ルチア・レ・ベルナデート

Last-modified: 2024-03-05 (火) 08:32:36

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。
・「限界突破の証」系統を除く、このページに記載されているすべてのスキルの効果ははCHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです。
 現在で該当スキルを使用することができません。
・CHUNITHM PARADISE LOSTまでのトランスフォーム対応キャラクター(専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター)は、
 RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

9878f310b4b144d2.png
Illustrator:sena


名前ルチア・レ・ベルナデード
年齢16歳
所属初代聖女
身分有力貴族ベルナデート家の娘

聖女:【 アンナ / ルチア 】
聖女 アンナ・マルグレーテ の先代の聖女として祀り上げられた少女。
戦場の惨劇を見て、彼女は何を思うのか。

スキル

RANK獲得スキル
1ボーダーブースト・SSS
5
10
15


ボーダーブースト・SSS[NORMAL] 

  • ボーダージャッジ・SSSの亜種。
    強制終了しない代わりにSSS達成不可能になると上昇率が増加しなくなり、ATTACK以下でダメージを受けるようになる。
  • 初期値から7本を狙え、GRADEを上げれば8本も可能になる。
  • フィールドインフォの「ボーダー/SSS」を使うと、上昇量消滅までのスコア猶予を確認しながらプレイできる(S・SSも同様)。
  • ボーダージャッジ系と違ってS・SS・SSSを所持しているキャラが別々。1人のキャラで揃わないのはある意味で面倒かもしれない。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
    • PARADISE ep.IIマップ1(PARADISE時点で累計135マス)クリア
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+3
あり+7
PARADISE以前
(~2021/8/4)
+11
効果
理論値:156000(8本+4000/28k)[+3]
推定理論値:145800(7本+19800/26k)[+15]
共通(※ランクSSS以上が)
達成不能のとき
ATTACK以下でダメージ -1500
初期値ランクSS以上が達成可能のとき
ゲージ上昇UP (245%)
+1〃 (250%)
+2〃 (255%)
+3〃 (260%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
+4〃 (265%)
+5〃 (270%)
+6〃 (275%)
+7〃 (280%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+8〃 (281%)
+9〃 (282%)
+10〃 (283%)
+11〃 (284%)

所有キャラアンナ / イデア / ルチア

ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

シビュラ精霊記における日常風景ですが彼女のSTORYにはグロ・鬱要素・性的表現・胸糞展開が多く含まれています、閲覧には注意と覚悟が必要です。

ストーリーを展開

EPISODE1 神の選択、人の業「聖女アンナと神の戦い。その大きな事変の影に埋もれているのは、一人の少女の歴史だった」


 この世界にはかつて、火、水、風、土、それぞれの精霊をその身に宿す、4人の巫女が存在していた。
 4人の巫女は精霊の力を使い、自然を育み、時に利用しながら、人々に恵みをもたらし文明を発展させていった。
 だが、精霊の力を持つ巫女への過剰な崇拝や、その力を支配しようとする者が現れるようになり、世界の均衡は次第に崩れ去っていく。
 初めは小さな、ごく小さな争いの火種だった。
 しかしそれは、人の意思では止められないほどの速度で燃え広がっていき、世界は混沌に包まれる事になる。
 人々の争いに巻き込まれた巫女達は戦禍の中で、身を引き裂くほどの悲劇の奔流に飲み込まれていく。
 その絶望は、世界の滅びを強く願うほどに。

 戦いの中で、その命を散らしてしまった4人の巫女達。
 巫女が消失した事で、人々は混乱し、醜く変容していく。
 そんな人間達を観察していた神は嘆く。
 「人はなんと愚かなのか」と。
 愚劣な人間を生み出してしまった事を後悔する神は、人間を粛清する事に決めた。
 これが、創造神イデアの侵攻である。

