クリスチャン・ローゼンクロイツ〔救世主〕

Last-modified: 2023-11-26 (日) 23:07:23

キャラシート

【クラス】イミテーション・セイヴァー
【真名】クリスチャン・ローゼンクロイツ
【容姿】窮極にして絶対なる、完全なりし救世主
【英雄点】-点
【HP】150/150
【筋力】EX:10
【耐久】EX:10
【敏捷】EX:10
【魔力】EX:10
【幸運】EX:10
 
【スキル1】薔薇十字(ローゼン・クロイツ):EX
判定を行い終わるごとにセフィラカウンターを1つ得る。その判定が攻撃の場合、もう1つ得る。
このサーヴァントは全ての判定に対し、載っているセフィラカウンターの数だけ補正値を得る。
 
【スキル2】深層真理(リーベル・ムンドゥス):EX
全ての防御判定時に、面数1を得る。
また、攻撃種別(物理・魔術・奇襲)が直前に受けた攻撃と同じ場合補正値5を得られる。
自身に「全特攻属性に当てはまる」状態を付与【デメリット】
  
【スキル3】万象操作(アノス・パテボ):EX
自分がダメージを受けた場合に、ダメージを与えた相手を選択し発動できる。
現在載っているセフィラカウンターの数だけ、選択した相手の1番高いステータスを下げる(最低:1)。
この効果は1陣営のターンにつき1度しか使用できない。
  
【宝具1】『友愛団の名声(ファーマ・フラタニティス)』 1/1
【ランク・種別】ランク:EX 種別:対人
【効果】セフィラカウンターが5以上ある場合に、任意の判定開始時に発動できる。
これ以降、自身以外の全ての判定は補正値-3を受けるようになる。
 
【宝具2】『友愛団の信条告白(コンフェッショ・フラタニティス)』 1/1
【ランク・種別】ランク:EX 種別:対軍
【効果】セフィラカウンターが7以上ある場合に、自分のHPが0となった際発動できる。
自分のHPを5d6回復させ復活する。その後、全ての攻撃判定に補正値5を得れるようになる。
 
【宝具3】『科学の婚姻(Chymische Hochzeit)』 1/1
【ランク・種別】ランク:EX 種別:対界
【効果】セフィラカウンターが11乗った場合にのみ発動できる。
このセッションに勝利し、強制的にセッションを終了する。
 
【その他】混沌・悪 地属性
 
 

「なぜ俺が、お前たち蒙昧な人類なんぞ救わねばならん?」
 

プロフィール

【元ネタ】薔薇十字の伝承
【CLASS】イミテーション・セイヴァー
【マスター】ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエ?(暫定)
【真名】クリスチャン・ローゼンクロイツ
【性別】男性
【体高・体重】187cm・78kg
【外見・容姿】窮極にして絶対なる、完全なりし救世主
【地域】ヨーロッパ全土、中東
【年代】14世紀
【属性】混沌・悪
【天地人属性】地
【その他属性】全霊全能*1
 

筋力■■■■■EX耐久■■■■■EX
敏捷■■■■■EX魔力■■■■■EX
幸運■■■■■EX宝具■■■■■EX

クラススキル

カリスマ:A+
軍団を指揮する天性の才能。
カリスマは稀有な才能で、一国の王でさえBランクで十分と言われている。
ローゼンクロイツを中心にした薔薇十字運動は、17世紀ヨーロッパを席捲した。
キリスト教の盤石なる基盤が揺らいだ時代の象徴とも言えるこの大運動に由来し、彼は非常に高いカリスマ性を有する。
 
対英雄:EX
英雄を相手にした場合、そのパラメーターをダウンさせる。
彼はその知識による分析により、あらゆる英雄に対してパラメーターを全て2~4ランク下の物に変換する。
これは彼が「この世界の真理を手にした」とする数多くの信仰に由来するものであり、偽りの救世主であるが故に可能とする芸当である。
世界全てを知っている、そう信仰されるが故に、この世界に由来する英霊であればその全てを理解し、対策し、一方的に蹂躙することが可能。
ただし、世界の全てを記したと言われる『Mの書』が喪われればこのスキルは無効となる。
 
 

