【精術】/基礎形式

Last-modified: 2022-06-22 (水) 02:06:31

アルファベット表記:Base Technique
読み:きそけいしき
分類:術式
発案者:tocoma110
Tag: 精術 精素現象 術式 発案:tocoma110


概要

精術(中でも特に波音術)の最も基本的な術式形態。
各流派の個性に依らぬあるいは独自の形式や理論ではなく、発現形態を中心とした区分。あくまで単純化されたものであるため、すべての術がこのどれかに属する、というわけでもない。
だが、単純故に研究も進んでおり、速射性・即応性の高い術はこれらの形をとることが多い。
様々な効能・構造の基礎形式が精術流派ごとに存在し、一口に基礎形式と言ってもその実態は多種多様である。

 

個別形式詳細

発術

はつじゅつ。Realized。
接近距離で小規模な精素現象を起こす、最も基礎的な形式。
当然ながら波音の規模は小さめで、伝達距離は人類種で平均して1m未満と極めて近い。近距離でのみ効果を発揮する接触型の術式。至近距離故に術者が対象の状態を把握しつつ、術を行使することが出来る。
そのため、一見すると簡素な術の身で構成されていると勘違いされるが、そうではない。
実際、精緻な制御が不可欠故に近距離に限定されるような、高度な術も多い。特に、高度医療に絡む治癒術や精緻な加工用波音術も、区分上で言えば発術に分類される傾向にある。ただし、実態としては別区分を設けられることがほとんど。

  • 主だった例は着火の『傍火つけ』や、目くらまし・合図に用いる『閃光』など。日用的あるいは即応的な簡易術が目立つ。
    また、医療系で言えば『癒しの手』などは効果範囲からこれに当てはまる。

炸術

さくじゅつ。Blast。
特定方向へ単純な術式を放つ形式。
発術の出力特化版とでも言うべきもので、精緻な効果を期待するものではない。
こちらは速射性と威力を重視したものであり、緊急時や力作業などが必要な際に用いられるものが多く属する。パワーを重視した構成となるため、基本的に大雑把な効能のものとなる。

  • 術式そのもの射程は概ね1~2m程度。ただし、あくまで術の起点であるため、発現する現象の影響範囲はそれらを超えることも多い。
  • 主だった例は威嚇用の『吼え声』や強烈な衝撃波を生む『発破』、対精素現象術の基礎『拡散波動(小)』など。
    応用技としては戦闘術の『火の舌』*1などが知られる。

射術

しゃじゅつ。Bolt。
炸術の発展形の一つであり、飛距離を伸ばす代わりに現象範囲を絞った形式。
細長く特定方向へ精素現象を放射する。
速射性はそのままに、飛距離を伸ばすことに注力した実践的な術が主流。効能や術式を数分維持するような術も存在するが、多くは瞬間的ないし数秒程度の現象にとどまる。

  • 主だった例はブレスのファイアボルト、軍用攻撃術『放雷』、また合わせ技ではあるが移動補佐や遠くのものを掴む『魔法の手』など。

放術

ほうじゅつ。Shoot。
炸術の発展形の一つであり、前方に大規模精素現象をぶちかます形式。
射術以上の飛距離・炸術以上の火力を解き放つものであり、該当術は戦闘用か緊急時の対処用が大半を占める。
ただ使うだけならともかく、明確に威力を調節し狙った効果をもたらすには、高度な制御技術が求められる。そのため、これを扱えるものは一流の戦闘精術師であると言える。
またその規模の関係上、必要となる精素量は射術などの比ではない。

  • 主だった例は殲滅光熱波『光の白刃』、軍用の破壊特化術『魔槍』(ジャベリン)、ブレスのブリリアントブレスなど。

 

流術

りゅうじゅつ。Wind。
精素現象を多様な形で流すことを可能とした、高等術式。
例えるならば、精術効果を持った光る風や光の河川を流すような術で、ある程度標的や経路を踏まえて術を届かせることが出来る。
速度という点では射術や放術には劣るが、流す方向や形態をある程度操作出来、扱い方次第では短時間の滞留すら可能とする。波術などよりも複雑な術式を組みやすいことから、利便性は極めて高い。
ただし、これを操ることは珠術と並んで難しい。
場の精素状態にも制御難度を大きく左右されてしまうため、これを単独で行使出来ることは一定以上の技術を備える証とされている。
また、操作の観点から波音杖も長杖型で細かな操作の出来る種類である方が望ましい。加えて、精素量が一定以上なければ発動も難しい。

