アルファベット表記:Howling Staff
読み:はおんじょう
分類:精具
発案者:tocoma110
【Tag: 物品機械 武具 波音杖 精具 精素技術 精術 発案:tocoma110 】
「波音杖は精術士の命です。ないがしろには出来ません」
~秘境学者 フィリア・スイル・ノール~
概要
波音詠唱を行なうために利用される器具の総称。
より厳密な言い方をするのであれば、波音言語による音声を波音へと変換するための道具であり、「杖」とは俗称に過ぎない。
そのため、形態は多種多様で一見「杖」には見えないものも。
その存在は精術士の象徴ともいえ、これを保有出来ることが一人前の証と言っても過言ではない。
特徴
形態については前述した通りだが、実は特別大型の装置や携行性を重視したものを除くと、杖型のものが圧倒的に多い。
- 理由として、本格的な詠唱式は緻密な操作をするために、場に固定して一定の状態から変換を行なえるような形で運用することが多い。そのため、ある種のマイクスタンドのように持ち運びと利用者に合わせての調節を行ないやすくする結果、組み立て式ないし伸縮式の棒・土台・変換部で形成されることが多い。
その上で「杖」としての形態も多種多様だが、共通して以下の部位を備えている。
基本的な構造
- 詠唱器
波音言語を波音に変換するための部位。大抵は最上部に干渉媒介を用いて作られる。
ここを通して波音を放つほか、増幅機構を備えて広域に響かせられる構造となっていることが多い。 - 結晶設置部
精素結晶を設置する場所。不足する精素や、大目に利用する精素がすぐに必要な場合に利用する。
また、基礎形式利用に特化したものは加工した結晶を置くことで、術式発動の間を限りなく減らす仕組みなどが設けられている。 - 保持部
いわゆるグリップ箇所。携行性重視の場合は純粋な持ち手と短い棒などで構成されるが、詠唱性重視の場合は長さの調節が可能となっている。また、棒状部位ではない箇所にグリップがあることも珍しくない。 - 設置土台
詠唱重視型にのみある土台。大体3~4脚式で地面に固定するために用いる。中には、地面に突き刺す箇所がある場合も。
細かな種類
波音杖はその目的によっていくつかの分類を持つが、大まかに分けると形態別と目的別の2種を組み合わせた形で分類可能。
主な形態
長杖型
1m以上の長い杖型の波音杖。一般には「ロッドタイプ」と呼称される。
主に固定して用いるためのもので、大抵は伸縮機能や設置部位を備えている。
ややかさばるものも携行性と利便性の折り合いをつけたているため、一般的な現場での使用率は決して低くない。また、棒部位以外のグリップも併せ持つ製品も存在する。
多目的かつ安定性に重きを置いていることから比較的高級品が多く、見た目や頑丈さも重視され個性的になる傾向が強い。
一般にイメージされる波音杖はこのタイプ。
短杖型
30~50㎝程度を主流とする棒型の波音杖。先端が肥大化する傾向にある。一般には「ワンドタイプ」と呼称される。
基本的に携帯性と即応性を重視したものであるため、ある程度利用目的のはっきりした構造の杖が多い。
特に秘境開拓者や冒険者、軍人の武装として連想されやすいが、ある程度利用用途が限られる職種のツールとしての製品も多い。
ぱっと見で質素ないし堅実な形状のものが多く、機能美を感じさせる機種が主流。複雑な機構はなるべく廃されがちだが、個人のカスタマイズ次第では凄まじく複雑なギミックを備えることもある。
- このタイプは詠唱を補助的に用いるような稀種が多いことも特徴。
一般精具に近い「特定の現象発現を即座に起こせる単発波音発生機構」を採用している機種も多く、それ故に波音杖としては例外的な要素を持つことも珍しくない。前述の個別カスタマイズもこうした部分の利便性などを追求した結果のものである。
装飾品型
ネックレスやペンダント、腕輪型などの波音杖。
携行性特化故に変換効率は低くなるのだが、いざという時の切り札として持つ者は意外と多い。簡潔な術式に用いられるものだが、銀十字の院の施術士が持つような応用性の高い構造を備えるものもないわけではない。
