犬公 ミミ美

Last-modified: 2024-05-10 (金) 22:41:04

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犬公 ミミ美.png
Illustrator:きしべ


名前犬公 ミミ美(いぬひろ みみみ)
年齢18歳
職業高校生

数年前出会った「ボクくん」に想いを馳せる田舎の女子高生。
いつものように悩むある日、目が覚めると獣人になっており…?

田舎出身、身長が高い、白いワンピース、ショタコン…などの要素から、モデルは都市伝説妖怪の八尺様である可能性が考えられる。
制作者のTwitterにてラフ案が公開されている。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1ゲージブースト【LMN】×5
5×1
10×5
20×1


ゲージブースト【LMN】 [BOOST]

  • ゲージ上昇率のみのスキル。
  • 初期値からゲージ6本に到達可能。
  • LUMINOUS初回プレイ時に入手できるスキルシードは、SUN PLUS終了時点のゲージブースト【SUN】のGRADEに応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
    効果
    ゲージ上昇UP (???.??%)
    GRADE上昇率
    ▼ゲージ6本可能(170%)
    1175.00%
    ▼ゲージ?本可能(???%)
    ????.??%
    ▲SUN PLUS引継ぎ上限
    推定データ
    n
    (1~)
    ???.??%
    +(n x ?.??%)
    シード+10.??%
    シード+50.??%
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期最大GRADE上昇率
2023/12/14/時点
LUMINOUS
~SUN+448209.90%
所有キャラ

所有キャラ

  • CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
    Verマップエリア
    (マス数)
    累計*1
    (短縮)
    キャラクター
    LUMINOUSep.Ⅰ2
    (55マス)
    60マス
    (-マス)
    犬公 ミミ美※1
    ※1:初期状態ではエリア1以外が全てロックされている。

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
 
1617181920
スキル
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 ボクくんとの別れ 「私はボクくんと一緒にいたいだけなのに……」


 どうして、私を拒絶するの?
 私はただ守りたいだけなのに……
 一緒にいようよ、ねえ……
 キミは私に別れの言葉だけを告げて去っていく。
 私はその後姿を見ていることしかできない。
 キミのぬくもりが、匂いが遠くなっていく……。
 手を伸ばせば届きそうな距離なのに、その手を伸ばしてしまったから、こんな結末に……
 なんで、誰も理解してくれないの……
 一緒にいられないなら、もう私の人生に意味なんて……

 ボクくん……ボクくん――

 『な、なんやねん、これ……』
 『あれは男の子アルね、失恋しちゃったアルか?』
 『ということは……今度はこの人の恋愛を叶えてあげればいいのだ?』
 『この中にそういった色恋沙汰の経験がある者はおるのか?』
 『…………』
 『おらへんのかーい! かーい、かーい……』
 『でも、漫画とかアニメで恋愛モノを見たりしてるから、経験豊富なのだ!』
 『ならば、安心じゃな』
 『安心ネ!』
 『かーい、かーい……って、突っ込めやぁ!』

