2024年日本シリーズにおける、横浜DeNAベイスターズと福岡ソフトバンクホークスの合計スコアのこと。
前評判
2024年の福岡ソフトバンクホークスは新監督・小久保裕紀率いる圧倒的な戦力の下、91勝49敗3分(貯金42)、2位の日本ハムに13.5G差をつける歴史的独走でパ・リーグを制覇*1。
CSファイナルでも日本ハムを危なげなく3連勝で撃破し、最速で日本シリーズ進出を決めていた。
一方セ・リーグは広島が終盤に歴史的大失速でBクラスに転落、代わって3位に滑り込んだ横浜DeNAベイスターズがCSで快進撃を見せる。
1stステージで阪神をストレートで下すと、CSファイナルでは最終第6戦までもつれ込んだ死闘の末にセ覇者の巨人を破り、7年ぶりの日本シリーズ出場を下剋上で決めた。
こうして2017年以来の「ソフトバンク対DeNA」のマッチアップとなった日本シリーズだが、
- ソフトバンクは攻守のほとんどの成績・指標において12球団ナンバーワンの圧倒的な戦力*2
- DeNAは打撃指標こそセリーグトップクラスだが、リーグワースト2位の防御率と12球団ワーストの失策数
- DeNAのシーズン勝率も7年前より悪く、貯金はわずか2*4*5。しかもこの年の交流戦のDeNAは11勝7敗であり、セ・リーグ内だけだと60勝62敗3分けと借金2だった。
- CSファイナルをストレートで3勝したソフトバンクに対して、DeNAは既にCS1st・ファイナル合わせて8試合を戦っており、選手の疲労蓄積が懸念された。
- DeNAは日本シリーズ開幕時点でエース・主力リリーフ・正捕手・3番手捕手が負傷離脱中*6
- 対戦する両チームの貯金差(40)・勝率差(.143)ともに日本シリーズ史上最大
- セ・リーグ*7及びベイスターズが弱いというなんG等での一般的な認識
- 同年の交流戦でもソフトバンクが2勝1敗で勝ち越していた*8
とDeNAがソフトバンクに勝てそうな要素がまるで見当たらず、評論家・なんG民含め下馬評ではソフトバンクが圧倒的優勢とされていた。
また海外ブックメーカーにおいてもソフトバンク優勝のオッズが1.4倍前後、DeNA優勝のオッズが2.7倍前後と圧倒的なソフトバンク優勢と思われていた。
このため、当事者であるDeNAファンですら本気でソフトバンクに勝てると思っていた人は極々少数であり、「なんとか1勝できれば」「7年前と同じ2勝も難しいのでは」と諦めムードが漂う始末。
野球ファンの間では「ソフトバンクが勝つのはもはや決定事項。過去に日本シリーズで惨敗した他球団にどこまで迫るのか」といった論調が主流となっていた。
試合結果
各試合の詳細についてはNPB公式サイトも参照。
第1戦
2024年10月26日(土) 横浜 1回戦(DeNA0勝1敗0分) |
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試合時間3:46(開始18 : 33 終了22:19) 入場者33,147 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | ||
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ソフトバンク | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 | 9 | 1 | |
DeNA | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 | 9 | 1 |
ソフトバンク先発の有原航平は危なげない投球で7回無失点、打撃でも2回表のチャンスで2点タイムリーを放つジエンゴで躍動。
DeNAも中盤以降は継投で凌いでいたが、9回表に6番手・堀岡隼人が捕まり痛恨の3失点。
前評判通りの惨敗ムードで早くも「33-4の再来か」という声も出始めたが、9回裏に守護神・オスナがまさかの乱調。
4安打を浴びせる猛攻にエラーが絡んで2点差まで迫り、なおも二死一・三塁のチャンスで牧まで打席が回るが、周東に好捕されあと一歩及ばなかった。
第2戦
2024年10月27日(日) 横浜 2回戦(DeNA0勝2敗0分) |
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試合時間3:20(開始18:03 終了21:23) 入場者32,953 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 2 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 9 | 0 | |
DeNA | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 9 | 1 |
ソフトバンク打線が序盤からDeNA先発・大貫晋一を攻略し、山川の2ランなどで3回までに5得点。
中盤以降は先発・モイネロがDeNA打線の追撃を受けるも、その後は鉄壁の勝ちパターンが反撃の目を封じ、最後は前日乱調のオスナが完璧に抑えゲームセット。敵地での連勝を決めた。
DeNAは下位打線の連打などで3点を返すなど意地は見せたが、第1戦での自打球を受けたオースティンが欠場。中軸が打てなかったことが大きく響く形となった。
こうして序盤のハマスタ2連戦は前評判通りにソフトバンクが試合の主導権を握りあっさり連勝。
