株式会社新和が発行したAdvanced Dungeons & Dragonsの専門雑誌。
概要
『オフィシャルD&Dマガジン』の別冊として刊行された。大きさはモジュールやオフィシャルD&Dマガジンと同じ版型だが、平綴じで製本されている。
不定期刊であり、刊行当初は日本語訳が無くプレイ人口の少なかったAdvanced Dungeons & Dragonsのプレイヤー達を対象としていた。そのため各号の発行部数は3,000部限定になり、100ページ強ながらも定価は2200円(税抜)と、オフィシャルD&Dマガジンの前期刊行分の2倍以上、月刊化した後期刊行分の3倍以上というやや高い値段設定となっている。
日本語版監修の大貫昌幸が総監修となり、ドラゴンマガジン3号からD&D関連雑誌の編集長を担当していた林利也が編集長となっている。
記事の内容はAD&DのDMやプレイヤーを対象としている。D&DのDMやプレイヤーにも役立つ内容が多い。特に、オフィシャルD&Dマガジンでは次第に扱われなくなったDungeon誌やDragon誌の翻訳記事やシナリオ、幻想教養講座などのプレイングの資料などの記事はこちらに移っている。
プレイングガイド
OFFICIAL DUNGEONS & DRAGONS MAGAZINE別冊として刊行された最初のプレイングガイド。
奥付は平成二年二月二日発行。
表紙はJeff Easlyの「Mages Balltle」。
AD&D日本語版予定発表
大貫昌幸による記事で、AD&DとD&Dの歴史やその相違点、日本語版AD&D及びD&Dの刊行予定。
AD&D英語版完全リスト
プレイングガイド刊行当時の英語版AD&Dの商品リスト。
当時第2版は刊行されたばかりで「Player's Handbook」「Dungeon Master's Guide」「Montstrous Compendium Vol.1~3」「REF1 Dungeons Master's Screen」「REF2 Character Record Sheets」の7つのみだった。
第1版は歴史があるだけにルールブックやモジュール、サプリメントなど圧倒的な分量を持つ。
騎士の夜~ファンタジーゲームでの宿と居酒屋
TSR社のDRAGON誌136号の翻訳記事。
AD&D世界におけるイン(宿屋)とタバーン(酒場)について解説されている。それぞれ星1つから4つまでの等級にランク分けされている。星が多いほど設備が整っておりサービスが多様になっていくが、値段も大きく上がっていく。
インの宿泊料金やサービス料金、タバーンの飲食物の料金表がある。
薬草の基礎知識
TSR社のDRAGON誌82号の翻訳記事。
AD&Dのゲームシステムに合わせて書かれた薬草に関する追加選択ルール。
現実世界にある野草を基に執筆されているが、わざわざ真に受けないようにと注意書きがある。
また日本語版編者の注釈では、安易に導入するとコンピュータゲームの「やくそう」のように便利すぎになると警告している。
マテリアルコンポーネントを集めよう!
TSR社のDRAGON誌81号の翻訳記事。
AD&Dの呪文で重要な構成要素となる「マテリアル・コンポーネント」に関して解説されている。
マテリアル・コンポーネントとして設定されている物質や品物がずらりと並んでおり、それぞれに名称や入手先、標準的な価格が記載されている。
AD&D第2版の日本語版が出た当時はマテリアル・コンポーネントに関する情報が少なく、多少の改変するだけでそのまま使える実用的な記事だった。
トレジャートルウブ
TSR社のDRAGON誌91号の翻訳記事。Roger Rauppによるイラストがそのまま掲載されている。
47種のマジックアイテムが掲載されているが、AD&D第1版のルールに従って書かれている点に留意する必要がある。
望むなら開けたまえ
TSR社のDRAGON誌106号の翻訳記事。著者はフォーゴトンレルムのデザイナーの1人であるEd Greenwood氏。
「工芸家ナドラン」が製作したという12種の魔法の扉について解説されている。
解説の序文と末文では1人の冒険者と、フォーゴトンレルムでその名を知られる賢者エルミンスターの会話場面となっている。
紹介される12の魔法の扉は、効果の大小はあるがいずれも危険な代物となっている。中でも12番目に紹介される最悪の扉には「ドレッド・ポータル(恐怖の扉)と名付けられている。
床の上に何かあります・・・
TSR社のDRAGON誌115号の翻訳記事。
ダンジョンにある床の様子についての記事。前述の魔法の扉と違い、不審な様子だけで実際には害の無い床も多数含まれている。強烈な罠も少なくないが。
ただし濫用すると、ダンジョンを歩いて移動すること自体が至難の業と化してしまう点に注意。
コラム・幻想教養講座
第一時限「聖騎士 ― ゲームと史実」
執筆は多田修。
当時、漠然としたイメージしかなかった聖騎士や騎士について、現実世界の史実について簡単な紹介がされている。
第二時限「中世城塞概論」
