戦闘機動

Last-modified: 2018-08-17 (金) 21:53:25

基本機動

何事も、基本が肝心。不必要な急旋回や横滑りを避け、最小限の舵で機動することで、エネルギーの損失を最小に抑えられる。
当然のことだが、運動性能は「機種」「装備」「速度・機体の姿勢・操法の組合せ」で異なる。
最大の旋回率で維持旋回できる速度は機種ごとに決まっており、高速でも低速でも旋回率は落ちる。しかし速度を落とすことで、旋回半径は小さく出来る。その他横転率や上昇力も機種と速度によって異なる。
必要に応じてエンジン出力の増減、ラダー(方向舵)の操作も行うこと。

ターン、旋回

機体を傾けて進行方向を変える。そのままでは高度が落ちるので、機首軸線が水平線に平行に動くようエレベータで調節する。上昇旋回や降下旋回でも同様。
同時に、滑り計の玉が中央に静止するようラダーで調節する。旋回方向に余分にラダーをかければ小さく回れるが、速度は下がり、強くかけすぎると錐揉みを起こす。

垂直旋回

60度以上のバンクをかけ、エレベータを強く引いて急旋回する。
小さい半径で回れるが、速度または高度が落ち、限界を超えると失速を起こすので、使用する機種の特性を把握しておく必要がある。また不必要にラダーを使うと錐揉みに入る。
適度に速度を落とす、フラップを使うなどの方法で更に小さく回る事も可能だが、やりすぎるとエネルギーを失って後が続かなくなる。

ロール、エルロンロール (roll, roll over, aileron roll)

水平飛行のまま、機体中心を軸として、機体を左または右に横転させること。ちなみにレシプロ機はトルクの関係でプロペラの回転と逆方向にロールする方が速い。
操縦桿を左または右に倒す。機種や速度によっては機首が外側に振られるので、ロール方向にラダーをかけて補正する。
なお、エルロン(補助翼)だけでロールさせると、傾斜角度(バンク角)が大きくなるにつれ機首がさがり、そのままだと機体が降下してしまう。
エルロンロールで高度・進行方向を維持するには、水平線よりわずかに上を向いた状態で開始し、ラダー(方向舵)を併用する。特に、バンク角が90度付近の時、ラダーをエレベータ(昇降舵)のように使って機首を上に向けることをトップラダー(top rudder)という。トップラダーは、上方側のラダーを踏み込むことによって行う。
また更にロールを続けて背面になった時は、操縦桿を押して機首を水平線より上に保つ。ただしマイナスGでエンジンの停止する機種では注意が必要。
説明は長いが、やってみると簡単である。

ループ (loop, loop the loop)

簡単にいうと宙返り。
水平飛行から操縦桿を手前に引き、上方へ宙返りをする。360度回転(ループ)すると進行方向は変らない。
実際の飛行ルートは、上方に短く下方に長い楕円軌跡を描く。これは上昇により速度が落ちると共に、ルートの上半分では重力の影響で、操縦桿をより強く引いたのと同じになるためである。そのため、速度がのっていないと上昇途中で失速する危険がある。特に重い機体では、かなりの速度があっても失速しやすい。これを防ぐには、飛行姿勢が垂直から背面に入るあたりで操縦桿の引き加減を緩め、心持ち大きく回る必要がある。加減を覚えるには横を見ながらループして、翼端が円を描くように練習する。また横トルクの大きい機種では、上昇中に勝手にロールしてループがねじれることがよくあるので、練習して癖を覚えること。
初級者は、いったん機首を下げて速度を増してから宙返りに入るとよい。

斜めループ

斜め宙返り。
左右どちらかに横転(ロール)した後、操縦桿を手前に引いて上方へ宙返りする。
バンク角を維持しながらの美麗な斜め宙返りをするためには、操縦桿を一筆書きの「H」型に動かしラダーも使うことになる。
説明は短いが、これが完璧にできれは上級者といえる。

スライスターン (slice turn)

斜め宙返りのひとつ。水平飛行から左右どちらかに135度横転(ロール)し、斜め宙返りの底で水平飛行に移る。
斜め下方へ宙返りするので速度は得られるが、十分な高度がないと地面に激突する危険がある。
操作要領は斜めループの応用。

