逸男

Last-modified: 2025-11-03 (月) 09:52:25

福岡ソフトバンクホークスの蔑称。
なんJではソフトバンクがペナントレース最終盤に失速してV逸してしまうことを指す。
由来は2015年~2016年のチームスローガン「熱男(あつお)」、および「熱男」発案者の松田宣浩が同時期から行っていたホームランパフォーマンス。
転じて、松田自身の蔑称や後逸の総称としても使われていた。


逸男2016

ソフトバンクは「熱男2016」を2016年のスローガンに設定し、前半戦を首位で独走。日本球界史上最速マジック点灯*1の話題が出るほどの勢いだった。
しかし打線の主力である松田宣浩内川聖一が不振に陥るとチームも7月頃から勢いを落とし始め、この間に15連勝した日本ハムの猛追を受けることに。そんな中、8月25日の楽天戦(福岡ヤフオク!ドーム)では8回裏にソフトバンクが1点を勝ち越すが、9回表の一死一・二塁の場面で茂木栄五郎の放ったライナーをセンターの柳田悠岐後逸ランニング3ランホームランを献上し逆転負け、首位から陥落した

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それでも諦めなかったソフトバンクは一度は優勝マジックを点灯させたが、すぐに消滅。日本ハムと熾烈な首位攻防戦を繰り広げ、どちらかに必ず優勝マジックが点灯する9月21日・22日の直接対決*2を本拠地の福岡ヤフオク!ドームで迎える。9月21日は1点ビハインドの9回裏、2アウト2・3塁と一打サヨナラの大チャンスで江川智晃が前進守備の外野の頭を超えようかという大飛球を放つが、センターの陽岱鋼にこれを好捕されゲームセット。翌22日もソフトバンクは敗れてそのまま日本ハムにマジックが点灯。28日には遂にソフトバンクのV逸が確定した

逸男」というワード自体は件の後逸直後には生まれていたが、6月24日時点の11.5ゲーム差から優勝を攫われた歴史的V逸ということ、後逸が原因で首位から陥落したことから蒸し返される形で同年のV逸を指す蔑称になった。

その後CSでは、ファーストステージこそロッテをスイープしたが、日本ハムとのファイナルステージ第5戦(札幌ドーム)で4点差を逆転されて力尽きた。

なおこの年の日本シリーズに進出した日本ハムはセ・リーグ優勝の広島に第1戦・第2戦こそ敗れたものの、その後4連勝し10年ぶりの日本一を掴んだ。


逸男2019

2019年のソフトバンクは7月から首位を走るも、7月・8月に不調に陥った。一方で、8月中旬からは西武がソフトバンクを猛追。8月31日の西武との直接対決(メットライフドーム)でまたしても柳田が後逸をやらかして失点、敗戦したことでゲーム差なしまで追いつかれてしまう。
一度は優勝マジックを点灯させたが西武の勢いを止められず、最大8.5ゲーム差からの逆転優勝を許した

この有様を見たなんJ民からは、2018年と2019年のチームスローガンを捩った「もう逸頂*3」や「V脱sh!*4」と揶揄された。

ただしポストシーズンではCSファーストステージで楽天に先勝されたもののその後2連勝し突破、ファイナルステージでは2年連続で西武に下剋上を果たし、日本シリーズでは巨人をスイープして日本一を掴んだ*5


逸男2022

この年のソフトバンクは開幕8連勝とスタートダッシュに成功。4月・5月こそそれ以上の勢いを見せた楽天が首位だったが、5月末に首位を奪取。
その後6・7月は負け越し、西武に追いつかれて何度か首位陥落があるなど不安定な戦いに。オールスターブレイクとなる7月24日時点でソフトバンクは首位に立っていたものの、2位西武とは0.5ゲーム差。5位オリックスまで2.5ゲーム差*6の大混戦状態であった。

終盤にはオリックスも優勝争いに参戦し、9月4日時点でソフトバンク首位ながら、西武・オリックスも0ゲーム差に迫る大混戦となる。
それでもソフトバンクは9月12日~14日の対西武3連戦で3タテを決めて西武を優勝争いから脱落させ、9月15日の楽天戦に勝利しマジック11を点灯させた*7。しかし、9月17日からのオリックス3連戦で3タテを被弾、ゲーム差0まで迫られる。それでもマジック消滅は防ぎ*8、9月30日にはマジックを1まで減らした。

 

【9月30日終了時点での順位表】*9

順位チーム勝率ゲーム差残り試合
1ソフトバンク76632.547M12
2オリックス75652.5361.51
3西武71673.51432
4楽天69703.4962.51
5ロッテ68731.48221
6日本ハム58813.41791

この時点でソフトバンクは

  • 残り2試合のうち、1試合でも勝利または引き分けで優勝
  • もし2連敗しても、2位のオリックスが最終戦で引き分けまたは敗北でソフトバンクが優勝

という極めて有利な状況に駒を進めた。しかし……

 

10月1日の西武戦(ベルーナドーム)では、9回表に柳田悠岐が起死回生の同点本塁打を放ち延長戦に持ち込むが、11回裏に藤井皓哉が山川穂高にサヨナラ2ラン本塁打を被弾し敗戦。
そして迎えた10月2日のロッテとの最終戦(ZOZOマリンスタジアム)では6回までに2点のリードを奪ったが、裏に泉圭輔が山口航輝から逆転3ラン本塁打を被弾、その後も追いつけず敗戦。
10月1日試合結果 / 10月2日試合結果