既に大勢が決したかのようなムードが漂う中、第3戦でソフトバンクの本拠地・みずほPayPayドーム福岡へ向かうことになるのだが…
第3戦
2024年10月29日(火) みずほPayPay 3回戦(ソフトバンク2勝1敗0分) |
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試合時間3:37(開始18:34 終了22:11) 入場者36,736 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | ||
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DeNA | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 | 6 | 0 | |
ソフトバンク | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 10 | 0 |
CS1stでの怪我から復帰したDeNAのエース・東が事前の相手予想を上回り、10安打を浴びながらも7回1失点の粘投。
5回表には桑原のHRと筒香のフェンス上部ギリギリの犠飛で勝ち越し、終盤には戸柱がダメ押しのタイムリーを放ちDeNAが勝利。ソフトバンクの日本シリーズ連勝記録*10を止めた。
この試合の6回裏に指笛事件が発生し、それまでソフトバンク圧勝と思われていた流れに陰りが見え始める。
第4戦
2024年10月30日(水) みずほPayPay 4回戦(ソフトバンク2勝2敗0分) |
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試合時間3:19(開始18:33 終了21:52) 入場者36,623 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
DeNA | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 5 | 11 | 0 | |
ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 |
DeNA先発のケイは3回までパーフェクトの圧巻の立ち上がりで7回無失点の快投。
打線もここまでポストシーズンで不調気味だったオースティン・宮﨑に一発が飛び出し、DeNAが2勝2敗のタイに戻すことに成功。
ソフトバンク打線は柳田がマルチ安打で気を吐くも散発5安打に抑え込まれ、このシリーズ初の完封負けを喫してしまった。
第5戦
2024年10月31日(木) みずほPayPay 5回戦(ソフトバンク2勝3敗0分) |
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試合時間3:38(開始18:01 終了21:39) 入場者36,636 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | ||
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DeNA | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 7 | 13 | 0 | |
ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 |
バッテリー | De | ○ジャクソン(1勝1敗)、伊勢、中川颯-戸柱 |
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ソ | ●大関(0勝1敗)、松本晴、前田純、杉山、尾形、津森、木村光-海野、嶺井 | |
本塁打 | De | 牧1号(3) |
DeNAは第1戦で敗戦を喫したジャクソンが先発。前回97球を投げた後の中4日の登板にも関わらず、7回3安打無失点・108球の熱投でリベンジに成功。
3回裏の3番・栗原との対戦では、一打同点の場面で6球全てチェンジアップ勝負で空振り三振に仕留めるなど、捕手・戸柱の攻めのリードも光った。
打線も筒香のタイムリー・牧の3ラン・梶原のタイムリーなどで効率よく加点していき、3連勝で日本一に王手を掛ける。
一方のソフトバンク打線はジャクソンの前に8三振を喫し沈黙。2試合連続の完封負けで後が無くなってしまった。
なお、ソフトバンクが本拠地同一カード3連戦で3タテを食らったのはレギュラーシーズン含め今季初。日本シリーズで2試合連続で完封負けを喫するのは71年振りであった。
第6戦
2024年11月3日(日) 横浜 6回戦(DeNA4勝2敗0分) |
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試合時間3:11(開始18:03 終了21:14) 入場者33,136 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 6 | 1 | |
DeNA | 0 | 3 | 1 | 0 | 7 | 0 | 0 | 0 | X | 11 | 13 | 0 |
移動日と雨天順延*11を挟み横浜スタジアムに戻った第6戦でもDeNA打線の勢いは止まらず、筒香嘉智に先制HRが飛び出すなど、初戦で抑え込まれた有原を3回4失点でKO。
