クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第十九話

Last-modified: 2024-03-30 (土) 22:38:27

情熱の町の鬼

 ウツボカズラにも似た姿を持つ謎の生き物との戦いのさなか、優勢に戦えていた矢先にネモの前に現れた鬼のような角を生やした恐ろしい形相の緑色の肌の生き物…手下と思われる生き物達からオーガモン、と呼ばれていたその生き物はいわタイプの技と思われる技をネモのウルガモスに食らわせ戦闘不能に追い込み。ネモに二匹目のポケモン…ユキメノコを繰り出させた。
 妖艶な雰囲気を見に纏うユキメノコ。そのユキメノコがこおりのいぶき、という氷タイプの技をオーガモンと呼ばれる生き物に浴びせかけても。オーガモンはてんで効いたような様子を見せない。

「…。ユキメノコ、相手は相当のとくぼうをもっているとおもうよ。…それだけは気を付けて。…シャドーボール!!」

 ネモのその命令を聞いて、ユキメノコが暗い紫色の球体を出現させ…オーガモンと呼ばれる生き物へと命中させる…だがしかしてそのシャドーボールはオーガモンの持ったこん棒によって防がれてしまった、

『あの時デジタルワールドを襲撃した、と言われるポケモンとかいう生き物の力はそんなものなのかぁ?随分と拍子抜けな能力を持ってるなぁ…そんなんじゃ、俺達の恨みを晴らす相手にもなりもしないぜ!』

 重たそうな足音を響かせ、オーガモンがユキメノコへと一直線に向かっていく。
 それを見て内心ワクワクしているのか、ネモは口角をあげた後。ユキメノコへと命を下した。

「ワクワクしてきたね!ユキメノコ!至近距離から"こおりのいぶき"」

 危険なかけともいえる命令。それに従うようにユキメノコがオーガモンへと接近していき。振るわれる棍棒をひらりと躱す。それは言葉に表すならば正しく蝶のように舞う、という言葉が似合うだろう。
 素早く再び棍棒を振るわれればユキメノコは大きなダメージをおってしまう。そんな状況下、そして距離で。ユキメノコはオーガモンに対してやってのけてみせる。…こおりのいぶき、という技を避けようのない至近距離から命中させて見せたのだ。
 間近から技の直撃を受けたために重たいダメージを受けるオーガモン。だがオーガモンのその表情からは、いまだに苦しそうなしぐさなどが見受けられない。…その事から察するにまだ余裕を見せているのだろう。
 そのオーガモンに対して微笑みを浮かべるネモ。…それは強敵と出会えたことからくる喜びの所為なのだろうか。

――今彼女の方に加勢するとなんだか寂しそうな表情をするから、彼女の方へ加わるのはやめておこうか。

 過去に一度"愚かしく"もネモに戦いを挑んだタクシードライバーがいて。そのタクシードライバーの使うポケモンが異様に強かったがためにネモが苦戦を強いられているのを見ていてもたってもいられなくなり加勢しようとしたときの彼女の表情を思い出し、加勢しようとしたのを何とか抑えるハルト。そのハルトの様子をちらりと見やり。ネモはその笑みをやさしいものへと変える。
 それを見てオーガモンは何かを察したのだろうか。ネモに対して言葉を発してきた。

『お前のお仲間は随分とお前のウデを買ってくれている様だな。』
「彼は私の最高の宝物で、最高のライバルだもの。そして私の頼みごとを快く引き受けてくれた…好きな人でもあるから。ハルトは私のことがわかるし、私もハルトの考えてることはわかってるつもり。…それに貴方の事を追い詰めて追い詰めて、もう戦える気力がないような状態に陥らせたら貴方達の詳しい事情をより深く教えてもらうつもりだからね。…私達には、もう知れ渡ってるよ。貴方達が遭ってきた事件が…私達の所での"魔女狩りの伝承"にかかわっている可能性が高いって事。」

 ネモのその言葉を聞いてオーガモンはどこか驚くような様子を見せるが。すぐさまその表情を怒りの孕んだものへと変える。

『魔女狩りだと?フン、大方我々デジモンに罪をかぶせることができなくなって、その代替策としてその魔女狩り、とやらを敢行したんだろうが。…俺達にはお見通しだ。』
「ううん。違うよ。…君達はピカチュウを中心としたポケモン達に、デジタルワールドっていう場所を襲撃されたんだよね?…その理由が、ポケモンの世界を襲った疑惑がかかったため。…私の知る伝承では、ポケモンの世界は確かに襲われたけどそれは600年から500年前の…それもカントー、ジョウト、ホウエン、シンオウの話。…この四つの地域に貴方は聞き覚えある?」
『カントー、ジョウト…ああ。デジタルワールドを襲撃してきた、あの前髪を切りそろえ眼鏡をかけた人間の男からそれを聞いた。』
「…だったら私の知ってる話と合致するね。その四つの地域を襲撃したのは、臙脂色のカクテルドレスに茶色のウェーブがかった長い髪、そして妖艶な顔立ちの女性。…その女性が、ある一人の少年に一目ぼれをしその少年に対する己の劣情を発散するがための行為だったんだ。魔女狩りの伝承によれば、その魔女は…人々、特に自身が気に入った人物の絶望に満ちた表情を見るのが好きだったみたいで。それを見るために…ポケモンの世界を襲ったみたいなんだよ。…それがどう伝わってか、貴方達の世界に…危害を加える結果になってしまってるみたいだね。」

 ネモからのその話を聞いて黙り込むオーガモン。…しばしの間黙り込んだ後。オーガモンは悍ましい目をネモへとむける。

『ありがとな。おめえのおかげで…"俺達は人間とポケモンの歪曲した歴史"の所為であんなクソッタレな目に遭って来たって事がよぉーく分かった。…。だったら、同じポケモンを使役するてめえに、今までの恨みを何倍にもして返してやらぁ!』

 怒りを孕んだ目でネモを見て。咆哮をあげるオーガモン。
 一人の少年が歴史を捻じ曲げデジモン達を襲った結果、それは…今のパルデアの地に現れてきている。