クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第十八話

Last-modified: 2023-12-30 (土) 23:26:13

情熱の町は獣たちの侵食を受けて

 ボウルタウン。かつてはジムリーダーのコルサ、という人物がその芸術センスをいかんなく発揮した芸術作品があちらこちらに置かれていたその町は。所々にコンピューターのテクスチャーが現れたような状態になり…さらにはジムリーダーのコルサの作ったその芸術作品も…派手にたたき壊され見るも無残な状態へと変わってしまっていた。おそらくこの場に本人がいたならば頭を抱え向かいようのない苛立ちを抱え込んでいたことだろう。
 壊されたいじょうは何処かに賠償を請求しなければいけない物の、何処に請求すれば分からない。そのような状況下に置かれたボウルタウンに到着したハルト達もまた…その町の惨状を見て苦々しい顔をしている。

――これが今のボウルタウンの惨状だとでもいうのだろうか。…セルクルタウンの時も思ったけど。…あまりにもひどすぎる。

 建物も、店先で売られているものも。ボウルタウンに襲撃してきた者達によって荒らされてしまったのだろうか。それはそれはひどい有様。ガラスのケースは割られ、内部にあったと思われる売り物は、そのすべてが食べつくされている。飲食店も例外ではなくその出入口は乱暴に壊されて恰も無法者が突入したかのような有様となり。赤い液体の様な物がその出入口から流れ出てきている。…恐らくその液体から察するに…内部は悲惨なものになっているだろう。
 ハルト達の中で怖いもの知らずなネモがその建物の中へと入っていく。…そこはカフェだったのだろうか。何処かおしゃれな雰囲気であっただろうことはその端端から伝わっては来ているものの。如何せん無茶苦茶に荒らされてしまっているがためにその雰囲気は台無しである。…さらにその喫茶店には…それに似つかわしくはないモノが一つ。…それを見てネモは顔を思いきりひきつらせた。

「これも…デジモン達…が…?」

 それはそれは文章で言い表せないようなエグイもの。それがあたかも昆虫標本のソレのように一本の針で壁へと磔にされ…見世物のようになっている。…ただしそのお店の中の赤い液体…それはその文章にも表せないようなオブジェ一つが原因ではないようなおびただしいモノであり。…恐らくその喫茶店のような場所の内部ではかなりの惨状が繰り広げられていたのだろう。
 その惨状を見てネモは顔を曇らせる…と。ネモのその足に、弦の様な物が巻きつけられた。…その蔓状の物をたどっていくと…そこにいたのはウツボカズラのような姿をした一匹の生き物。…その顔たるや人の事を小ばかにしたような表情を浮かべている。

『げひゃーっ!人間の女を一匹捕まえたぜぇー!恨みをぶつけるための相手が一人また増えるってことだなぁ!』

 ウツボカズラにも似た姿の生き物が、漁の網を引くように蔓を引けばそれにつられてネモがすっころぶ。そのすっころんだ体制のまま…ネモは一つのモンスターボールを取り出した。

「っ…!お願い、ウルガモス!あの生き物に火炎放射!」

 ネモのその指示に従ってか、ウルガモスが炎を生き物目掛けて吐いていく。その直撃を受けた生き物はしきりに熱がったのち。その炎を振り払う。…その瞳は打って変わって此方をにらみつけるようなものだった。

「っ…よくも俺に対して炎の攻撃を仕掛けて来たなぁ…!こうなったらこの攻撃だ!"クレセントリーフ"!」

 生き物の周りに現れた葉っぱがウルガモスへと飛んでいき、それらがウルガモスに命中していく。…しかしてダメージが小さいためかウルガモスは全く聞いていないかの様子を見せる。
 …そのウルガモスは。お返しといわんばかりに次の攻撃を見舞った。

「ウルガモス!"むしのさざめき"!」

 ウルガモスの放った攻撃、それがウツボカズラのような生き物へと直撃し。その生き物が倒れ行く。…それを見てか、緑色の体の悍ましい姿の棍棒を持った生き物が、複数の手下と思われる生き物達を引き連れて現れる。

『ウガアアっ!ベジーモンを傷つけたのは貴様らかー!』
『オーガモン様!この者達…セルクルタウンとかいう場所でカブテリモンを倒し、知恵の紋章を受け取ったもの達ですよ!』
『そうかそうか!だったらばカブテリモンの敵は俺がとって、ロードナイトモンに称賛の御言葉を賜ってやるー!』

 緑色の体の生き物が勢いよく棍棒を振り下ろす。…そのこん棒は地面に激突するや…そこから地面を隆起させて行った。…それはウルガモスへと向かっていき…そのポケモンに直撃する。
 ほのおとむしに相性が良いとされているその攻撃を受けたウルガモスはたまらず倒れ。戦闘不能になる。

「戻って、ウルガモス!…お願い!ユキメノコ!」

 ネモが戦闘不能になったウルガモスの代わりとして、ユキメノコとを繰り出す。そのユキメノコを見てオーガモンと呼ばれた生き物は威嚇するかのようなポーズをとる。
 そのオーガモンと呼ばれた生き物に対して。ネモはユキメノコへと指示を出す。

「ユキメノコ!こおりのいぶき!」

 ユキメノコが冷たい息をオーガモンへと吹きかける…と、それが効いたのかオーガモンは怯んだ…が。それだけであった。

 かつての芸術の街とされたボウルタウンで始まった、オーガモンと呼ばれる生き物との戦い。…その生き物との戦いに、打ち勝つことはできるか。