クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第一話

Last-modified: 2023-02-12 (日) 11:05:01

Prologue~デジタルワールドの悲劇~

 デジタルワールド。そこに前髪を切りそろえた少年がデジモンたちに取っては見覚えのない生き物達を引き連れやってきた。突然の来訪者、それに対してデジモン達は首をかしげるばかり。
 ざわざわ、と騒ぎ出すデジモンたち。そのデジモンたちの内の一匹…ゲコモンが少年の方へと近づいたその時だった。少年は、黄色い体のかわいらしいフォルムの生き物に命を下したかと思うと…そのかわいらしいフォルムの生き物はゲコモン目掛けて電撃を放った。
 直撃する電撃。それはゲコモンを重傷にまで追い込み、それを見たデジモンたちが四方に逃げ始める。…だがしかして少年はそれらデジモンを見逃しはしなかった。
 不可思議な紋様を持つ箱型の物体。それに少年がエネルギーを込めるや否やその箱が開き…生き物達に宿り始める。
 シャンデリアのような姿の生き物が宙に浮き、食虫植物によく似たデジモン…ベジーモンを追いかけ炎を放つ。…とどうであろうか。ベジーモンは忽ちの内に、命を手放し消滅していった。
 その後も見知らぬ生き物達を率いてデジモンたちに襲撃を仕掛け行く少年。…その少年はデジモンたちに、こう言い放つ。

…ポケモンのいる世界を襲撃した報いだ、と。
 ポケモン。その単語を唯々心の中に刻んだ一匹のデジモン…カプリモンはその生き物達に対し、憎しみの感情を抱き…将来的な復讐を誓うのだった。

現在~災厄の始まり~

「今回の学校最強大会…スクールバトルウォーズの勝者はハルトだぁー!」

 テーブルシティの中央広場。そこに存在するバトルコートにて、周りの歓声を浴びる人物がいる。…彼の名はハルト。ガッツポーズをしている彼は、ショッキングピンクの体をした生き物が向かってくるのに合わせてかがみ、互いに抱き寄せる。…そう、彼はちょうど、スクールバトルウォーズといわれる大会に勝利したのである。

「…。さすがハルトさんですね。この私も本気を出した、と思っていたのですが…あなたには敵いませんでした。」
「クラベル先生ほどの人にそういわれると、こちらとしても光栄、です。」
「…。貴方のそのデカヌチャン、ですか。…良く育てられていますね。」

 クラベル先生、と呼ばれた白髪の男性がデカヌチャンに対して笑いかける。それにこたえるかのように、デカヌチャンは喜びの鳴き声をあげた。
 翌日。学校内の部屋の中でハルトは目覚める…と。スマホロトムから通知音のような物が鳴り響いた。
 画面の中の通知からは、チャンプルタウン南のゲート…通称エリア・ゼロと呼ばれる地域へとつながるゲートから異形の生き物が現れた、というニュースが記される。

――異形の生き物…?テツノカイナとかじゃ…。

 ハルトの頭の中に、かつてエリア・ゼロの中で遭遇した相撲取りのようなすがたをした無機質な生き物…テツノカイナを筆頭とするあのポケモンたちが飛び出したのでは、と予測するハルト。…そう思い立つや否や、さっそくスマホロトムでペパー、ネモ、そしてボタンと連絡を取り始め。テーブルシティの中央広場に集まった。…だがしかし、集まったのはペパーとボタンの二人だけ。その事を疑問に思ったハルトがペパーに問いを投げかける。

「…。ペパー先輩、ネモさんは?」
「あー…。お前もしかして知らなかったのか?お前の連絡の後に子供向けアニメの忍者の一人がお金の話を聞きつけた時のようにかけていったぞ。お前という絶好のライバルがいるっていうのに、あいつまだ飢えていたんだな…。」