更に5回には筒香の走者一掃タイムリーなど、98年の日シリ第5戦を彷彿とさせる打者11人の猛攻で一挙7点を奪い勝負あり。試合を決定付けるビッグイニングとなった。
DeNA先発の大貫は4回2失点。その後はリリーフ陣が無失点リレーで繋ぎ、最後は守護神・森原がラストバッターの柳田を空振り三振に打ち取り、この瞬間DeNA26年ぶり3回目の日本一が決定した。
一方、ソフトバンクは21世紀以降に出場した日本シリーズで初の二桁失点を喫するなど投手陣が崩壊*12。
先発の有原のみならず、中4日でリリーフ登板したスチュワート・ジュニア、その火消しで登板したドラ2ルーキーの岩井も軒並み炎上するなど継投が尽く失敗してしまった。
第3戦以降冷温停止した打線も最後まで復活せず、4回に柳田のHRで2点を返すのがやっとだった。
総スコア
元々なりふり構わない補強でヘイトを集めていたソフトバンクが格下と目されていたDeNAに完敗する予想外の展開、総スコアがどことなく例の日本シリーズを彷彿とさせること*13、そしてシリーズ中のソフトバンク側の観客の暴挙やコーチの失言などが合わさって、なんGでは盛大に煽られることとなってしまった。
主な記録
福岡ソフトバンクホークス | ||
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記録名 | 記録数 | 備考 |
シリーズ連続イニング 無得点 | 29 | 第3戦2回~第6戦3回。1958年巨人(26イニング)の記録を66年ぶりに更新。 |
シリーズ最少得点(6試合) | 14 | 2012年日本ハム以来3度目。 |
シリーズ最少本塁打(6試合) | 2 | 1952年南海とタイ。 |
横浜DeNAベイスターズ | ||
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記録名 | 記録数 | 備考 |
レギュラーシーズン 3位からの日本一 | セ・リーグ史上初。パを含めると2010年ロッテ以来史上2回目。 | |
日本一球団のシーズン最低勝率 | .507 | 1975年阪急(.520)の記録を大幅に更新。 |
日本一球団のシーズン最低貯金 | 2 | 同じく1975年阪急(5)から更新。 ソフトバンク(42)との貯金差40をひっくり返しての日本一はNPB史上最大記録。 |
日本シリーズ最高勝率 | .636 | 4回出場、22試合(14勝8敗)での記録。シリーズ優勝率も.750で複数回出場している球団では1位*14。 |
シリーズ連続2桁安打 | 3 | 第4~6戦で達成。 |
シリーズ最多二塁打(6試合) | 16 | 1998年横浜とタイ。 |
個人のシリーズ連続打点 | 5 | 桑原将志が第2~6戦で打点を挙げ達成。史上初。 |
個人のシリーズ総打点(6試合) | 9 | 同じく桑原が達成。 6試合で終了した日本シリーズとしては1966年・長嶋や1985年・バースらに並ぶタイ記録。 |
個人のシリーズ 連続奪三振 | 5 | ジャクソンが第1戦で達成。球団史上初、歴代3人目のタイ記録。 |
個人のシリーズ初回先頭からの 連続奪三振 | 4 | ケイが第4戦で達成。史上初。すべて空振り三振。 |
1イニングの得点数 | 7 | 第6戦5回。2017年第1戦のソフトバンク以来7年ぶり10度目。 |
余談
- 33-14を漢数字で表すと「三三一四」である。
- ホークスの29イニング無得点については29=33-4である。
- 敗れたホークスは日本シリーズ8連覇中*15だったが、「福岡ソフトバンクホークス」としては初めて日本一を逃した*16。
- ホークスは過去の南海・ダイエー時代を含め21回目の日本シリーズ出場にして10回目の敗退となったが、過去の9回の敗退は全て読売ジャイアンツが相手のものであり、ベイスターズはジャイアンツ以外のセ・リーグ球団としては初めてホークスに勝利することになった。
- さらにこのホークスの敗退によって、自身の日本シリーズ4連覇等で70年ぶりに勝ち越したパリーグの日本シリーズ対戦成績は6年ぶりに再び負け越しとなってしまった。*17
- 一方ベイスターズは過去2回のリーグ優勝*18でどちらも日本一になっているため、日本一の回数がリーグ優勝回数を上回るというNPB初の珍記録となった。
- DeNAは2軍でもソフトバンクを破ってファーム日本一になっており、1軍と2軍が同じ対戦カードかつダブル日本一となるのは2005年のロッテ(対阪神)以来19年ぶりとなった。
- DeNA監督の三浦大輔は、選手・監督の両方で横浜の日本一を経験した初めての人物となった。
- 2024年シーズン途中にアメリカから古巣のDeNAに復帰した筒香嘉智だが、彼がホームランを打った試合では必ずDeNAが勝利しており、第6戦でも先制ホームランを打ってそのままDeNAが勝利したため不敗神話が継続する形となった。
- 2021年はヤクルトが20年ぶり、2022年はオリックスが26年ぶり、2023年は阪神が38年ぶりに日本一になったのにDeNA(26年ぶり)が続いたため、20年以上のブランクがある球団が4年連続で日本一になった。またDeNAの日本一によって、現存12球団では広島が唯一21世紀に入ってからの日本一経験を持たないチームとなった*19。
- 貯金40以上のチームが日本シリーズで敗れたのは2002年の西武以来22年ぶりとなった*20。