 凄まじい力を奮うイデアの脅威から生き残った僅かな人々は、ルスラの都市、聖都ヴァルヴァラへと命からがら逃げ込んだ。
 ヴァルヴァラに集結した各国の民達は気付く。今は国家、ひいては人間同士で争っている場合ではないと。
 だが、たかが人間が集まったとて、全ての精霊の力を持つイデアを打ち倒す事など出来ないだろう。
 イデアと戦うには、かつての巫女と同等か、それ以上の超常の力が必要になると人々は考えた。
 迫りくるイデアを前にして、世界から消えた精霊を再降臨させる術など知らぬ人間たちは、その場しのぎの希望として何も知らぬうら若き少女を“聖女”として祀り上げていく。

 これは、2代目聖女『アンナ・マルグレーテ』誕生の前にあった、“知られざる初代聖女”の物語。


EPISODE2 虚像の聖女「平凡な私が聖女だなんて……でも、それで皆が救われるというのなら、断る事などできない……」


 聖都ヴァルヴァラ。
 かろうじて残ったとはいえ、戦争の傷跡が色濃く残るこの土地で、ルスラとティオキアの民は憤っていた。
 他国侵攻という戦争発端となる引き金を引いたアギディスの民が、自らが蹂躙したルスラの大地にのうのうと入り込んできたからだ。
 だが、イデアの出現により発生した魔獣達の猛威は今も冷めやらず、人間同士で憎しみあう事を許されるような状況ではない。
 人々の心がバラバラのままでは、絶滅の一途を辿るのみだと感じた各勢力の貴族達は、民衆をまとめあげるため、巫女に代わる憑代を生み出そうとする。
 だが、憑代の選別にあたっても、相も変わらず貴族達は政治的な小競り合いを捨てられない。
 最終的に、アギディスに反目するルスラとティオキアの民の溜飲を下げるためにも、ルスラ出身の有力貴族であるベルナデート家に白羽の矢が立つのであった。

 ベルナデート家の娘である『ルチア・レ・ベルナデート』は、先の戦争によるアギディスの侵攻で全てを失い、家族と共に聖都ヴァルヴァラにてひっそりと暮らしていた。

 「私が……聖女に?」
 「そうだ、ルチア! この世界と民衆を守護し、神に打ち勝つための役目を授かったのだ!」

 父親から突然告げられた内容に、ルチアはまだ事の大きさを理解できずにいる。
 ルチアには、秀でた才能も特殊な力もない。戦争が始まるまでは比較的平々凡々とした暮らしを送ってきた。
 それは彼女自身も自覚しており、だからこそそんな自分が選ばれたという事実に、驚き以上に困惑さえ感じていた。

 「私達には今、人々の心の拠り所となる若く聡明な人物が必要だ。何、難しい事を考える必要はない。ルチアは戦地へ赴く兵士達や、苦しむ民衆の気持ちを受け止め、慰めるだけでいいんだ」
 「わか、りました……それくらいの事で良いのなら……」

 ルチアの凡庸さは彼女自身だけでなく、彼女を聖女に選出した貴族達も当然知っている。
 ではなぜルチアが選ばれたのか。
 それは、民衆が信仰するに値する“端麗な容姿を持つ”というただ一点のみ。
 たったそれだけの理由で、彼女は聖女として祀り上げられたのだった。


EPISODE3 幸福の影にある打算「私に聖女が務まるか不安だったけれど……民の笑顔を見ていると、これでよかったのだと思えるわ」


 聖女になってから、ルチアの生活は一変した。
 戦争で全てを失い、やっとの思いで最低限の生活を取り戻した環境とは打って変わり、身の回りの世話をするという事で数人の侍女がルチアにつく事になった。
 毎日綺麗な衣装が着せられ、専任の料理人が作る御馳走が振る舞われる日々。
 民はもちろん貴族でさえままならぬ暮らしを送る中、夢のように豪華な生活がルチアを迎えたのだった。
 盛大に迎えたのは生活だけでなく、ヴァルヴァラに集結した民衆達も同じ。
 街を歩けば「聖女様!」と人々から声をかけられ歓ばれた。
 元より貴族の割に庶民的だったルチアは身の回りの事は自分でこなしていたため、あまりの変化に当初は大いに困惑したものの、その裕福な生活に対して徐々に嬉しさを感じ始めていた――。

