黄金聖杯戦争

Last-modified: 2024-03-12 (火) 17:47:42

あらすじ

 
────────2020年、カルデアに緊急のアラートが鳴り響いた。

魔神王ゲーティアによる人理焼却を撥ね退けた組織、フィニス・カルデア。
人類史を長く、何より強く存在させるため、魔術・科学の区別なく研究者が集まった研究所にして観測所であるそこには、多くの情報が集う。
疑似地球環境モデル・カルデアスと近未来観測レンズ・シバを用いた、過去と未来の異変を事前に察知し、人類の未来を保障することを目的としている。

 
そんな組織に緊急のアラートが鳴り響く。それは人類の未来が何らかの形で脅かされる事を意味している。
面々と紡がれる人類の歴史の中に生まれる漆黒の染み。本来有り得てはならない歴史────────名を、特異点。
即ち、アラヤの抑止力の影響すらも撥ね退ける隔絶された時空間において、人の歴史を根幹より揺るがす事変が発生しようとしている事を示すアラートである。
 
「今回君たちが向かう場所は、20世記が幕を開いたばかりのロンドンだ」
 
「うん。言いたい事は分かる。"そんな時期に人理定礎になるような出来事はイギリスにはない"だろう? 私もそう思った」
 
「……観測結果を見て言葉を失ったよ。良いかい? …今回の特異点では」
 
 
「"聖杯戦争が発生している"」
 

黄金聖杯戦争
-The Grail Order of the Golden Dawn-

ログ

こちら
 

参加者

サナリオン・エッジ?ランサー/不死身のカシチェイ?
鍔黒マキナアサシン/マッキーナ・インフェルナーレ?
アルヴィース・デュオ・ホーリーエイド?セイバー/日本武尊?
愁火アルターエゴ/アーサー・エドワード・ウェイト(?)
ゴルディオン・ゴールドアックス?ルーラー/聖マルガリタ
ポワロさんキャスター/ヘイスティングズ
 

NPC

マクレガー・メイザース?アーチャー/ビーシュマ
アレイスター・クロウリー?バーサーカー/両面宿儺
フローレンス・ファー?セイバー/アーサー・ペンドラゴン
ウィリアム・バトラー・イェイツキャスター/使徒ヨハネ
マダム=ホロス?ターミネーター/センナケリブ?
 
アルターエゴ/ウィリアム=ロバート・ウッドマン?
ヒューマンⅣ/ヘレナ・P・ブラヴァツキー
キャスター/ダイアン・フォーチュン?
 
ウィリアム・ウェン・ウェストコット?
 

顛末

特異点に辿り着いたカルデア一行は、聖杯戦争の中立地帯に何故かレイシフトしてしまう。
そこで彼らは、中立地帯を見張っていた自称・聖杯戦争参加者ダイアン・フォーチュン?と出会い、聖杯戦争の現状を聞く。
彼女曰く、この1900年のロンドンでは『黄金の夜明け』と呼ばれる史上最大級の魔術結社が抗争状態にあり、その抗争に乗じる形で聖杯戦争が行われたという。
彼女もその黄金の夜明けの一員であり、最高の魔術師であることを証明するために無断で聖杯戦争参加者の一員になったという。が、令呪などもなくサーヴァントもいない彼女は、聖杯戦争の参加者であるのは思い込みのようであった。
慌てふためく彼女を道案内用の仲間としつつ、聖杯戦争についてより詳しいと思われる人々……即ち、彼女がいた黄金の夜明けの本部たるイシス・ウラニア第一神殿へ向かう。
 
イシス・ウラニア第一神殿では、マクレガー・メイザース?アレイスター・クロウリー?の両者を"裏切者"とまで侮蔑する女優兼魔術師フローレンス・ファー?が取り仕切って先導していた。
令呪を持つ者が訪ねてきたと聞き、カルデア一行の話を聞くフローレンス、並びにその師ウィリアム・ウェン・ウェストコット?。カルデアと情報交換を行い、この聖杯戦争が第三者の思惑が渦巻いていると知る。
だが聖杯戦争の中断がカルデアの目的と知ると、フローレンスは激昂。聖杯戦争は裏切者たる両名への正当な裁きの手段であるとヒステリックを起こす彼女は、同じく第一神殿にてサーヴァントを従えるウィリアム・バトラー・イェイツを呼び出し、2柱の英霊を以てしてカルデアに襲い掛かる。
ブリテンにおいて最大級の知名度を誇るアーサー王と、聖人の中でも最大級の知名度を持つ使徒ヨハネを相手に苦戦するカルデアだが、何とか打倒することに成功する。
自身のサーヴァントが倒れたことで半狂乱状態になるフローレンスだったが、その隙をついてイェイツが彼女に暗示をかけ、落ち着かせることに成功した。
曰くこの聖杯戦争が危険だと感じていたのはウェストコットやイェイツも同じであったが、話を聞かないタイプであるフローレンスがサーヴァントを持ったまま暴走するのは危険であると、止めるに止められない現状であったらしい。
そのため、カルデアの誘いに彼らは快く応対した。知りたいのは聖杯が出現すると思われる場所。それは虫食い状態の暗号文になっており、何処にあるかは不明になっている。
ウェストコットは同じような文章がメイザースのもとにも来ていると推理し、一行は分離したもう1つの黄金の夜明けの本部、イシス・ウラニア第二仮設神殿へと向かう。
 
