ラストエリクサー能見

Last-modified: 2021-12-10 (金) 11:25:28

能見篤史(阪神→オリックス)のポストシーズンにおける様子を、RPGゲーム『ファイナルファンタジー』シリーズに登場するアイテムになぞらえた呼称。


概要

阪神時代の2013年、阪神は2位でCS進出、ファーストステージで広島東洋カープと対戦。その中で能見の扱いは、

  • 10月12日の第1戦、広島はエース・前田健太が順当に先発。対する阪神は広島キラー且つ前田との投げ合いも得意とする能見*1が予想されるも和田豊監督スパイスが発動し温存、ルーキー・藤浪晋太郎奇襲先発させたが1-8で敗退する。
  • 翌日の第2戦でも能見を再び謎の温存。ランディ・メッセンジャーが先発も4-7で広島に敗れ阪神のCS敗退が決定、結局能見は登板機会がないまま2013年シーズンを終えた。
  • CSファイナルステージ第4戦の日本テレビ系列中継で能見はゲスト解説として登場予定も読売ジャイアンツの3連勝*2で日本シリーズ出場が決定、能見のゲスト解説も消滅した。

この一連の出来事から、「能見=温存・残り物キャラ」というイメージが定着。それが『ファイナルファンタジー』シリーズで登場する“強力かつ貴重なアイテム故に出し惜んでいる間にゲームをクリアして結局余らせる”性質を持ったアイテム「ラストエリクサー」と重なり、この呼び名も定着した。
また「せかいじゅのしずく*3能見」「エリクシール*4能見」「せいなるはい*5能見」など、他のゲームの強力かつ貴重なアイテムに例えられる事もある。

能見はその後行われた巨人対東北楽天ゴールデンイーグルスによる日本シリーズにおいて、10月29日の第3戦でのテレビ中継のゲスト解説として登場。残り物キャラ化の進行に歯止めをかけている。

なお、後に能見は故障で投げられない状態だった事が明かされている。つまり、使わなかったのでも勿体ぶったのでもなく、単に使うことができなかっただけであった。


記事

阪神・能見、今季CS広島戦「マエケンと投げたいと思ってた」
http://www.sanspo.com/baseball/news/20131228/tig13122805020006-n1.html(魚拓)

阪神・能見篤史投手(34)が27日、甲子園歴史館の特別企画『阪神タイガース・能見篤史選手トークショー』の中で登板がなかった今年のクライマックスシリーズ・広島戦について初めて口を開いた。「僕が決めることではないですが、いくなら1戦目かな、と思ってました。マエケン(前田健太)とは投げたいな、と思っていた」と笑顔交じりに振り返った。一方で「1勝1敗で3戦目でまわってきたときに、どちらがプレッシャーがかかるのか、を考えると(初戦を藤浪)晋太郎でいくのも、わからなくもない」と冷静に語った。

掛布氏 能見に期待「真のエースへ」より抜粋

■チームに貯金をもたらす真のエースへ
私が理想としているエースの最低条件は、貯金「8」以上と、200イニングのクリアである。私は昨シーズン、「エースになるべきは能見だ」という話を至るところでしてきた。広島とのクライマックスシリーズでは、結局、能見には登板機会がなかった。後で聞くと、どこかに故障を抱えていて無理できなかったことが理由のひとつだったらしいが、きっと彼なりに、心の中で思うところはあったと思う。そういう悔しさを今シーズンは、「打倒巨人」にこだわらず、チームに貯金をもたらす真のエースとなることで晴らして欲しいのである。


主な成績(2013年シーズン)比較

黒字は3人の中でのトップ、赤字は同年のセ・リーグトップ

成績\選手藤浪晋太郎R・メッセンジャー能見篤史
登板(先発)数24(23)302925(25)
防御率2.752.892.69*6
勝利・敗戦10・612・811・7
投球回137 1/3196 1/3180 2/3*7
完投(完封)数0(0)636(2)
QS(HQS)率60.9(17.4)%67.9(48.3)%80.060.0%