 ヴァルヴァラの聖堂にて、唯一の公務といえる祈りの儀式が執り行われている。
 従者があらかじめ用意した祈りの言葉を、復唱するように民衆へ告げるだけの儀式。
 それでも民は、縋るようにルチアへ祈りを捧げた。
 神の使いでもなく、作り上げられた聖女であるルチアへの祈りが民に何かをもたらす事はない。
 だがルチア自身は、民衆をまとめ上げ、希望をもたらす事に意義を感じ始めていた。
 そんなルチアと民を眺めながら、ヴァルヴァラで権力を持つ貴族達はほくそ笑む。
 彼らが聖女という存在を作り上げた実情は、貴族達が国を離れ、海を渡って逃げ出すまでの時間稼ぎに過ぎないからだ。
 そんな貴族達の思惑をまるで察知したかのように。
 創造神イデアは、突如その姿を現した。


EPISODE4 蒸発する水の都「これが神の力……こんなのでたらめすぎるわ……! 私に戦えと? 悪い冗談なのでしょう?」


 イデアが使役する魔物の群れが、水の都ティオキアを蹂躙していく。
 ティオキアを奪還すべく組織された反攻軍が続々と進軍していく中、ルチアはヴァルヴァラの聖堂にて祈りを捧げていた。

 「どうか、真なる神の加護が皆にあらん事を――」

 だがそんな祈りもむなしく、反攻軍の部隊は壊滅状態に陥ってしまう。
 それは、部隊が前線に発ってからほんの間も無くの事だった。
 ヴァルヴァラへと届いた、応援要請が記された緊急の手紙。
 その手紙が届いたという事は、多くの命があっけなく散った事を意味していた。

 応援要請を受けたものの、国中の兵士のほとんどが反攻軍として前線へ赴いている。
 そのため急ぎ義勇軍を募り、ルチアも侍女と共に前線へ向かう事となった。
 護衛を配備したとはいえ、まさか自分が最前線へ向かう事になると思っていなかったルチアは、不安と緊張で小さく震えていたが、どこかまだ遠い出来事のように思っていた。
 だが、すぐに彼女も理解する事となる。
 この世界の“現実”が、どれほど残酷なものであるかを――。

 ルチアが義勇軍を率いてティオキアへ到着した時には、すでに街は半壊状態であった。
 強烈な死臭が漂い、ヒトの形を保っていない屍が溢れ、魔獣の群れがとめどなく暴れまわる、まさしく地獄の様相。
 これでは奪還したところで、復興までの労力と見合わない。そう判断した義勇軍は、急いで国境まで撤退しようとする。
 だが、そんな軍を立ち塞ぐようにイデアが姿を現した。
 大仰な仕草など微塵もなく、まるでただ通りがかったかのような身軽さで。
 突然の出来事にどよめく兵士達の中で、ルチアは初めて見る創造神の姿に驚き、思わず声をあげる。

 「あれが創造神イデア……? まだ小さな子供じゃない……!」

 人間ならば絶対に聞き取れないほどの距離。
 にも関わらず、イデアはその言葉にクスクスと笑う。

 「ふふ、何かと思えば……貴様がコレらを率いる者か? 何の力も持たぬ小娘が。笑わせてくれる」

 そう言い放つと、一斉に魔獣の大群が襲いかかり、一瞬で隊列は無力化されてしまう。
 為す術なく魔獣に踏み潰され、腕を、脚を、その頭を喰いちぎられていく前線の兵士達。
 まるで命を弄ぶかのように、最期の止めを刺さない魔獣達の攻撃のおかげで、半死となった兵士達の肉体が次々と戦場に転がっていく。
 苦痛と絶望に歪む彼らの叫びは幾重にも重なり、さながら楽団の奏でる死の交響曲のように、戦地に響き渡っていた。
 イデアから「何の力も持たない」と嘲笑されたルチア。
 神の言う通り、ルチアは戦場において役立たずそのものである。

