クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第二話

Last-modified: 2023-02-23 (木) 12:07:34

~チャンプルタウンの猪突猛進戦闘狂ガール~

 チャンプルタウン。テーブルシティの北西付近に位置するその町に、グリーンのメッシュの入った黒髪の、どこか快活そうな雰囲気を漂わせる少女…ネモがいた。
 そのチャンプルタウンの様子はといえば恰も中途半端にバーチャル化したかのような様相となっていて。その町中をポケモンではないナニか…三角形が集合してできたような不気味な生き物が闊歩している。
 ポケモン人間見境なくシャドーボールの様な物を放つ生き物。同じようにポケモン人間見境なく種マシンガンの様な物を放つ生き物。…そして、その体を活かしポケモンたちに襲撃を仕掛けていく生き物。その光景を見てネモはしばらくあっけにとられていたが。一度目をつむったのちにどこか新しいおもちゃを見つけた子供のような無邪気な笑みを浮かべる。…この異常事態を前にその態度。…それは彼女がどのような人物であるかをありありと示していた。

「なんだかすごいワクワクドキドキしてきたよ。ニュースを見た時から、私の中のドキドキが収まらなかったんだ。…今まで経験したことのない冒険。…それが私を待ってくれてると思う。ようし!善は急げ、だ!行けっ!ミミズズ!パーモット!ラウドボーン!片っ端から戦っていっちゃって!」

 彼女が空高く投げたモンスターボール、そこからラウドボーン、ミミズズ、パーモットの三匹が勢いよく飛び出し。それぞれが目の前の敵へと攻撃を仕掛け行く。…まず最初に攻撃を繰り出したのはラウドボーン。そのポケモンは自身の目の前にマイクスタンドの様な物を出現させるや否や後ろ足で立ち。恰も謳う様な仕草を見せる…と。マイクのような部分から衝撃波が走り…どこかキマワリに酷似した姿の生き物へと直撃させる。その生き物はやはりというか炎タイプが弱点であったのか。大きく体勢を崩すような様子を見せた…が。そのすぐ横からホルンの管が体に巻き付いたカエルのような姿の生き物が口の部分から水の塊のようなものを勢いよく噴射する。…その水はラウドボーンへと命中しそのポケモンの動きを止めた。

「うふふっ、此処まで痺れる戦いはあのハルトと戦って以来かな。…パーモット!あの生き物にほうでん!」

 山吹色の体色をした生き物…パーモットが体中から電撃を放ち、カエルのような姿をした生き物に浴びせる。効きが良かったのかその生き物は体制を崩した…のだが。パーモットの遥か頭上から突如として岩石が多数降ってきた。
 パーモットの持っているタイプはでんきとかくとう。だから大丈夫…そう信じていたネモは…この後見ることになるあまりにも厳しい現実に驚くほかなかった。
 …それはパーモットの戦闘不能。いわタイプだ、とばかり思っていたあの岩石による攻撃によってパーモットは一撃の内に戦闘不能へと追い込まれたのである。

「…。一筋縄ではいかないようだね。パーモット、お疲れさま。…ゆっくり休んで。」

 ネモという一人の少女の頬を一筋の汗が伝いゆく。…同時に、彼女はその未知なる敵との戦いに心を躍らせてもいた。…その証拠として、彼女の顔からは笑みが見て取れる。

「本当、心が躍ってくるよ。学校最強大会でも潤すことのできなかったこの渇き…貴方達で満たさせてもらうからね!」

~星の近くの未確認生命体~

 ネモがチャンプルタウンで戦いを繰り広げているころ。カラフシティからほど遠い、かつてスター団のあく組のアジトがあった場所の近くにて…一人の少年と一人の青年が未確認生命体を相手に戦いを繰り広げていた。状況はといえば少年、そして青年の方が不利、といったところだろうか。黒っぽい体の犬のような姿をした生き物…マフィティフが口の大きく裂けた頭部にクラゲのような脚を持つ不気味な姿の生き物の放った技の直撃を受け、吹っ飛ばされ行く。

「マフィティフ!」

 青年…ペパーの悲痛な声が響き渡る。そのペパーの思いに応えようとしているのかマフィティフは一度は立ち上がろうとしたものの。すぐその場に倒れてしまう。…戦闘不能だ。
 歯を食いしばりマフィティフの事をボールへと戻すペパー。彼は一度敵である未確認生命体の方を向くと…次の手持ちの入っているボールを投げる。

「頼んだぞ、ヨクバリス!」

 ペパーの投げたボールから飛び出したのはヨクバリス。そのヨクバリスは未確認生命体の方を見るや、その表情を真剣なものへと変化させる。

「ヨクバリス、頼んだぞ…じゃれつく!」

 ペパーのその命令に従うかのようにヨクバリスが未確認生命体の方へと向かっていき、その生命体をもみくちゃにもてあそぶ。…その攻撃は効果があったのか。ヨクバリスの攻撃が終わると同時に。未確認生命体の体は粒子とともに消え去っていく。…一方で、ハルトは歯車が三つ連なったような姿の生き物との戦いに苦しんでいた。…なぜならば相手はウェーニバルの苦手とする電気タイプの技…とみられる攻撃を使用してきたためである。

「ウェーニバル、大丈夫?」

 ウェーニバルの事を気にかけるかのようなハルトの言葉。それに対して気にするな、とでも言うかのようにウェーニバルは泣き声をあげるが…その鳴き声に元気が伴っていない。

――余程敵の攻撃が効いているのか。ならばここは下げるのが最善。

 交代させるのが最善だと判断したハルトはウェーニバルの事を一度ボールへと戻し…別のボールからポケモンを繰り出す。…そのポケモンは。

「地面タイプで相手の弱点を突く!いけっ、ガブリアス!」

 マニアの間で根強い人気を持つポケモン、ガブリアスであった。