艦これ二次創作短編小説 『夢の終わり 始まりの日』後編

Last-modified: 2015-06-13 (土) 10:01:28

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『夢の終わり 始まりの日』後編

再び隼鷹と再会したあの日以来、幾つも時が流れ

小さかった娘も嫁に行き孫も出来、親子2人でも大きく思えたこの家が更に大きく思えるようになって

昔の隼鷹との楽しかった日々に思いを馳せ、ふと年は取りたくない物だと頭降ることが多くなり自分の死期を段々と悟り

住み慣れた我が家を離れ、軍を退役以来あれほど嫌っていた海に近い所に小さいながらも一軒家を建て静かに余生を過ごしていた

そんなある日の午後


???「おじいちゃん!!」

提督「お~隼人か、よー来たのお大きくなりおって元気してたか?」

隼人「ぼく元気だよ!」

提督「そーかそーか、男の子はそうじゃなくちゃのお」

隼人「おじいちゃんあのね、あのね・・・」

孫の話に耳を傾けながら視線を門の先に向けると娘と娘の夫が居た

娘「お父さん」

夫「お義父さんお久しぶりです」

提督「まあ・・・ここで立ち話もなんじゃ・・・こっちに上がって」


二人を居間に促しながらお茶の準備をする


娘「お父さん少し痩せたんじゃない?ちゃんと食べてる?」

提督「そうか?年取ったからそう見えるだけだろ」

口ではそう言ってみたものの寄る年波には勝てず足腰にガタが来ていて、もう昔のような遠出をするような元気もなかった

提督「ところで仕事の方はどうじゃ。やっていけそうか?」

夫「やりがいがある仕事だと思いますよ、お義父さんの様にとは行きませんが」

提督「世辞はいらん」

娘「もう、お父さんったら!!」

提督「ふんっ・・・」

夫「確かにお義父さんと同じ軍人の道を歩んでいる私ですが、人類を滅亡の淵から救った英雄として、そして妻の父として心から尊敬しています」

提督「口だけじゃナンボでもいえるのお」

娘「もう2人とも止めて!!喧嘩しに来てるわけじゃないのよ」

提督「なにもわしは・・・」

夫「世界の海にはまだ深海棲艦の残党が沢山おり、苦しむ人たちが居ます!!その人たちの笑顔を取り戻したいのです!!」


彼女の最後に言った言葉・・・「笑顔を取り戻す為」・・・。そこに通じる物を青年から感じ取った


提督「ふむ・・・・おぬしの決意は判った」

娘「お父さんこうは言ってるけど、本当は彼方のこと認めてるわよねお父さん」

提督「ま・・・まあな」


照れくささからか言葉を濁した


隼人「も~大人ばっかりで喋ってずるいよ!!、おじいちゃん遊ぼう!!」

提督「お~そうじゃのお、それじゃ何して遊ぶんじゃ?」

娘「孫馬鹿ね。」

夫「ですね。」

提督「コホンッ」

娘&夫「・・・・・」

隼人「う~んと・・・うん~と・・・・艦娘ウォッチ!!」

娘「もう、誰に似たのかしらね。」

夫「お父さん弱すぎるって言われまして・・・・」

娘「お父さんは辛いわねえ。」


-艦娘ウォッチ-
株式会BNNが出した時計型端末を使った通信ゲームでカードに封印された艦娘達を集め、それを呼び出してゲーム上の深海棲艦と戦ったり

プレーヤー同士の通信対戦も出来る。

アニメや映画化もされ子供を中心にヒットした作品である。


隼人「負けたあ~!、おじいちゃん強すぎるよおおお。お父さんなら勝てるのに」

提督「はっはっは、まだまだ隼人には負けんぞい」

隼人「おじいちゃん軽空母1隻なのになんで負けるんだろ・・・・ブツブツ」

提督「年期が違うからのお」

隼人「ねえねえおじいちゃんの使ってる空母って隼鷹だよね?」

提督「そうじゃが?」

隼人「あそこの額縁に飾ってある人だよね?」

提督「ああそうじゃ、隼人のお母さんや沢山の人を助けた人じゃ」

隼人「へええすごいや!!そんな人が僕のお婆ちゃんだったなんて」

提督「・・・・・」

隼人「どうしたの?おじいちゃん?」

提督「なんでもない・・・」


ふと思い立ったように口を開く


提督「そうじゃ、隼人。海へ行かないか?」

隼人「うん行く!!」

提督「ちょっと海に行って来る」

隼人「海に遊びに行って来るねえ!」

娘「夕飯までには戻るのよ?」

隼人「うん、わかった!」


孫を連れ立って海への道を歩く

あの時以来二度と来る事はないと思っていた

自分の死期を悟ると最も思い出深い場所へ戻ろうとすると言うことなんだろうか

隼人「ねえねえおじいちゃん、あっちの礒で遊んできて良い?」

提督「ああ、あまり遠くへ行くんじゃ無いぞ」

隼人「おじいちゃんも行こうよ?」

提督「おじいちゃん少し疲れたから休ませてくれ・・・・」

隼人「大丈夫?おじいちゃん」

提督「大丈夫じゃ、少し休めば元気になる」

隼人「うんわかった!行って来るね」

提督「ああ・・・」

離れていく孫を眺めながら静かに目を閉じる

今までに合った様々な出来事が走馬灯のように流れていく

提督「もう疲れたのお・・・ゆっくり休んでええか?」

誰に語りかけるでもなくそう呟く

???「よお!提督さんよ」

提督「だれじゃ?」

???「あたいの声を忘れちまったのかい?さびしいねえ」

提督「ま・・・まさか?隼鷹!?」

隼鷹「そうさ、お迎えに来たぜ」

提督「はははは、迎えに来た死神が隼鷹とは・・・・何の冗談だ」

隼鷹「笑うとは酷いなあ・・・」

提督「すまんすまん」

隼鷹「でもまあ、こうしてまた提督と会えるわけだし」

提督「俺はもうダメなのか?」

隼鷹「そうだねえだからこうしてあたいが来たわけだし」

提督「そうか・・・・まあもう未練は無い」

隼鷹「それじゃ行こうか」

提督「こらこら、年寄りを急かすんじゃない」

隼鷹「自分の姿見てみなよ提督」

提督「え?」

自分の姿を見回すと若返っていた

隼鷹「それじゃ行くよ提督。案外あの世ってのも悪く無いぜ」

提督「ああ。行こう・・・・・」

そして意識は途切れて行った

隼人「あれ?おじいちゃんまだ寝てる。ねえねえおじいちゃんもう帰る時間だよ!」

娘「隼人、おじいちゃん帰る時間よ!」

隼人「おじいちゃんが大変!!」

娘「まあ!?」

後日、新聞の片隅に小さく英雄の死去が報じられたが時と共に忘れ去られて行った

だが彼のしてきた功績は後年における海戦ドクトリンとして語り継がれ、その末裔は脈々と受け継がれるのであった。

Fin

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