クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第三話

Last-modified: 2023-02-22 (水) 20:58:55

 歯車が三つ重なったような姿の生き物との戦いでウェーニバルでは不利だと察したハルト。彼は一度ウェーニバルをボールへと戻し。でんきタイプに有利を取れるポケモン…地面・ドラゴンタイプのガブリアスを繰り出した。
 その勇ましい目で歯車にも似た姿を持つポケモンを見据えるガブリアス。そのポケモンへと…ハルトは命を下す。

「ガブリアス、あの生き物に対してじしん!」

 ハルトのその指示の通りにガブリアスが右足を大きく踏み出し。その振動によって地割れが歯車のような姿の生き物へと一直線に向かっていく。…そして、その地割れが生き物の真下に達したとき…地面が一気に隆起して生き物に命中した。
 隆起した地面が直撃したことで一度体勢を崩すような様子を見せる生き物。それを見てハルトは効果があった、と思った。

――ガブリアスに変えておいて得策だった。…見た目からして相手は鋼…地面タイプが通りやすいのも納得がいく。下手を打たなければ、この戦い、勝てる。

 この戦いは勝てるかもしれない、そう確信するハルト。そのハルトのガブリアスに対して歯車のような姿をした生き物は…体の一部、と思われる歯車をガブリアス目掛けて飛ばしてきた。
 飛来する二つの歯車。ハルトのガブリアスはその歯車を腕の部分についているひれのような部分ではじき返し。そのままツメの部分から赤いエネルギーを発生させ…生き物へと襲い掛かり始める。
 先ほどと打って変わって有利な状況下。その状況下で…ガブリアスはあかいエネルギーを発生させている爪の部分を。その歯車のような姿をした生き物へと命中させた。
 吹っ飛び行く生き物。…力尽きたのか、その生き物は吹っ飛び行く中で粒子と化し何処かへと消えゆく。周囲を見渡し、野生のポケモン以外に何もいないことを確認してほっと一つ息を吐くハルト。そんなハルトに…ペパーが声をかける。

「お疲れちゃんだぜ、ハルト!しっかしさっきの奴らは一体何だったんだ…?」

 さっきの生き物…珍妙摩訶不思議な外見をした生き物達の事について疑問を覚えるペパー。そのペパーのそばで、今の今まで戦いを見守っていたであろうボタンが声を発する。

「さっきの奴ら、まるで…コンピュータから出て来たような見た目をしていた。まだはっきりとした外見設定が出来上がる前の…まるでテクスチャーのような…。」
「テクスチャー…?ボタンがそう言えるってことは、パソコン関係のもんか?」
「うん。…でも、なぜこんなことが起こったかはまだわからない。ハルトの教えてくれた出現場所…パルデアの大穴に何かヒントとなるようなものがあるんだと思う。」

 ボタンの言葉の中にあったパルデアの大穴。その単語を聞いてピン、ときたのか。ペパーは一つ頷いたのちに。

「まずは第四観測ユニットを目指さないといけないな。そこから中心部に向かえば、すべての答えがわかるはずだ。…そうと決まったら善は急げ、だぜ!」
「…そうだね。チャンプルタウンを経由していかないと。」

 三人が同時に頷いたのち。まずはロースト砂漠、という地域を抜け…チャンプルタウンへと向かっていく。予測の上では、ネモはそこからパルデアの大穴へと通じる場所を通ろうとしているはず。

――さっきの生き物達の強さからして苦戦は必至。…とにもかくにも、急がないと。

 ボタン、そしてぺパーの二人とともに急いでチャンプルタウンへと向かうハルト。その道中…スマホロトムが鳴った。

「はい、もしもし。ハルトです。」
『ハルトさんですか?オモダカです。…チャンプルタウン南に位置する場所から現れる不可思議な生き物達の事は知っていますか?』

 スマホロトムによる電話の相手は、トップチャンピオンのオモダカ。彼女の声から聞かされた情報にハルトは頷き。電話越しに彼女にこう伝える。

「はい。不可思議な生き物達とは先ほど戦闘をし、勝利することができました。…ですが、相手も相当な強さのようで…無事とは言い切れない状況です。」
『どなたか怪我をなされたのですか?』
「いえ、僕とそばにいるペパー、ボタンは傷一つありません。…ですが手持ちのポケモンが傷ついてしまいまして…。」
『分かりました。その先のチャンプルタウンにネモさんがいらっしゃいます。…あの出現場所の近くですので、くれぐれもお気をつけて。…私達も後から駆け付けます。』
「分かりました。」

 スマホロトムによる通信を切るハルト。…その直後だった。チャンプルタウンのある方向から、ポケモンではない別の生き物の物、と思われる怪獣の様な鳴き声が聞こえてきた。

――この声…。何処か悍ましいような…!

 声の感じからしてどこかひりつくようなものを感じ取るハルト。…同時に彼は、ネモの事が心配になった。

「…。ペパー、ボタン、急いだ方が良いと思う。」
「ハルト、急にどうしたんだ?…確かにネモの事は心配ちゃんだけどよ…。そんな急を要する事態か?」
「さっきの咆哮は確かにポケモンの物じゃなかったとは思うよ。…グラードンとかでも、あんな声は…。」
「…。だからこそ急ぐべきなんだよ。早くしないと…。彼女…ネモが危ない。」

 ネモの事を心配しだしたハルトが急に走り出し、それをペパーとボタンが追いかけ行く。…その先でハルト達が見たのは。パソコンのテクスチャーのようなものに浸食されたチャンプルタウンの中で咆哮をあげるオレンジ色の体にところどころ青い線の入った、人間の二倍はあろうかという大きさの恐竜のような見た目の生き物と…先ほどまでその生き物と対峙していたと思われるヌメルゴンが倒れどこかあきらめたような様子を見せる少女…ネモの姿だった。

「ネモさん!」
「あ、ハルト?…私だけじゃあの生き物達にかなわなかったみたいなんだ。…私のポケモン、全員やられちゃった。…ハルト、後は…頼んだよ。」

 俯かせながらも涙を見せない様子のネモ。…その表情からは達成感だろうか。そんなものが感じ取れる。…そんな彼女に肩を叩かれたのち…ハルトは先ほどの戦いでも繰り出していたポケモン…ガブリアスを再びその場に繰り出す。
 恐竜のような見た目をしたオレンジ色の体の生き物。…その生き物に、ハルトが戦いを挑む。