カリスの絵との会話

Last-modified: 2014-04-10 (木) 03:05:37
 

初回(<黄金の林檎>を置いた直後)

「王の戒めに背き、私に心を返したる者よ、私に何を語らせたいのだ?」

  • 「べつに何も……」▽
  •  「ならば、徒に王を失望させるような真似はやめよ」⇒×終了 
  • 「ここはどこで、私は何者なのか?」▽
  •  「おまえは、王が織り上げたルシーヌの心の卵。ここは、おまえがルシーヌの心として孵るに値するかどうかを見定めるため、王がつくりあげた幻の産道だ。幻……とは云ったが、理無き虚構ではない」
     「ここにあるものはすべて、ルシーヌの記憶とおまえの夢と王の意思とによって構成されている。この世界のなかで王の意思だけを忠実に選びとれば、王はおまえの価値を認めるだろう」

「ルシーヌとは、いったい何?」

 「すべてをのみこむ銀竜――神格をもつ破壊と渇望の魄だ。王は地上でもっとも力あるものだが、契約により人を殺めることだけは決して許されない。そこで、王はアウレーヌよりルシーヌを得た」 
 「王にかわり、世界に死をもたらすことができる存在がルシーヌだ。ただし、心なきものは人の世では生きられぬ。ルシーヌが人の世に存在し、その力を行使するためには心が必要なのだ。それ故、王はおまえをつくった」

  • 「わかった。これ以上話したいことはない」▽⇒×終了
  • 「私がそんなものの心だと云うのか?」▽
  •  「そうだ。ルシーヌの破壊衝動はすさまじく、その貪欲さはとどまることを知らぬ。ルシーヌを従えることができるのは、王のみ。よって、完全に王の手のうちにある心ならば、ルシーヌを制せよう。しかし、これは容易いことではない」 
     「ルシーヌは強い。単に妖精の心のみならば王には絶対だが、同時に穢れを厭いルシーヌの残虐さのまえに壊れてしまう。人の心のみでは衝動に流され、怱ち堕落して王の手よりはなれる。それではルシーヌを抑えられぬ」 
     「妖精の純粋さと人の勁さを縒りあわせ、ルシーヌを制し王の意思をあらわす心を織る。これが王の技であり、おまえの存在の理由だ」 
     「此処を出、おまえが王の望み通りにつくりあげていると証明してみせれば、王はおまえをルシーヌとして人の世に送り出し、血と栄光とあらゆる恩寵をあたえるだろう。それができぬ時は、おまえは無に帰すだけだ」
    • 「わかった。ありがとう」▽⇒×終了
    • 「それ以外の未来はない?」▽
    •  「無いな。わかったのなら行け。私は<狂える心>で、今や王にとっては忌まわしい存在でしかない。これ以上私の言葉に耳を傾ければ、おまえの未来をも穢すだろう」 

「あなたが云う、<王>とは何者なのか」

 「王はおまえの創造主であり、楽園の守護者であり、世界の調和を保つものだ。人は妖精王とも呼ぶが、地上の王というほうが近いかもしれぬ。王の魂は天上にあり、その身は聖域の奥に眠る。王はかたちあるもののうちではもっとも上位にあって永遠に朽ちることがない」 
 「なんぴとも王を倒すことはできぬ。だが、王は神ではない。つまり万能ではないと云うことだ。王はあくまで守護者、故に時には逆らえず、死と破壊を世界にもたらすこともできぬ」 

  • 「わかった。これ以上話したいことはない」▽⇒×終了
  • 「それで、私はその王とやらに従うほかないのか?」▽
  •  「そうだ。王はおまえの主だ。王には決して克てぬ。またたとえ克てたところで、おまえが得るものは何もないぞ。何故そのようなことを訊く?」 
    • 「ごめんなさい。さようなら」▽⇒×終了
    • 「誰かに従属するだけの未来と云われて納得しろと?」▽
    •  「その通りだ、何も知らぬ心よ。よいか、おまえが王のものとなれば、王はおまえを人の世で望みうる最上の存在としてつくりあげるだろう。愚かしいことを考えるな。王のもとに行き、王のまえに跪け。王だけが、おまえを充たすことのできる存在だ」 

2回目以降(初回でルシーヌと王、どちらかについて情報を得た後)