固有スキル

薔薇十字(ローゼン・クロイツ):EX
在り得ざる奇跡の体現者、存在しない救世主、虚なる伝道者であるがゆえに得たスキル。
ローゼンクロイツという魔術師は、現代においては「存在しない」とするのが定説である。
だがその名はヨーロッパ全土に広がり、17世紀初頭から薔薇十字運動として大勢の人々に対して影響を与え、今日の西洋魔術や魔術結社群に根深く関わっている。
西洋に拡がりしカバラ、あるいは中東より持ち込まれた神秘の数々、または彼の教えや教義や符号に由来した数々の秘密結社の主義・思想、それらに人が関わる度に。彼の実在は囁かれた。
例え実在しなくとも、彼が人理に落した影は波の英霊を凌駕する。それらの影響全てが彼の力となり、信仰の源泉となり、その霊基を補強されてゆく。
ある特異点においては、この影響で神霊すらも凌駕する『絶対なる救世主』としての強固な霊基にて君臨することに成功した。
 
深層真理(リーベル・ムンドゥス):EX
ローゼンクロイツがアラビア・ダムカルにて学び翻訳したとされる、世界の叡智が記されし『Mの書』に由来するスキル。
本来であればカバラなどに代表される西洋魔術に関するありとあらゆる情報を得れるスキルなのだが、ある特異点においてはその性質から性能を大きく向上。
中東由来のカバラは秘教の知識に加え、グノーシズム、ペイガニズム、プラトニズム、他、東洋・中南米・アフリカ各地域の神話体系由来の知識も獲得。
結果、文字通り「世界全ての魔術体系に由来する叡智」を獲得した、窮極とすら言える智慧の化身として権限を果たした。
これにより、彼はありとあらゆる神話体系や地域の英霊・神霊・幻霊に対し、瞬時に真名看破・解析を行い対策を即座に編み出せる。
本来であれば情報を得るだけのスキルでしかないが、後述の万象操作スキルでありとあらゆる対策を可能とする。
 
万象操作(アノス・パテボ):EX
「我が墓は120年後に発見されるであろう」と予言したことや、発見後その死体が一切腐っていなかったとされる逸話に由来するスキル。
予言ではなく、未来の確定。即ちあまたに拡がる可能性の中から、自分が最も望む結果を演算の上、それに繋がるように"因果を固定する"。
まさしく奇跡の体現者と呼ぶにふさわしき力であり、それはもはやスキルや宝具と呼べる領域ではなく、権能と呼ぶ他にない。
これは召喚された特異点が、全て"彼と言う英霊"を昇華させ、実現させ、降臨させることのみを目的に作られたが故である。
故、特異点におけるこのスキルによる現実改変能力は、薔薇十字スキルで霊基が向上し続けるほどに影響力を強め、最終的には世界全土に及ぶ。
本来であれば、多少強力な未来予知や簡単な事象可能性の引き寄せ程度に収まる。
 
 

宝具

【宝具1】『友愛団の名声(ファーマ・フラタニティス)
【ランク・種別】:対人宝具 レンジ:~ 最大補足:人
ローゼンクロイツの存在が衆目へと曝されたきっかけである、3つの怪文書に由来する第一宝具。
これは、彼という奇跡の救世主の存在が人々の間で形となり、そして救世を成すまでにその信仰と知名度を構築する段階を宝具としたものである。
彼を前にした英霊や魔術師は、その全てが彼に対して「大いなる存在」の影を見て、その全霊を発揮できなくなる。これは、彼が「世界を救済する魔術師」として望まれたためだ。
ローゼンクロイツは、近代魔術における概念『隠されし首領』の源流として知られる。これは、この世界とは異なる領域にある上位存在が、叡智を人間に授けるといった概念を指す。
本来は実在しない彼が、中東より叡智を授かり人々を救う。このカバーストーリーはまさしく、ローゼンクロイツと言う存在の本質を指し、また「隠されし首領」という概念そのものだ。
故に彼は、「隠されし首領」の筆頭として、世界中に存在する大いなる存在と同等のカリスマ性や威圧を発揮できる。存在しない英霊だからこそ実現できる、絶対的な"頂点"の具現。
具体的には、神話の存在ならばその主神を、英雄ならばその信仰した神や偉人の姿をそれぞれ彼に重ねてしまう。
 
