福岡ソフトバンクホークスの蔑称。なんJでは概ねソフトバンクがペナントレース最終盤に失速しV逸してしまうことを指す。逸男ファイヤーとも。
由来は2015年・2016年のチームスローガン「熱男」、および「熱男」発案者の松田宣浩が同時期から行っていたホームランパフォーマンス。
転じて、松田自身の蔑称や後逸の総称として使われる場合もある。
逸男2016
ソフトバンクは「熱男2016」を2016年のスローガンに設定し、前半戦を首位で独走。日本球界史上最速マジック点灯*1の話題が出るほどの勢いだった。
しかし打線の主力である松田宣浩や内川聖一が不振に陥るとチームも7月頃から勢いを落とし始め、この間に15連勝した日本ハムの猛追を受けることに。そんな中、8月25日の楽天戦(福岡ヤフオク!ドーム)では8回裏にソフトバンクが1点を勝ち越すが、9回表の一死一・二塁の場面で茂木栄五郎の放ったライナーをセンターの柳田悠岐が後逸。ランニング3ランホームランを献上し逆転負けしてしまい、首位から陥落した。
それでも諦めなかったソフトバンクは一度は優勝マジックを点灯させたが、直ぐに消滅。日本ハムと熾烈な首位攻防戦を繰り広げ、どちらかに必ず優勝マジックが点灯する9月21日・22日の直接対決*2(福岡ヤフオク!ドーム)を迎える。9月21日は1点ビハインドの9回裏、2アウト2・3塁と一打サヨナラの大チャンスで江川智晃が前進守備の外野の頭を超えるであろう大飛球を放つが、センターの陽岱鋼にこれを好捕されゲームセット。翌22日もソフトバンクは敗れてそのまま日本ハムにマジックが点灯。28日には遂にソフトバンクのV逸が確定した。
6月24日時点の11.5ゲーム差から優勝を攫われた歴史的V逸ということ、後逸が原因で首位から陥落したことから「逸男」という蔑称が生まれた。
その後のクライマックスシリーズでは、ファーストステージこそロッテをスイープしたが、日本ハムとのファイナルステージ第5戦(札幌ドーム)にて4点差を逆転されて力尽きた。
この年の日本シリーズに進出した日本ハムはセ・リーグ優勝の広島に第1戦・第2戦こそ敗れたものの、その後4連勝し10年ぶりの日本一を掴んだ。
逸男2019
2019年のソフトバンクは7月から首位を走るも、7月・8月に不調に陥った。一方で、8月中旬からは西武がソフトバンクを猛追。8月31日の西武との直接対決(メットライフドーム*3)でまたしても柳田が後逸をやらかして失点、敗戦したことでゲーム差なしまで追いつかれてしまう。
一度は優勝マジックを点灯させたが西武の勢いを止められず、最大8.5ゲーム差からの逆転優勝を許した。
この有様を見たなんJ民からは、2018年と2019年のチームスローガンを捩った「もう逸頂*4」や「V脱sh!*5」と揶揄された。
ただしポストシーズンでは強みを見せ、CSで西武に下剋上勝ちし、日本シリーズでは巨人をスイープして日本一を掴んだ*6。
逸男2022
この年のソフトバンクは開幕8連勝とスタートダッシュに成功。4月・5月こそそれ以上の勢いを見せた楽天が首位だったが、5月末に首位を奪取。
その後6・7月は負け越し、西武に追いつかれて何度か首位陥落があるなど不安定な戦いに。オールスターブレイクとなる7月24日時点でソフトバンクは首位に立っていたものの、2位西武とは0.5ゲーム差。5位オリックスまで2.5ゲーム差の大混戦状態であった。
終盤にはオリックスも優勝争いに参戦し、9月4日時点でソフトバンク首位ながら、西武・オリックスも0ゲーム差に迫る大混戦となる。
それでもソフトバンクは9月12日~14日の西武3連戦で3タテして優勝争いから脱落させ、9月15日の楽天戦に勝利しマジック11を点灯させた*7。しかし、9月17日からのオリックス3連戦で3タテを食らい、ゲーム差0まで迫られてしまう。それでもマジック消滅は防ぎ*8、9月30日にはマジックを1まで減らした。
【9月30日終了時点での順位表】*9
順位 | チーム | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 | ゲーム差 | 残り試合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ソフトバンク | 76 | 63 | 2 | .547 | M1 | 2 |
2 | オリックス | 75 | 65 | 2 | .536 | 1.5 | 1 |
3 | 西武 | 71 | 67 | 3 | .514 | 3 | 2 |
4 | 楽天 | 69 | 70 | 3 | .496 | 2.5 | 1 |
5 | ロッテ | 68 | 73 | 1 | .482 | 2 | 1 |
6 | 日本ハム | 58 | 81 | 3 | .417 | 9 | 1 |
この時点でソフトバンクは
- 残り2試合のうち、1試合でも勝利または引き分けで優勝
- もし2連敗しても、2位オリックスが最終戦で引き分けまたは敗北でソフトバンクが優勝
という極めて有利な状況に駒を進めた。しかし…
10月1日の西武戦(ベルーナドーム)では、9回表に柳田悠岐が同点本塁打を放ち延長戦に持ち込むが、11回裏に藤井皓哉が山川穂高にサヨナラ2ラン本塁打を被弾し敗戦。
そして迎えた10月2日のロッテとの最終戦(ZOZOマリン)では6回までに2点のリードを奪ったが、裏に泉圭輔が山口航輝から逆転3ラン本塁打を被弾、その後も追いつけず敗戦。
(10月1日試合結果 / 10月2日試合結果)
並行して行われていたオリックス対楽天(楽天生命パーク)でもオリックスが勝利(試合結果)。
【全143試合終了時の順位表】
順位 | チーム | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 | ゲーム差 | 残り試合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | オリックス | 76 | 65 | 2 | .539 | 優勝 | 0 |
2 | ソフトバンク | 76 | 65 | 2 | .539 | 0 | 0 |
3 | 西武 | 72 | 68 | 3 | .514 | 3.5 | 0 |
4 | 楽天 | 69 | 71 | 3 | .493 | 3 | 0 |
5 | ロッテ | 69 | 73 | 1 | .486 | 1 | 0 |
6 | 日本ハム | 59 | 81 | 3 | .421 | 9 | 0 |
こうして、最後の最後で順位がひっくり返ってオリックスの優勝が確定*10*11。ソフトバンクは史上初となる最終戦での逆転V逸という壮絶な屈辱を味わってしまった*12。
クライマックスシリーズでは3位・西武をストレートで下し、CSファイナルで京セラドーム大阪に乗り込むも、1・2戦目で敗北*13。3戦目は勝利するものの、4戦目にサヨナラ負けを喫し力尽きた。
この年の日本シリーズに進出したオリックスはセ・リーグ優勝のヤクルトに第3戦まで0勝2敗(1分)と苦しむものの、その後4連勝し26年ぶりの日本一を掴んでいる。
なお「熱男」発案者の松田はこのシーズンを最後に自由契約となり、巨人が獲得したものの戦力として活躍することはなく、2023年シーズンをもって現役を引退した。
用法の拡散
現在ではソフトバンクの選手がやらかす拙守そのものを指す場合もある。特に元ネタの「熱男」が事実上松田の渾名になったため、松田が失策をしたり打撃不振に陥った際は松田を指して「逸男」と呼ばれることもある。
また他球団でも後逸することを「逸男」と呼ぶことがたまに見受けられる。また何らかのチャンスや権利を圧倒的有利な状況から最後の最後に逸することに対するネットスラングとして使われるケースも見受けられるようになっている。