執筆はPNマーシャル。
プレイヤーが領主となった時に直面する、城についての記事。城の意義や立地について述べられている。
欧州の城についての翻訳本が3冊、参考文献として挙げられている。
第三・四時限「中世化学講座」
執筆は神江瑞紀。
古代から中世にかけての化学、つまり錬金術について述べられている。今回は2ページに渡って西洋編と東洋編に分かれている。いずれも内容は錬金術の思想的な側面に関すること。
第五時限「欧州大戦争史 ― 十字軍」
執筆は滝祐一。
第七回「おわりのはじめ其之弐」。
今回は1097年7月の十字軍の進軍について。参考文献の3冊はいずれも十字軍に関する翻訳本。
洞窟外生活講座「エドワードI世様式の城」
執筆は石丸太。
13世紀に築城した英国の「エドワードI世様式」の城である、ハーレック城とボーマリス城、カーナヴォン城の図と各城の特徴が8ページに渡って述べられている。
巻末特集「リプレイ論 ― その種類と変遷」
執筆は秋澤弘。
テーブルトークRPGにおける「リプレイ」を主題とした記事。リプレイに付随する版権についての問題についても終わりの方で述べられている。
- 第一部「リプレイの種類」
サンプルストーリーを用意し、それを主題とした幾つものリプレイの例を挙げている。
- プレイヤーによるリプレイ
プレイヤーが何を誰に対して伝えるかにより変わる。- DM対象プレイヤーリプレイ
DMに対して、プレイヤーとキャラクターがどう感じたのかを知らせるリプレイ。DMとプレイヤーのやりとりであり、プレイヤーによる印象や描写をDMが知ることにより、DMはそれを基にしてストーリーやキャラクターをさらに深く掘り下げたり、新たな展開へのヒントとすることもできる。ただしプレイヤーが提示したリプレイをDMが全採用するとは限らない。 - プレイヤー対象プレイヤーリプレイ
プレイヤー同士の覚え書きの意味合いが強いとされる。特に連続ストーリーにおける展開を書き込んでおくことで、伏線などに気付きやすくなる。またTRPGの性質上、プレイヤーが常に揃うとは限らないため、参加できなかったプレイヤーにも前回の話が分かるようになる。 - 不参加メンバー対象プレイヤーリプレイ
上記に準じるが、不参加メンバーへのメモ書きや定時連絡のようなものとなる。また仲間内でのノリが出やすく、アマチュアらしくパワーがあるタイプのリプレイとなる。 - 一般対象プレイヤーリプレイ
最も出版されているリプレイに近い。プレイングへの参加、不参加を問わないどころか、ゲーマー以外を対象にしているかもしれない。
内輪ネタのような物が使いにくい上に、労力と文才を必要とする。最も書きやすいが、最も困難なタイプとされる。
- DM対象プレイヤーリプレイ
- DMによるリプレイ
プレイヤーのリプレイと比較して、キャラクターの細部よりもワールド全体を見せるようなものになりやすい。- 特定プレイヤー対象リプレイ
DMによる特定のプレイヤーへの情報提供やヒントの提示を目的とされる。また全プレイヤーが揃っている時間を有効に活用するため、特定のキャラクターに対するサイドストーリーをDMが提示する時にも使われる。上記の「DM対象プレイヤーリプレイ」に近いが、DM側から提示されるという違いがある。 - プレイヤー対象DMリプレイ
毎回のシナリオ毎に書かれる、DM側の覚え書きにあたる。1回のプレイから、必要な情報のみを引き出して記録するという形式がとられる。
一般的にはシナリオの結果報告として捉えられるが、これも立派なリプレイとされている。ただし、可能な限り、毎回書くことが望ましい。 - 不参加メンバー対象DMリプレイ
DM側による不参加メンバーへのプレイの様子や展開を伝えておくためのリプレイ。上記の不参加メンバー対象プレイヤーリプレイに準じる。 - 一般対象DMリプレイ
DMによるリプレイの中でも最も有名なタイプ。上記の一般対象プレイヤーリプレイに準じるが、それ以外にもキャンペーンストーリーを知らせることで新規参加者を促したり、新規参加者にストーリーを伝えるためにも有用とされる。
- 特定プレイヤー対象リプレイ
またオフィシャルD&Dマガジンやその系統の雑誌以外で行われている商業誌でのTRPGのリプレイについてもコラムの形で紹介されている。
- 第二部「リプレイの変遷」
RPGにおけるリプレイの書式についての記事。
「会話式リプレイ」「サーガ形式」「対話形式」「シチュエーション形式」「旅日記形式」などが解説されており、さらに筆者の経験に基づいたそれぞれの特徴も書かれている。 - 版権問題
商業ゲームのリプレイを書く際にどうしても起こる問題である「版権」についてのコラム。
当時のD&D関連の版権問題はTSR社の意向によって非常に厳しかったため、日本語翻訳兼しかない株式会社新和もそういった対応をせざるを得なかった事情が述べられている。
関連用語
【ドラゴンマガジン】【ファンタジー・ゲーマーズ・ジャーナル】【オフィシャルD&Dマガジン】【ファンタスティック・ゲームズ】