 彼女の悲劇的な未来を見届けたあと、八雲たちは未来を修正するため、過去へと向かっていく。

 ――たどり着いたのは自室で眠る犬公ミミ美の中……だったのだが。

 『えっ、どういうことなのだ?』
 『あの男の子の写真をいっぱい飾ってるアルね』
 『仲がよかったのじゃな』
 『でも、よう見てみ。どの写真もこっち見てへんで』

 ミミ美の部屋に飾られていたのは未来で見た少年の写真――だけではなく、少年以外の写真も数多く飾られていた。

 『子役とかの写真アルか? こういうの売ってるの知ってるアルよ!』
 『いや、ちゃうやろ……』
 「あれ、なにか聞こえたような……」

 八雲たちの声に気づいたのか、ミミ美が声の主を探そうとあたりをキョロキョロし始める。
 だが、自室にいるのだから気のせいだろうと、目に留まった写真を眺め始める。

 「ああ、今日もかわいいなあ……ボクくん……
早く会いたいよぉ……」

 うっとりとした表情で少年の写真を見つめる彼女に八雲たちは声が出ない。
 しかし、はっと我に返った八雲たちは彼女に事情を説明しようともう一度、話しかけた。

 『この声が聞こえておるのじゃろ。もし聞こえておるのなら、なにか反応せい』
 「えっ、またこの声……」
 『気のせいではない、話を聞くのじゃ』
 「な、なにこれ、どういうことなの……?」
 『話せば長くなるのじゃが、かいつまんで話すぞ。おぬし、この少年と仲良くなりたいんじゃな?』
 「えっ……」
 『安心せい、そういった悩み事は嫌というほど見たり聞いたりしておるからな』
 「わ、私とボクくんが良い仲になれるんですか!」
 『もちろんじゃ、わらわに任せておけ』
 「ぼ、ボクくんと私が……ふふふ……」
 『ホンマに大丈夫なんか?』
 『まあ、なんとかなるじゃろ。子供に好かれればいいだけのことじゃからな』
 『そうそう、子供の相手なんて楽勝アル』
 「で、でも、ボクくんは私のこと、あまり好きじゃないみたい、というか嫌われてるかも」
 『なんでや? 嫌われるようなことしたん?』
 「デカ女ってよく言われるの……私、身長高いし、身体も大きいから……」
 『確かに大きいのだ、色々と』
 「うう……」
 『あっ、違う! 大きいのはいいことだと思うのだ!頼もしいのだ、うん!』
 「頼もしさなんて必要ないよぉ……もっとか弱い女の子でいたかったな……」
 『か弱いってどんな感じアル?』
 「ええっと、なんだろう……子犬っぽい感じかな」
 『さすがにそればっかりは無理じゃ。お主は中身で勝負せい!』
 「はい……」
 『にしても、よう信じとるな。こんな妙な声聞こえてきたら普通は警戒するやろ』
 「えっ、でも助けてくれるって言うから……」
 『こっちも話が早くて助かるのじゃ。それで、ボクくんとやらはどこにおる?』
 「都会に引っ越しちゃったの。でも、夏休みにはいつも帰ってきてくれるから、明日帰ってくるよ」
 『ほう明日か。それは好都合じゃな。ならば、まずは相手との関係を見るか』

 ミミ美とボクくんがどういう関係なのかを見極めるため、八雲たちは帰郷するはずのボクくんを待つこととなった。

 ――そして翌日。
 目覚めたミミ美がボクくんを出迎えようと起き上がろうとする。

 『ほら、早く起きんか。出迎えると言い出したのはお主じゃろ』
 「う、うーん……ボクくんが来るって思ったらなかなか寝付けなくて……」
 『いいから早くしたくするのだ!』
 「わ、わかったよぉ」

 ミミ美が起き上がって着替えようとした瞬間――

 「……ん、なんだろうこれ?」

 ふとミミ美の目に入ってきたのは、動物の毛のようななにかだった。

 「身体に毛布でも絡まってたのかな? ……あれ、でも夏場に毛布なんて使わないし」
 『ち、違う! おぬし、よく腕を見てみるのじゃ!』
 「私の腕がどうしたの?」

 ミミ美が言われて自分の腕を見ると、そこには動物のような手があった。

 「えっ……?」

 ミミ美は慌てて鏡の前へと走る。
 鏡に映るのがいつもの自分だと思っていた彼女だがそこに映っていたのは――

 「い、犬……?」


EPISODE2 ボクくんと犬娘 「ボクくんと仲良くなれるなら、私はなんでもする!」


 私の身体はどうしてこんな姿になったんだろう。
 これもなにかの罰なのかな。

 『それで、どうするのじゃ?』
 「どうするって言われても私はなにもできないし……待つしかないと思うよ」
 『それでいいアルか?』
 「お父さんやお母さんはそのうち治るって言ってたけど……」
 『なんやずいぶんラフな親やな……』

 うちの実家は古くから続く神職的なものらしく、話を聞いてみたらこういうことは両親から言わせたら日常茶飯事みたい。
 だから、私の姿を見せても驚きもしないで、身体のあちこちを調べ始めた。
 結局、原因はわからなかったけど。

 『おかしいと思っておったんじゃ。おぬし、こちらの声が雑音なく聞こえておるじゃろ』
 「え? うん、聞こえてるよ」
 『それはおぬし自身が強い力を持っておる証拠じゃ。犬の姿になったのも、そこに原因があるかもしれん』
 「……ねえ、犬の姿になったのはどうでもいいの。早くボクくんのお迎えに行かないと!」
 『え……?』

 そろそろボクくんのバスが到着する時間。
 帰郷する日程と時間は全部把握してるし、予測も完璧のはずだから今から行けば出迎えができる。

 『そ、そこまで把握してるアル?』
 『でも、嫌われてるかもって言ってたのにいつも出迎えてたのだ?』
 「うん、直接会う勇気はなかったんだけど遠くからいつも見てたから」
 『遠くから……』
 「それよりも早く着替えていかないと」

 部屋に戻って適当な服を見繕おうとしたけど、どれも犬用になんてなっているわけもなく――

 「うーん、着れる服が無いよ……」
 『どうするアル?』
 「あっ、でもこのワンピースなら着れそうだよ。尻尾のところはなんとかこう……」

 引っ張り出してきた裁縫道具でワンピースを今の自分に合わせて改造していく。
 すぐに出かけないといけないし、今は簡単にぱっと仕上げて……

 「よし、これなら着れそう! 時間は……うん、これなら間に合いそう!」
 『器用ネ、本当に仕上げちゃったアル』

 急いで家を飛び出してバス停へと向かう。

 『お、おい、待つのじゃ! このような姿で外になど出たら――』
 「大丈夫だよ、田舎だから滅多に人なんていないし」
 『あっ、本当アル。全然、人がいないネ』
 「田舎だけど人は温かいし、空気も良くて過ごしやすいんですよ」
 『こんななんもないとこ、うちには耐えられへんな』