類似例①

2016年10月4日のMLBア・リーグでは、ディビジョンシリーズ進出を懸けてトロントブルージェイズとボルティモアオリオールズによる一戦勝負が行われた。

2-2の9回裏、オリオールズは絶対的な守護神のザック・ブリットン*8を投入するかに思えたが、バック・ショーウォルター監督は8回から登板していたブラッド・ブラックをそのまま続投。一死1・2塁とされた場面でもダレン・オデイを投入する(併殺打でピンチを脱し、10回まで続投)。
勝ち越せなかったオリオールズは11回裏もブリットンを温存、同じ左腕のブライアン・ダンシングがワンポイントとして登板。一死後にウバルド・ヒメネスへと交代するが、連打を許すと続くエドウィン・エンカーナシオンにサヨナラ3ランを被弾、オリオールズは敗れたのだった*9

結局ブリットンはこの試合に登板する事なくシーズンを終え、以降は前述の例から「ラストエリクサー」と度々呼ばれたのである*10


類似例②

2019年、岩手県・大船渡高校は最速160km/hオーバーの速球が自慢のエースかつ主砲の佐々木朗希(現ロッテ)を擁して順調に甲子園代表決定トーナメントを勝ち上がる。しかし佐々木に故障の兆しが見えたことから国保陽平監督が決勝戦で佐々木の登板回避を行なった*11ところ、大船渡は花巻東に2-12で敗北。*12これに対して張本勲が「サンデーモーニング」内で否定的なコメントをしたところ、ダルビッシュ有(現カブス)などの野球選手から長友佑都など他種目の選手、さらには元巨人軍ユーチューバー・笠原将生にまで非難され、炎上することとなった*13

また同年の甲子園では大会屈指の好投手である奥川恭伸(現ヤクルト)を擁する星稜高が準々決勝の仙台育英高戦で奥川を温存するも荻原吟哉・寺沢孝多の2投手が仙台育英打線を1失点に抑えこみ、打線も17得点を挙げて快勝。大船渡とは対照的な結果になっており、1人の投手に依存するチーム作りの脆さを露呈することとなった。ただしそれでも奥川はヤクルト入団後に怪我が発覚したため、佐々木の温存は将来的な事を考えると間違っていたとは言い切れない結果になった。


本当に使われた例:ラストエリクサー川端

2021年の日本シリーズは両チーム共に前年度最下位からリーグ優勝を果たし、CSファイナルステージを無敗で通過したオリックス・バファローズ東京ヤクルトスワローズのカードとなった。
両チームの総力戦となり歴史に残る大接戦となる中、この年代打打率.366、代打打点18という成績で絶対的な代打の切り札として君臨していた川端慎吾の出番はヤクルトが王手をかけた第4戦までは1打席もなく、出場が予感された場面でも内川聖一が代打として送られるなどして出番がなく、能見の例に即して「ラストエリクサー川端」と呼ばれていた。

そんな中、第5・6戦にて満を持して代打で登場。第5戦こそ右飛*14に打ち取られたものの、第6戦では同点の延長12回表二死一塁という凡退したらその日の胴上げがなくなる*15場面で登場し、捕逸でランナーの塩見泰隆が二塁に進んだ後に値千金の勝ち越しタイムリーを放ち、その一打が決勝点となり見事ヤクルトの20年ぶりの日本一を決めた。なおMVP
あと一歩で勝ちの目がなくなるギリギリまで温存し、最後の最後で使って勝利に導くというラストエリクサーの模範的な使い方を示したようなこの展開を受けて、ネットでは「正しいラストエリクサーの使い方」と話題に。

またそれと同時に、オリックスで川端同様に代打の切り札として信頼を得ていたアダム・ジョーンズがこの試合の9回裏で代打起用されるも即座に申告敬遠されてかわされた事が比較され、こちらは「ラストエリクサーの無駄遣い」と言われることとなった*16
そして結果的にオリックスはこの回でサヨナラを決めることができず、ジョーンズ自身も代走を送られベンチへ下がっていたため、延長戦突入後は