シャンデル

斜め宙返りのひとつ。宙返りの頂点で水平飛行に戻る。
インメルマンターンより低速でも行え、速度低下が小さい。また進路の変更も容易である。

スプリットS

水平飛行から180度ロールして背面になり、操縦桿を引いて下方へ180度ループ、そのまま水平飛行に戻る。
進行方向が真逆となる。敵を振り払う時、または下方をすれ違った敵機を追跡する時に用いられる。
下降途中にロールすればターン後の進路を自由に変更することもできる。
速度は得られるが、十分な高度がないと地面に激突する危険がある。
回避機動として使う場合、自機の急降下限界速度が敵より高い場合に有効である。攻撃に使う場合には、速度がつきすぎて照準できないような事態に陥らないよう気をつける。

インメルマンターン

水平飛行から操縦桿を引いて上方へ180度ループ、ループの頂点で180度ロールして、そのまま水平飛行に戻る。水平飛行に移ると同時にロールが完了するのが最も効率がよい。
進行方向が真逆となる。上方を自機の進行方向と反対方向へ通り過ぎた敵機を追跡する際に用いられる。
上昇途中にロールすればターン後の進路を自由に変更することもできる。
ただしターン後は高度が上がる代わり速度が落ちる。速度がのってないと上昇途中で失速する危険がある。

ウイング・オーバー(wing over)

斜め宙返りの応用技。
斜め上昇で速度を殺し機体自重をも利用して急旋回、旋回降下で速度を取り戻し攻撃に移る。

急上昇からバンクをかけて上昇旋回に入り、速度が落ちてきたらバンクをきつくしながら下向きのラダーを次第に強くして、90度旋回したあたりでバンク角90度で機首が真横を向くようにする。そのままラダーをかけ続けて機首を地面に向け降下し、バンク角を戻しながら引き起こして180度方向転換する。
重力と遠心力を利用し、ハンマーヘッドを前後左右に引き伸ばしたような軌道、あるいは自転車が急斜面に乗り上げてから降りてくるような軌道になる。エレベータは上げ→中立→上げ、エルロンは左→右、ラダーは中立→左→中立と操作する(左旋回の場合)。
インメルマンターンが出来ない程度の低速なら、エネルギーを節約しながら小さく旋回できる。またハンマーヘッドほど速度を落とさずにすむ。

バレルロール(barrel roll)

操縦桿を斜め手前に引く
横転(ロール)と機首上げ(ピッチアップ)を同時に行い、その名の通り樽(バレル)の内壁をなぞるように螺旋を描きながら飛行すること。機首が外を向いて横滑りをおこしやすいので、ラダーを内側(ロールと同方向)にかけて調節する。
機動開始と終了時で進行方向が同じになる。照準が前方の空に円を描くようにすると成功する。
直進するよりも飛行経路が長くなるため、速度の遅い大型機の攻撃時に用いたり、自機の速度が相対的に低下することを利用して背後の敵を前に飛び出させる逆転技として使う。
機首上げを強くして大きく回ると、軌道の中心軸に対し機首が外を向くため、目標を見失いやすい。なるべく外を向かないような軌道をとるべきである。また背面時に高度を大きく失い、元の高度より低くなることが多いので、ロール中に操縦桿の引き加減を変えて調節する。
背面になったところで機首上げを止めて180度ロールすると、軌跡が半螺旋を描いたところで水平飛行に戻ることもできる。
挙動を理解すれば、単純な操作で飛行経路をかなり自由に変更できる、応用範囲の広い機動である。

ハンマーヘッドターン

失速反転。垂直に引き起こして速度を十分に下げ、ラダーを使い翼端を軸に180度ターンする。ラダーを強くかけ続けると機体がロールを始めるので、エルロンでロールを打ち消しながら行う。