【宝具2】『友愛団の信条告白(コンフェッショ・フラタニティス)
【ランク・種別】:対軍宝具 レンジ:~ 最大補足:人
ローゼンクロイツの存在が衆目へと曝されたきっかけである、3つの怪文書に由来する第二宝具。
これは、彼という存在が再び蘇り、全人類に薔薇十字団が救いをもたらすであろうという希望と渇望を宝具としたものである。
即ち、傷の治癒や再生などといった、人を救うための技能や奇跡の再現。それに加え、魂や精神の綻びのと言った形而上的な概念の治癒すらも可能にする。
そして薔薇十字スキルによる霊基の質が高まれば、「死してなおも復活する」という救世主が如き所業すらも再現が可能となる。
 
【宝具3】『科学の婚姻(Chymische Hochzeit)
【ランク・種別】:対界宝具 レンジ:~ 最大補足:人
ローゼンクロイツの存在が衆目へと曝されたきっかけである、3つの怪文書に由来する最終宝具。
これは、彼が人々や全世界から"病"を取り除いた先にあるもの。永遠に苦しみの無い新世界が満ちる段階を表す宝具となっている。
本来であれば一種の固有結界に近い宝具になるのだが、このローゼンクロイツにおいては、誇張なく『世界を滅ぼす宝具』となる。
即ちスキル「万象操作」を広げた果て。人類が観測可能なすべての領域すらも凌ぐ、文字通りの「全世界」を自在にできるようになった段階で起きる、新世界の流出の為の破壊。
だが彼は、決して人類の救済など行わない。猜疑と疑念すらも信仰として取り込んだ彼が流出させる世界など、苦痛も無ければ幸福もない。文字通り"何もない"世界でしかない。
ただ人類の絶滅と破壊だけを児戯の如き思想で行う。それはしたためられた物語に対しインクで塗り潰すような所業にも似ているだろう。
そこに理由はない。あるとすれば「気に入らないから」。世界を百度壊せる力を持ちながら、その人格はどうしようもなく小さい存在。
それは、この特異点によって作り出されて"しまった"ローゼンクロイツ。偽りの救世者(イミテーション・セイヴァー)である。
 
 

解説

17世紀初頭にヨーロッパ全土に普及した「薔薇十字運動」の中心、秘密結社『薔薇十字団』を作り出したと言われている伝説上の人物。
曰く、14世紀後半のドイツに生を受けたが、貧乏故に修道院へ入れられ、様々な学問を学んだとされる。その後、彼は友と共に叡智を求めエルサレムへ向かい賢者と出会ったと言うのだ。
その賢者よりアラビアの都市ダムカルを紹介され辿り着いた彼は、賢者たちから様々な秘儀を授かり、その奥義が記された『世界の書』を翻訳したと記録されている。
世界から『病』を取り除くという崇高な思いを胸に彼はヨーロッパへと戻るが、その若さから彼の知識は大勢の耳には届かなかった。しかし彼はそこで終わらなかったとされる。
彼は信頼のおける数名に自らの得た知識を共有し薔薇十字団を結成。名を100年間伏せ続ける事や秘密の符号で仲間を見分ける事、無償で人を助けつつ後継者を育てる事を団員らと約束。
そうして世界を秘密裏に救い、世界から病を取り除く秘密結社"薔薇十字"が生まれた。その後彼は死亡するが、彼は墓が発見される日付を正確に予言。その死体は一切劣化していなかったという。
──────以上が、17世紀初頭にばらまかれた怪文書群が記した彼の生涯である。いずれこの薔薇十字団の使者が訪れ大勢を勧誘する。共に世界を良くしよう、と言うのが薔薇十字運動の概要と言える。
現代ではそのローゼンクロイツという人物の実在自体が偽りという定説が一般的であり、最初にばらまかれた文章もヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエ?という著者がはっきりと分かっている。
だが、西欧社会への中東に由来する魔術体系に流入や、数多くの魔術結社への教義面での影響など、その存在が人理に落した影は無数にある。故、彼は確かに"存在した"英霊と言える。
──────なのだが──────……?
 