 「どうすれば……私に出来る事は……」

 少しでも何か力にと考えるが、ルチアに出来る事など何ひとつとして無い。
 繰り広げられる惨状を前に、聖女はただ茫然と見ている事しか出来なかった。


EPISODE5 聖女としての器「聖女の役目を果たせていると、思いあがっていた。待っていたのは目を背けたくなるほどの現実……」


 「これは……そう、悪い夢よ。お願い……夢であって……」

 強大な神との戦いなど、どこか絵空事のような遠いものだと思っていた。
 それが現実なのだという事を最悪の形で理解したルチアは、恐怖のあまりその場にへたりこむと、うわ言のようにブツブツと呟き続ける。

 「ルチア様、こちらです!」

 侍女の呼びかけにも反応できず、無理やり腕を取られたルチアは、もつれる足でその場を撤退する。
 魔獣達の激しい追撃に、兵士達や侍女が次々と命を落としていく中、ルチアはひたすら逃げ続け、国境軍の野営地へと逃げ込んだ。

 撒き切れたのか、魔獣からの追撃はやんだ。
 ルチアは震える自身の体を抱きながら土のうの上に腰かけると、思い出したかのように息を吐いた。

 「ルチア様、お水です。どうぞお召し上がりになってください」
 「ありがとう……頂くわ……」

 依然として水筒を持つ手の震えは止まらないが、それでも飲み終わる頃には多少の冷静さを取り戻す。
 ふと周りを見渡すと、当初率いていた兵士の数が半数以下になっている事に気付いた。
 逃げゆく中、いくつも目にした侍女や兵士達の死の間際。
 その光景が、ルチアの脳裏に焼きついて離れない。

 (私は、ただの人間……神の声など聞いた事もないもの……そんな私が……なぜこんな目に遭わなくてはならないの……?)

 この現実は理解した。だが、受け止めるとなると話は別だ。
 惨状を直視し、その上で立ち上がるには、ルチアの心はあまりに幼く凡庸であった。

 (こんな事になったのも、聖女なんて役目を引き受けたから……? いえ、今はそんな事どうでもいい……死にたくない……私はまだ死にたくないの……!)

 自身に降りかかる死の恐怖。
 それは毒矢のようにルチアの心に突き刺さり、確実に蝕んでいくのだった。


EPISODE6 誰かの希望、誰かの呪い「もう私の意思ではどうにもならない……。私は聖女として振る舞い続ける。操り人形のように」


 街へ帰り着いたルチアと生き残った義勇軍を待っていたのは、戦地の空気とは余りにも溝のある、まるで凱旋行進を迎えるような盛大な祝賀だった。

 「聖女様が悪魔を追い払ってくれたんだ!」
 「さすがは救世主様だ……!」

 湧き上がる街中から聞こえてくる、民の歓びの声。

 (……追い払った? 私は何もしていない……ただ逃げ回っていただけ……それどころか、多くの命を……)

 民衆の期待に満ち溢れた笑顔とは裏腹に、虚しさだけがルチアを包む。
 それでも、上辺だけの笑顔を浮かべた聖女は、馬車の中からただただ力なく手を振り続けた。

 帰還して間も無く、取るものも取らず、ルチアは家族との話し合いの席を設けた。
 民衆と同じ表情を浮かべる父親に若干辟易しつつも、ルチアは訴える。

 「創造神の恐ろしさは、人間が計り得るものではありません……あれと戦うなんて……いえ、戦おうと思う事すらおこがましい……」
 「おお、怖い思いをしたのだね。戦とはそういうものだ。直に慣れるだろう」
 「そういう次元の話をしているのではありません! 私は、聖女の器なんかじゃない……役目を降ろさせてください!」
 「なんて事を言うのだ! 民衆が希望である君を失ってしまったら国の士気は確実に下がってしまう。それに同志達から何を言われるか……」
 「お父様は私がどうなっても良いとおっしゃるのですか!?」
 「……そういう話ではない。いいかねルチア、聖女がいるからこそ多くの民の心が救われているのだ。その意味をよく考え直しない」

