クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第十話

Last-modified: 2023-04-06 (木) 21:11:24

平和を祭る街へと向かう学生たち

 テーブルシティを発ったハルト達。…彼らがまず最初にめざしたのは、ムシジムのあるセルクルタウン。そこはオリーブが有名で、お祭りでもオリーブ転がしという催し物があるほどの物。しかしこの現状、どんな事になってしまっているのか…容易に想像できてしまうだろう。

「…。生徒会長、ハルトのために頑張るっていってたけどさ、どういう風にしたわけ?…いや、ウチも一応はちらりと見たことがあるから全く知らないわけではないけど。…動画サイトを参考にしていたから、相応の強さを持ったポケモン達を選んだ、とは思うんだけど。」
「うん。…私の今までのエースポケモンを、しっかりと選んできたよ。ハルトとの戦いでは選抜しなかったようなポケモンも選抜してるから。…戦いでも、自信はあるよ。やる気のあるパーティで構築したから足手まといには、ならないはず。」
「うげっ…普段のパーティは何だったんだってんだよ…。オモダカさんが言っていたように、余裕のあるパーティで行っていたっていうのか?…末恐ろしいぜ…。」

 ネモからの言葉を聞いてうすら寒いものを感じるペパー。ハルトはハルトで、ネモの様子を見て口元に笑みを浮かべている。

「ネモさん。君の手持ちがどんなものかはわからないけど…相手はどんな手で出てくるかわからないからね。…そこも忘れないで。」
「…。ハルト、アンタが原因でネモがさらにネモネモしくなってきていること、わかってるの?」
「ボタン、今の今まで…僕は彼女に実らせられ続けてきた。…だから今度は僕が彼女の事を成長させ続けるんだよ。…今までの恩返しの様な物。」
「…これ違う、ネモがネモネモしくなったんじゃない。ネモがハルトに感染してハルハルしくなったんだ。」
「えっ、じゃあ俺にマフィティフに食らいつくを覚えるように強要してるのもそれって事か…?うわこわっ!?」

 ボタンとペパーがハルトの方を見つつ二人して彼の事を怖がる。ハルトはハルトで理由がわかっていないのか、ペパーとボタンの事を見て不思議に思っている。
 喋りつつもセルクルタウンを目指すハルト達。その道中で前に出て来たのは。赤い胴体と白い頭部を持つデジモン…ホークモンだ。…同時にハチのような見た目のデジモン…ファンビーモンもいる。

『っ!ポケモントレーナー四人と出会ったぞ!攻撃態勢を取れ!』
『相手は私達デジモンに危害を加えたんだ!全力で対応させてもらうよ!』

 悍ましい羽音とともに現れるファンビーモンの群れ。ハルトとネモは相手の属性がわからないために推測でやるほかなかった、のだが。

「ネモさん、相手はひこうタイプと思われます。ここはいわタイプで行きましょう。」
「いわタイプだね!行けっ、バンギラス!」
「キョジオーン、ウェーニバルの代理として活躍して!」

 ハルトが相手をひこうタイプ、と推測するや否や迷わずそれぞれのパーティからいわタイプのポケモンを選び、同時に繰り出す。
 咆えるバンギラス、威嚇するかのような動きを見せるキョジオーン。更にはバンギラスの特性で、砂嵐が起こり始める。

『っ!?砂嵐だって!?』
『ファンビーモン、落ち着いて!相手の事をよく見て動けば、こちらに勝ち筋が見えるはず…!"ウィンドクロウ"!』

 ホークモンが空気の刃による攻撃を放つ。だがしかしそれはバンギラスには当たったものの効果は薄く。ダメージは小さい。バンギラスはその返しとして、ストーンエッジを放った。
 鋭い岩の塊がホークモンに直撃し、大きなダメージを与えたのかホークモンが大勢を大きく崩す。
 駆け寄るはファンビーモン。そのデジモンはバンギラスを見据えるや、その尻の針による攻撃を仕掛け始め行く。…だがしかし、それらもまたバンギラスには効果が薄かった。
 そのファンビーモンに、今度はキョジオーンがストーンエッジを放つ。…その岩の刃はファンビーモンに鋭く突き刺さったがためにそのファンビーモンの体勢を大きく崩すことに成功し…それが影響してか、ファンビーモンはその体を光の粒子とともに消して行った。

『ファンビーモンっ!うああああっ!』
「バンギラス!あの鳥のような姿をした生き物…いや、デジモンにストーンエッジ!」

 ホークモンがキョジオーンへ向かっていくところへと、バンギラスがストーンエッジを放つ。…二度目の攻撃はさすがに耐えきれなかったためか、そのデジモンは前にゴロゴロと転がったのち…あおむけに倒れた。

「…。これも、パルデアを守るための事だから。…ごめんね。」
『く、くう…。ロードナイト…様の…やることに…同調して…デジタルワールドの…敵を…取りたかった…なのに…。ここで終えるなんて…!』
「…君達の思いは、僕達が受け継ぐ。…君達の仇はピカチュウと思われるポケモンを連れた少年なんでしょ?…そのポケモンを引き連れた少年を探し出し、デジモンたちを襲撃したこと、それを後悔させればいいだけの事。…その少年のやり口には、僕も怒りを覚えてるから。何が何でも、君達の思いは、無駄にはしない。」

 ホークモンが涙を流しつつ、粒子化したのちに天へと昇っていく。それを見送ったのち。ハルト達はセルクルタウンへと向かっていった。

 一方、セルクルタウンでは。

『グレイモンに手も足もでーへんかったような奴らがこっちに向かいよったか…。どんな戦い方で来るんかはわからへんけど…思い切り遊んで、想いきり可愛がって…ウチらの怨嗟がどれほどの様な物か…骨の髄まで知らしめたろやないの。』

 青を基調とした悍ましい甲虫のような姿の生き物…デジモンが、セルクルジムのビルの屋上で独り言ちていた。