第二仮設神殿にて、使い魔を通して一部始終を覗いていたマクレガー・メイザース?は、快くカルデアを迎え入れた。
根源への到達というより、魔術の仕組みを推理して理論を構築することを好む彼は、カルデアの持つレイシフトと英霊召喚術式の仕組みと引き換えに自分の持つ暗号文を渡すと提案。
情報の断片からカルデアのもつ技術のほとんどを詳らかにする離れ業を披露するメイザース。カルデアの荒唐無稽ながらも緻密に練られた体系に満足して手紙を渡そうとするが、それはアレイスター・クロウリー?のバーサーカーに横取りされてしまう。
「これは戦争だろう」「口ではなく手を動かせ」と、典型的な戦闘を楽しむタイプであったそのバーサーカーは、カルデアの者たちを相手取り大暴れ。だが何とか手紙を取り返すことはできたものの、聖杯には累計4柱の英霊が捧げられたことになり、聖杯降臨が刻一刻と近づく状態となっていた……。
 
暗号文が指し示す場所は住宅街だった。だが突如として発生する魂食い。
そこではマダム=ホロス?とそのサーヴァントが、聖杯の情報を得たがために、その聖杯を呼び出すための殺戮を働いていたのだ。
「ただ誰かに忘れないでいて欲しい」と、そんな純粋にして歪なる願いの為だけに聖杯を求める彼女に、カルデアは戦いを挑む。
なんとか討伐に成功するも、ホロスはまるで何かに導かれるように路地裏へと導かれていく……。
 
ホロスが辿り着いた先にいたのは、この時間軸において死亡しているはずの男、黄金の夜明け設立者の1人ウィリアム=ロバート・ウッドマン?であった。
彼は言う。聖杯戦争を引き起こしたのは自分であると。だがカルデアに対して「気づいてくれてありがとう」と、意図不明な言葉を吐く。
何故このような事をと問うカルデアに対し、彼は根源への到達は魔術師にはもう不可能な領域に立っていると主張。それを打破するための新世界を、この聖杯戦争を通じて流出させるという。
だが、かつてのウッドマンの友であるメイザースとウェストコットはそのやり方に疑問を提示。その結果を望むなら、わざわざ聖杯戦争を行う必要は無い……と。ウッドマンは死んだはずだ、ウッドマンならこのようなやり方はしない。お前は誰だと問い詰める。
すると突如として、ウッドマンは苦しみ始めた。彼は独白する。自分は止めてほしかった。だがこうすることでしか抵抗できなかった、これから来る存在をどうか止めてくれ、と。
彼は生前のウッドマンではなく、この現代魔術社会に対する"厭悪"のアルターエゴとして、死体と自我と魂を弄ばれた憐れな傀儡とでも言うべき存在になっていたのだ。
聖杯に捧げられた英霊は5柱。加えて彼というアルターエゴが内包する2柱の英霊を捧げ、聖杯が顕現する。さらにその聖杯にアルターエゴの内側にため込まれた"厭悪"の感情が流し込まれた事で、聖杯は醜悪なる"悪性樹"として萌芽したのだ!!
 
メイザースは突如として出現した悪性樹を、邪悪の樹(クリフォト)の模倣、あるいはそれそのものと解釈。
この現実世界を含めた高位世界を表すセフィロト、その対であるクリフォトを悪性感情を養分として再現することで、真逆にして新しい世界を流出させようと企んでいるのではないか……と彼は推測した。*1
そして同時に、悪性樹の守り手として降臨する強力なサーヴァント。それは圧倒的な自我により"世界そのもの"とでも言うべき存在にまで完成した女傑、ヘレナ・P・ブラヴァツキーであった。
彼女単体で完結している精神性故に、倒す手段はない。そう思われたその時、ダイアン・フォーチュンが全てを思い出す。彼女はこの時の為に召喚された、7柱目のサーヴァントであったのだ。
精神魔術の中興の祖であるが故に、ヘレナの無敵の精神性を崩した彼女の尽力により、カルデアは攻撃を通すことが可能になる。黄金の夜明けの全面的協力もあり、なんとか特異点の全てを収束させることに成功するのであった。
 