 田んぼのあぜ道を駆け足で進んでいく。
 なんだか、いつもより足取りが軽いのはボクくんに会えるからなのか。
 それとも犬の身体になったからなのかな。

 「ほら、見えたよ!」

 バス停が見えるところまで来ると、ちょうどバスが来るところだった。
 このままだと目立ってしまうからどこかに隠れて見守らないといけない。

 『なんで隠れるんや?』
 「言ったでしょ、ボクくんに嫌われてるから直接は顔を合わせられないって……」
 『ちなみにじゃが、デカ女と言われたのはいつくらいの話しじゃ?』
 「5年くらい前のことかな。あの頃から身長とかも高かったから……」
 『そんな前のことなど、いちいち気にするな!勇気を出さねば、進展せんじゃろ!』
 「で、でも……」
 『その前にボクくんは来てるアルか?』
 「あっ、そうだった……」

 バス停に目を向けると降りてくる人がひとりだけ。
 間違いない、ボクくんだ!
 ああ……この匂い。なつかしい……嬉しすぎて、尻尾を振るのを止められない。

 「ボクくん、今年も来てくれたんだね……」
 『来てくれたって、アンタに会いに来たわけや――』
 『それとこれとは別じゃ。おぬしが会いたいのならさっさと会ってこんか!』
 「で、でも……」
 『当たって砕けるのだ!』
 「そ、そうだよね。私が前に進まないと……うん、砕けてみる!」
 『……ん? ちょっと待て、おぬしの今の姿は――』

 私はボクくんに向かって走り出す。
 そうだよね、話してみないとわからない。
 きっともう私のことを受け入れてくれるはず。
 私がこんなにもボクくんのことが大好きなんだからきっとボクくんもそうに違いない!

 『ま、待て! 今の姿を見せたら――』
 「ボクくん!」
 「えっ……?」

 振り向いたボクくんが真っ直ぐ私のことを――私だけを見てくれている。
 ああ、ボクくんが私の目の前にいるのね。
 なにも変わってない、昔の可愛いままのボクくんだ。
 こんなに小さくて細いのに、たったひとりでここまで来ちゃうなんて……

 ――なんて危ないことをさせるんだろう

 『お、おい、おぬし! 話を聞いておるのか!』
 「あっ、そうだった!」
 「え、ええっと、だ、誰ですか……?」

 ボクくんはなぜか私を見て怯えているように見える。
 やっぱり、デカい女は嫌なのかな……

 『バカモノ! おぬしは今、どういう姿なのか忘れておるのか!』
 「あっ、そういえば……!」
 「い、犬が喋ってる?」
 「違うんだよ、ボクくん! 私のこと覚えてるかな、ミミ美お姉ちゃんだよ!」
 「えっ、ミミお姉ちゃん?」
 「そう! 覚えててくれたのね!」
 「覚えてるけど、なんで犬みたいになってるの?」
 「うーん、説明するの難しくて……」
 「大丈夫なの? ちゃんと病院とかで診てもらった?」

 ああ、ボクくんが私のことを心配してくれてる。
 嫌われてるって思ってたけど、やっぱりボクくんは私のことを好いてくれてたんだね。

 『なんでそうなるネ!? まだ相手の気持ちを聞いたわけじゃ――』
 「ボクくん、これからおじさんのところだよね。私が連れて行ってあげる」
 「だ、大丈夫だよ、ボクひとりでも行けるから」
 「ダーメ、ひとりだと危ないでしょ。それにお姉さんも帰るところだから」
 「う、うん……」
 「あれ、もしかして迷惑だった?」
 「そんなことないよ! で、でも、急だったし……」
 「恥ずかしがらなくてもいいんだよ。誰も見てないんだから。ほら、手出して」

 私が手を出すとボクくんが躊躇いながらも手を握り返してくれた。
 温かいけど、小さい。これがボクくんの手なんだ。
 このままずっと握っていたいな。

 「お、お姉ちゃん?」
 「あっ、ごめんね。行こうか。私もおじさんたちに挨拶しておきたいもの」

 私の手をしっかり握るボクくんと並んで歩き始めた。
 ボクくんに嫌われていないようで本当に良かったよ。
 こんなふうに手を繋いでくれてるんだから、きっと私のことも好いてくれてるに違いないよね。

 『ホンマに大丈夫なんか、この娘……』
 『思っていたよりも仲が悪い感じじゃなくてよかったのだ』
 『……じゃといいんじゃがな』


EPISODE3 可愛いボクくんと私 「私が守ってあげなきゃいけないの……」


 少しだけボクくんと幸せな時間を過ごしたあと、私は自分の部屋へと戻ってきていた。

 「はぁ、ボクくん可愛かったな……」
 『確かに可愛い子だったアルね』
 「は?」
 『えっ?』
 「グルルルル……あなたもボクくんのことを狙ってるの? どうなの、答えて?」
 『狙ってるわけないアル! 今日見たばかりアルよ、可愛いって共感しただけ!』
 「……そうだよね、ボクくんは可愛いよね。だから、私が守ってあげないと」

 本当にボクくんは危なっかしいもの。
 ひとりで行動するなんてよくないことなのになんで聞いてくれないのかな。
 私がいつも影から見守ってあげてるから今まで大丈夫だっただけなのに。