  • 主だった例は広域回復術『癒しの風』や精素汚染除去術『清水流し』、運搬用の『運び道』など。

 

矢術

しじゅつ。Dart。
単純な効果の精術構成体を形成・発射し着弾と共に効果を発揮する形式。
微細な精光反応の集合によって、細長ないし小粒な光の塊として発射される。
術式簡易具現型の術の基礎とされる、術式射出系統の第一歩。
効力は弱めで効果も単一の現象に限られてしまう。その代わりに射程は(術者次第だが)数百mにまで伸び、速度も実物の矢に負けるとも劣らない。
また、着弾と共に大気と精合して疑似物質を形成するような術も多い。

  • 狼煙代わりの『信号花火』や戦闘用の『尖矢』*2、簡素な足場形成『空気の床』、捕縛用の疑似物質を形成する『蜘蛛の巣』などが主な例。
    • より精緻な術式として、精素をより集め疑似物質化する術というのが多数存在する。
      それらは前述の『魔法の手』のように、「物を掴む」などの干渉を可能とするものが多く、そうした系統を総称し『具精術』と呼ぶ。

弾術

だんじゅつ。Bullet。
矢術の派生形の一つ。精素塊が弾丸・球形に形成される。
密度が高い分形成には矢術より若干時間が掛かるも、出力は矢術の数倍以上。それによりある程度の形質維持を可能とする術式も、多数発明されている。
秘境で生き抜く上では不可欠な術も数多く、人気の高い形式である。

  • 著名な術としては、他術で誘導・随伴を可能とする灯りを作る『精灯』、着弾地点で爆裂する攻性術『炸弾』、衝撃を叩きつける『衝弾』、消火に用いられる『滅火弾』など。

矛術

むじゅつ。Javelin。
矢術の派生形の一つ。精素塊が長大な槍状ないし円錐状に発射される。
高密度の精素塊を射出するため、その疑似質量を生かした維持能力や突破力を求める術が多い。同時に、矢術に近しい面も備えているため、命中した箇所から多量の術式を注入する……と言ったことも可能。
ただし、この疑似質量状態の維持には高い技術が求められるため、補助術としての行使にはさらに技術力が要求される。

  • 主だった術は物理干渉力に特化し貫通力を高めた光槍発射『麗乱子』(レイランス)、標的を追尾する『グンガルの槍』、域術の角を作るための『小御柱』など。
    また応用形式としては「縄」状の形成を行なう『伸び蔦』『捕鎖』などが知られる。

 

珠術

しゅじゅつ。Sphere。
他の術式を内封した精素塊を形成・射出する、矢術の発展形。
基礎形式の中でも群を抜いて形成の難しい術式として知られ、これを利用出来る者は、それだけで高い実力を持つ証明とされる。
形式的には、

  • 『発動させる本命術式を形成』
  • 『外殻用封印術式で本命術式を覆う』
  • 『それらを光球状に形成』
  • 『光球を安定』
  • 『別術式で指向性を与え、光球を発射』
  • 『着弾地点で現象を炸裂させる』

の6段階の現象と制御をわずかな波音で実現する必要がある。
そのためには複数の術式を完璧に使えることは勿論、本命術式を疑似自立詠唱連鎖核状に作るという、極めて高度な技術が不可欠。
当然、術者・波音杖共に高品質なものが求められ、これを単独・高速で扱える術者は分野を問わず一流とされる。
なお、素人からは弾術と混同されがちだが、よく見ると無数の精光反応が重なることで球体を作っていることが分かる。

  • こちらは矢術と比べ、より複雑あるいは強大な術を発揮させることが可能。そういった点で、他の術式と比べて応用性が極めて高い。
  • 主だった例はブレスのカロリックスフィアや戦闘用精術の代表格『爆裂球』のような広域炸裂術式内包型。他にも消火用の雨術を封じ込めた『火消しの雨』、球形遮断結界を展開する『流星天蓋』などが知られる。
    • 広域破壊術式を込めやすいことから軍事・戦闘用の研究が進んでいるが、一方で制御の難易度から、行使出来る者はある程度限られてくるという特徴を持つ。
      また、必要となる精素量も放術並みに膨れ上がる。

 

波術

はじゅつ。Wave。
自身を起点として円形に波音術を瞬間的・連続的に放つ術。
原理的には発術以上に基本的な波音技術であり、さらに言えば広域術の原点でもある「最も原始的な精術」。発術は言うなればこれの小規模版ともでも言うべきものであるが、こちらは複雑な工程を踏む術を発揮することは難しい。
その特性上、波音の大きさ=有効範囲であり、基本的には範囲内のものに対し無差別に効果を発揮することとなる。
単純な波音器官で起こる術のほとんどはこれである。

  • 嵐術は勿論、雨術や雲術、陣術、場術が生まれる土壌でもある*3が、それらと比べると発動自体に必要となる精素の量は少なく、また速攻性が高い。
    一方で瞬間的な発動に過ぎないので、長時間持続させるには燃費が悪い。詠唱式よりも短音式と相性がいい。
    • 当然、範囲内のものには無差別に効果を発揮する。そのため、珠術に組み合わせて用いられることが多い。
  • 主な例は対精術の基礎『拡散波動』、周囲に衝撃波を放つ『咆哮撃』、瞬間防御防壁『疾風の壁』、瞬間衝撃緩衝『墜ち止め』など。

嵐術

らんじゅつ。Storm。
特定起点から大規模な波術を起こす形式。
波術の大規模版ともいえるが、規模が大きく若干の持続性を持っている。
また、洗練されていない代わりに発現速度が極めて早く、広範囲に効果が及ぶ。その性質上、放術同様に軍事的あるいは退獣戦闘用のものが多い。
術式自体は単純なものだが、威力がどうしても膨れてしまう傾向にあり、そういった意味で使用難度は極めて高い。一般的な生活を営む上で、あまり必要とされることがない特殊な形式と言える。
また、規模が大きい故に、必要となる精素量が多いなどの特徴も備える。

  • 著名なものとしては軍用精術である『爆炎嵐』『輝吹雪』『風雷破』があるが、これ以外の術式の方が利用率は当然高い。
    • これも珠術と組み合わせて用いられる傾向にあるが、制御は群を抜いて難しい。

 

雨術

うじゅつ。Rain。
広域に継続的な効果を持続させる術。
瞬間的な火力で影響を及ぼすというよりも、持続的に発揮することでじわじわと浸透させるような形式であり、術式が機能する長さが結果に大きく影響する。
その性質が雨に似ていることから雨術と名付けられている。
構築難易度は大したものではないが、容量を守らないと精素汚染を引き起こしやすい。

  • あくまで術の性質が雨を連想させるだけで実際に何かを降らせる術ではないのだが、名前の通りに大量の矢術を投下するような発現形式は多い。
  • 主だった例は土壌の汚染を洗い流す『清めの雨』や、土壌改善の『女神の涙』など。
    それ以外には退獣士御用達の『除獣鐘』、大陸同盟で使用を禁止された『焼ける雫』『毒雨』も知られる。
    持続性だがそれほど大量の精素を一度に使うことは少なく、一定量を確保出来れば有効時間中は十全に作用する。

 

壁術

へきじゅつ。Wall。
発術・炸術の亜種である即席防護術の総称。
精素現象遮断ないし物理現象遮断がほとんどで、いわゆる防護術の基礎系統。
疑似物質化した精素の壁を展開するものと、空間自体の性質で特定のものを弾くものに大別される。
単純に使うだけなさして難しくはないが、強度や形状などを操っていこうとすると途端に調整箇所が増えるため、これを使いこなすには経験を積み重ねることが必須とされる。

  • 小規模・非全方位型は盾術(じゅんじゅつ/Shield)とも呼ばれる。

 

纏術

てんじゅつ。Enchant。
対象に特定の術式を短時間付与する術。
長時間付与は極めて燃費が悪いため、そういった目的の場合は基本的に本格的な精合術や精素含有物を組み込んだ物品を作る方が確実。瞬間的な活用に向くため、発動に際し多量の精素を用いない、という点での利便性はある。

  • 瞬間的身体強化や生体属性干渉などの術が多い(『弾きのまじない』『鷹の目』『鷹の羽衣』など)。
    著名な術として、高速で最低限の外傷治療を行なう『止血膜』、少量の精素でもある程度の灯りを確保出来るようにする『燈しの光』*4や、武装一発分の威力を即座に向上させる『儚い一撃』など。
    また、応用術の例として物体に「特定方向へ射出される」効能を付与する『飛礫』などもこれに該当する。

装術

そうじゅつ。Set。
特定所作・状態でのみ効果を発揮する術を付与する纏術応用技。
術式自体に条件付けを行なうという、極めて高度な構築式が求められることから、使用には高度な技術と知識が求められる。
纒術を連発するよりも手間がかからず、総合的な燃費は良いという利点もあるが、細かな精素操作を実現する使い手は限られる。なお、単発運用分のみで言えば、使用する精素量は纏術よりも多く種類も必要。

  • 主だった例は、足裏に付与し跳躍力を高める『飛蝗の足』、空中歩行を可能とする『エリオースの靴』、打撃力を強化する『砕きの矛先』など。

鎧術

がいじゅつ。Armor。
対象に短時間ながら遮断効果のある術を付与する形式。
壁術との応用技の一つであり、混合型の形式となるため利用難易度は他のものより高め。効果こそ単純だが、それを一定箇所にとどめ、なおかつ遮断するものをある程度限定するというのは式の構築に相応の複雑さを伴う。加えて、精素も多量に利用する。

  • 著名な術としては、表層に物体を弾く不可視の膜を形成する『雨避けの衣』、精素影響対抗用の『遮りの鎧』などが有名。

 

場術

じょうじゅつ。Field。
一定範囲内に術式効果を持続的に発揮させる形式。
主だった用途は環境上の精素状態の変更であるが、本格的な改変というよりは一時的な編成に用いられることが多い。
発術と並んで精術の根幹を担う基礎的な技術の一つであり、その神髄・奥義への第一歩。基本的かつ単純な精素編成は単独で行なえて当たり前であるが、複雑な状態維持を単独ないし高速で行なえるようになるには、熟練の経験を必要とする。

  • 一時的に赤色・赤性精素を優勢化する『赤の場』などのような特定属性調整型、精素の活性状態を変化させる『活精の園』『衰精の園』『定精の園』などが有名。
    雨術に近いため多量を一度に消費するのではなく、一定量を効果時間中確保出来るかどうか、の方が問題。

雲術

うんじゅつ。Cloud。
一定範囲に術式を滞留させ持続的に効果を発揮する形式。
一定時間はその影響下になければ十全な効果を発揮させにくいが、時間をかけることで対象に深く効果を浸透させる。雨術に近い特性を持つが、あちらは現象を繰り返すものなのに対し、こちらは大気中・空間自体を術式で変質させる。*5
構築難易度自体は実はそれほど高くなく、ある程度精素学と詠唱技術があれば利用可能。しかし、その性質上、緑性精素黒性精素の扱いが重要となるため、用量を間違えないことが重要となる。

  • 主だった例は精合術の蒸留精合技術や、食肉熟成用の『熟れ肉の霧』、毒性精素を散布する『蝕みの雲』『夜の雲』など。

域術

いきじゅつ。Area。特定のものを区切る術式。
三次元的に構築される壁術に近いが、遮るものの種類は術によって千差万別。場の精術効果の持続、精素状態の維持、遮断対象の選別……などなど。
基礎形式ながら行うべきことが多い通り、使用難易度は高い。一般的には役割を分担し複数名で使用するものであり、これを単独で操ることが出来る者は限られる。
単体で用いることは難しい傾向にあり、大抵は補助用の機材・術を用いることが前提となる。

陣術

じんじゅつ。Formation。
特定領域内にいるいるものに固有の効能を及ぼす、広域影響術の代表格。
単体で用いることは難しい傾向にあり、大抵は補助用の機材を用いることが前提となる。雲術に近い性質を持つが、より正確かつ強固な空間定着性を持っている、という点が異なる。*6
術式を発生・制御する機構が正常に稼働していれば、長期にわたり術の維持が可能。
術式は単独で組めても実際の利用には時間と設備を掛けることがほとんどで、即席で使える術でも相応の事前準備を要する。

  • 主な例は特定方向に風を吹かせる『北風の息吹き』や回復力を向上させる『アルモの陣』、空間固定の『空(から)の檻』、精素状態の強制固定『水晶檻』など。

 

余談

平たく言うと、「ファイアボール」とか「サンダーボルト」とかそういうのやりたかっただけです。

  • 高等術式のような「場を整えて正確に効果を及ぼすもの」というよりは、もう少し速射性・即応性の高い「冒険者向け魔法」に近いもののニュアンス。
    インスタントなのでアレンジを加えない限りは誰が使ってもある程度同じ構成になる的な。

 

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相談コメント欄


*1 数~10数mの距離に炎を放ち続ける術。術の発現自体は近距離だが、その効果・現象が中距離に作用する。
*2 派生に発火性の『燃矢』や数分形成が持続する『鋼矢』など。
*3 それらは元来、波術の効果を長時間維持・利用することが目的だったため。
*4 ただし、この術は「待機中の精素を取り込み続ける」という地味に高度な技術が含まれる。
*5 精素汚染領域を作っているというが近いニュアンスか。
*6 術式を固定しているというのが最も近い表現となる。