投球や打球を分析し、球速(打球速度)・回転数・打球角度などを表示するレーダー装置のこと。
従来は曖昧だった「ノビ」「キレ」などといったものを客観的数値データとして出せるという、近代的且つ革命的な機器である。
後述のホークアイやラプソードなどの「トラッキングシステム」全般を指して使われることもある。
概要 
元々はドップラー効果*1を用いた米軍のパトリオットミサイルに使われる弾道ミサイル追尾システムが発祥で、アメリカや欧州においてゴルフのスイングや弾道の研究を目的として民間転用され広まったものである。野球では、メジャーリーグでトラックマンのレーダーと高精細カメラを併用したものが2014年に試験的に導入され、翌2015年には30球団すべての本拠地球場に導入された。
野球においてトラックマンが導入される以前はPITCHf/x*2という複数のカメラを用いた投球軌道追跡システムが2006年にメジャーリーグのポストシーズンから導入され2007年から全ての球場で運用が開始されていた。
これは従来のスピードガンよりも正確な球速測定を可能にし、スピードガンでは測定できないピッチャーのリリースポイントからの変化の量や回転数、回転軸などのボールの動きが分かるようになった。
さらに本塁上を通過した時にストライクゾーン内に入っているかというボールの軌道を追跡することで試合中継で立体的なストライクゾーン表示が可能になった。
その後、PITCHf/xは2017年で役目を終え、2014年から運用されているトラックマンと複数の光学高精細カメラによる画像解析システムを組み合わせた「スタットキャスト」と呼ばれるシステムがMLB独自に活用され、投球のさらなる分析だけでなく打球の数値化や守備・走塁の分析まで可能となっている。
2020年シーズンからは30球団すべての本拠地球場に「トラックマン」よりも取得できるデータが多く高性能な「ホークアイ*3」を設置。現在では「トラックマン」から「ホークアイ」に完全に移行している。
日本ではトラックマンを2014年の楽天を皮切りに広島以外の全球団の一軍本拠地が導入した他、ソフトバンク・ロッテ・DeNA・巨人・ヤクルトはファームの施設にも導入*4。
ホークアイは2020年にヤクルトが試験的に導入し、翌2021年に最下位からの日本一を達成し話題になった。最下位から首位へ:燕軍団の躍進を支える「鷹の目」
2022年シーズンからは唯一トラックマンを導入してなかった広島がトラックマンを飛ばしてホークアイを導入したほか、オリックスも2022年終盤からホークアイを導入しており2023年には日本でも全12球団が本拠地球場に設置している。
楽天・DeNA・ソフトバンクは、必要に応じて本塁打の飛距離・角度・打球速度などを発信している他、ソフトバンク・DeNA・阪神は球場内の球速表示にも利用している*5。投手のコンディション調査や怪我の防止などにも使われるという。
オールスターでの過剰な連呼 
2017年オールスター第1戦(ナゴヤドーム)では試験的にトラックマン装置を設置、テレビ朝日系列の中継でもトラックマンを用いて投手・野手のデータを常時画面に表示した。
しかし球速はともかく「回転数」は見慣れていないとピンと来ない数値であり、また「球速/回転数」で表されるSPVも「18を超えると優秀」という、分かりづらい数字であった上、そもそもセイバーメトリクス本場、MLBについてのサイトでも導入されていないような謎指標*6だった為にSPV自体の有効性に疑問が残るというオマケ付きである。何より実況・解説が回転数やSPVの話題ばかりで、地元開催である中日の各選手でさえほとんど解説してもらえないという本末転倒ぶり。結果、前年と同じように「意味不明」「うざい」といった反発が広がった。
これにはテレ朝も反省したのか、第2戦(ZOZOマリンスタジアム)ではトラックマンの話題が出ることは殆どなかった。
なおトラックマンデータ自体はその後もテレ朝系列中継で使用しているが、相変わらず扱いに四苦八苦している様子が見られる。
ちなみにメジャーリーグのオールスターでは、解説の小宮山悟とゲストの林修がMLBに詳しいこともあり、表示されるスタットキャストを当たり前のように活用していた。
なお、同年オールスターの開催された球場はいずれもトラックマン導入に消極的だった球団の本拠地である。