 ハルトからの問いに頭を抱えながらそう答えるペパー。その答えを聞いてハルトは苦笑いを浮かべる。…ハルトの親友たるネモ、という人物は、根っからの戦闘狂。一時期SNS界隈にて"パルでア地方のトレーナーたちが声をかけて了承を得てからバトルするようになったのは彼女が片っ端からバトルを仕掛け、勝利していったのが理由"等とささやかれ学校がその投稿者に情報開示請求をする騒ぎにまで至ったほどの物で、歩くバトルマシーンとまで言われている。…そんな彼女が、異形の生き物が出現したと聞いて大人しくしているというのはコイキングが進化せずに〇ね〇ねこう…はかいこうせんだのかみなりだのを覚えるくらい有り得ない事なのだ。
 ペパーからのその言葉を聞いて額を抑えるはボタン。所謂"ギークレベルの"手腕を持つハッカーであり。ポケモンリーグのセキュリティの脆弱性を突きリーグペイを大量に増やした、という前科のある人物だ。…まあそれが原因となって現在ポケモンリーグにその腕を買われ、セキュリティの強化に従事しているのだが。

「…ペパー、彼女のあの行動に関してはあきらめた方が良いよ…。前のエリアゼロでも同じような事があったでしょ…?」
「そうだったな…。あの時の事を思い出せば、今回の事で生徒会長が大人しくしていられないのはヒトカゲのしっぽの火を見るよりも明らかか…。」

 どこか苦々しい顔を浮かべるペパーとボタン。…そんな彼らに、ハルトは声をかける。

「そ、そんなことよりもさ、早くチャンプルタウンへ向かおうよ。…セルクルタウンのある方から向かっていった方が早いよ。」
「…そうだな。あのバトル中毒のことは実際に合流してから話し合うか…。」

 ハルトの提案でセルクルタウンからチャンプルタウンへと向かう事にしたペパーとボタンとハルト。しばらくして、かつてスター団のピーニャがボスを務めていたあく組のアジトのある場所の近くへとやってきたその時。全体的に三角形の面の集合体でできたような姿の、謎の生き物が一行の前に出現した。…その体色としては黄色、といった方が良いだろうか。…その生き物の姿形としてはその頭部の半分以上に裂けた口が特徴的であり。まがまがしさを際立たせている。

「な、なんなのこの生き物…ポケモンじゃあ、ない…!?」
「っ、ポケモンじゃないっていうのは明らかだろうぜ。あんなの、発見できたら学会が沸き立つぞ。…恐らく相手は…ゴーストタイプ。マフィティフ、出番だ!」

 先陣を切らんと言わんばかりにペパーが自身の相棒たるマフィティフを繰り出す。そのマフィティフは黄色い体色のみたこともない異形の生き物を見るやうなり始めた。

「マフィティフ!相手は恐らくゴーストタイプ…かみくだく!」

 ペパーが命を下すと同時にマフィティフがその猛々しい牙をむき出しにし相手へと突進していき。勢いよく相手にかみつく。
 効果あったか。相手のそのクラゲのような脚に似た部分にかみつき、相手がどこか嫌がるようなそぶりを見せ始める。…と、異形の生き物はマフィティフ目掛けほぼ至近距離から…シャドーボールと思しきものを放った。
 吹っ飛ばされ行くマフィティフ。しかしてダメージは大きくないのか、まだ戦えるような様子を見せている。

「マフィティフ、だいじょうぶか!?」

 ペパーからのその声にバウ!と咆えるマフィティフ。その近くから次に出現したのは…歯車が三つ連なったような姿の赤い体色の生き物。その生き物の姿を見るやハルトは自身のパートナーたるウェーニバルを繰り出す。

「頼んだよウェーニバル!…インファイト!」

 ハルトの命令を聞くや否や歯車が三つ連なったような姿の生き物へと肉薄していくウェーニバル。…そんなウェーニバルの弱点を理解してか。相手は雷をまとった球体をウェーニバル目掛け放ってきた。
 その球体の直撃を受け吹っ飛んでいくウェーニバル。余程のダメージを負ったのか、動きが鈍くなっている。

「ウェーニバル!」

 ハルトのウェーニバルを心配するかのような声。その声を聴いてかウェーニバルはその目を鋭くさせ、相手の方を見据え始めた。

 ハルト達の前に突如として現れた謎の生物。…それらの正体は、一体。