  • 代打には頓宮裕真など打力の劣る選手を使わざるを得なくなる。
  • 死球で出塁したとはいえシーズン中に40打席弱程しか打席に立っていない山足達也に代打を出せない。

など決定打を欠くこととなり惜敗、日本一の座を逃す事となった。
奇しくもこの試合はシーズン初にして唯一の延長試合*17だったという事もあり、“切り札の使い方”が明暗を尚更大きく分けた、と言っても過言ではないだろう。

ちなみにこの試合では、同年オリックスに移籍してきた本家ラストエリクサー能見が延長11回に左打者である村上宗隆に対してのワンポイントリリーフで登板したことも話題に拍車をかけた。結果は左飛に打ち取っており、こちらも適切に使用された形。
なお日本シリーズの後に川端もその本家ラストエリクサー能見と同じく故障を抱えながら*18の一軍帯同であったことが明かされており、本人の状態を考えて出す場面を慎重に検討していたのではという説も出ている。


関連項目


*1 その時点までで通算6度投げ合い4勝1敗2完封。
*2 巨人のアドバンテージを含め4勝0敗でスイープ。
*3 『ドラゴンクエスト』シリーズ
*4 登場するゲームは多数あるが、おそらく『テイルズオブ』シリーズ
*5 『ポケットモンスター』シリーズ
*6 前田健太(広島)に次いでリーグ2位。
*7 ランディ・メッセンジャーに次いでリーグ2位。
*8 同年は69登板でリーグ最多の47S、防御率0.54でWHIP0.84。さらにセーブ機会で失敗なし、前年からも49連続セーブ成功(継続中)と圧倒的だった。
*9 ちなみに満塁策は取らず、連打も被弾も初球だった模様。
*10 特に故障もなくブルペンで準備しており、なんJのファンからは「勝ち越した後での登板」と推測されたが真相は分からずじまい。
*11 代打出場すらしていなかったため、様々な憶測を呼んだ。
*12 この試合では佐々木の登板回避に加え、佐々木に次ぐ扱いを受けていた2,3番手の二人の投手すら登板させず、この夏初登板の4,5番手の投手だけを登板させたという国保監督の迷采配も指摘されている。こちらについても晒し投げとする批判もある。
*13 また、渡辺元智(元横浜高校監督)・西谷浩一(大阪桐蔭高校監督)といった名だたる高校球界の名将も軒並み登板回避に否定的なコメントを残しているほか、元プロ野球選手でも金田正一は張本に電話口で直接否定的なコメントを残したことが後に週刊文春の取材で張本から語られている。
*14 ただし打ち取られたとはいえ当たりはかなり痛烈であり、本来のヤクルトの本拠地球場である神宮球場ならば長打であったと言われている。
*15 この年の日本シリーズにおいては第7戦までは延長12回までと決まっていたため、ここで凡退した場合は引き分け以下が確定するという状況であった。
*16 代打を出されたのは9番の太田椋で、敬遠された結果一・二塁のチャンスで1番の福田周平に打順が回ったため全く無意味だったわけではない。しかし同点かつ二死二塁で、守備側のヤクルトからすれば少しでもアウトを取りやすくするために、“次の打者が余程の強打者でない限りは強力な代打が送られた際は敬遠して塁を埋めることがセオリー”、という場面であった。
*17 新型コロナウイルス対策として、この年はレギュラーシーズン・クライマックスシリーズともに9回打ち切りだった事に加えて、日本シリーズでも第5戦まではいずれも9回までに試合が決着していたため。
*18 そもそもシーズン中から非常に好調であったにも関わらず代打出場のみでその代打でも出塁後には代走が即座に送られるという起用が殆どであったため、かなり慎重に起用されていたことは伺える。