白の乗り手

Last-modified: 2022-03-17 (木) 23:29:33

 白の乗り手は、森の妃騎士ダリューテに仕えた九人の上妖精の男騎士である。すべて男性。また上妖精の三氏族のうちでは地妖精に属する。いずれもダリューテに心酔し、生涯未婚の誓いを立てており、戦場では命知らずの働きぶりで武勲を響かせた。月下の鍛冶と言われたメディオンが首席。妖精の矢ランスローが末席である。互いに義兄弟の契りを交わしており、大変仲が良かった。

「母上の側に仕える九人の騎士。いずれも上エルフの手練れこそが、私が幼い頃から思いを寄せる殿方でした」-ガラデナ

 だが影の国黒の乗り手バンダゲムゾブド(バンダ)を討伐する「荒々しき狩り」のさなか、ことごとく返り討ちに遭い命を落とした。死後はバンダによって骸が集められ、ダリューテ幽閉の地である緑の谷の入り口に、妖精の慣習に従って樹木の種とともに葬られ、九本の「妖精の木」が生えた。さらにダリューテと黒の癒し手ナシールによって次席ナクハイアルと三席ミルドガードの木は楽器に、黒の鍛え手マーリによってメディオンが剛鎚の柄に、黒の渡り手オズロウによって四席エシファエンが帆船の竜骨に、黒の料り手ダウバによって五席カシュキスが俎板に、黒の繰り手キージャによって六席ヒルディカが織機に、ダリューテによって七席ヒウィタンと八席ウディエンが賽子と棋盤に、マーリと黒の賭け手ドレアムによりランスローが長弓に作り替えられた。彼らからすると「気高き奥方様・一の君ガラデナ様・二の君ナシール様様・三の君ラヴェイン様~あと何かの間違いの害獣」みたいな認識らしい。それぞれ推しがいるが、共通して害獣は駆除しなきゃという思い…とのこと。

剣と魔法の時代は終わり

九人の騎士の霊気が、忘却の館に安らっている。主君が眠りに就いたために、悲しみに耐えかねてな。多くの記憶を捨てたかもしれないが、武人も職人も同じ。技だけは留めたがるはず-クルフィノ

 狭の大地の撤退後、霊気は忘却の館にあったらしい。記憶を失ったダリューテにその技術を授けることになる。

「不思議だ。白の乗り手よ。あなた達の技には妖精のそれではないものが混じっている。一部は妖精を凌ぐ境地に達している。あなた達は私の師だが、ではあなた達の師は誰だったのだろう」-ダリューテ

「思うことをなせ、黒の創り手。そなたの魔法を存分に振るうがよい」

「何たること。死して影の国につながれ…木として主君の庭を守り、ついには楽器となって天下を揺すぶったかと思えば、再び二本の足でこの狭の大地に立とうとは!」-ナクハイアル


首席 月下の鍛冶メディオン(剛鎚)

森の妃騎士に仕えた九人の白の乗り手の最年長でまとめ役。月下の鍛冶といわれ、月明かりのもとで鎚を振るった。西の果てでは直に大地母神から教えを受けた。戦においては仲間の武具を整えあるいは直し、また炎の攻撃呪文を得意とした。しかし「最強のもの」には勝てなかった。またガラデナ初キスの相手である。

「その木はメディオン。もとは私の配下のうち、鍛冶と細工を得意とした男だ。戦場では武具の修繕で幾度も味方を助けた。木となったあともお前に仕えたいのだ。マーリ」-ダリューテ

ダリューテよりメディオンの木はマーリに贈られ鎚の柄として黒の鍛え手の友となる剛槌メディオンが作られた。

次席 銀の指ナクハイアル(琵琶)

森の妃騎士に仕えた九人の白の乗り手の次席。お調子もので歌と竪琴の名手。琵琶も弾きこなす。銀の指。護符がわりに艶詩の本を隠し持つ。馬術と武芸に長け、呪歌も操った。だが「最強のもの」には勝てなかった。ガラデナからの評価もおちょうしものとのこと。

「仙女様はせめて木を何かのかたちにして残そうと、横笛と琵琶を作らせた。ナクハイアルの方は本当は竪琴の方が得意だったけど、木は琵琶に向いてたんだ」
「作らせたって、誰が作ったの」
「仙女様のおつき」 -アケノホシラヴェインの会話

偶に間違われるがナクハイアルは琵琶になった。蜘蛛糸が(異界と交易された後)弦に張られている。

三席 小鳥の友ミルドガード(横笛)

森の妃騎士に仕えた九人の白の乗り手の第三位。同じ乗り手のナクハイアルの親友であり横笛の名手。囀りの美しい金糸雀や夜啼鳥などを愛し、小鳥の友とも。西の果てでは花と木の女神から教えを受けた。穏やかな気性だが戦では勇猛果敢。だが「最強のもの」には勝てなかった。褐の調教術師の弟子であったらしい。