 「私が守ってあげなきゃいけないの。この夏をたくさん楽しく遊んでもらわなきゃね」
 『おお、どこかに連れ出すつもりアル?』
 「この辺りでボクくんに近い歳の子なんていないから私くらいしか遊び相手がいないの」
 「だから、外に連れ出してあげようかなって」
 『それは名案なのじゃ!』
 『今までは遊んであげてなかったのだ?』
 「うん、いつもひとりで遊んでたみたい。畑でカエルを探したり、虫を取りに行ったり」
 『田舎の遊びっぽいアルね』
 『でも、なんでそんなこと知ってるのだ?』
 「私が全部近くで見ていてあげたから。ケガをしちゃったり、変な人に絡まれたら危ないしね」
 『そ、そうアルか……』

 まずはボクくんをどこに案内するのか計画を立ててあげないと。
 ああ、でも勝手に決めちゃったら良くないかな。
 明日、ボクくんと話して決めないと。

 『ボクくんとどんなことしたいアル?』
 「ふっ、ふふふ……」
 『お、おいやめるのじゃ! なんてことを考えておるわらわたちには見えておるのじゃぞ!』
 「ご、ごめんね。今のはただの妄想だから!」
 『な、なんてやつじゃ……』

 ボクくんに楽しんでもらわないと。
 夏休みだけじゃなくて冬休みも、その次の夏休みも。
 ずっとずっとずっとずっとずっとずっと……
 ボクくんが私に会いに来ようって思えるようなそんな素敵な夏休みにしてあげよう。
 ああ、ボクくん……

 「私が楽しませてあげるからね、ふふふ……」


EPISODE4 ボクくんとデートプラン 「夏休みをいーっぱいエンジョイしないとね!」


 次の日――
 私はボクくんに会うために朝食を済ませたあと、彼の家を訪ねることにした。

 「ボクくーん、いるー?」

 玄関に上がって声を掛けると、ボクくんが2階の階段から顔を出してくれた。

 「ミミお姉ちゃん、いらっしゃい。……やっぱり、犬のままなんだね」
 「え? うん、まだ治ってないみたい」
 「……夢じゃなかったんだね」
 「ボクくんは犬は嫌い?」
 「ううん、犬は大好きだよ! モフモフってしてて、あったかくて、可愛いと思う!」
 「か、可愛い!?」

 ボクくんが私のことを可愛いって!?
 ああ、前はこんなこと言ってくれたことなかったのに犬になってよかった。

 「ボクくんがよかったら、いつでも触っていいよ。ほら、こっちにおいで」

 そう言って私はボクくんに背中を向ける。
 背中越しに見ていると、階段から降りてきたボクくんが興味深そうに左右に振った尻尾を見つめていた。

 「ほらほら、遠慮しないで」
 「で、でも、痛かったりしないの?」
 「痛くなんてないよ。ボクくんが優しく触ってくれたらね」
 「じゃ、じゃあ、少しだけ」

 恐る恐るボクくんが伸ばした手が私の尻尾に触れる。

 「んっ……」
 「痛かった??」
 「ううん、少しくすぐったかっただけだから。続けていいよ」

 探り探りで尻尾を触っていたボクくんだったけど、触る手がだんだんと大胆になっていく。

 「ああ……モフモフしてて気持いい」
 「ボクくんが気に入ってくれてよかった。腕も触ってみる?」
 「う、うん!」

 ボクくんが今度は腕を触り始める。
 ふさふさの毛があるからなのかはわからないけど、私も不思議な感覚に包まれていく。

 「肉球もある……!」

 ボクくんの小さな手が私の手にある肉球をふにふにと触り始めた。
 興味が尽きないのかもしれない。
 無邪気なボクくんも可愛くていいなあ。

 「ねえ、ミミお姉ちゃん。吸ってもいい?」
 「え、ええっ!?」

 吸うって、何を?
 ビックリした私は、尻尾をブンブン振り回してしまった。

 「あ、驚かせちゃってごめんねミミお姉ちゃん!前にね、猫を飼ってる友達が言ってたんだ。猫はメープルの匂いがするって。だから……犬はどんな匂いがするのかなって……」
 「な、なんだぁ、そういうことだったのね。いいよ、ボクくんになら好きなだけ吸わせてあげる」
 「やったあ!」

 ボクくんが私のお腹に顔をうずめた。
 深く深呼吸を繰り返しながらモフモフに包まれているボクくの顔は、とっても幸せそうだった。
 私、犬になってよかった!