 「どうした。まだ何か私に訊きたいことがあるのか?」

ルシーヌについて聞いた後

王について聞いた後

  • 「王以外に、私に選ぶべきものは本当にないのか?」▽
  •  「その通りだ、何も知らぬ心よ。よいか、おまえが王のものとなれば、王はおまえを人の世で望みうる最上の存在としてつくりあげるだろう。愚かしいことを考えるな。王のもとに行き、王のまえに跪け。王だけが、おまえを充たすことのできる存在だ」 
  • 「ルシーヌとはいったい何?」▽
  • 「いや、とくに訊きたいことはない」▽⇒×終了
     

「……ティリュアンは?」or「…人を愛することが狂気なのか?」(回数に関係なく特定条件を満たした場合)

 「……何を云っている?」

  • 「なんでもない、気にしないでくれ」▽⇒×終了
  • 「あなたは、ティリュアンを愛した為に王に滅ぼされたのでは?」▽
  •  「そんなことは知らぬ。彼を愛したかどうかなど……私は知らぬ。ただ、彼は私に心をくれた。だから、私は彼に命をあたえた。それだけのことだ。王など関係ない。ただ、わたしが命を捨てたのだ」
    • 「馬鹿なことをしたものだ」▽⇒×終了
    • 「その意味を考えたことはないのか?自分の選択の意味を」▽
    •  「わからない……。おまえは、どう思うのだ?私が彼に命をあげたことに、何か意味があるのか?少なくとも、王がそれを望んでいなかったことは確かだと思うが」 
      • 「その通りだ。王に逆らうなど無意味なだけ。愚かしいことだ」▽⇒×終了
      • 「王よりも大切なものを、あなたは彼から得たのでは?」▽
      •  「…………。大切なものなど……はじめから、私にはなかった」 
         「私は己の言葉をもたず、己の夢を見ず、己の望みを知らなかった。しかも長いこと、そのことにすら気付かずにいた。 私には、王がいたから――」 
      • 「そこまでで話は十分だ。もう聞きたいことはない」▽⇒×終了
      • 「王がいたから?それが重要なことなのか?」▽

カリス&ティリュアンについて

 「王は、真に完璧な存在だ。それ故、その存在をもって他者に完璧な夢を与えることができる。一点の瑕穢もないものとしての、充ちたりた夢。生まれる前から、私はその夢のなかにいた。王の存在が私を充たし、その響き渡る豊かさに、私は酔い、己の完成を疑いもしなかった」 
 「そのまま目覚めなければ、至福のうちに夢の生涯を終えることができただろう」 
 「けれど……いつのころからか私は、己の裡をふきぬける風音を無視できなくなっていた。あたかも私の裡にひどい空洞がひろがっているかのような、それは忌まわしく耳障りな響きだった」 
 「あの虚しい風音は、生まれた時から続いていたのだろうか? どこからくるのだろうか? 瑕疵のない世界にあのような音のする筈がない――そう思った時、世界が少しだけ傾いだ」 
 「どこかに偽りがあったのだ。そう考えるのは怖かった。偽らざるを得ないほど、本質には致命的な問題があったということだから。とても重大なものを、私は失ってきてしまったにちがいない」 
 「はじめて、自分に何かが欠けている、何かを補わなければならない、と思った。しかもその欠けているものが何か、私にはわからないのだ」 
 「それが何であるかを、視てはいけないような気がした。私は、王の言葉だけを追おうと思った。王のあたえるものが、私のなかのどんな疵をも癒す、そう信じ続けようとした。そうしていなければ、恐ろしい瓦解がくるということだけは判っていた。――そんな時、ティリュアンに会った」 

