アイドントライクノウミサン

Last-modified: 2022-10-06 (木) 20:21:36
  1. 2012年6月9日のオリックス・バファローズ戦後、インタビューに答えたマット・マートン(元阪神)のコメントの一部。
    同日の試合における、2塁ランナーの生還を許してしまった拙守について報道陣に尋ねられたマートンは、「(先発投手の)能見篤史*1が好きではない」という旨のコメントを残す。“チーム内の確執・個人的感情によって敗退行為が行われた”とも受け止められかねないため*2、マスコミ各社は大々的にこの発言を取り上げ、チームメイトが火消しに走る騒動となった。
  2. これに派生して、能見登板時に野手がエラーをしでかすと飛び出すフレーズ。複数人の場合はウィードントライクノウミサンと言われることもある。
  3. 能見が炎上した時に言われるフレーズ。

ここでは1.を中心に解説。2.と3.は見出し『そして定番化へ』を参照。


記事

誤解を招かないよう、下記記事は省略せずに記載する。

マートン、暴言連発「能見さんが嫌い」
http://daily.co.jp/tigers/2012/06/10/0005123880.shtml(リンク切れ)*3


 「交流戦、阪神1-6オリックス」(9日、甲子園)

 阪神のマット・マートン外野手(30)が9日、四回の緩慢な守備を問われて逆ギレし、暴言を連発した。「俺は能見さんが嫌いだから、オリックスに点をあげたんだ」。もちろん本心ではなく、打撃不振などが原因の焦燥を抑制できなかったのだろう。ただ、不問とされるには、あまりにショッキングで重すぎる失言だ。

 甲子園クラブハウス前の通路で、その空気が瞬時に凍り付いた。いら立ちからか、手が震え、コップのプロテインがこぼれる。タオルを地面に投げつけ、足で踏みつけてふいた。数秒の気まずい沈黙。そして、マートンの口調がトゲを帯びる。

 「レット ゼム スコア(敵に得点させてやったんだ)

 いつもは陽気な助っ人から、耳を疑う英語が飛び出した。「前進守備をしていたが、本塁で刺そうという気はあったのか」との質問に対する答えだった。すぐに球団通訳が「冗談です」と取りなした。だが、プッツンした助っ人のいら立ちはなかなか収まらなかった。

 「ニルイ、ドウゾ(塁を2つ進ませてあげた)。アイ ドント ライク ノウミサン。ワカリマスカ?」

 むろん、本心ではない。当然だが、もしも本心だったら大変なことだ。本人はベストを尽くしたと主張するが、首脳陣、ナインをはじめ、観客ほか誰の目にも緩慢にしか映らなかった問題のプレーは、0‐1の四回に起きた。

 2死二塁。3人の外野手は前進守備を敷いた。浅い打球であれば絶対に追加点を阻止する布陣。そこで斎藤の打球が右前に弾む。右翼のマートンは、チャージをかけて本塁突入を防ぐ…と思われたが、現実は違った。

 走者なしのようにゆっくりと打球処理。本塁に向かう二走・大引を刺そうとする送球も、三塁側にそれて生還を許した。さらに、打者走者の二進まで許す体たらく。外野担当の関川守備走塁コーチは「防げた。誰が見ても(ミス)というプレー」と一刀両断した。

 ミスを重ねての大差負け。試合後には、野手全員で約10分間の緊急ミーティングが行われた。山脇守備走塁コーチはマートンに守備の話をしたかを問われると「してる!!」と声を荒らげ、うまくいかぬいら立ちはチーム全体を覆っていた。

 マートンは最後には「自分のミス。ボールに行くのが遅かった。しっかり投げていればアウトだった」と反省の弁を述べたが、覆水盆に返らず。後味の悪さが残った。

 マートンの取材後に、球団広報が発言の真意について「あまりにも当たり前の質問をされ、『能見を嫌い』などと、あり得ないことの例えとして言った」と代弁した。本人は全力でプレーしたつもりでも思い通りにいかないモヤモヤ。指揮官が「打てないとき、守備に影響してしまう傾向がある」と心配するように、マートンの心身両面が気掛かりだ。