 取りつく島もなく説き伏せられてしまったルチアは、自室に戻り扉を閉めると、そのままズルズルと扉に寄りかかるように崩れ落ちていく。
 家族であれば自分の味方になってくれると思っていたが、淡い期待はあっさりと打ち砕かれてしまった。
 もう、頼れる人はどこにもいない。

 「聖女とは一体何なのだろう……いくら人々の救いになったって、私はただの人間……戦う力なんて持っていないのに……」

 ルチアは一人泣きながら自分の運命を呪う。
 一番近くで世話をしてくれていた侍女は死んだ。
 皮肉にも、泣き声を聞かれる心配をする必要はなくなっていた。


EPISODE7 星望む森の中で「彼に出会って、一人ぼっちじゃないって感じたの。私はずっと、世界に取り残されたと思っていたから」


 付き従う侍女が減った事を幸いに、ルチアは夜な夜な部屋を抜け出しては、近くの小さな森へと足を運んだ。
 とはいえ、何をするわけでもない。ただ夜空を彩る満点の星や、緑の香りを運ぶ風を感じながら、物思いにふけるだけ。
 それは、ルチアなりのささやかな逃避行動だった。

 その日も岩の上に腰掛けて己の現状を恨んでいると、ふと後ろから草を踏む足音が聞こえて、驚いて振り向く。
 そこには狩人と思われる装いに身を包んだ、ルチアと同じ歳ほどの青年の姿があった。

 「あ、聖女様だ……ご、ごめんなさい! 驚かせてしまったでしょうか」
 「いえ……」

 人畜無害そうな顔をしてはいるが、得体のしれない男。
 何より、ルチア自身がどう思おうとも彼女はこの国の聖女という立場。無用ないざこざは避けたい。
 ルチアは関わり合いにならないよう静かにその場を立ち去ろうとする。
 だが青年は、それを引き留めた。

 「もしよろしければ、祈らせていただけませんか」

 そう言うなり青年は、返事も聞かずにその場に跪き、目を瞑って祈り始めた。
 面食らったルチアだったが、無下には出来ず青年をじっと見つめていると、そのうちふと気付く。
 普段は大衆の前で愛想を振りまくだけだったため、思えば1対1で関係者以外と話をするのは聖女になってから初めてだという事に。
 それもあってか、どこかワクワクする気持ちがルチアの心に芽生え始める。
 また、青年があまりにも長い事真剣な表情で祈り続けているのが可笑しく、ルチアの警戒心はすっかり薄まっていた。

 祈りを終えた青年に、何をそんなに熱心に祈っていたのかとルチアが尋ねると、青年は身の上話を始める。
 聞けば、青年は狩人として暮らし続けたいのだが、騎士である父親に強引に跡を継がされそうで困っているという。

 「ま、狩人としての腕は二流なんですけどね! あはは……」

 おどけて笑う青年だったが、同調して笑う事が出来ない。
 ルチアは、青年に共感していた。

 「私も……貴方と同じようなものです。望まぬ道を歩まされて……」

 気付けば、自分の立場、気持ち、置かれている状況。一人思い詰め誰にも言えなかった心のうちを青年に吐露していた。
 最初は驚いていた青年だったが、話を最後まで聞くと微笑んで言う。

 「そうですか……でもちょっと安心しました。聖女様も、一人の人間だったのですね」

 それを聞いたルチアは、初めて聖女ではなく、ルチアという人間だと認められた気がして嬉しくなり、思わず涙を零す。

 「わっ、わっ! 僕、何かまずい事言っちゃいましたか!?」
 「ううん……違う……違うの……」

 心の丈を明かしあった二人の距離は急速に近づき、それからルチアと青年は人知れず夜な夜な逢瀬を交わすようになっていく。
 やがて再びやってくるであろう戦いから、目を逸らすかのように。


