クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第二十話

Last-modified: 2024-03-30 (土) 22:41:05

女騎士と鬼の対決

 オーガモン。そう名のついたデジモンはネモの話を聞いた直後に。怒りを孕んだような眼をネモ達へと向け。手に持ったこん棒でネモの繰り出したポケモン…ユキメノコに襲い掛かっていった。
 ひらりひらりと避け行くユキメノコ。オーガモンのその大ぶりな攻撃は一撃一撃はひとたび食らってしまえば大きなダメージを食らってしまいそうな迫力を持つ。…が、いかんせん大振りなためにユキメノコは苦戦することなく。それらを次々と回避していった。
 いらだちをあらわにするオーガモン。そのデジモンはついには我慢できなくなったのか。後ろへと飛びのいたのち…一気に前へと突進し。それと同時にユキメノコへと棍棒を強かにぶん回す。
 そのこん棒はユキメノコに直撃し。そのポケモンはその衝撃で数歩後ろへと下がったのちに前のめりに倒れていった。

「ユキメノコ!」

 声を上げるネモ。そのユキメノコは立ち上がることなく、力尽きたのかそのまま戦闘不能となった。

『ウガアアアッ!どうだぁー!』
『さすがはオーガモン様です!あの憎き鬼畜ポケモンを一匹倒してしまうとは!このまま今のところ多くのポケモンを殺してきているオメガモン様を目指しましょう!』
『いやいや、ロイヤルナイツの面々に並ぶは恐れ多いことよ。ロードナイトモン様の褒美は相応の手柄を立てるだけでも賜ることができる、と聞いているからな。』

 ウルガモス、そしてユキメノコ、と二匹のポケモンを倒されたネモ。彼女が次に繰り出したのは。

「これならどう!?行けっ!エルレイド!」

 ラルトスのオスでの最終進化系。エルレイド。そのエルレイドはオーガモンを見るや否や凛々しげな表情を見せ始める。

「エルレイド、私は今までに二匹のポケモンを戦闘不能にされてるの。…こっちの言葉を響かせるためにも、頑張ろう!」

 ネモのその言葉が響いてか頷くエルレイド。そのポケモンは腕の部分の刃のようになっている部位を振りかざすや。その体制を低くしオーガモンへと突き進む。その突然の行動にオーガモンは一度は驚くものの。すぐさま表情を変えあくどい笑みを浮かべる。

「エルレイド気を付けて!"アクアカッター"!」

 エルレイドの刃のようになっている部位が水の様な物をまとい始め。それをオーガモンに連続でぶつけ行く。大きさの関係からか腹部にヒットしたその攻撃は。相手の急所にヒットしたのかオーガモンの動きを一時的に止めることに成功する。

『オーガモン様!?』

 腰ぎんちゃくなのだろうか、オーガモンが体勢を崩したのをみた緑色の生き物達が心配そうな声をそのオーガモンへとかける…と。笑みを浮かべつつオーガモンは再び立ち上がり始めた。

『人間のメスのそのポケモン…随分とやりてのようだな。非力な代わりに頭使った戦い方ができようとは。だが、懐に潜り込んで肉薄したということの意味を知っているだろうな?』

 悪い笑みを浮かべるオーガモン。そのオーガモンのこれからの行動を読んでかネモは何かに気付いたような表情をしたのち。声を上げる。

「エルレイド!相手の巨体を生かしてジャンプして!」

 大きな土塊をエルレイドに叩きつけようとするオーガモン。エルレイドはそのオーガモンと距離を取ったのちにオーガモンの腕を踏み台にし。高く跳躍した。
 エルレイドの事を見上げるオーガモン。その口元には笑みが浮かんでいる。

『そのような身動きの取れないような状態を俺が見逃すとでも思ったのかぁー!』

 棍棒を振りかぶり、オーガモンもまたエルレイドと同じ高度まで高くジャンプする。
 この時をネモはまっていた。

「フフッ、手間が省けたよ。エルレイド!連続して"アクアカッター"!」

 ネモのその指示を聞いたエルレイドが刃の様な部位に再び水をまとい。オーガモンに対してラッシュを仕掛け行く。自分の思惑とは反対に相手にされるがままになったような形となったオーガモンは。手も足も出ずに相手の成すがままになるほかない。
 オーガモンへと直撃していくエルレイドの攻撃。最後に放った一撃がオーガモンにしたたかに直撃したその後。オーガモンは地面へと墜落してく。…勝負あり、だ。

「さあ、勝負あったよ。…詳しい事情を、聴かせてもらうからね。」

 どこか得意げなネモの表情。さわやかなようにも見えるネモのその表情を見てオーガモンはぽつり、ポツリと事情を話し始めた。
 オーガモンたちがデジタルワールドでいつものように生活していたその時、突如としてピカチュウやシャンデリアのようなポケモン、そして二本足で立つ鳥人のような姿をしたポケモンなどの様々なポケモン達を引き連れた、前髪を切りそろえ眼鏡をかけた少年がやってきて、デジモン達に襲撃を仕掛けてきたこと。サンフラウモンがその少年に対して訳を問いただすと、ポケモンの世界をデジモンたちが襲撃した、というのが理由で。それにオーガモンたちは覚えがないという事。
 少年たちはオーガモンのその訴えも聞かないまま、デジタルワールドで暮らすデジモン達に次々と襲撃を仕掛け、さらには大きな頭部を持つロボットのような姿をした生き物達もデジモン達に対して攻撃を仕掛け始め…デジタルワールドは炎に包まれたこと。逃げ行くデジモン達に対して攻撃を仕掛け、虐殺し、果てはデジモン達を数匹捕えて見知らぬ土地へ連れていき。牢屋の中で惨たらしい生活を強いたこと。
 それらを聞いた後…。ネモの表情は苦々しいものへと変わっていた。

「…。ポケモンを引き連れた男の子が…そんなことを…。同じポケモントレーナーとして、そんなこと…絶対に許されることじゃないよ。ポケモントレーナーという称号は免罪符じゃない。ポケモンを使ってほかの生き物や人間に危害を加えていいわけ、ない。」

 そう、言葉を発するネモの表情。それはいつもの彼女からは想像のできない、悔しさをいっぱいに表したものだった。