並行して行われていたオリックス対楽天(楽天生命パーク)でもオリックスが勝利(試合結果*10

 

【全143試合終了時の順位表】

順位チーム勝率ゲーム差残り試合
1オリックス76652.539優勝0
2ソフトバンク76652.53900
3西武72683.5143.50
4楽天69713.49330
5ロッテ69731.48610
6日本ハム59813.42190

こうして最後の最後で順位がひっくり返ってオリックスの優勝が確定*11*12。ソフトバンクは史上初となるシーズン最終戦での逆転V逸という壮絶な屈辱を味わってしまった*13

その後クライマックスシリーズでは3位・西武をストレートで下し、CSファイナルで京セラドーム大阪に乗り込むも、1・2戦目で敗北*14。3戦目は勝利するものの、4戦目にサヨナラ負けを喫し力尽きた。

この年の日本シリーズに進出したオリックスはセ・リーグ優勝のヤクルトに第3戦まで0勝2敗1分と苦しんだものの、その後4連勝し26年ぶり、近鉄との合併以降では初の日本一を掴んだ。

なお「熱男」発案者の松田はこのシーズンを最後に自由契約となり、巨人が獲得したものの戦力として活躍することはなく、2023年シーズンをもって現役を引退した。


逸男2025(ファーム)

2025年度のソフトバンクのファームは、9月25日で2位中日と3.5ゲーム差の首位に立っており、シーズン最後のカードとして9/26~28に中日との直接対決3連戦(ナゴヤ球場)を控えていた。
ソフトバンクは、この3連戦のうち1つでも勝つか引き分けるのはなおのこと、振替試合の概念がないことから1試合でも雨天中止になればその瞬間ファーム優勝という極めて有利な状況に立っていたが、結果は中日が同一カード3連勝。この結果、中日が勝率2厘差でソフトバンクを上回り最終戦で大逆転優勝を果たし、ソフトバンクは-0.5ゲーム差でV逸した*15

 

【2025年ウエスタン・リーグ全試合終了時の順位表】

順位チーム勝率ゲーム差残り試合
1中日66477.584優勝0
2ソフトバンク71515.582-0.50
3阪神664813.57910
4オリックス655117.56020
5広島496710.422160
6くふうハヤテ35862.28916.50


用法の拡散

現在ではソフトバンクの選手がやらかす拙守そのものを指す場合もある。特に元ネタの「熱男」が事実上松田の渾名になったため、松田が失策をしたり打撃不振に陥った際は松田を指して「逸男」と呼ばれることもある。

また他球団でも後逸することを「逸男」と呼ぶことがたまに見受けられる。また何らかのチャンスや権利を圧倒的有利な状況から最後の最後に逸することに対するネットスラングとして使われるケースも見受けられるようになっている。


関連項目



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*1 後に2022年のヤクルトが最速マジック点灯記録を57年ぶりに更新。ちなみに記録更新前は1965年の南海ホークスが最速だった。
*2 この2連戦でソフトバンクは1勝すればマジック再点灯だが、日本ハムは2連勝しないとマジック点灯ではなかった。
*3 2018年の「もう一頂」に由来。
*4 2019年の「奪sh!」および終盤戦からのスローガンである「V奪sh!」に由来。
*5 ちなみに前年の2018年もペナントは西武が優勝したがCSでソフトバンクが下剋上、日本シリーズでも広島を破って日本一。
*6 この時点での順位はソフトバンク→西武→楽天→ロッテ→オリックス→日本ハム
*7 なお、オリックスは西武に負け越していたのが原因で9月12日時点で自力優勝の可能性は消滅していた
*8 これはソフトバンクとオリックスの消化試合数に差があったことによるものが大きい。なお、当初マジックが点灯した際のマジック対象チームは楽天だったが、9月20日時点ではオリックスにマジック対象チームが変化している。
*9 3位以下はこの時点で順位確定済
*10 この年の楽天は序盤から猛ブーストがかかっており、5月10日地点で最大18の貯金があった。しかし後半戦以降あれよあれよと溶けていき、8月13日には貯金が消滅。西武とのCS争いにも敗れ、4位に終わった挙げ句この日の敗戦でシーズン負け越しが確定した。
*11 パ・リーグの規定では、2チーム以上が同勝率で並んだ場合、当該チーム間の対戦成績で順位を決定する。本シーズンではオリックスがソフトバンクに15勝10敗で勝ち越しているため、オリックスが上位となる。
*12 勝率が一致した上での優勝はNPB史上初。また、オリックスは「2年連続マジック無点灯ながら優勝」「シーズン中首位に立ったのが開幕日、9月10日、最終日の3日間だけ」という珍記録も残した。
*13 シーズン最終戦で優勝チームが決定したケースは過去にいくつかあるが、いずれも上位チームがそのまま優勝していた。
*14 これにより、2019年のクライマックスシリーズから続いてきたポストシーズンでの連勝が18でストップ。この年の京セラドーム大阪での相性は非常に悪く、主催試合を含めて3勝11敗だった。
*15 なお優勝した中日はそのまま宮崎で開催されたファーム日本選手権でも巨人に大勝し、ファーム日本一となった。