「くっ…私は行く。ナクハイアルとはこの地で数百の齢を共に重ねてきた仲だ。やつの竪琴がなくては私の笛も乗らぬ」-ミルドガード

「任せておいてよ。鳥と獣はあたしの友。弟子のミルドガードの方が小鳥をあやすのはうまかったけどねえ」-褐の調教術師

ナクハイアルと共にナシールの手で横笛となりラヴェインに贈られた。

「そうか…ならばミルドガードを授ける。ラヴェインの愛した笛だ。父祖バンダが罠にかけ殺めた上エルフの騎士、九人の白の乗り手のうちの一人、小鳥の友の魂が宿る」-マーリ

その後マーリよりオズロウにミルドガードが授けられた。

四席 星読みエシファエン(帆船)

森の妃騎士に仕えた九人の白の乗り手の第四位。無口で頼りになる男だったらいい。別名星読みの舵取りエシファエアン。クルフィノを統主に頂く上妖精(のうちの地妖精)では珍しく航海に長け、海を愛し、西の果てでは自らの一族とは別のエルフと親しんだ。後に双方の間に凄惨な殺戮があったことを聞き心を痛めた。夜の航海を得意とし、みずから船を建て、同胞を西から東へ過たず導いた。風と水の呪文が得意だった。闇の軍勢と戦うため愛する海を捨てても仲間とともに奥方様について白鳥の船首を持つ船に乗って西の地からやってきた。陸に上がっても迷ったことはないが地底の迷路だけは命とりとなった。

オズロウの西の果てを目指す航海の際、エシファエンの木は倒れ竜骨となった。帆船エシファエンは船尾に東の灯を置くことで惑わしの海域を抜ける為の指針とした。西の果てまで至った後ばらばらになったが、影の国の大船渠にて更に優れた船として蘇った。その後竜帝に曳かれダウバの東方への旅も務めた。更に後、鉄船建ての手で鉄製の船鎧が付けられた姿をドレアムの肉体でオズロウは見ることになる。

五席 罠猟の妙手カシュキス(俎板)

森の妃騎士に仕えた九人の白の乗り手の第五位。罠猟の妙手で料理にも長ける。戦場ではどんなに窮乏した状況でも仲間のために糧食を供してみせた。大地の攻撃呪文を得意とした。毒百足に襲われ悲惨な最期を迎えた。

「この木はかつてエルフの騎士の墓に生えた。葬られていた男の名はカシュキス。罠猟の妙手だった。ふ…ほかに丸盾を熱して肉を焼く特技があってな。戦場では料理の腕は存外役に立つ」-ダリューテ

六席 金の針ヒルディカ(織機)

森の妃騎士に仕えた九人の白の乗り手の第六位。細身が多い妖精族の中では珍しく大柄で髭も生やしていた。金の針の異名を持ち、刺繍に長け、貴婦人さえも彼に教えを請うたほどだった。戦場では仲間の衣を繕い、旗を縫い、傷も縫った。一方で剛力無双。だが最強のものの刃にかかって斃れた。

「ヒルディカは我が九人の股肱のうち最も体躯に優れる大戦士であったが、金の針の異名を持ち、刺繍に長け、貴婦人さえも彼に教えを請うた」-ダリューテ

キージャは黒小人の力を借りてヒルディカを織機となした。

七席 四つ目のヒウィタン(賽子)

「釣り合いのよい賽子を作るのは並大抵の技でない。だが我が股肱の臣に一人得意な男がいた。戦場でも仲間と勝負事を楽しみ、敵には命を賭けた」
「四つ目のヒウィタン。本当に目が四つあるかと思えるほどに鋭い観察の眼の持ち主だった」-ダリューテ

八席 早指しウディエン(棋盤)

「ああ。もう一人お前の伴をやる。私の将棋の師だ。早指しウディエン。将棋盤と駒になれば喜ぶだろう。これで指せばお前も少しは上達するやもしれぬ」-ダリューテ

「ウディエンだと?早指しウディエン?東に来た上エルフきっての名人の?お前が持つには生意気にもほどがある!」-アルウェーヌ

九席 妖精の矢ランスロー(長弓)

白の乗り手の最年少、末席ながら女主を除けば最も優れた射手であった男。

「メディオンよ…汝が僚友、九番目の木を使う時がきた…もはや許しを与えてくれる仙女はおらぬが…妖精の矢ランスローよ。新たな命を与えん!」-マーリ

マーリの手により黒竜の角、蜘蛛の女王の糸、硝子磨きや白紙漉き等黒小人の工芸、蚯蚓と合わさって妖弓ランスローが作られた。バンダの霊気に使われる気はないそう。

「私も鍛冶の鎚となって長く、四の君とともに多くの武具を鍛えましたが…あんなおぞましい素材を叩いたのは初めてです…蠢きながら弓の形に整ってゆくのを喜んで…」-メディオン(与太話)


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