EPISODE8 残された痛み「あの日々は、全て嘘? 私は嘘にすがっていたの? ……本当は分かってる。私はまた一人になったのね」


 近づき続ける青年との距離。それは、唇と唇が重なるほどに。
 ルチアは青年を、一人の男として愛するようになっていた。
 だが、二人の関係を認める者は国中探しても一人としていないだろう。
 ある晩、青年は駆け落ちを提案する。
 ここではないどこかなら。たとえ二人だけの世界でも、創造神の脅威から逃げ続けてでも。愛があれば全てを乗り越えていける。
 それは若く、極めて短絡的な発想であったが、本来年頃であるルチアはその提案に頷いた。

 翌日、荷物をまとめて部屋から抜け出したルチアは、街から離れた場所の打ち捨て去られた小屋の中で、青年と一晩を明かした。
 初めて全身で感じる他者の体温。
 とてつもない幸福感がルチアを満たし、乾いた心は潤いを取り戻していく――。

 青年の腕の中でまどろむルチアは、自身の気持ちを伝えていない事に気付いた。
 互いに通じ合うように関係を育んでいたため、言葉にしていなかったのだ。
 「朝起きたら、ちゃんと言葉でこの気持ちを伝えよう」そう決心しながら、ルチアは眠りについた。

 翌朝、目が覚めると小屋の中に青年の姿はなかった。
 それどころか、あたりを見回すと衣類を含めたルチアの荷物一式が無くなっている。
 どこか散策に行ったのではと、ルチアは肌着のまま青年を探しに歩き回ったが見つける事は出来ず、やがてすっかり日も沈んでしまう。
 途方に暮れたまま、青年の帰りを小屋で待ち続けるが、彼が帰ってくる事はなく、かわりに現れたのはルチアを探しまわっていた侍女達だった。

 「ルチア様! ずっと探していたのですよ!? まあ、そんなお姿で……お身体は大丈夫なのですか!?」
 「ええ……大丈夫……」

 慌てふためく侍女に力ない返事で無事を伝えると、安堵する侍女は胸を撫で下ろしながら言った。

 「本当に良かった……最近、若いコソ泥が出没していると街でも噂で……何かされたのではないかと気が気ではありませんでしたのよ」

 ――侍女に引きずられるように邸宅に戻り、半ば無理やり入れられた風呂で、湯に浸かりながらルチアは考える。
 青年は物取りだったのか。
 今まで自分に見せていた姿は全部演技だったのか。
 自分が聖女と知って近づいていたのか。
 いくら考えても頭はぼんやりとして結論が出せない。

 ――暖かな人の温もり……。
 あの時、私は確かに感じたはずだったのに……。

 ふと何もかもが嫌になったルチアは、湯に顔をつけながらうずくまってしまう。

 ルチアにとって信じられるもの。
 もはやそれは、この世界のどこにも無い。


EPISODE9 血で咲く花「皆、私を守ろうと死んでいく……何の力も持たないただ人の子である私のために……」


 青年との出来事でルチアは憔悴しきっていた。
 そんなルチアに追い討ちをかけるように、創造神イデアと、それが率いる魔獣達は、国境線の近くまで侵攻を深めていく。
 塞ぎ込んでいるルチアだったが、周りは誰もそれを許してはくれない。
 再び強引に前線に立たされ、国境軍への祝福の儀式を強要されてしまう。
 顔色も優れず、消極的なルチアが行う儀式に、兵士達にも不安が広がっていく。

 それが影響したのか、元より敵う相手ではなかったのか。
 戦闘が始まるや否や戦線は崩壊し、兵士達は殺戮の憂き目に遭う。
 崩壊した前線から雪崩れ込んでくるイデア達は、国境線を超えたあたりでふと足を止めた。
 イデアがただ一点見つめる先には、ルチアの姿。
 人間を滅ぼす神として。神に抗う聖女として。
 それは避けようのない運命との対峙であった。

 「愚かな……未だそのような木偶を担ぎ上げているのか……貴様ら人間が崇め祀るソレが何なのか、分らせてやろう……」

 戯れとばかりに、イデアはルチア達一行に狙いを定めた。
 脱兎の如く戦地を離れるルチアを、まさに捨身で兵士達は守り抜こうとしていく。
 すべては、希望の象徴たるルチアのために。