名残惜しみながらも、黄金の夜明けに対して別れを告げるカルデア。
またいずれ、どこかで会う事を約束して消滅するダイアン。それぞれがそれぞれの出会いを胸に抱きながら、特異点は幕を閉じた。
 
 
 
 
 
だが、アレイスター・クロウリーは1人考察をしていた。
通常生命の樹とは活動、形成、創造、そして流出という4位相が重なる形で存在する。
ならばその生命の樹を象る形で権限を果たしたあの悪性樹は、本当にあの1本だけで終わるのか────と。
 
特異点の背後で笑う謎の影。
ウッドマンが口にした33の玉座による現実の侵食は、水面下で確実に進み続けているのであった。
 

背景

元々1900年前後の『黄金の夜明け』は、些細なすれ違いや双方の主張のぶつかり合いが原因で、2つに分裂している現状にある。
創設者にして現状のトップであるメイザース。その弟子アレイスターの昇格を嫉妬から妨害したフローレンス・ファー、その暴走を止めたいウェストコット。
様々に絡み合う天才性と、そこから来る思い込みや勘違い。それらにより黄金の夜明けには、非常に緊迫感のある状態であった。
 
更に時代は遡り、それから数年前、1人の魔術師が真実を目の当たりにしようとしていた。
男の名は、ウィリアム=ロバート・ウッドマン?。黄金の夜明けの設立者の内の1人である。
彼はフリーメイソンと呼ばれる魔術組織においてその魔術の腕を認められた、非常に優れた魔術師であった。
だが優れているが故に、このまま魔術の歴史をつづけたところで、根源に辿り着けるのかという漠然とした不安があった……。
 
ウッドマンは、その漆黒の不安につけいれられる形で、その自我を侵された。
彼が近づいてしまった真実。それはフリーメイソンと対外的には呼ばれている組織の最奥、世界を裏側より支配する暗黒の光明結社であった。
魔術、科学、倫理、ありとあらゆる世界の表舞台に出ない体系が集う、33の玉座。彼はそれを知ってしまったのだ。
彼はその技術の実験台とされ、魔術師たちが抱く『根源到達への憂い』即ち『現代魔術社会に対する悪性感情』を詰め込まれ、"厭悪"のアルターエゴとして死体を弄ばれるに至る。
そうしてその内側に悪性情報の種子を植え付けられ、彼らが望むとある計画の一端の為に悪性樹の萌芽を任せられたのだ。
 
だが、彼は運命に抗った。
自らの────正確には、自らの内側に宿った悪性感情の野望を止めることが出来る者を止めるために、ありとあらゆる人間に誘いを投げた。
抗争状態にあったかつての友たちを、友が作り上げた組織崩壊の一因となった詐欺師を、そして、人理の彼方に生まれるであろう人理保障機関を。
可能な限りの手を使って、自分の存在、これから行われるべき野望が止められるように手を打った。それでも事態は緩やかに進み、そしてとうとう計画の完成となってしまった。
誘いをかけたことで人が少なくない数死んだこともあったが、それでも彼は自分を止めることに必死だったのだ。
 
結果、彼が呼び出した存在は、カルデアと黄金の夜明けの協力によって討伐された。
彼が行った行為の全てが正しかったとは言えないだろう。彼の行動で黄金の夜明けの歴史は狂い、また少なくない数の人が死んだ。
だが彼が行動を行わなければ、カルデアが異変に気付くことがなく、悪性樹が萌芽しもっと大勢の人間が死んだかもしれない。
 
内側に幾億、幾兆の悪性感情を詰め込まれても、2柱の英霊を宿されても、それでも尚抗い続けた彼は、この特異点の陰の功労者なのかもしれない。


*1 通常セフィロトは上位に行くほどに、大きな力を得れるが周囲の影響を受けやすくなる。(逆に言えば、自身の影響を周囲に流出させやすくなる)そしてクリフォトはその逆であり、下位に征けば征くほど様々な制約を課せられる代わりに強固な自我を得る。本来真逆の方向に向かうクリフォトを、強固な自我(この場合は悪性感情)を持ったまま王国(現実世界、あるいは物質世界)に顕現させ、そのまま王冠へと至れば、新たなる世界を流出させることができるのではないか……というのがメイザースの推理の全容である。