また、純粋な装飾品となるような製品も販売されており、大陸秘境開拓時代中期以降はアクセサリーとしての用途をメインに購入する者も存在する。
当然製品次第ではあるが、機能が限定されがちなため価格も割と低い。
設置型波音杖
携行性を度外視した設置型。大体、杖の形でないものはこれになる。
杖であることを捨てている通り、持ち運ぶことを前提としない機能完全特化型。そのため、波音変換効率やその影響範囲を重視しており、単純な性能で言えば杖型を凌駕する。当然ながら基本的には個人で所有することは極めて少なく、工業・医療・気象干渉などを目的とする組織が持つ資産となりやすい。
こんなものを個人で持っているのは、個人事業主を除けば物好きか変態である。
主な目的別
完全詠唱型
あらゆる高度詠唱の実現を可能とする、変換効率を最重視したタイプ。
複雑な精素現象制御を行なうためのもので、長時間の詠唱を行なう際にこそ真価を発揮する。一般的には集中治療行為や繊細な加工現場、大規模・繊細な調律に用いられる。
単純簡潔な術を行使するのには向かず、またその性質上高価な資材を使うため、所有者は何らかの技術・宗教・国家組織の所属員か熟練した専門職がほとんど。
短詠唱特化型
簡易的な詠唱効率のみを重視したタイプ。
構造が単純ないし限定的なため製造しやすく、量産も利きやすい。汎用性に富まない分、特定の目的に合わせて切り替えを容易に出来る、という点を強みとした即応性の高さが魅力となる。
- その最たる需要は秘境開拓者たちにある。
秘境開拓行為では基礎形式に則った術の行使が極めて重要となるため、目的に特化したこのタイプは単音型に応用性を付与するため、使い勝手が非常にいい。
そのため、術式別に複数本持って臨む者も珍しくない。
簡易詠唱型
完全詠唱型よりは効率が落ちるが、短詠唱式よりは柔軟性のある詠唱対応力を持ったタイプ。
最もバランスのいいタイプと言え、あらゆる場面で利用することが可能。逆に言うと、特化性には見劣りする器用貧乏型にもなりかねない。
とはいえ一般的な波音杖の多くはこれであり、ある程度の応用力を保ったまま、短~中程度の詠唱に対応している。オールマイティに活躍出来る性能を持つため、大半の精術士はこのタイプは必ず保持している。
価格もそれなりの(比較的)お手ごろなものとなっている。
特定詠唱特化型
極一部の狭い詠唱の変換効率に特化したタイプ。
詠唱の種類によって細分化されるが、非常に狭い範囲の詠唱をとにかく高めるために専門分野で使用される。
軍事用の波音杖や、特定治療・加工用のもの、また古くから伝わる儀礼用の波音杖などに多く見られるタイプ。
所有と扱いについて
品質にもよるが比較的高価な代物であり、大量に保持していることは稀。
在野の術士は仕事用に1~2本を使い分けることがほとんどで、3本以上を常時準備しておける術士はそれほど多くなく、5本以上を利用可能な状態で保つ者ともなるとそれなりの収入が求められる。
それらも、中古品を買い取って回収したものや廉価版であることが珍しくない。
最新モデルともなると下手な波音剣や機構剣を凌駕し、おいそれと簡単には購入出来ないものとされている。
- そのため、大抵の高級品は組織が所有し、必要に応じて貸与するなどの形で利用することとなる。
これは使用される資材が良質なものほど貴重になるほか、高度な技術を持つ工房が多くないという事情、さらに管理・整備も必要なことに由来している。
高価なものほど頑丈で長く使える傾向にあるが、特化型などはその整備にもそれなりの資金が求められる。そのため、大半の個人は異なる用途・性質の杖で2本程度にとどめ、それらを大事に長く扱うのである。
ただし、秘境開拓者などのような人員はそうも言ってられず、使える金を惜しまずに3~4本の杖を使い分けるという。
組合独自の開拓者専用ブランドがあることから、一部の消耗品は一般的なそれよりも安価に取り替えが可能となっている。それにより、汎目的用と特定目的用の複数本の使い分けがしやすくなっている。
しかし、それでも決して安い買い物ではない。
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