 だが、それは戦いと呼べるものではなかった。
 兵士達の命はいとも簡単に狩り獲られていく。
 余りにも一方的な殺戮は、もはや生贄と呼べるのかも疑わしかった。


EPISODE10 終幕する少女の物語「私はやっと解放された。運命から、偽りの自分から。人が大勢死んだけど、今はどこか清々しい……」


 イデアの使役する魔獣の追撃は、少しずつルチアの背中へと追いつきつつあった。
 ルチアを守る護衛兵達も、一人、また一人と減っていく。
 それを迎えるようにヴァルヴァラからやってきた後発の部隊に合流するも、彼らを時間稼ぎに使うなどしてその場を凌いだ。
 死にたくない。ただその一心で。
 味方すらも利用しながら、ルチアは逃げ続ける。
 その頭に命の重みなど考える瞬間は、微塵もない。

 「なぜ私がこんな目に遭わなければならないの!? 聖女だからって……そんな理由で死ぬのは嫌!!」

 逃亡の最中、ルチアはついに取り繕う事もせず侍女達に当たり散らしてしまう。
 民を導く絶対的な存在であるはずの聖女が自身の生を懇願し喚く姿に、兵士も侍女達も困惑の色を隠せない。
 当然士気などあるはずもなく、気付けばルチア達は義勇軍など名ばかりの、一方的に狩られる獲物へと成り下がっていた。

 それでも逃げ続けたルチア達の眼前に、広大な森が現れた。
 森の中には大量の罠が仕掛けてある。罠は味方なら判別がつくよう一定の法則で仕掛けられており、自分達が掛かる事はない。その上、追手の足止めをするには十分な量だ。
 つまり、あの森にさえ入る事が出来れば逃げ切る事が出来る。
 そう考えたルチアが周りを見回すと、あれだけいた護衛達が両の手で数えるほどにまで減っている事に気付く。
 果たして振り切れるだろうか。
 そんな考えが一瞬脳裏をよぎるも、ルチアはすぐさまそれを振り払って走り続けた。

 ――私は生きる。生き続けてみせるわ。
 この世界は狂っている。本来私がいるべき場所じゃない。
 そう……私の場所じゃないの。
 聖女なんてくだらない。私は……自由になる……!

 無我夢中で走り続けたルチアは森へと飛び込むと、罠を避けつつ走り続ける。
 しばらくすると、追手の姿が見えない事に気が付いて足を止めた。だが同時に、殺されてしまったのだろうか護衛達の姿も消えていた。

 「逃げ……きれたの……?」

 逃走と恐怖と興奮で、あがっていた息を整える。

 自分は生き残ったのかもしれない。その一瞬の安堵で、たちまち足が震え出してしまう。
 だが、それは決して不快なものではなかった。
 震えを抑える事もせず、「あは……あはは……」と乾いた笑いが溢れ出す。
 生きている。
 その喜びだけをルチアは噛み締めていた。
 その時だった。

 「ルチ……ア……さ、ま……」

 呻くような声と共に木陰から現れたのは、ルチアの侍女だった。
 全身ボロボロになっており、足取りもおぼつかない。
 彼女は倒れるようにルチアにもたれかかると、ルチアが声をかける間も無く事切れてしまった。
 ルチアは、彼女の顔を見ようと寝かせた遺体を覗き込む。

 「――――ひっ!!」

 そこには肉体の大半を魔獣の毒液で溶かされた、痛ましい姿があった。
 特に顔の溶解はひどく、複数いた侍女の中の誰だったのかも判別できない。
 だが、その姿を見た瞬間。
 侍女の死を悲しむルチアが浮かべていた悲痛な表情が、消え去った。
 残されたのは、能面のような無表情と、微かに歪む口元だけ。
 おそらくは歳もそう変わらないであろう侍女の遺体をしばらく見つめていたルチアは、おもむろに遺体から衣服を剥ぎ取り始めた。
 そして自身も衣服を全て脱ぐと、侍女の遺体へと着せていく。
 一連の行動に死者への敬意は感じられない。まるで物を扱うような乱暴な所作だった。
 互いの衣服をすり替えたルチアは、どこか遠い眼差しで呟く。