その後(2012年)

この騒動に対し、当時チームメイトであった藤川球児は報道陣に向け「オレも能見さん、嫌いだし」とブラックジョークを飛ばし、マートンをフォロー。他のチームメイトもこの件を気にしてはいないようであり、チーム内での確執の存在が見受けられることはなかった。また、能見が6月23日のDeNA戦で先発した際にはマートンは猛打賞の活躍。一旦は不仲説は払拭されたかに見えた。

しかし、7月7日の対巨人戦(東京ドーム)でまた能見が先発した際、5回裏・5-5の同点という場面で、ライトの守備に就いていたマートンは高橋由伸によるフライの処理を緩慢に行い、3塁ランナーの村田修一を悠々とホームインさせ勝ち越しを許してしまう*4。結局これが決勝点となってしまい阪神は試合に敗れ、能見も敗戦投手となってしまった。この怠慢プレーから、再びマートンと能見の不仲説が各所で囁かれ始めた。


そして定番化へ

これ以降、能見が先発した試合で野手のエラーが出たり、後続の投手が失点して能見の勝ち投手の権利が消えたり、野手が好機で酷い凡退をするたびに、○○(選手名)「俺も能見さんのこと嫌いやし」や「ウィードントライクノウミサン」などといった形でネタにされるようになった。またこの一件以降「ノウミサン」が能見の別称として定着したが、爆発炎上した時は「アイドントライクノウミサン」と連呼される。


外野でも有名となる

上記騒動の約半年後となる2013年1月26日の近畿大学入試問題にて、現代文の評論問題でこの出来事が出題されていたことが判明。名実ともに有名な出来事となった。
問題の元ネタは、ロバート・ホワイティング氏のエッセー『サクラと星条旗』である。
ちなみに、同氏の著書では、日本人でメジャー経験者の野茂英雄やイチロー、現役メジャーリーガーのダルビッシュといった人物にフォーカスを当てたエッセーもある。
なお、同氏は阪神ファンの模様。

マートン「問題発言」が「問題」に 近大入試で出題、文化を比較
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2013/01/28/kiji/K20130128005073300.html


 阪神・マートンの「問題発言」が、本当の「問題」になってしまった。マートンが「アイ・ドント・ライク・ノウミサン」などと発言した騒動について書かれた日本在住の米国人ジャーナリスト、ロバート・ホワイティング氏のエッセー「サクラと星条旗」が、26日に実施された近大の一般入試前期A日程の国語の問題として出題されていたことが27日、分かった。

 問題文は、昨年6月9日のオリックス戦(甲子園)の敗戦後にマートンが発言した「レット・ゼム・スコア(相手に点をあげた)」、「アイ・ドント・ライク・ノウミ(能見)サン」などの言葉の裏には「皮肉、ユーモア」が隠れているとし、それに対する日米間の反応、文化の違いなどを比較、考察したもの。文章の数カ所を空欄にして適切な文章を選ばせる問題などが出題された。

 同大一般入試前期A日程は計3万6554人もの志願者が受験。そのため、試験直後から「マートン問題」がネット上などで話題となっていた。同大入試広報課の関係者は「文章の読解力、思考力を問うのに、適した文章だと思った」と説明している。


ノウミサン ナイスジョブ

上記騒動の約9か月後となる2013年3月2日のマートンのツイッターへの書き込みのこと。
WBC1次ラウンドの日本対ブラジル戦(福岡 ヤフオク!ドーム)にて日本が勝利した後に
https://twitter.com/mmurton9/status/307866123410477056

とツイート。これを見たなんJ民からは

マートン、能見を褒める
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/liveuranus/1362241119/