回避機動

早期発見に勝る回避機動はない常に奇襲の可能性を頭に入れ、無警戒な飛行は避ける。
攻撃は最大の防御。敵を後に引きずって逃げるだけでは、味方の援護があるか、よほど速度性能や急降下能力に差がない限りジリ貧になる。不利な態勢でも、機動で敵のエネルギーを消耗させ、反撃または離脱のチャンスをうかがうようにする方がよい。

ターン、旋回、垂直旋回

旋回も立派な回避機動。
敵機が迫るまでは緩やかな旋回をし、敵機がある程度近づいて射撃体勢に入った時に操縦桿を一気に引き、ラダーなどの操縦も絡めることによって敵の射撃を回避することができる。
その後にバレルロールなどを絡めたりすれば逆転も狙える。
タイミングを掴めば容易に行える回避機動なので初心者にもやりやすい機動。

ブレイク

急旋回。自機の旋回性能が優れている場合の回避機動。敵の照準と反対方向に、ラダーをかけて機首を振りながらロールし、垂直旋回に入る。
また、それによる編隊の解除。

ダイブ

急降下。自機の旋回性能が劣っている場合の回避機動。
高速での運動性能と限界速度の高い機種で特に有効。降下しながらロールし、敵と背中合わせになったところで引き起こすことが出来れば、高い確率で離脱に成功する。

スローロール

緩横転。やや機首上げの状態から機体をゆっくり横転させ、その間バンクした状態では上向きラダー、背面状態ではスティックを押し込んで、機首を上に向け続けるようにする。
進行方向と機首軸線のずれが変化し続けるため、正確な照準をやりにくくする効果がある。ただしオーバーシュートさせるような機動ではないので、逆転は困難。

スナップロール

急横転。強くラダーをかけながら操縦桿を素早く引くと、ラダーをかけた方の翼が失速して錐揉みに入る。すぐに操縦桿を戻し、逆ラダーをかけることで回転を止める。
通常のロールよりかなり速い横転が可能だが、任意の位置で止めるにはラダー操作のタイミングが難しく、またエネルギーの喪失も大きい。操作を誤るとただのスピンになってしまう。
現実には半横転からダイブにつなげたり、回避機動として使用されたらしいが、失速機動なのでゲームでの再現には限界がある。

横滑り急旋回

(背後の敵機を目視でとらえながら、)バンク角60度くらいを維持して旋回を続ける。
敵が機銃を撃ち始めるのと同時に旋回方向のラダーを強く踏み、次いで操縦桿も旋回方向へ倒すと、機体が横滑りしたあと急旋回する。
こちらが弾切れで回避するしか手がないときには、攻撃をかわしたら最初の旋回に戻り、攻撃を受けるたびに同じ動作を繰り返し、敵の弾切れを待つ。
~「大空のサムライ」坂井三郎、硫黄島上空で15対1の空戦を生き延びたとき~

ジンキング

ランダムに上昇なり下降なり蛇行なりして、とにかく相手の照準から逃げ続ける動作。超低空で行えば、追う側は墜落を恐れて照準が付けにくくなり、特に有効となる。
被弾して機体操作が思うようにいかない場合などでの事実上の最終手段であり、この動作から反撃に移行できるチャンスは無いと言っていい。
敵機に食いつかれ、反撃もままならないときにこれで回避しつつ、味方のほうにひたすら逃げて味方の救援を待つときなどに有効。つまりは時間稼ぎ。

シザース

彼我二機が追撃離脱中、ともに急旋回による蛇行を行った結果、双方の飛行軌跡がハサミのように交錯している状態を指す。
背後を取られそうになったとき、そのまま遠方へ逃げるのではなく敵機との交叉進路をとり、相手の射線を外しながらまとわりついて反撃の好機をうかがう。
なお、旋回方向の切り返しはかならず敵の射線から離れた状態で行うこと。敵前での単純な切り返しは、自分から敵の照準に入ることになり、自殺行為である。
ロール性能の良好な機体、或いは、低速になりがちなので、低速での運動性・安定性に優れた機体だと、勝算も上がりやすい。

スパイラルダイブ

機首下げ状態で垂直旋回に入り、そのままピッチとバンクを調整して、螺旋状に降下する。
速度があまり落ちないため急旋回を続けることができる。状況によっては、ヨーヨー機動などと組み合わせてオーバーシュートさせることも出切る。ブラックアウトを起こしやすいので注意。