 「ありがとう、ミミお姉ちゃん。ポップコーンみたいな、すっごくいい匂いだった!」
 「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
 「お姉ちゃん?」
 「あっ、ごめんね!」

 ボクくんが私から離れてしまった。
 もっと吸ってくれてもいいのに。

 「気に入ってくれてよかった。犬になるのも悪くないかもね」
 「え、ええっと、ボクは……」
 「ほら、そんなことよりも予定を立てよう?ボクくんの夏休みは限られてるんだしね」
 「そ、そうだね!」

 私はボクくんに連れられて彼の部屋へと案内される。

 「ボクくんの部屋に入るの久しぶりだね」
 「まあ、帰ってきたときに使ってるだけだからボクの部屋とは少し違うけど」
 「でも、すごいよ……」
 「えっ、なにが?」
 「う、ううん、なんでもない」

 部屋に入った瞬間、ボクくんの匂いがすーっと鼻の中を通っていく。
 犬の嗅覚はすごいって聞くけど、こんなに匂いを感じ取れるなんて思わなかった。
 肺の中までボクくんの匂いで満たされていく。

 『こ、怖いのだぁ……』
 『こらこら! あんま変なこと考えるんやない!うちらはそういうの耐性ないんやから!』
 「静かにしてて、今は匂いを堪能してるの」
 「どうしたの、お姉ちゃん?」
 「なんでもないよ、ボクくんは気にしないで。ほら、昨日話してた予定を考えよう」
 「うん!」

 私はボクくんと机を囲んで紙にやりたいことをどんどん書いていく。
 花火、魚釣り、虫取り……
 どんどん紙が埋まっていった。
 これを全部やれるかどうかは置いといてボクくんと話しながら決めていくのは楽しかった。
 この時間が永遠に続けばいいのに。

 「なんだか不思議だね。ボクくんとこんなふうに夏休みの予定を立てるなんて」
 「えっ?」
 「恋人がデートプランを考えてるみたいじゃない?」
 「こ、恋人!?」
 「ふふ、冗談だよ。そんなに焦らなくてもいいのに」
 「ミミお姉ちゃんが変なこと言うからだよ!」
 「ごめんごめん」
 「……で、でも、またこうやって遊んでくれてすごく嬉しい」
 「えっ……?」
 「そ、そうだ! 夏祭りがあるっておじいちゃんから聞いたよ。お姉ちゃんも一緒に行こうよ!」
 「う、うん、一緒に行こうね」
 「やったー!」

 喜ぶボクくんが見れてよかった。
 こんなに喜んでくれるんだったら、どうして私はもっと早く行動しなかったんだろう。
 そしたら、たくさん可愛いボクくんと素敵な時間を過ごせたかもしれないのに。

 『なんじゃ、手助けをせんでも順調ではないか。これは出る幕はなさそうじゃな』
 『でも、どうしてあんなことになったのだ?』
 『わからぬ、なにかをやらかしたとしか思えん。……じゃがしかし、あのときのミミ美は人の姿じゃ』
 『せやったら、犬の姿になっとる時点でもう大丈夫ってことやないの?』
 『わからんが、油断は禁物じゃ。特に、こやつはなにをしでかすかわからん』

 ああ、可愛いボクくん……
 私がちゃんと守ってあげるからね。
 安全で楽しい夏休みを、私と二人きりで楽しもう。

 ふたりきりで……


EPISODE5 ボクくんとなつやすみ 「こんなに楽しい夏休み、初めてかもしれない」


 私とボクくんの夏休みが始まった。
 ふたりで一緒に決めたやりたいことを、この夏の間にやっていくんだ。
 寝て、起きて、ボクくんと遊びに行って……
 本当に夢のような日々だった。
 ふたりで山へ虫取りに行ったときも――

 「ミミお姉ちゃん、ボクのこと重くない?」
 「これくらい平気よ。ほら、ちゃんと捕まえないと」

 ボクくんのことを肩車して高いところにいる虫を捕まえたな。
 華奢だから、ボクくんはとっても軽かった。
 ひょいって簡単に持ち上げられたな……

 宿題を一緒にやったときも――

 「お姉ちゃん、宿題めんどーだよ……」
 「ダーメ、遊んでばかりじゃなくてちゃんと勉強もしないと」
 「うーん……」
 「これが終わったら、ご褒美にスイカ持ってきたから一緒に食べましょ」
 「スイカ! やったー、ボク頑張るよ!」
 「うんうん、がんばれ、がんばれ」

 おやつではしゃぐボクくん可愛かったな。
 私がしっかり見ててあげないと、簡単に騙されちゃいそう。
 それにクーラーのない部屋でこんなに近くにいると汗の匂いもすごくて……

 そして、今日はボクくんと一緒に川遊びへ出かけることになっている。
 準備もしっかりしてきたし、忘れものもなし。

 「ボクくん、迎えに来たよ!」
 「すぐ行く!」

 返事が返ってくるとバタバタと2階から音が聞こえてくる。
 足音だけで、楽しみにしているのが分かっちゃう。

 『や、やばいアル……』
 『これはうちが思ってたよりアカンかも……』
 「えっ、なにかまずいかな? ボクくんと順調に仲良くなってきてるよ!」
 『なんじゃ、その……おぬしは、ボクくんのことが好きなんじゃよな?』
 「うん、大好き」
 『年の差……いや、あえて言うまい……じゃが、おかしなことはせぬようにな』
 「おかしなこと?」
 「おまたせ、ミミお姉ちゃん! 早く川遊びに行こうよ!」
 「はいはい、慌てなくても川は逃げないからね」