40 :今、天王星のwiki見てきたら軌道傾斜角(i) が0.774°だった:2013/03/03(日) 01:39:12.78 ID:uUZ4MaIC
これは歴史的和解

42 :今、天王星のwiki見てきたら軌道傾斜角(i) が0.774°だった:2013/03/03(日) 01:41:54.68 ID:fAg3UDmP
ようやく冷戦が終結したのか

という発言が飛び出した。
また、これ以外にも2013WBC日本代表を応援するツイートや、日本がベスト4止まりとなったものの健闘を称えるぐう聖なツイートも残している。
https://twitter.com/mmurton9/status/313576575826284544


ノウミサン アイシテル

そして2013年4月9日の巨人戦(阪神甲子園球場)、開幕から引き分けを挟んで7連勝中と絶好調だった巨人を能見が見事完封に仕留め、阪神が勝利。4番に座ったマートンが先制点をあげたため、お立ち台は能見とマートンに。
かねてからの因縁がある2人の揃い踏みとあってなんJに緊張が走ったが、能見が淡々とインタビューに応えた後、インタビュアーに「チョットマッテ、チョットマッテ」と断りをおいたマートンは、「ノウミサン アイシテル!」と宣言。能見とマートンがその場で熱い抱擁を交わしたことで、この騒動はひとまず収束を迎えることとなった。
よかったね、おめでとう

loading...


再燃

2013年8月29日の巨人戦(東京ドーム)、阪神が2-1でリードしていた9回裏、ここまで巨人打線をほぼ抑えて完投勝利目前まで来ていた能見だったが、村田修一高橋由伸に連打を浴び、無死1・3塁のピンチとなったところで坂本勇人に犠牲フライを打たれ同点に追いつかれてしまい降板。ベンチに下がった際に、悔しさのあまりベンチを蹴りあげグラブを叩きつける 姿がテレビカメラにはっきり映し出され、温厚な能見にしては珍しいと話題になった*5
 
この坂本の一打はレフトへのファウルフライであり、阪神ベンチは「ファウルなら捕るな」と指示していたが、ライン際の微妙な飛球だったこともあってマートンは捕球し三塁走者の村田がタッチアップで本塁生還、犠牲フライとなった。捕らなければ試合はどうなっていたかわからず*6
 

  • 「あの能見の怒りは自分自身に対してのものではなく、マートンへのものだったのではないか」
  • 「マートンが『ノウミサンが嫌いだからファウルフライを捕って犠牲フライにしたんだ』て言ってたw」

などの声が上がり、収束したはずのこの話題が再燃する結果となった*7

loading...


スパイス&広島&巨人「ウィードントライクノウミサン」

そして2013年のクライマックスシリーズで、能見は和田監督謎の温存策により、出番のないままシーズンを終えてしまい、さらには予定されていたゲスト解説までなくなってしまうという悲劇に見舞われる。
詳細は「ラストエリクサー能見」の項目を参照。


能見さん、笑顔で当時を回想

2018年初頭、マートンが現役引退を表明。それに際し、話題の中心の一人であった能見が当時の騒動を振り返った。
マートンからは何度も謝罪があった旨を述べ、本人も気にしていない様子を見せた。

能見、マートン引退に「改めてすごさ感じます」 発言騒動も笑顔で回顧
https://www.daily.co.jp/tigers/2018/01/14/0010896011.shtml


阪神の能見篤史投手(38)が14日、沖縄・宜野座村で岩貞祐太投手(26)、梅野隆太郎捕手(26)、緒方凌介外野手(27)らと合同自主トレを公開。現役引退を表明したマット・マートン外野手(36)を惜別した。

 「誰しもいずれくるんでしょうけどね。いま改めてマートンのすごさを感じますよね。右打者ですから」

 阪神で6年間、共に戦った仲間。阪神入りした2010年には214安打を放ち、イチロー(オリックス)のプロ野球記録を塗り替える活躍を見せた。一方、能見とは“因縁”もあった。

