D&Dは、各キャラクターの役割や個性はクラス、さらに種族や能力値に準拠している。しかし、このデータで全ての事象に対応しているわけではなく、クラスと特に関連しているわけではない細かい知識や技術、工夫を「技能ルール」という形で表現している。
この「技能」というルールシステムを採用しているTRPGは古くから存在している。SFジャンルのTRPGの元祖である『トラベラー』、独特のファンタジー観を持つ『ルーンクエスト』、ホラーもので有名な『クトゥルフの呼び声』がその代表例といえる。また、『ソードワールドRPG』以降の日本のTRPGや小説、ライトノベルではクラスと技能を組み合わせたシステムを構築している例もある。
もともと「クラス」という形を主軸に据えたシステムを持つD&Dでは、クラスに付随する以外の知識や技術に関する行為判定のルールはなかったが、副次的な要素の追加ルールという形で採用された。後にD&D第3版以降は選択ルールではなくなっている。
クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ
GAZ1「カラメイコス大公国」
原語は「General Skill」。
第4版のガゼッタシリーズで公表された行為判定に関する選択ルール。新和版では「一般的技能」と訳されている。
1レベル開始時に習得できる技能の数は4つ。さらにインテリジェンスが高い場合はその修正値が加算される。この時、習得する技能数を1つ減らす代わりに、すでに習得した技能の判定に+1のボーナスを得ることができる。経験レベルが4上昇するごとに追加の技能を1つ習得もしくは既に習得した技能を強化してもよい。ただし新和版ではレベル上昇による技能の追加の項目「Learning More Skills」が抜けてしまっている*1。
技能はそれぞれ関連する能力値が決まっている。判定には1d20を使い、出目がその技能の関連能力値以下であれば成功と判定される。判定には、様々な状況による修正がかかる場合がある。
GAZ1 カラメイコス大公国9ページには技能の例が示されているが、DMとの相談により適切な技能を追加してもよいとされている。
GAZ5「アルフハイムのエルフ」
アルフハイム出身のエルフとしての特別な技能が追加されている。
このアクセサリーのルールを採用した場合、エルフのキャラクターは本来4つ得られる技能のうち3つが指定される。2つはエルフが体得する先天的な技能である〈追跡〉と〈木上移動能力〉。1つが所属する氏族により決定される。残り1つ(及びインテリジェンスによるボーナスの分)はプレイヤーが選択できる。
ルールサイクロペディア
原語は「skill」、日本語版の表記は「技能」(スキル)。
原語版のRules CyclopediaではChapter 5:Other Character Abilitiesに記載、日本語版のルールサイクロペディアでは「プレイヤーズ」の第5章で解説されている。ここでも選択ルールとなっている。
新和版と比べて大きな変化はないが、技能の種類や個々の解説が増えている。また習得していない技能の「空白」を「スロット」(原語:slot)、もしくは「技能スロット」(原語:skill slot)と呼称するようになった。さらに経験レベルの上昇だけでなく、エルフ・ドワーフ・ハーフリングは経験点の獲得により新たに技能を増やすことが可能になった。
また状況次第だが、複数人で行う共同作業による判定方法もルール化されている。
アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ
詳細は不明だが、第1版の選択ルールとして存在した模様。
第2版ではプレイヤーズハンドブック第5章「技能」(原語:Proficiency)に掲載されている選択ルール。
「武器技能」と「一般技能」の2種類があり、いずれも選択ルール。さらに「一般技能」には技能ポイントを使用しない代替ルールとして「副次技能」ルールがある。
選択ルールとされているが、各種コンプリートハンドブックで追加される「キット」ではその獲得に必要な武器技能と一般技能が設定されているため、キットを使用する場合は必須ルールとなる。
なお、上記の「一般技能」と「副次技能」という選択ルールの他に「プレイヤーが知っている知識や方法はプレイヤーキャラクターも知っていると見なす」という手法も提示されている。