超言信仰融和 ウニオ・ミスティカ?において
1人の男がいた。男は、この世界に救済など訪れないと分かっていた。しかし、それでも、自分に出来る精一杯をやろうと足掻き続けた。
……だが、それでも世界から"病"は取り除かれなかった。世界では相変わらず、どこかで誰かが苦しみ、どこかで誰かが飢え、どこかで誰かが争い合う。
"自分が思い描いた理想など現れやしない"。"どうして世界は、よくならない"。"もはや人間の手で、この世界を救うなど不可能だ"と、猜疑ばかりが募っていった。
しかし、そんな男にただ1つの好機が訪れた。聖杯が彼の下に舞い降りる。彼は、その願いが間違いだと分かっていながらも、ただ一瞬の刹那によぎったその思考を、否定することができなかった。
 
「(──────これさえあれば、我が理想の救世主を現実に出来る)」
「(薔薇十字の、真なる実現が──────!)」
 
彼は願ってしまった。己がかつて願った過ちを。世界から病を取り除く賢者の実在を。
その為に聖杯は特異点を作り上げた。本来ならば何百年もかけて積み上げる『英霊実在の根拠と信仰』を、たった数週間の特異点で実現しようとしてしまったのだ。
男は焦っていた。救済を成せぬ自分に。男は憤っていた。どれだけそれが正しいと思っても、病を取り除けない人類の愚かさに。もはや、己自らが救世主を組み上げ救わねばならぬと、男は必死だった。
その焦りが、最悪の救世主を生み出した。産み落とされた英霊は、確かに窮極の救世主だった。世界中の遍く全ての叡智をその身に束ね、一挙手一投足だけで世界の法則すら捻じ曲げる力すら持っていた。
だが──────
 
「俺が言いたいことがわかるか? 不確かな過去を夢想して、それに縋り付いて生きている。これほど無様なことがあるかよ!
 自分では何もなせないからと、自分以外に縋る。 そしてその縋る英霊は、実存すら疑わしい。 ゲヒャヒャヒャ!! 無様だなぁ! ほとほと失望したよ。
 まるで、いつ沈むかもわからぬ木の葉に乗った羽虫! ああ、なら羽虫は羽虫らしく駆除しなくちゃなぁ! 絶滅だ! 絶滅だよぉ!!」
 
産み落とされた救世主は、その精神が救世主ではなかった。
むしろその真逆。あるとあらゆる寛容を拒絶し、救いを否定し、弱者を踏み躙る。生粋の邪悪がそこには立っていた。
理由は簡単だ。英霊としての結実を急ぎ過ぎたが為に、民衆の猜疑や恐怖、疑念すらも信仰として取り込み、実現してしまったのだ。
「そんなうまい話があるわけない」「無償の救世主などありえるのか?」「そんな力があるなら、俺なら好きにする」…遍く"普通の"声すら、彼を構成する一要素となった。
結果、ローゼンクロイツという英霊は、本来得るべき想定を超えて顕現した。──────ただ1つ、救世主としてあるまじき、小さき器と露悪的な精神を除いては。
そこに降臨したのは、奇跡の体現者ではある。救世主でもある。あらゆる叡智を束ねた賢者でもある。だが、その精神だけがねじ狂った「窮極のエゴイスト」。
名付けるのならば、イミテーション・セイヴァー。それこそが、この特異点で作られてしまった、最新にして最優、そして最悪の救世主の関するべき銘である。
 
 

性格

自分以外のすべてをごみのように嘲笑う邪悪。全てを否定し、全てを踏みにじり、そして全てを下に見る。
これは無理のある座への記録だったがゆえに、"そんな都合のいい英霊などいるわけがない"という猜疑や否定すらも取り込んでしまったことが主な理由である。
無償の善意などあるわけがない。崇高な理念だけで人を助けるものなどいるのか? ほとんどの人間はそのように考える。
世界すら変え得る力や知識を持つのならば、1人ずつ助けるよりも世界そのものを変えたほうが早いだろうと考える者もいた。
そんな疑念・疑惑、猜疑を取り込んで彼は英霊となった。ゆえに彼は、崇高なる理念や善意など欠片も持ち合わせちゃいない。
ただ己のためだけに知恵を振るい、己のためだけに持ちうる神秘を行使する。端的に言うのならば"エゴイスト"こそが彼の本質である。
 
