クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第四話

Last-modified: 2023-02-24 (金) 19:48:38

勇気をもって立ち向かえ!ガブリアス

 手持ちのポケモンをすべて戦闘不能にさせられてしまったネモの代わりとして謎の生き物に挑むこととなったハルト。…そのハルトと相対する生き物は…青い線が所々に入った橙色の体の恐竜のような姿を持つ、人間の二倍の大きさはあろうかという者。対するハルトは相手の属性を炎と読んで相性の良い地面・ドラゴンタイプのガブリアスを繰り出す。
 大きさに明らかな差のあるガブリアスと謎の生き物。謎の生き物はガブリアスをじっと見つめ続けた後…口に炎を蓄え始め。それをガブリアスへと放つ。ガブリアスはそれを避け。姿勢を低くして生き物へと接近していく。

「ガブリアス!ドラゴンクロー!」

 ハルトの指示が飛んだ後、ガブリアスの爪の部分から赤いエネルギーのようなものが発せられる。ガブリアスはそれを振りかぶり…謎の生き物へと振り上げていった。
 刻まれる線。ガブリアスの攻撃を示すその線を刻まれた生き物は一歩後ろへと下がる…が。体勢を立て直すや否や今度は腕を振り下ろしてきた。
 短いながらも、その腕の先には鋭い爪。命中すればひとたまりもないであろうそれをガブリアスが避けた後。ガブリアスが勢いよく地面を踏み鳴らす。
 それと同時に起きる地割れ。それは謎の生き物の足元へとたどり着くや、地面が隆起して謎の生き物に命中した。
 それによってよろける生き物。その生き物から、人の言葉の様な物が発せられる。

『グウウウ、俺達をおそったポケモン…許さない…っ!襲ったポケモンたち…すべて、潰す…っ!すべて…消す…!』

 ポケモン達の事を憎く思っているのか、怒りを孕んだその声を聴いてハルトは目を見開く。同時に、後方にいたネモやペパー、ボタンまでもが驚くかのような表情を見せる。

「ポケモンが…襲った…?…レホール先生の授業の中でヒスイ地方の話は聞いていたけど…。その話の中には君達の様な生き物の話なんか何処にも…。」
「確かにだな。そんなのはどこの本にも載せられてなかったぜ。」
「もしかしてオーレ地方っていうところの話なんじゃ…。」

 困惑するかのような様子を見せるペパーたち。…ネモに至っては、オーレ地方で一時期蔓延っていた心を閉ざし凶悪な戦闘マシンと化したポケモン…ダークポケモンの仕業ではないのか、と推察している。
 一体どういうことなのか。…生き物から聞かされた衝撃の事実…それは、ハルト達を驚かせるには十分なもの。

「…ハルト、まずは相手を大人しくさせよう。…それから事情を聞き出そうよ。…訳がありそうだ。」
「そうだね、ボタン。…戻って、ガブリアス。」

 ボールを前へと構え、ガブリアスをボールへと戻すハルト。相手の生き物は今だ此方への警戒心を緩めずにいる。
 憎らし気な相手の表情。…一歩間違えてしまえばこちらに攻撃が向かってしまうかもしれない。…ボタンが恐竜のような生き物の前に出て。その生き物に問いを投げかけた。

「ポケモンがあなた達の事を襲ったって言われても、うちらにとっては何のことだかわからないんだ。…一体貴方達の方で何が起こったのか、聞かせてくれる?」

 優しげな声で言葉をかけるボタン。そんなボタンに対して生き物は頭を下げ…間近でうなり声を聞かせる。
 内心ビビりつつもボタンは謎の生き物の事をまっすぐに見据え続ける。…それを見てか、その生き物は元の姿勢へと戻ったのちに…内情を話し始める。

『人間のくせして、キモの座った奴だな。…わかった、お前達に教えてやる。』

 ボタンが聞かされた生き物達の事情。それは悲惨なものだった。
 生き物達はデジモン、という生き物で、デジタルワールドにて飼い主とされる男…黒龍と共に暮らしていたのだが。そのデジタルワールドに前髪を切りそろえた齢10代くらいの少年がやってきてそのデジモン達に対してポケモンたちの世界を襲ったことについて攻め立てたのだという。…その時デジモン達はポケモン、などという生き物の事に関しては初耳であり。"スパイラル""イーター"という謎の生き物達の事は知っていても、ポケモンの事はその時まで全く知らなかったのだとか。
 飼い主である黒龍がその事を否定しても、少年は決めつけ続け…手下と思われる白黒の生き物…"ゴチルゼル"とされるその生き物に捕らわれ。少年はデジモン達に対してやってもいない罪をやった、と決めつけ…あろうことか仲間と思われる生き物…ポケモン、とされるその生き物達を使って攻撃を仕掛け始めたのだという。
 あるデジモンは焼き払われてその命を奪われ、また別のあるデジモンは強い電撃を浴びせ続けられそのことが原因で死に絶えた。…別のデジモンはとくせいとやらを発動させたクマのような姿のポケモンによって執拗に叩きつけられ。またまた別のデジモンは念力攻撃によって地面に叩きつけられた後に大きな岩でつぶされたのだという。
 …デジモン、と名乗るその生き物の話を聞いて、ハルト達は目を見開くほかなかった。

『奴らがポケモン、と名乗って以降、我々はそのポケモン、と名乗る生き物達への復讐を誓った。…ポケモン共に奪われたデジモン達の無念を晴らすためにも…俺達はロードナイトモンの命に従い、ポケモンと名乗る奴らに戦いを仕掛けることにしたのだ。』
「…。ポケモンの世界を、デジモンという生き物達が…襲った…?そんなこと…レホール先生の授業でも…。」

 恐竜のような姿を持つ、デジモンと名乗る生き物から聞かされた話を聞いてハルトは未だ唖然とする。…そのそばで猪突猛進戦闘狂ガ…もといネモが何か思い当たる節があるのか。ハルトに言葉をかける。

「…もしかしてカントー地方やジョウト、ホウエン、シンオウでその昔起こったポケモン襲撃事件、それが引き金で起こった、魔女狩り。…臙脂色のカクテルドレスに茶色のウェーブのかかったロングヘアの女性を中心に狙われたパルデアやカロス、ガラル地方にあったその因習に関係があるのかな。」

 ネモが口にした魔女狩り、そしてポケモン襲撃事件。…一体今回の事件と、一体どんな関係があるというのか。