バレルロール

操縦桿を斜め手前に引く。斜めの角度加減と手前の引き加減の組み合わせで、緩急がつく。
背後の敵からの攻撃をかわし、照準を外させ、あわよくばオーバーシュートさせて反撃に転じるもの。

オーバーシュート (over shoot)

後方の敵機に自機を追い越させること。(他に、着陸時のオーバーラン、という意味もある。)
自機の旋回性能が敵機より上のとき、急旋回を繰り返すことでオーバーシュートを誘い、形勢を逆転できる。
味方の救援が期待できるときには、フラップやエアブレーキを使った急減速でのオーバーシュートも有効。

ウイング・オーバー

背後からの攻撃を、急上昇しながら90度前後のロールを加えて回避、そのまま機速が落ちたところでラダーを使い180度ターンする。
うまくいくと、敵機を見失うことなく攻撃に移れ、一連射で撃墜することもできる。

横滑り

フットペダルを左右どちらかに思い切り踏んで操縦桿を逆方向に倒して水平に保つと機体は機首を前方に向け気味のままフットペダルを踏んだ方向に移動するので機動を誤魔化すことができる。日本海軍では攻撃された際の回避術として必ず横滑りを行っていて爆撃機相手の戦闘では旋回銃座からの攻撃を避けるためにも使っていた。また坂井三郎などのベテランパイロットは、射撃時以外の交戦中には常にわずかに横滑りをかけながら飛行し、奇襲された時の被弾確率を下げていた。

敵機に追撃されるときにこれを行うと、敵は横滑りに気付かなければ射撃を外しやすくなる。気付いても、照準修正のために射撃タイミングを遅らせることが出来る。これによって敵機をギリギリまで引き付けてから急旋回などの急激な機動につなげると、離脱または反撃に繋げるチャンスも生まれる。

攻撃機動

先手必勝、「不意打ち」こそ常勝の秘訣
射程に捕らえるまでの時間を考え、敵の動きと未来位置を予想して、攻撃しやすい位置に占位する。機体性能でアドバンテージがない時は、この位置取りで主導権とエネルギーの優位を得る事が特に重要になる。
交戦に入れば、防御側の回避機動との勝負である。敵を見失わず、自機の長所や優位を生かした機動で、エネルギーの消耗を抑えながら射撃を命中させられる態勢にもっていくこと。
長時間の激しい機動で高度や速度を捨ててしまうと、たとえ敵を撃墜しても別の敵に圧倒されてしまう。そうなる前に離脱して仕切りなおす判断も必要である。
ただし、攻撃中の機体は、後ろへの注意が散漫になりやすく、極めて危険な状態である事も忘れてはならない。
下記警句も参照

ハイヨーヨー (High G Yo-Yo)

斜め宙返りの攻撃応用。目標敵機の速度が自機より遅いときに、斜め上方旋回で速度を抑えながら敵機の背後に付き、オーバーシュートを防ぐ。速度を高度に変換することで、(上から見て)小さい半径で旋回し、降下によって速度を取り戻すことが出来る。

ローヨーヨー (Low G Yo-Yo)

目標敵機の速度が速いときの追撃法。機首を下げて降下加速しながら目標の後下方に旋回して、上昇し敵機を捉える。加速には限度があるため、一度の降下加速で腹の下にもぐりこめないほど引き離されている場合には、あまり役に立たない。またハイヨーヨーと違い、水平旋回より大回りになることもある。

バレルロールアタック

上級技。
飛行軌跡を円錐螺旋に行い、常に円錐頂点に敵機があるように機動して攻撃する。尾翼部に銃座がある重爆撃機などに対し、回避行動をしながら攻撃もできる。
これとは別にハイヨーヨーの応用技として、敵機が旋回する方向と逆向きにバレルロールを行い、その頂点から底に向かう過程で引き起こして敵機の後方につける(敵機が左に向かうなら右にロールし、右バンク→背面→左バンクとなった所で引き起こす)。通常のハイヨーヨーでは曲がり切れないような場合に、素早く後ろにつける可能性がある。