通常であればそういった狭量な英霊も許容できるが、彼の場合はその持ち得る力の質量が厄介となる。
彼は特異点内で幾度となく召喚され続けた英霊たちの信仰を"薔薇十字の一部"として取り込み、そして吸収し続けた。
ユダヤ・キリスト教に由来する奇跡や神秘主義概念はもとより、キリスト教以前のペイガニズムから遥か後世に語られし"異星取り込みし神話"の具現。
さらに遠い異国の神話や宗教基盤から、神から遠く離れたカリスマ性の具現に至るまで、ありとあらゆる神秘体系を彼は取り込んでいる。
ゆえに彼は、文字通り世界を変貌できる領域の力を持つ。その霊基の質量は神霊すらも超え、世界を流出させた"神"に踏み込みかねないほどとはメルキゼデクの分析である。
そして、それ程の圧倒的なる力を自在に振るえるうえで、彼はその全てを自分のためだけに操る。
気に入らない人間がいれば執拗に狙い潰すし、少しでも気に障れば痕跡すら残さず世界から抹消する。
誰かのための施しなどしない。民草の救済を願うなんてありえない。無償で他者を助けるなど以ての外。それが彼である。
森羅万象、総ては己の為に在り。そんなエゴの極致ゆえ自分を作り出した人間の性すらも軽蔑し、それらを"病"と断定し抹殺を決意。
霊基のアップデートを繰り返した果てにこの世界を自在にできる領域まで至ったのち、世界全てを食らおうとした。
"まだ"英霊の段階に収まっている彼にはできないが、特異点において降臨した彼は、いずれその領域に届き得る。
ゆえに彼は抹殺しなくてはならない。存在するだけで世界を滅ぼす、偽りの救世主である。

だが果たして、その嘲笑はただ他者を見下していたが故なのか?

「うんざりなんだよ! 救ってくれだの病を消すだの! 実在しない俺に対してっ!」
「どいつもこいつも、憧れだとか信仰だとか理由をつけて英霊を崇め奉りやがる! んな事しても、本当の救いなんざ訪れねぇって言うのに!」
「それを何千年と続ける人類に嫌気が差すし!! 実在もしねぇのにそんな願いを集める自分自身にも虫唾が奔る!!」
 
彼が本当に嫌悪するのは人類ではなく、人類の"空想"という概念そのもの。
実際に見たわけでもない存在を、ただ伝聞だけで想像して英霊として崇める。その行為そのものを彼は忌み嫌っていたのだ。
理由は単純。自分がまさしく、そういった伝聞のみで生まれ座に刻まれたから。結果彼は、英霊という概念そのものを"不安定"と断定。
不安定な概念にすら救済を縋ろうとする人類に絶望し、そのエゴを以て世界を"消費"しようとしたのだ。
 
──────英霊とは、所詮は記録である。時代が下れば英霊への認識は変わるし、記録も編纂される。
善人だった王が暴君と改竄されることもあるだろう。悪辣なる扇動家が世界を変えた英傑とされることもあるだろう。
そして歴史が下るごとに忘却を繰り返し、好き勝手な付記で本質を眩ませ、果てにその存在を"データベースの一記録"として消費する。
もはやそこに英霊本人としての正しさなどなく、あるのはただ実在と遠く離れた一篇の記録でしかない。そこに英霊の矜持はあるのか?
そう彼は憤った。他でもない実在性のない英霊だからこそ、彼は『過去が今によって歪められる』事が許せなかった。
言ってしまえば、紡ぎ記録する種だからこそ持ち得る、人類の業。それに飲まれていくのが、彼は嫌でたまらなかった。
この特異点では"エゴイスト"としての性質が反映されたがゆえに、彼は否定のため世界を滅ぼそうとしたのだ。
"今"から歪められる"過去"はもう俺が最後だ。データベースとして消費される英霊はこれで終わる。
そう願ったがゆえに、彼は世界を──────"記録"を、終わらせようとしたのだ。


*1 すべての特攻状態に当てはまってしまうというデメリット