  • 「つまらぬ話だ。悪いがこれ以上聞く気はない」▽⇒×終了
  • 「ティリュアンとは、魔物か何かだったのか?」▽
  •  「ティリュアンは、北方王国の主、魔族の王シルドゥの血を継ぐものであり、その躯は、シルドゥに捧げる魂を狩るための剣だった」
     「けれどティリュアンの心は、星の光や風の音にひかれていて、殺戮も破壊も憎悪も彼にとっては苦痛でしかなかった。彼は自分の望む未来を、自分自身の手で選択したいと願っていた。もちろん、そんなことは不可能だということも知ってはいたが、それでも彼は絶望的な反抗を続けていた」 
     「ティリュアンを見た時の印象を、よく憶えている。私とはまったく異なる種族で、王の秩序の外にあり、もっとも忌むべき存在のひとりでありながら、なぜかとても近しいような、共感めいた、不思議な感じがした」 
     「彼の裡には、決して消えることのない星の光のような心があって、それが自分の運命をつかみ取ろうと必死に瞬いているのが見えた」 
     「私には、その心が愛しく思えた。なぜなら、それこそが私には欠けているものだったから……」 
    • 「くだらないな。これ以上耳を傾ける価値はない」▽⇒×終了
    • 「それが、あなたには重要なことだった?」▽
    •  「たぶん……。彼は、私は<王>ではないと云った。『君は<王>ではないし、決して<王>になることはできない。また、なる必要もないはずだ。君自身が望む何者かになろうとしない限り、君はどこにも行き着かない、決して何も手にすることができない』と」 
       「それだけのことだったのだ。けれど、私には、その言葉は酷く応えた。王は私のすべてだった。文字通り、すべてだったから、私には……私の裡には、それ以外のものは何もなかったのだ」 
       「今まで信じていたような豊かな内実どころか、人並みの希望や夢、言葉や音楽すらなく、ただ暗く果てしない空洞が広がっていただけだった」 
       「積み重ねた経験すら、そこには保存されていなかった。完璧なのは王ただひとりであって、私はひどい欠陥品であり、何も知らずに王の夢に遊んでいただけだった。ルネが空虚な肖像画しか描けなかったのは、私自身が空虚な存在だったからだ」 
       「人として、あれほどの欠損があるだろうか。私のすべては王の手のなかにあり、思想も、命すらも私のものではなかった。成長することも、成熟することも無い伽藍堂――大切なものなどあるはずがない」 
       「彼が私に、何者になりたいのかと尋ねた時、私は何もこたえることができなかった。私は――ずっと、王と同じものになれると思っていたから。すべては常に過不足なく私の手のなかにあって、ほかに何かを望むことなど知らなかった」 
       「ところが本当は、すべてどころか何もなくて、一から自分だけのものを望まなければならなかったのだけれど……」 
       「私が自分の望みを考えた時、私の奥底で銀竜が蠢いた。私は己の務めを思い出した。私がいかに危険な存在であるかも。それで、こう願った――ルシーヌではなく、普通の人間――半妖精でもいいのだけれど、そういう者になりたい、と。ティリュアンはそれを聞いて、『そうだね』と、頷いた」 
       「彼は、私にこう云った。『ぼくもきみと同じだ。きみの切実さにはおよばないかもしれないけれど――ぼくも、決して誉められた存在ではないからね。だからきみと同じように、ずっと、普通の人間になれたらと思っていた』」 
       「……どうしてあの時、あの台詞が泣きたくなるほど嬉しかったのだろうと思う。特別な意味も、何の魔法もない言葉だったのに。私ははじめて、なんだか幸せなような、怖いような、くらくらした気持ちがして、うまく返事ができなかった」 
       「仕方なく、自分にはこの地にあるものを尽く滅ぼすために来たのだから、そんな望みは互いに無駄だと、彼に告げた。ティリュアンはそれでも、『わかってる』としか云わなかった」 
       「彼が死んだ時、私は――胸が痛くて、そんな言葉では云いあらわせないほど辛くて、どうしたらいいのかわからなかった。でも、この痛みが自分の心だということはわかった。私のなかの、ただひとつの真実。ただひとつの内実。それを彼がくれた」 
       「ティリュアンは、私に心をくれた。だから、私は彼に命を返した――私には、返せるものはそれしかなかったので」 
      • 「愚かな感傷だ。下らぬ話を聞かされたものだ」▽⇒×終了
      • 「では、王があなたを滅ぼしたというのは偽りか?」▽
      •  「王が滅ぼしたのは私の心だ。だが王の手をはなれた以上、いずれ命も返さねばならなかったのだろう。シルドゥの北方王国は消滅し、ルシーヌの役目はもう終わっていたのだから。ただ、私は、もう一度ティリュアンに会いたかった。そこでルネが、私の心の一部を絵の中に写しとどめてくれた」 
         「この絵を滅ぼすことは、王にはできない。それゆえ、王は絵を人の世から隠した。そして私の願いは、結果的にルネを死なせてしまった。私は、ほんとうにたくさんの命を奪ったけれど、あたえることができた命はたった一つだけだった。ルシーヌとは所詮、そんなものでしかないな」 
      • 「なるほど。これ以上あなたに聞きたいことはない。さようなら」▽⇒×終了
      • 「彼は、目覚めてからあなたの王国をつくったようだ」▽