後方追尾、ラグ・パーシュート

旋回戦でわざと旋回をゆるめ、敵の旋回より外側を回るようにする。自機から見ると、敵を正面でなく前上方において旋回することになる。
これにより後下方の死角に入ることができ、また旋回中心をずらして高速で回り込むことで、自機より旋回半径の小さい敵の後ろにつくことが可能になる(速度で勝っている必要がある)。

戦術

一般則として、航空機の全エネルギーは位置エネルギー(高度)と運動エネルギー(速度)の和であり、高度は速度に、速度は高度に変換できる(機体強度やエンジンによる上限あり)。全エネルギーはエンジン出力によって少しずつ供給され、空気抵抗によって消費される。空気抵抗は速度が高くなると大きくなり、また引き起こし、横滑り、フラップ、各種外部装備などによって増大する。つまり、空戦機動は大量のエネルギーを消費する
従って、高度でエネルギーを蓄え、降下加速して攻撃を加え、短時間で終わらせて上昇するのが最も効率的である。これに機種ごとの、得意な高度・速度の違いが加わる。
自分が相手よりも優位にある(エネルギーや位置取り、機体性能など)場合、その優位を生かして攻撃する。注意すべきはオーバーシュートして反撃されないこと、攻撃に手間取ってエネルギーを消耗しないことなどである。
逆に自分が攻撃された場合は、エネルギーの無駄な消費を避けつつ確実に攻撃をかわす事が重要になる。相手が離脱すればその間に上昇してエネルギーを稼ぎ、追従してくれば格闘戦に入って、相手のエネルギーを消費させつつ逆転を狙う。あまりに不利なら、ダイブなどで離脱に徹するのも一つの手である。

 

敵味方が複数になると、これに相互支援の要素が加わる。孤立した機体は絶好の目標になる。敵味方の位置は常に把握し、味方から離れての深追いは避けること。

占位と接敵

まずは接近するまでに、敵に対し有利な位置を占める。次いで敵の動きを予測し、適切な射撃位置につけるような軌道で接近する。

  • 占位の基本は高度をとること。ただし、上昇により急な機動が出来なくなるほど速度が落ちると、かえって不利になることもある。また機体性能によっても変わりうる。
  • 敵に直進しても早く射撃位置につけるとは限らない。接触までの時間と目標の未来位置、自機の旋回半径などを考える。
    仮に目標が自機と同じ速度で直進しているなら、二等辺三角形の二辺に沿って互いに飛行するようなコースをとれば交差できる(BOBにおける地上管制官の誘導方法)。
  • 同様に、直上方攻撃など敵と交差する射撃軌道をとろうとする場合、遠距離では目標の十分前方に向かって進み、目標のすぐ後ろを通過するようにする。目標の現在位置に向かっても、後方追尾にしかならない。
  • No Cockpit Viewでないかぎり、前下方は計器盤が邪魔で見えない。後上方から角度をつけた降下攻撃をかけたい場合、背面降下、ロールしながら降下、垂直バンクからラダーでひねりこみなど、目標を死角にいれずに接近する方法をとる。
  • 銃座を備えた敵機に対しては、まっすぐ後方追尾するのは禁物である。複座機など後下方が死角となる機体ならそこから射撃すればよいが、それ以外はすれ違いながら偏差射撃を行うか(前上方、直上方、側方)、旋回や横滑りなどで敵機からの角度を変えながら射撃する必要がある。

後上方攻撃

敵の後ろ、やや上に占位し、降下加速して攻撃する方法。理屈の上では、性能が同じなら相手がどのような機動を行っても追従できる、理想的な攻撃位置である。
優位を最大限に生かすには、敵機を視界におさめたまま射撃位置につけるよう工夫する必要がある。
その位置は、ちょうど敵の二番機の左後上方五百メートルくらいのところである。と見る間にグンと機首を下げ、ふたたび右へひねりこんで、確実に二十ミリで敵機をつかんだ。
~「大空のサムライ」坂井三郎、笹井中尉の三機連続撃墜について~
ただし敵が後方銃座を備えている場合には注意が必要となる。射界の狭い機銃が1~2丁程度ならかわしつつ接近・射撃することもできるが、多数の旋回銃座を装備した相手には避けたほうがよい。