 「……これで聖女は死んだ。私はもうただの人間。国のため、民のため……そんな事、もうどうでもいい……」

 かろうじて服の体を成している侍女の衣服を身に纏ったルチアは、何か独り言を呟き続けながら、フラフラとした足取りで森の奥へと消えていった。
 この瞬間、美しき聖女ルチア・レ・ベルナデートは死んだ。
 運命を狂わされた、ごく平凡な貴族の娘。
 彼女は自らの手で人生の幕を下ろした。
 輝かしいはずの、次の舞台を始めるために――。


EPISODE11 かつて少女だったもの「これは、誰も知らぬ少女の歴史。幕は下りても彼女の物語は続く。生きる事を選び続ける限り」


 戦いが終わって、あくる日。
 ヴァルヴァラでは「初代聖女は亡くなった」という内容で民衆に発表がなされた。
 残された侍女の遺体は、ルチアとして埋葬された。真相など誰にも知られないままに。
 このまま民を混乱と恐怖に怯えさせておくわけにもいかないと考えた貴族達は、突貫で二代目聖女を作り上げ、心の拠り所のない民もそれに順応し、祀り上げていく。
 だがそれもむなしく、ほどなくして起こった新たな聖女アンナと創造神イデアの戦いは、世界崩壊という形で終わりを告げた。
 世界を支える4つの精霊の力も、人々の希望であった強き魂を持つ聖女も、それを取り込んだ神すらも。
 もうこの世界には存在しない。

 しかし、それでもなお。
 僅かに生き残った人々は、祈り続けていた。
 かつての神か。
 はたまたいるかも分からぬ神へ向かって。

 ――イデアの手によって廃墟となったヴァルヴァラの一角。
 一人のうら若き妙齢の女性が、虚ろな目で窓の外を眺めている。
 窓の外に広がるのは、怒号や悲鳴が飛び交う、秩序など崩壊した世界。

 「私は地を這ってでも、泥をすすってでも生き延びる……簡単に、死んでなんか……」

 そう女性がぼそぼそと呟いた時、彼女の名前を呼ぶ老人の声が響く。
 その声に反応して振り向くと、汗を滲ませながらニヤつく男が立っていた。

 「お客さん、この子はどうかね?」
 「こりゃいいな。この子にするよ」

 男は女性に近づくと、強引に肩を抱く。

 「ハハッ、今夜は楽しもうぜ。なあ?」

 おもむろに顔を近づけてくる男に、嫌悪感で顔を歪ませながらも、女性が抵抗する素振りはない。
 老人から丁重にもてなすように言いつけられた女性は、男と連れ立って部屋とも呼べない部屋を出ていく。
 その時、女性は誰にも聞こえないほど小さく呟いた。

 「自由なんて……聖女を引き受けたあの時からすでに無いのよ……」

 頬はこけ、影が落ちた表情ながらも、かつてはさぞ美しかったであろう事を思わせる彼女の顔立ち。
 その顔の上で揺らめく二つの瞳。それは虚ろながらもここではないどこか遠くを眺めているように見えた。

 かつて自由に焦がれた少女が行き着いた、ひとつの終着点。
 自由を掴む事も出来ず、絶望に打ちひしがれ、尊厳をかなぐり捨てる事になっても。
 それでもなお、彼女は生き続ける運命を選んだ。
 たとえそれが、永遠に続く絶望だったとしても。


チュウニズム大戦

レーベル難易度スコア
スキル名/効果/備考
★シビュMAS0 / 500 / 1000
オールレベルチェイン(チェイン選択権)
自分の場にBAS、ADV、EXP、MASがある時
発動。自分の場の1枚を選びCHAINしてもよい。



■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント