2024年9月4日に野球情報誌『週刊ベースボール』が発売した広島東洋カープの特集号(9月16日号)「それ行けカープ 勝利の雄叫びを上げろ!」につけられていた副題のこと。
転じて、広島東洋カープが2024年9月に味わった壮絶な悪夢を指す言葉。
毎年多くの球団が被害を受ける「週べの呪い」の中でも特に強力、かつ長期間に渡って呪いが持続したケースとされている。
9月1日までのチームの経過
この年のセ・リーグは序盤から大混戦となっており、5月以降は巨人・阪神・広島の3球団、6月下旬以降はDeNAも加わって4球団による熾烈な首位争いが繰り広げられていた。その後7月下旬に9連敗を喫したDeNAが脱落、8月に入ると阪神も調子を落としたため、広島と巨人との一騎打ちになると見込まれていた。
9月1日時点では、広島は62勝48敗5分(勝率.564)で首位。打撃力こそあまり芳しくなかったものの、それをカバーする鉄壁の投手陣が揃っていたこともあり、守りの試合を続けてコンスタントに勝ちを積み重ね、マジックの点灯も目前に迫る位置までつけていた。
このまま巨人の猛追を振り切って6年ぶりの優勝を、と願っていた広島ファンも多かったのだが…
「広島燃ゆ」発売後
9月4日に『週刊ベースボール』から本誌が発売される*1。
しかし、発売直後にDeNA・巨人から3タテを食らうなど、ここまで持ち堪えていた投手陣の疲労が噴出。先発・救援ともに完全に崩壊した*2だけでなく、元々得点力に乏しかった野手陣も完全に冷温停止した*3ことで状況は急速に暗転してしまい、この9月だけで
という壊滅的な月間成績を叩き出し、巨人どころか阪神とDeNAにまで抜かれて4位まで転落。9月23日にリーグ優勝の可能性が完全消滅、9月25日にはそれまで全勝していたマツダスタジアムでのヤクルト戦に敗れたことで、1日時点で14あった貯金がすべて消滅。翌26日には借金生活に突入し、28日には巨人の優勝を目の前で見届ける*7ことになってしまった。
そしてそのまま復調することなく、月が変わった10月2日のヤクルト戦(神宮)に敗れたことで4位とシーズン負け越しが確定*8。9月開始時点で首位だった球団がBクラス、ならびにシーズン負け越しで終了というプロ野球史上初*9の屈辱を味わった。
最終的に優勝した巨人とは10ゲーム差がつき、9月開始地点で16.5ゲーム差もあった最下位とのゲーム差も6.5にまで縮まった。
阪神でも過去に同様のフラグ*10があったことも影響して、V逸どころかCS逸を喫した広島ファンの怒りの矛先はこの雑誌にも波及。表紙に書かれていた「広島燃ゆ」という文言が
- 「燃ゆ(投手陣の炎上)」
- 「広島版Vやねん!」
- 「Vじゃけぇ!」
とネタにされ、この大失速を指すワードとして定着した。
貯金数・順位推移グラフ
9月開始時点での優勝・CS進出確率
確率統計に基づき各球団の優勝・CS進出確率を計算するこちらのサイトによると、9月開始時点で広島のCS進出確率は99%とされていた。
一方、最終的に日本一を達成したDeNAはこの時点でCS進出確率23%であった。
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余談
- 広島の応援歌には「広島を燃やせ」「熱く燃えろ広島」という歌詞があるマルチテーマ(旧新井貴浩応援歌)を筆頭に、チームカラーと合わせた「燃える」関連のフレーズがある曲が多く、おそらく「広島燃ゆ」もここから採られたものと思われる。
- 監督としてこの失速を喫した新井であるが、阪神時代に選手として「Vやねん!」を経験しており、二度も悲劇を味わうことになってしまった。
- 広島が転落したことで9月以降14勝12敗1分と安定した成績を残したDeNAが3位に滑り込み、そこから衝撃の大下剋上を成し遂げてしまったため、一部ファンからバタフライエフェクトならぬ「バタツライエフェクト」と称されている。
- またDeNAが日本一になったことで広島は現存12球団で21世紀に日本一になっていない最後の球団となってしまった*11*12。
- サッカーでもサンフレッチェ広島が夏場に調子を上げJ1優勝候補と目されていたが、追い上げるヴィッセル神戸に最終節で捲られ優勝を逃し、こちらも野球、サッカーともに広島燃ゆとネタにされた。バスケットボール・Bリーグの広島ドラゴンフライズも、23-24シーズン*13に初優勝を果たしたにもかかわらず広島燃ゆ発売後の10月に始まった24-25シーズンは開幕5連敗と躓きB1西地区8球団中6位(12月11日時点)と低迷している。