後下方攻撃

敵よりも高速で後下方の死角にもぐりこみ、上昇して下から攻撃する方法。
敵を前上方に見て接近するため、角度があっても照準しやすい。また回避機動にも対処しやすい。ただし後下方に銃座を持つ敵に対しては、ほぼ真下までもぐって急角度で突き上げるようにしないと反撃されやすい。
ローヨーヨー機動などで十分な速度を確保した場合か、上昇力の高い機体で行うのに向いている。

直上方攻撃/逆落とし

奇襲攻撃、あるいは大型機への攻撃で、敵の死角となる真上から一撃離脱をかける攻撃機動。十分な高度差をとって目標の真上よりも追い越したあたりに占位し、スプリットSの要領で背中合わせの交差軌道にはいる。射程距離内で交差するためには、目標の十分前方に向かって降下しなければならない。互いの速度にもよるが、目安としては正面を向いた状態で、画面の上端近くに目標がくる程度である。
直線軌道ですれ違いざまに掃射する場合、命中弾は少なくなることがある。多数の弾を当て続けたい場合は、目標の進行方向に向かってマイナスGをかけながら射撃する。

前上方攻撃

強力な後方銃座をそなえた敵機を攻撃するため、正面前方から一撃離脱をかける攻撃機動。目標の十分前方で対面し、やや上方から目標前方に降下、正しい見越し角で射撃して後方に抜ける。その後ただちに急旋回し、後方銃座からの射撃を回避する。
前方から攻撃するので、後方からでは狙いにくいエンジンやコクピットなどの重要部位を狙うことが出来る。
相対速度が極めて速くなるため、射撃の機会はほんの一瞬しかなく、慣れを要する技である。
直上方攻撃に比べれば目標の移動が少なく照準は容易だが、しばしば相対速度が毎秒200mを超えるので、十分距離をとって占位する必要がある。

サッチウィーブ

またの名も「ビーム・ディフェンス・ポジション」
第2次世界大戦時にゼロ戦を徹底的に研究し、開発された空中戦闘機動である
この戦術のおかげでF4F ワイルドキャットと零戦とのキルレシオが改善されたほど

 

機織りのように互いにクロスするようにS字の旋回を繰り返すことで、

敵機に後方を取られても編隊僚機がその敵機の後ろに付くことができる。

それまでの戦術では長機を僚機が援護する形を採っていたが、

サッチウィーブでは状況次第でどちらが支援に回っても構わず、より効率的な攻撃ができた

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付録:「錐揉み状態からの離脱」要領

「錐揉み状態への入り方」

  1. 実用高度で水平飛行に入る
  2. 水平飛行から、機首を30度ほど上げて操縦桿を保持し、エンジン出力も変えない
  3. 大気速度が失速限度に近づくと機体が振動し始める
    → 速度を画面表示して何度か試し、その機種の失速限度を把握するとよい。
  4. 失速直前で、操縦桿を一気に引き、錐揉み回転したい側のラダーを強く踏み込む
  5. その側の主翼を中心とした錐揉み回転が始まり、機体は回転しながら鉛直落下し始める
    → 左右を試し、水平儀がどのように動くかを確認すべし。

機体は、錐揉み当初は、主翼の一方を中心に回転しながらの鉛直落下(=Spin)するが、徐々に機体重心を中心に水平回転しながらの落下(=AutoRotation)に移行する。
→ 錐揉み状態の姿勢移行を、外観カメラで観察してみよう。

「錐揉み状態からの離脱方法」

錐揉み初期の鉛直落下中なら、離脱が可能。失速で主翼は利かないが、水平回転落下状態に移行する前なら、尾翼がまだ制御できる。
ただし、機種に依存するので「離脱可能の猶予時間」は一律ではない。

  1. 錐揉み初期の鉛直落下中に
  2. 回転方向とは逆側のラダーを強く踏み込み、同時に、操縦桿を一気に前へ倒す
  3. 錐揉みが止み、水平の急降下状態に回復したら、速度を伸せる
  4. 徐々に機体を引き起こし水平飛行に戻す

引き起こすときにGが懸かり、一瞬ブラックアウトが体験できる。

(補足:P-39のような極端に回復しにくい機種の場合、フラップや着陸脚を下げる事で回復の可能性が上がることがある。)

付録:実際のエースたちの戦術

ベルケの空戦八箇条(WWI、ドイツ)

1. 攻撃の前に優位を確保せよ。可能なら太陽を背にすること。
2. 一度始めた攻撃は最後まで行え。
3. 射撃は至近距離から、正確に照準できる目標に対してのみ行え。
4. 敵から目を離さず、トリックにひっかからないようにせよ。
5. 後方から攻撃することが最も重要である。
6. 降下攻撃をかけられたら、回避しようとせず敵に向かい合うように飛行せよ。
7. 敵地を飛行する際は、離脱ルートを覚えておく。
8. 編隊攻撃の原則を忘れるな。乱戦では、1機の敵を複数で攻撃してはならない。

マランの空戦十則(イギリス)

1. 敵の白目が見えるまで接近し、1~2秒の射撃を送れ。
2. 射撃の間、他の事を考えてはならない。
3. 常に周囲を警戒せよ。特に後方に注意。
4. 相手より高位を保て。
5. いつでも攻撃をしかけられる体勢にしておく。
6. 決断は敏速に。
7. 戦場で30秒以上水平直進飛行してはならない。
8. 降下攻撃では味方の一部を上空に残せ。
9. 主導権、攻撃、規律、チームワーク。
10. 素早く突っ込み、一撃を食らわせて離脱せよ。

その他の警句または名言

坂井三郎(日本)

  • 見張りは前が2、後ろが8。初心者は、撃つ前に後ろを見よ。上級者は、撃つ前に後ろを見ないですむよう周囲の状況を把握しておけ。
  • 初陣の時こそ、慎重に

エーリッヒ・ハルトマン(ドイツ)

  • 僚機を失った者は戦術的に負けている  個人技ではなくチームプレイの重要さを語っている。
  • 頭を使う事だ。空戦は頭脳で決まる。90%の撃墜可能性がない限り、冒険はするべきでない。それを忘れた時、君は落とされる

マンフレート・フォン・リヒトホーフェン(WWI、ドイツ)

  • 空中戦に興奮は禁物である。
  • 天空を駈け、敵機を見つけ、ただ撃墜しろ。あとはくだらないことだ
  • 悔しさが男をつくる、惨めさが男をつくる、悲しさが男をつくる。そして強大な敵こそが、真におまえを偉大な男にしてくれる

IL-2 1946 日本語マニュアル

  • 敵の弱点を知れ!
  • スピードがすべて!
  • 近すぎるかなと思った時はさらに近づくべし!
  • 一撃必殺!(数発で落とせ!)
  • 警戒を怠るな!
  • 練習あるのみ!
  • 正面からの撃ちあいは、コインを放り投げてどちらが撃墜されるか決めるようなものだ!

加藤建夫(日本)

  • どんな困難にあっても平常心を保つこと
  • 団結を乱さずに組織戦を重視すること
  • 任務遂行を第一とすること

岩本徹三(日本)

  • 敵は目で見るものではない、感じるものだ

チャック・イェーガー(アメリカ)

  • この機銃は1分間に何発撃てるとか、弾丸の破壊力がどうだとか そういうことはあまり問題ではありませんし、
    気にしたことがありません。下手糞なヤツは何発撃っても当てることができませんから

ギブソン・レイヴン(アメリカ)

  • 空は広いが戦闘空域は狭い

ラウンデル

  • 1回で地形を覚えろ!軸線に乗せるための目標物は自分で探せ!

源田実

  • たびたび生死の境を切り抜けてきたベテランの隊長は、平素の訓練では若いパイロットの操縦技術には及ばないが、ピンチに際して、その何倍かの腕前を発揮する。それは慌てないからである

戦闘機は映画を作り、爆撃機は歴史を作る