クロスオーバー製作所/鹿方剛助の小説/憎しみは災禍を生む/第十一話

Last-modified: 2023-04-12 (水) 19:45:34

平和を祭る町の甲虫

 セルクルタウン。オリーブを祭るその町にたどり着いたハルト達であったが、あまりに下劣な姿のデジモンやナメクジにも似た姿のデジモン、さらには植物に似た姿のデジモンに虫にも似た姿のデジモンなどそれはそれは様々なデジモンたちが好き放題に暴れており。元の綺麗な街はどこへ行ったのかと思えるくらいには凄惨な有様になっていた。
 その有様を見て引くのはボタン。…無理もない、虫はおろか下劣な見た目をしたデジモンたちまでもが店を荒らし、凄惨な見た目にしているのだから。…その今の惨状たるやどこぞのスラム街が未だきれいに思えるほどだろう。・・・パティスリー・ムクロジもその例にもれず、この災いが収まった後にまともに経営が続けられるかどうか危ういレベルにまで荒れ果ててしまっている。…いや、もうむしろ生ごみの溜めどころといった方が良いほどの有様だ。

「何だこれは…荒れ放題ちゃんじゃねーか…。食べ物関係なんてもう衛生局が入った段階で赤札ものちゃんだぜ…。」
「…それに虫がたくさんいて、ウチ、ちょっと近寄りがたいかもしれない…。」

 あまりの惨状に顔を白くさせるペパーとボタン。ハルトとネモもその町の有様に表情を曇らせている。そんな最中…下劣な見た目のデジモンが一匹、こちらへと近づいてきた。

『何だぁニンゲン。この集落に何か用かぁ?今この町はなぁ。カブテリモンの指示の下、俺達が好き放題に荒らしているんだ。見物量はアレをいただくぜ?』
「…。アレ?」
『何だ?人間のくせして…それもその見た目のくせしてアレの事も知らねえのか?そりゃアレだよ!〇〇〇(ホーホケキョ)だよ!』(作者注:汚い言葉が入ったために規制させていただきます)

 スカモンが飛んでもないモノを要求してきたために一同ぽかんとするハルト達。その内容にさしものネモも顔をヒク付かせる。

「…あ、あのさ、君。冗談で、言ってるんだよね?それ、何のことだかわかってるの?」
『ああ?わかってるから言っているんだろうが。俺達スカモンには必要なモンなの。だから有無を言わさずさっさとよこせよ。』

 表情のヒク付くネモ。その隣で頭を抱えるハルトがバッグを探り。いくつかの紫色のどろどろとした物体を取り出した。

『何だこりゃ?…ヘドロかこれ?』
「ベトベターの毒素…いわばベトベター達の排出物といっても過言でもないかもしれないね。…これ、あげるから。」
『…とりあえずよこせ。品定めしてやる。』

 ハルトの取り出したベトベターの毒素。それをひったくったスカモンはその毒素をしげしげと見つめる。
 意味不明な空間。そんな空気が少しの間漂ったのち…お眼鏡にかなったのかスカモンは頷いたのちにハルトの方を向いた。

『中々の物を隠し持ってたじゃねえか兄ちゃん。この集落の事を自由に歩き回ってもいいぜ。』
「あ、ありがとう。」

 下劣な姿のデジモン…スカモンから承諾を受けたハルトが、スカモンのそばをネモ達とともに通っていく。…そのどくその出どころが気になったのか。ネモはハルトに質問をした。

「…。ねえハルト、あの落とし物、何処で手に入れたの?」
「ハッコウシティ付近だよ。そこでベトベター狩りをしていたさなかに強い個体がいたみたいでね。鼻がひん曲がるくらいに臭ってたんだ。ネモだったらきっと耐えられないかも。」

 ベトベターのどくその思わぬ出所をハルトから聞いて引き気味のネモ。そんな彼女の様子をよそに…かつてセルクルタウンのジムテストを行っていたビルへとたどり着く。…そこには、青い体の甲虫のような姿をしたデジモンが立っていた。

『そこの人間!自分ら何しにきはったん?』
「此処パルデア地方を襲っている異変を解決しようと思ってね。…まずはこの町で好き放題しているデジモンたちにやめてもらうように言いに来たんだよ。…僕の勘からして、ここを牛耳っているデジモンは此処にいるんだろう?」

 青い体の甲虫のような姿をしたデジモンからの問いに、そう答えるハルト。そのハルトの言葉を聞いたのちに…デジモンは次にこう言葉を返した。

『この町にいるデジモンたちを大人しくさせろ?そういうんやったら、まずはその前座として…ウチらの出すクイズに正解してもらわなあかんなあ。ノルマは7問や。ここポケモンの世界では聞き覚えのないモンばっかやから…そう簡単に答えられる思うたら甘いでぇ?…ほな、いくで!』

 ジムテストの代わり、とでもいうのだろうか。甲虫のような姿のデジモンが次々と出すクイズにネモとハルトが答え行く。…ネモはネモでさすがは生徒会長を務めている、というだけあるだろうか。朝飯前ともいわんばかりにデジモンの出すクイズに次々と答え行く。
 10問出したところで玉切れになったのか、甲虫のような姿のデジモンは何処か驚いた風な様子を見せた。

『…な、なかなかにや、やるやないか…。10問中10問正解やとは…分かった、ウチらの総大将呼び出したるさかい、ここで待っとってや!…カブテリモンはん!出番やで!!!』

 ビルの屋上へと声をかけるデジモン。少ししたのち…ハルト達の身長の二倍はあろうかという大きさの悍ましい見た目をした甲虫型デジモンがハルト達の目の前に現れた。

『なんや、わての僕の出したクイズに全問正解しはったんか。そらあもうそうとうの知恵を持つやろなぁ…。』
「勉学に関しては私、ネモに任せて!…で、君は一体誰なの?」
『はぁ~…。わての事しらん言うんか?…やったら教えたるわ。かつての冒険で"知恵"をつかさどる言われたわての名はカブテリモン。』

 カブテリモン、そう名乗ったデジモンはネモの案内に従ってセルクルタウンのバトルコートへと向かう。…そこでカブテリモンはモンスターボールを持つや。

『自分らでわてらの溜まりに溜まった恨みの丈…晴らしたるさかい、覚悟しいや!』

 そう言ってハルトに戦いを挑んだのであった。