っていた。
おぬしもサンドリアへ行ってみてくれ。
Cid:もしもプリッシュ君が
本当に忌むべき子だというのならば、
おそらくウルミア君がカギになるはず。
Cid:取り返しがつかなくなる前に、
考える材料を集めてくれ。頼んだぞ。
End