 そう言って私が手を出すと、ボクくんはすっと手を出して握ってきてくれる。
 どこかへ出かけるときは、こうやって手を繋いで歩くのがもう当たり前になっていた。
 それと犬吸いにもすっかりハマっちゃって、ボクくんのほうから何度も求めてくるようになった。
 ボクくんはもう、私を受け入れてくれている……

 川へ移動しながら、私たちは何気ない会話に花を咲かせていた。

 「そんなに川で遊ぶのが楽しみだったの?」
 「うん! だって、ボクひとりだと危ないから遊んじゃダメって言われてたから」
 「そっか」
 「だからね、お姉ちゃんが一緒に行ってくれるって言ってくれたとき嬉しかったんだ!」
 「ボクくんが喜んでくれて、私も嬉しいよ」

 はしゃいでるボクくんはとても愛らしい。
 こういうところは年相応の男の子なんだな。

 「あっ、見えてきた! ほら、お姉ちゃん!早く早く!」
 「わかったから、引っ張らないで」

 私の手を引いて走るボクくんに合わせる。
 濁りのない透き通った川に興奮するボクくんはすぐに服を脱ぎ始めた。
 ボクくんの肌が、肌が! 私の目の前に……!

 「ふふ……綺麗……」
 「ホント、綺麗な川だよね! ボクが住んでるとこはこういう川がないんだ」
 「えっ? あ、ああ、そうよね。都会で泳げる川なんてないものね」
 「うん! ところでお姉ちゃんは着替えないの?」
 「もしかして、私の水着姿が見たかったのかな?」
 「ち、違うよ! そういうのじゃないから!」
 「ふふ、冗談よ。この姿だと合う水着があれで……ボクくんには刺激が強すぎるかも」
 「えっ……」
 「だから、このワンピースの下に着てるのよ。心配しなくても一緒に遊べるからね」
 「そ、そっか、じゃあ遊ぼう!」

 そう言うと先制攻撃とばかりにボクくんが川の水をバシャッと掛けてくる。

 「きゃっ、冷たい! やったなー!」

 私も負けじとボクくんに水を掛ける。

 「うわっ、すごい! ボクも負けないからな!」

 バシャバシャとボクくんと水の掛け合いっこをしたり川の中の生き物を捕まえたり。
 ボクくんが疲れるまで川遊びは続いた。

 「ふぅ、ちょっと疲れちゃった」
 「水の中にいると体力を使うからね。ちょっと休憩しましょうか」
 「うん!」

 川岸に上がってふたりで並ぶ。
 私は水を吸ってすっかり重くなった毛を乾かそうと犬がするようにブンブンと身体を振る。

 「わっ、ミミお姉ちゃん冷たいよ!」
 「ごめんごめん、つい」
 「ハハ、本当にワンちゃんみたいだね。……あっ!?」
 「どうしたの?」
 「え、ええっと、なんでもない!」

 ボクくんが急に私から目を逸らしてしまう。
 どうしてだろうと自分の身体に目をやると、ワンピースが透けて下に着ていた水着が見えていた。

 なるほど、そういうことね。
 顔を真っ赤にさせちゃって、可愛いな……。

 「どうしたの、なにかあるならちゃんと言って。ほら、お姉ちゃんの目を見て」

 わざとボクくんの視界に私の水着が見えるように回り込んでみる。

 「な、なんでもないって……」

 そう言いながら目線を逸らそうとするが、チラチラと私のことを見てきている。
 バレてないと思っているのかな。
 バレバレなのに、ああもう、本当に可愛い。

 ――このまま押し倒したら、ボクくんはどういう反応をするだろう。

 『おい、やめぬか!』
 「はっ!?」
 「お、お姉ちゃん?」
 「……ううん、なんでもない。お腹すいたよね、お弁当作ってきたから食べよう?」
 「わーい!」

 頭の中の声ではっとなった私は、持ってきたお弁当の用意をしながら、自分を落ち着かせる。

 『そうじゃ、わしらよりも若い少年を襲いでもしてみろ。二度と近づけなくなるぞ』
 『若くなくても、二度と近づけへんわ!』

 うん、そうだよね。今はまだガマンしなきゃ。
 ……ボクくんの方から私を求めてくるまで。


EPISODE6 ボクくんと夏祭り 「綺麗な花火をボクくんと一緒に見たいな」


 ボクくんと過ごしてきた夏休みもあと残りわずか。
 写真もたくさん撮れたし、本当にいい夏の思い出が作れた。

 そして今日は前から楽しみにしていたボクくんとふたりで行く夏祭りの日。
 この姿だと浴衣は着れないのが残念だけど。
 私はいつものようにボクくんの手を引いて夏祭りの会場へと来ていた。

 「ねえねえ、どの屋台から行く?」
 「そんなに慌てたらはぐれちゃうからね。ゆっくり一つずつ見ていこう」

 射的に金魚すくい、りんご飴にやきそば。
 小さな村の夏祭りにしては屋台も人も多い。
 ここの人たちは私の姿を受け入れてくれていて、私たちは何を言われるでもなく自由に歩き回ることができた。
 手を離したら本当にはぐれてしまいそうだった。
 ボクくんは、私が守ってあげないと。