 2012年6月9日のオリックス戦。能見が先発した同日の試合で二塁走者の生還を許した拙守について、マートンは「アイ ドンド ライク ノウミサン(私は能見さんが好きではない)」という旨のコメントを残した。当然、本意ではなく、敗戦にいら立ちを残した中での発言だったが、過激なコメントは後々まで物議を醸した。

 能見は笑顔で当時を振り返る。「あの時は大変でしたね。誰もが本当に思ってないことは分かっていたけど、マートンから何度も何度も謝ってもらって。野球に対して真面目で、純粋な選手でしたから」。当然、2人の間に遺恨はない。阪神退団後、現在は疎遠になっているが「引退してからも、野球と携わる仕事ができるのは、すごく幸せなこと。また一回、会えたらいいですね」と思いを語った。

 自主トレでは走り込みを中心に、連日ハードなメニューをこなす。39歳を迎える2018年シーズン。安藤(現2軍育成コーチ)が昨季限りで現役を引退し、投手最年長として迎える。今年の漢字には「一(イチ)」を挙げて、「チームとしても一番に。最年長としても役割が一番多いですし、いろんな意味を込めました。僕自身、チームの中心で優勝経験がない。優勝への思いが一番強いですね」と13年ぶりのリーグ優勝、33年ぶりの日本一に向けて決意を語った。


アイライクノウミサン

2022年には、能見が現役引退を表明。9月30日(引退試合当日)にマートンがTwitterを更新し、また、スポーツニッポンを通じて能見にメッセージを送った。

元阪神・マートン氏は能見さんが大好きだった「今でも目を閉じるとフォームが頭に浮かぶ」独占メッセージ
https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2022/10/01/kiji/20220930s00001173706000c.html


(前略)
 以下はマートン氏から能見へのメッセージ全文。

 能見さん、これまでの素晴らしいキャリア、ハードワーク、本当にお疲れ様でした。お祝いの言葉を言わせて下さい。

 タイガースのチームメートとして能見さんとプレー出来たことは、私にとって本当に名誉な事であり、特別な思いです。色々な思い出を共有出来ました。これからもずっと色褪せる事のない思い出です。

 能見さんの落ち着いた佇まいと、心地良い笑顔が、いつも大好きでした。新しい人生のチャプターを、目一杯楽しんで下さい。また友達としてお会い出来る日を、心より楽しみにしています。

 今でも目を閉じると、能見さんのフォームが頭に浮かびます。鋭く落ちるフォークボールで空振りをとっているか、巧みに内野ゴロを打たせている能見さんのピッチングが。

 投手として、メンタルとフィジカル、両方を素晴らしく上手くコントロール出来ていたように思います。どんな事がこの先に待っていても、コーチとして能見さんの振る舞いは、選手たちの見本になるはずです。(マット・マートン)


関連項目



Tag: 阪神 オリックス


*1 なお能見は2021年より事件時の対戦相手であったオリックスに入団し引退した2022年まで投手兼任コーチを務めた。
*2 後述するように全くの邪推である
*3 復刻版→https://www.daily.co.jp/general/flash/20130903204.shtml?pg=2
*4 記録上は高橋の犠牲フライ。村田が走塁ミスをやらかさない限りは、返球しても得点が入っていたかと思われるが、それにしてもランナーがいるとは思えないような緩慢な返球であった。
*5 試合は結局10回裏、長野久義のホームランで巨人のサヨナラ勝ち。
*6 1塁走者が俊足の松本哲也で一打サヨナラの可能性が高い場面のため、同点に追いつかれたとしても確実にアウトを一つ取りに行く戦術もありうるということもあって、是非が難しいプレーであった。
*7 なお、マートンは上記の試合においてこの場面だけでなく、好捕(1回裏)・走塁ミス(4回表)・走塁ミスを取り返すソロ本塁打(6回表)といった、この試合のキーマンとも言えるような様々なプレイを見せている。