クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第八話

Last-modified: 2023-03-04 (土) 10:43:08

獅子の恐るべき力

 ドゥフトモン。そうなのった生き物の力はかつて戦ったパラドックスポケモン…あの時のあの人物が繰り出してきたポケモン達よりは強いかもしれない。…そう予測を立て挑んだハルトであったが…実際戦ってみてそれでも考えが甘かったことを実感させられた。
 直感からフェアリータイプかと予測を立て繰り出したデカヌチャン。そのハンマーから繰り出されるデカハンマーという技は幾多もの強敵をねじ伏せ、立ちはだかった壁を乗り越えた技、であったのだが。それもドゥフトモンの前には歯が立たず。相手に大したダメージを与えられずにいた。

「っ…。デカヌチャン、相手の事をよく見て!君なら避けることができるはず!」

 ハルトの言葉に鼓舞されてか、デカヌチャンが相手の事を見据える。そのデカヌチャンに対して…ドゥフトモンは自身の必殺技がうちの一つ、"アウススターベン"を放ってきた。
 放たれる衝撃波。その衝撃波に向かってデカヌチャンはハンマーを振るい対抗する。そのハンマーに刃がぶつかり爆発を起こした。
 周囲に起こる強い風。顔を覆うハルトに対し、ドゥフトモンは動じないままでいる。

『私のアウススターベンに対してそう出てくるとはな。見事ではあるが…その程度で調子に乗られては困るな。』
「っ…!」
『今一度私の技を…受けるがいい!"アウススターベン"!!』

 デカヌチャンへともう一度放たれる光の刃。デカヌチャンはそれを再度ハンマーで防ごうとしたのだが。その防御は間に合わず刃がデカヌチャンに直撃する。
 吹っ飛ばされ行くデカヌチャン。地面に倒れこんだ時そのポケモンは立ち上がろうとしたのだが。力が入らずそのままその場に倒れてしまう。

「デカヌチャン!っ…戻れ!」

 倒れ伏すデカヌチャンをボールへと戻すハルト。続けて彼が繰り出したのはミミッキュであった。

「ミミッキュ、頼んだよ!…サイコキネ」
『"エルンストウェル"!』
「!?」

 ミミッキュへのハルトの命令。それが言い終わらないうちに放たれる紫色のレーザー。それがミミッキュに命中するが…ミミッキュは特性であるばけのかわでそれを無効化し。ばけたすがたからばれたすがたへと変化を遂げる。
 それを見て余裕を見せ始めるはドゥフトモン。すかさず次の技をミミッキュへと放ちゆく。

『私の技を無効化したところで連続で放たれれば同じことだ!"エルンストウェル"!』

 無情にも放たれる同じ技。ハルトが指示を出す間もなく繰り出されたそれを受け、ミミッキュは一撃の内に倒れてしまう。

「ミミッキュ!…くっ…!」

 歯噛みしつつミミッキュをボールへと戻すハルト。後ろではドゥフトモンのその圧倒的な強さに、ネモが目を見開いている。
 目の前で起こっていることは現実か。学校最強大会で幾度となく勝利を手にしてきた彼…ハルトが、たった一体のデジモンを相手に押されてしまっている。
 ハルトが次に繰り出すガブリアスも、相手の放った光のレーザーが直撃したことで倒れ。それまでに三匹ものポケモンがたった一体のデジモンに倒されてしまっている事になる。

「っ…。大丈夫。大丈夫。まだ、僕はやれる…!…がんばれ!スコヴィラン!!」

 四匹目に繰り出すは唐辛子のような頭を二つ持ったポケモン…スコヴィラン。そのスコヴィランに、ハルトは命を下す。

「スコヴィラン!オーバーヒート!!」

 ハルトの命令通りに赤い頭の方から勢いよく炎を吐き出すスコヴィラン。対するドゥフトモンはそれに対して光の拳をぶつけ、相殺させたのち。すかさず次の技へと移る。

『炎属性の技で私を攻撃しようとしたのが迂闊だったな。"アウススターベン"!!』

 ドゥフトモンの放つ衝撃波。それはスコヴィランに直撃し…それによってスコヴィランは倒れてしまった。
 これで倒れたのは四匹目。ドゥフトモンに対してはデカヌチャンのデカハンマーしか当たっておらず、一方的な展開となってしまっている。
 ハルトの手持ちは残り二匹。タイカイデンと…クワッスだったころからの相棒たるウェーニバル。カチャ、とハルトはタイカイデンの入ったボールを見た後に、相手の方を見据える。