 ふたりで屋台を巡っていると村の人たちから声を掛けられる。

 「おっ、今日もふたり一緒だね。よかったらどうだいりんご飴安くしとくよ!」
 「わあ、ありがとうございます。ボクくん、食べる?」
 「うん!」
 「じゃあ、りんご飴ふたつください」
 「あいよ! それにしても罪な男だねえ。こんなべっぴんさんと夏祭りデートだなんて」
 「えっ!?」
 「ぼ、ボクはミミお姉ちゃんと遊びに来ただけでデートじゃないから!」
 「アハハハ、そう恥ずかしがるなって。ほい、りんご飴ふたつね」
 「ありがとうございます」

 デート……そうか、村の人たちから見たら私たちはデートをしてるように見えるんだ。

 「もう、おじさんが変なこと言って……」
 「お姉ちゃんはデートでも構わないんだよ?」
 「えっ……?」
 「ふふ、なんてね。ボクくんにはまだ早いかな。もう少し大人になってから、ね?」
 「……」

 本当は大人になんてならなくていいんだけど。
 むしろ、ボクくんはこの可愛い姿のままでいてくれればそれでいい。

 屋台を一通り回ったあと、両手いっぱいになった祭りの景品を手に、私たちは見晴らしのいい場所へと来ていた。

 「ここからなら花火が綺麗に見えるはずよ」
 「へえ、こんな場所があったんだ!」
 「ふふ、そろそろ時間かしら」

 もう花火が上がるはず。
 すると、一発目の花火がどーんと打ち上がった。

 「わー! 花火がすごく近くに見える!」
 「ふふ、いい場所でしょ?」
 「うん! たーまやー!」

 ボクくんが楽しそうに笑いながら花火を夢中で見つめている。

 ――夏祭りで花火をふたりで見てるなんてまるで恋人同士みたい。

 隣ではしゃいでいる小さな男の子。
 ずっと嫌われていると思って、距離を置いていたけどそれは私の気のせいだった。
 ……でも、どうして。
 どうして、ボクくんは私にあんなことを言ったんだろう。

 「ねえ、ボクくん。覚えてるかな? 私にデカ女って言ったこと」
 「えっ……?」

 自分で口に出して後悔した。
 もしかしたら、とっくに忘れていたことかもしれないのに、わざわざ掘り返す必要なんてなかったのに。

 「う、うん、覚えてるよ。あのときは、その……」
 「いいよ、無理に言わなくても。私、自分でも大きいってわかってるから」
 「そうじゃなくて! 大きいミミお姉ちゃんはかっこよくてきれいで……」
 「えっ?」
 「あのときはお父さんとお母さんがいたから……恥ずかしくて……」
 「そうだったの?」
 『なるほど、そういうことじゃったか。ボクくんはおぬしのことを最初から嫌ってなどおらんかった』

 どういうこと?

 『思春期ってやつアルね。うちの近くのガキンチョも似たようなことしてたアル』
 『うう……なんだか複雑な気分なのだ……』

 そっか……。
 やっと理由がわかった。
 私は嫌われてなかったんだね。
 ならもう、両想いじゃない。

 私は隣にいる小さなボクくんを見つめる。

 力で私には絶対に勝てない華奢なボクくん……
 ひょいっと簡単に持ち上げられる軽いボクくん……
 すぐひとりで行動しちゃう危なっかしいボクくん……

 ――私が保護してあげないと。

 「み、ミミお姉ちゃん?」
 「……」
 「どうしたの、なんだか怖いよ……」
 「ボクくん……」

 私はすっと手を差し出す。
 いつものボクくんならこの手をすぐに取ってくれる。
 これは、同意の証だ。

 「どうしたの、ボクくん?」

 なのに、私の手をボクくんが取ってくれない。

 「だ、だって、まだ花火見終わってないし帰るのは早いと思うんだけど」
 「……」

 手を取って、ボクくん。私は……

 『やめぬか、バカモノー!』
 「っ!?」
 『今、ここでおぬしから手を出してみろ。二度とボクくんとは会えなくなるんじゃぞ!』
 「……」
 『こういう言葉があるのを知っておるか!』

 イエス、ショタ! ノー、タッチ!

 「はっ!?」
 『わかったなら、正気を取り戻せ。おぬしがこれからどうするか、わかるな?』
 「う……うん、そうだね……」
 「……ミミお姉ちゃん?」
 「ごめんね、ボクくん。怖かったよね。辺りが暗くなったから、心配になっちゃって」
 「そ、そっか、よかった……」

