クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第十五話

Last-modified: 2023-10-07 (土) 01:15:36

知恵を司る甲虫の矜持

テラスタルさせたタイカイデンをでんきタイプのものと思われる攻撃二回で沈められたハルトが次に繰り出したのはスコヴィラン。赤と緑、二色の唐辛子を模したような頭部を持つそのポケモンを前にしてもカブテリモンは今だに余裕を見せている。
スコヴィランが炎タイプを複合している事を予測していないのだろうか。それとも相手が一撃の内に倒れないという確信を持っているのか。どちらにせよ、こちらの事をなめていることには間違いない。

「へぇ、相性不利なはずの相手を前に、そのような様子を見せるなんてね。…私がワクワクしてきちゃったよ。」
「ネモさん、落ち着いて。…愛称で不利なことはわかっているはずなのにあの様子…。何かウラがある。そこを読まないと。」
「それでもあれだけのメンタルを持つ相手にわくわくせずにはいられないよ。…ハルトがやられたところを見たことはあるけどさ。それでも今の状況はいやがおうにもワクワクせざるを得ないね。…ハルト、私は君の事を応援してるから。」

変わらないネモの様子。それを見て一つ息を吐いたのち…ハルトは目の前の戦いへと目を向ける。

『覚悟、はっきりと決まったみたいやな。ほな、わてらデジモンの復讐を果たすために…倒されてもらうで。"メンタルブレイク"!!』

カブテリモンがスコヴィランへと技を放ち。その効果によってスコヴィランがどこか力が抜かれたような様子を見せる。…しかしてハルトはそれにも関わらずに…スコヴィランに命令を下した。

「能力が下がったところで相性の前には無駄なものと化すよ!スコヴィラン!"オーバーヒート"!!」

スコヴィランの放った勢いのある炎がカブテリモンに命中する。しかし、その攻撃を受けてもカブテリモンは未だに動けていた。
どこか悔しそうな様子を見せるハルト。そのハルトのスコヴィランに、カブテリモンが技を放つ。

『ジブンの力はその程度なんか?…やったら次の攻撃でいわしたるで!"ソニックヴォイド"!』

カブテリモンから放たれた技。その技をスコヴィランは間一髪のところで回避することに成功した。

「よし、いいぞスコヴィラン!あのモンスターに"かえんほうしゃ"!!」

ハルトが指示を下したのち、スコヴィランがその指示に従ってカブテリモンへと炎を吐く。…その炎の攻撃は余程効いているのか、カブテリモンはどこかもがくような様子を見せている。

――炎の攻撃が効いてきている。…ほのおに弱いタイプのようだね。…だったらこのまま、ほのお技で攻めれば…!

このままほのお技で攻め続ければ勝てるかもしれない…そう考えたハルト。だがしかし相手は未だに倒れる様子を見せない。

『わての弱点をことごとくついてくるとはなぁ…。ほーんま、質の悪いやっちゃで。その根性を讃えて…次の攻撃でいわしたる!"アクセルブースト"!!』

次の攻撃に備えて力を蓄えるかのような様子を見せるカブテリモン。それを見て次の攻撃がより強大なものと読んだハルトは。大技で一気に決めようとカブテリモンに道具を使用する。…それはスペシャルアップ。ポケモンの特攻を上げる戦闘用アイテムだった。
だがしかし、それでも下がった特攻を元に戻すことはできない。…オーバーヒートの反動で下がった特攻は戻せたとしても、カブテリモンが下げてきた分は戻せないのだ。

――万が一があったとしても、キョジオーンで仕留めることができる。

スコヴィランが倒れてしまったとしてもキョジオーンがいる。そんな自信がハルトを勇気づける。そして。

『さあ、さっき力を溜めた分…この攻撃は痛いでえ!"メガブラスター"!!』

カブテリモンが大技を放ってきた。…それに対してハルトはスコヴィランに命令を下す。

「スコヴィラン!これで仕留め切るんだ!"オーバーヒート"!!」

スコヴィランが赤い頭部の口から勢いのある炎を吐き出す。それはカブテリモンの放ったメガブラスターなる技とぶつかり…爆発を起こした。
爆発によって起こる煙。…その煙から現れたのは、スコヴィランの放った勢いのある炎。

『!?…さっき精神は下げたはずや!なんで…!』

信じられないとでも言いたげな様子のカブテリモン。…その甲虫にそのままオーバーヒートが直撃し。カブテリモンが地面へと倒れ伏すと同時にその頭部に乗っかっていた本が砕け散り。カブテリモンの体からテラスタルのかがやきが失われゆく。
カブテリモンの元へと近づきゆくハルト達。そのハルト達へとカブテリモンが頭部を向けた後。言葉を発する。

『堪忍なあ…トゲモンはん…ガルダモンはん…ホーリーエンジェモンはん…みんな…ほんま…』
「…。そのデジモンたちは、君の仲間なの?」
『…せやねん…。デジタルワールドがまだ平和だったころからの…仲の良いデジモン達なんや…。…わての事を…倒した証として…この知恵の紋章を…授けたる…。』

カブテリモンがそう言ってペンダントの様な物をハルトへと授ける。…そのペンダントには。紫色にダンベルの様な物をかたどった紋様が刻まれている。
ペンダントをハルトに授けた後、光の粒子とともに何処かへと消え去っていくカブテリモン。…その後、ハルトはボタンへとその紋章を手渡した。
セルクルタウンでカブテリモンを倒すことに成功したハルト達。…彼らは次に、何処へ向かうというのだろうか。