ただしこの手法は魔法やモンスターが存在するとはいえ、中世欧州くらい知識や技術レベルの世界に現代の知識をいきなり導入することになるため、プレイヤーが直接持ち込む知識や技術による社会の激変に繋がりかねないという問題が起こるかもしれない。もっとも、現代人の転移や転生ものが増えた2010年以降のライトノベルではよくあることになってしまっているが。
武器技能
原語は「weapon proficiency」。
proficiencyは熟達や習熟といった意味の名詞。
クラス毎に使用可能武器の有無はあるが、ウォーリアー、ウィザード、プリースト、ローグの4種のクラス分類で1レベルの時に習得できる武器技能ポイントの数値と、追加の武器技能ポイントを習得できる経験レベルの倍数、習得していない武器を使う時のペナルティ値が記されている。武器技能は特定の武器に対してのみ機能するため、例えば、ロングソードを習得したからといって、ショートソードやシミターを使う時は技能なしとして扱われる。ただし、類似した武器に関してはペナルティを半減させてもよい。
専門武器
原語は「Weapon Specialization」。
specializationは特殊化、専門化を意味する名詞。
専業のファイターにのみ許可される技術として扱われる。習得した武器技能にさらに武器技能ポイントを追加することで獲得できる。これにより接近戦武器に関しては命中判定+1、ダメージ+2のボーナスを得る。弓などの飛び道具に関しては命中判定+2のボーナスを得る。更に武器を問わず、レベルにより規定された攻撃回数が1段階強化される。
一般技能
原語は「non-weapon proficiency」。
武器技能と同様、クラス分類により1レベルの時に習得できる一般技能ポイントの数値と、追加の一般技能ポイントを習得できる経験レベルの倍数が記されている。
習得できる一般技能は、共通技能・ウォーリアー技能・ウィザード技能・プリースト技能・ローグ技能の5種に分類されている。共通技能以外は自分のクラスで指定された分類の一般技能は普通に習得できる。そうではない場合、習得のために必要な一般技能ポイントが1ポイント追加で必要となる。
一般技能を使用する行為判定は、基本的に1d20で指定された関連能力値以下の出目を出すことで成功となる。
副次技能
原語は「secondary skill」。
キャラクターの持つ一般的な知識や技術を表現する選択ルールの1つ。ただし、「一般技能」とは併用すべきではないと明記しているため、各種コンプリートハンドブックでは採用されていない場合がある。
「副次技能」の技能の名称は木こり、商人、御者などといった職業名で表現されており、その職業名に関連する行為であるかどうかで判定自体が行えるかどうかが決まる。副次技能はd%でランダムに決定される。この時、出目次第では副次技能を2つまで取得できたり、まったく取得できない場合がある。
ダンジョンズ&ドラゴンズ第3版
原語はSkill。
技能に関するルールが選択ルールではなくなり、技能を使った行為判定のルールが明確に設定された。これまでのような判定の種類により使用するダイスや基準がバラバラではなくなっている。これに伴いシーフの特殊能力の%判定が廃止されて技能に統合された。
各技能の名称については表記が変更されており、技能名を〈〉の括弧でくくるという形式で表記されることになった。
また上級クラスの取得する際に特定の技能が要求されることがある。
技能判定の方法
この第3版から、技能ルールがこれまでと明確に変更されている。これまでは技能に関連する行為を行う時に、関連する能力値以下の数値を1d20で出せば成功という下方ロールが基本だったが、DMが設定した難易度以上の数値を1d20+技能修正値で出すという上方ロールに統一された。技能修正値は技能のランクと能力値修正値の2つの加算値である。
技能の種類と技能ポイント
プレイヤーズハンドブックに記載されている、習得可能な技能の種類は以前の版に比べて減っており、獲得できる技能ポイントは大幅に増えている。しかし技能によっては常にポイントをつぎ込んでランクを高く維持する必要がある。また、シーフの特殊能力やシーブズスキルが技能に統合されたこともあり、以前の版でのシーフに該当するローグにとっては非常に重要になった。
習得できる技能はクラスによってクラス技能・クラス外技能・習得不可の3つに分かれている。
なお、クラシックD&DのウエポンマスタリーやAD&D第2版の武器技能は特技の方に統合された。
関連項目
【特技】