「…。残り二匹まで追い込まれた。…。残るはタイカイデンとウェーニバルの二匹。…此処はこのポケモンで行くしかない、頼んだぞ、タイカイデン!君が頼りだ!」

 投げられたボールから登場したタイカイデン。翼をはばたかせつつ鳴き声を上げ。タイカイデンは相手を見据える。
 そのタイカイデンに対してドゥフトモンは未だどこか余裕を見せているような様子でいる。

『まぁだ粘る気でいるのか。…人間よ、諦めて私の剣の錆となるがいい。…貴様ら人間は…罪を犯し過ぎたのだ。…私達デジモンを…虐げて来た重大な罪をな。』
「…まだ僕はあきらめる気はないよ。それに、ポケモンを引き連れている人…ポケモントレーナーが遣ったことを良しとする様な感情は、僕はもちあわせていない。それどころか君達に対する申し訳なささえあるからね。」
『…。フン、見え見えの反省など無意味だ。私達はあのポケモントレーナーなどという人の罪を、ポケモンたちに償ってもらうために来たのだからな。…それがわかったならば引き下がれ。…でなければ、ここで滅べ!』

 ドゥフトモンによってはなられる紫色のレーザー。タイカイデンはそれを避ける間もなく受けてしまい。そのまま地面へと墜落していく。
 動け、そう念じるハルトであったがその願いもむなしく。タイカイデンは地面に倒れ伏してしまった。…これによって、ハルトが繰り出せる手持ちは残り一匹。

「っ…残りはウェーニバルのみ…。君が頼りなんだ、頼んだぞ、ウェーニバル!!」

 どこかサンバの衣装を思わせるような出で立ちのポケモン、ウェーニバルがドゥフトモンの前に繰り出される。

「後一匹だよ、ハルト。…大丈夫なの?」
「…。わからない。…でも、もうやるだけやってみるほかないんだ。…光り輝け、テラスタル!僕のポケモンに、力を与えよ!」

 ハルトが続けて取り出したのはポケモンが水晶のような輝きをまとい始める現象を起こすテラスタル…その力の源となるテラスタルオーブ。…ハルトはそれをウェーニバルへと投げ。ウェーニバルを水のテラスタイプへと変化させた。

『変化させたところで、なんとなる?…無駄な努力はやめた方が良いぞ。』
「無駄じゃない、その事を証明してみせる!ウェーニバル、アクアブレイク!!」

 水の力をその身にまとい、ウェーニバルがドゥフトモンへと体当たりする。その技は命中したものの。ドゥフトモンはダメージを受けていないように見えた。

「っ…!」
「そんな…!」
『その程度でおしまいか?…笑わせてくれる。…ならばこの場で…私のその裏身の丈を、存分に晴らさせてもらおうか!!!』

 ドゥフトモンが返しに放った一発…アウススターベン。その一撃でウェーニバルは戦闘不能となったのだが。ドゥフトモンは攻撃をやめるつもりはなかった。
 何度もウェーニバルへと繰り返されるドゥフトモンの攻撃。…とっくに戦闘不能になっているというのに、ドゥフトモンはそれをやめるつもりはない。
 その様に、さすがのネモも顔を青ざめさせていた。

「っ…。戻れ、ウェーニバル!!」

 たまらずウェーニバルの事をボールへと戻すハルト。次に彼はミライドンを出し、ネモと一緒にテーブルシティへとむけて走らせていった。