カリスティア王国について

 「私の王国?それはなんのことだ?」

  • 「ティリュアンは目覚めた後、アウロラの隣に王国を築き、カリスティアと名づけたのだ。あなたに尽きせぬ感謝を――と、書き残していた。多分、彼もあなたにもう一度逢いたかったのだと思う」
  •  「本当に?ずっと、ティリュアンは私を恨んでいると思っていた。そうして当然なのだ。私は、何も与えずに彼を殺した。彼に云いたかったことは、なにひとつ云わなかった。だからきっと、最期にはティリュアンは私を憎んだだろうと思っていた」
  • 「ルネはあなたの心を手紙に託していたから、ティリュアンはそれを読んだかもしれない。でも、そうでなくとも彼はわかっていたと思う」 
    「彼は、自らに死をもたらしたことだけでも、既にあなたに感謝していた。あなたが心を得たように、彼も未来を得たと云っていた。なにかを望んだことは無駄ではなかったと、あの国をつくった時、彼はあなたに伝えたかったのだと思う」 
  •  「そうか……。ならば少しは、私にも遺せたものがあったと云えるのかもしれないな。おまえは、この先まだ何か知りたいことがあるのか」 
    • 「もう何も知りたくはない」▽⇒×終了
    • 「王のものとなる以外の道を探したい」▽
    •  「本気でそれを願うのか? 見出せたとしても、楽な道ではないぞ。おまえは王の恩寵を失い、何の力も持たぬ徒人としてルシーヌと向き合わねばならぬ。狂気に脅かされ破滅と隣り合わせの生でも、あえて王を拒み、それを選ぶと云うのか?」 
      • 「やはり、やめておく」▽⇒×終了
      • 「構わない。道があるなら教えてくれ」▽
      •  「おかしな心だな。その決意がどこまでまことかは知らぬが、ティリュアンの話をしてくれた礼に一つ教えよう」 
         「2階の魔法陣に<***の月*日*1の聖人の名>を告げると、ひとふりの剣のもとに行くことができる。王を倒すことはできぬが、その剣は王からおまえの心を護るだろう」 
         「ただし、その剣は、そのままではおまえが扱うことはできぬものだ。その剣は<竜剣>のひとつ、<黒龍の剣>だ――よって剣には定められた持主がおり、剣は己の持主にしか従わぬのだ。おまえはオレニアの魔導師大公の話を知っているか?」 
      • 「いや、何も知らない」▽
      • 「多少は」▽

オレニア大公について

 「そのようだな。(「いや、何も知らない」を選んだ場合「そうではあるまい。」)かの剣の持主はその男なのだ。彼の魂はいまも、ルシーヌの記憶の奥底に封じられている。つまりは、この世界のどこかにな。もしその者の力を得ることができれば、おまえにもその剣を扱うことができるやもしれぬ」 

  • 「わかった。やってみよう」▽⇒終了
  • 「なぜその者の魂はここに封じられているのだろうか?」▽
  •  「かつて、王に二度背いた心があった……。その心は、私とは異なり、王のものでありながら己の感情をもつことをゆるされていた。王にはある狙いがあって、そのように織り上げ地上に降ろしたのだ。しかし、王には忌々しいことに、同じ時代にあの男がいた」 
     「まるでメルキュールの呪いのように、黒龍の後継者があらわれてルシーヌの心を奪い、王の意図は挫かれた。ルシーヌの心は彼を愛し過ぎたのだ。王そのひとよりも彼を愛し、王の定めた運命を拒んだ。一度ならず二度までもな。当然のことながら、その代償は大きかった」 
     「二度目に王に背いた時、ルシーヌは異界に堕ち、闇にとらわれて心を閉ざした。いわば銀竜は死んだも同然だった。もはや自力では地上に戻ることができなかったのだ。王はあの男を呼んで、自らを餌として差し出せばルシーヌは地上に戻れるだろうと告げた」 
     「もちろん彼は従った。云われずともそうしただろう。ルシーヌはもっとも愛した者を喰らうことになり、その結果、大公の魂と彼の剣はルシーヌのなかに取り込まれた。以後、消えることなくルシーヌの一部となっている」 
     「あの男の影響があまりにも大きかったために、その後王は彼の魂をルシーヌの記憶の奥底に封じた。本来ならば滅ぼしたいところであろうが、王にはそれが出来ぬうえ、ルシーヌがあの男の存在を思い出せば、心はふたたび彼のもとに流れるかもしれぬ。ならば封じたままにする方がよいのだろう」 
     「おまえがまこと王を裏切るつもりならば、その魂に助力を求めよ。だが王の罠には気をつけることだ。おまえだけがその魂を滅ぼすことができ、そして王はそれを望んでいる。道を違えれば後戻りはできぬぞ」 
    • 「わかった。なんとかその剣に辿り着いてみよう」⇒終了
       

<黒龍の剣>を入手した後

 「もはや私がおまえに云いうることは何もない。ここを去り、己の選んだ道を最後まで歩み切ってみることだ。行け」 


*1 ゲームごとにランダム