 胸を撫で下ろすボクくんを見て、あのまま一歩を踏み出さなくて本当によかったと思う。

 「ほら、まだ花火続いてるし、一緒に見ようよ!」
 「うん、そうだね」

 私はボクくんと並んで、最後の花火を見上げる。
 これもまた、2人の良い夏の思い出になるね。


EPISODE7 ボクくんとまた会う日まで 「お別れは寂しいけど、来年の夏また会えるから!」


 村にひとつしかないバス停。
 私はボクくんを見送るためにここへ来ていた。
 ボクくんのおじいさんは私に気を使ってくれたのかお見送りを私に頼んでくれた。

 「ボクくんとも今日でお別れだね。たくさん遊べて楽しかったよ、ありがとう」
 「……」
 「ボクくん?」

 バスを待つ間、私はボクくんとお喋りしようとしたのに、なぜか無言のままだった。

 「……どうしたの、具合でも悪い?」
 「……」
 「それとも、お姉ちゃんとお喋りするの嫌?」
 「イヤじゃないよ!」
 「じゃあ、なんでお喋りしてくれないの?」
 「だって……もうお姉ちゃんと遊べないから!」
 「え?」
 「今日帰っちゃったら、次の夏休みまでお姉ちゃんと会えないんだもん……」
 「あらあら、嬉しい。そんなにお姉ちゃんと遊ぶの楽しかった?」
 「すっごく楽しかった! 今までの夏休みの中で一番!」
 「そう言ってくれて私も嬉しいよ」

 私が座ってポンポンと膝を叩くと、ボクくんがひょいっと膝の上に乗っかってくる。

 「お姉ちゃんも寂しいよ、ボクくんとお別れするの。でも、また来年会えるじゃない」
 「そうだけど……」
 「来年もまた一緒に遊びましょう。私はどこにも行かないよ、ここで待ってるから」
 「本当に?」
 「うん、ボクくんのこと待ってる」
 「また遊んでくれる?」
 「もちろん。疲れたって言っても許してあげないからね」
 「やったぁ……」

 ほっとしたのかボクくんが私に身体を預けてくる。

 「お日様のいい匂いがする……」
 「ボクくんも……」

 ボクくんが私の手を握って肉球をふにふにと触ってくる。
 すっかりこの感触がお気に入りみたい。

 ずっと続くかと思った時間だったけど、遠くからバスが近づいてくるのがわかった。
 同じようにボクくんも気づいて私の膝から降りると荷物を手に取る。

 「じゃあね、ミミお姉ちゃん。また来年も絶対に遊びに来るからね!」
 「うん、待ってるよ」

 バスが止まり、ボクくんが名残惜しそうに乗り込んでいく。
 私は出発するバスに手を振りながらボクくんを送り出す。
 すると、バスの窓が開いてボクくんが顔をひょっこりと出してきた。

 「ミミお姉ちゃん! お犬さんの格好はとっても可愛いけど、ボクはいつものお姉ちゃんも大好きだよ!」
 「っ……!」

 そう言いながら元気いっぱいにボクくんが手を振る。
 もう、本当に可愛いんだから……

 『うまく行ったようじゃな』
 「ありがとうございます。皆さんが私を止めてくれたおかげです」
 『危ういところじゃったからな』
 「もしも、あのとき……私が欲望に負けてボクくんに手を出していたら……」

 その先を想像するだけでゾッとした。
 もう二度と、ボクくんとは会えなかっただろう。

 『……ん? ちょっと見るネ!』
 『なにをじゃ?』
 『ほら、腕!』
 「腕? ……あっ!」

 自分の腕を見ると、そこには犬の体毛がなく、本来の私の腕があった。
 全身を見回してみても、もう犬の姿ではなくなっているのがわかる。

 「どうして、元に戻ったんでしょう?」

 ……。

 「あ、あれ。皆さん?」

 私がいくら声をかけても、頭の中から声が返ってくることはなかった。

 ――
 ――――

 「今回のことで色んな人がいるんだなってわかったのだ……」
 「趣味は人それぞれアルよ」
 「せやけど、なんで犬になってもうたんや?」
 「おそらくじゃが、わらわたちとミミ美の力が作用し合い、姿を変えてしまったんじゃろうな」
 「でもなんで犬アル?」
 「あやつの血筋じゃろうな。先祖の中に、妖や神の類いと深い交流を持った者がおったのじゃろう。人型の犬を見てもあっさり受け入れていたのも、あの村全体が“そう”だったやもしれん」
 「なんか、さらっと怖いこと言ってるのだ!?」
 「うーん……」
 「なんや、まだ気になることでもあるんか?」
 「アタシの気のせいかもしれないアルが、部屋に飾ってあった写真……」
 「写真がなんじゃ?」
 「あれって、ボクくんだけじゃなかったと思ったけど、違うアルか?」
 「あっ……」


EPISODE8 ボクくんたちと私 「ボクくんたちとこれからも仲良くしたいな。 楽しめるのは、今だけなんだから……」


 ――私にとって夢のような夏休みが終わった。
 ボクくんとは親密になれたし、きっと私のことが忘れられなくなっているはずだ。
 来年はもっと素敵な夏休みになりそうな予感がする。
 本当に、本当に頭の中に来てくれた人たちのおかげ。
 ちゃんと勇気を出して一歩踏み出すことの大切さを教えてくれた。
 もちろん、絶対に踏み出しちゃいけない一歩があるってことも。
 だから、これはいい経験になったと思う。
 これから夏休みのたびにボクくんと、もっともっといい思い出が作れるのだから。

 私はたくさん増えたボクくんとの思い出がつまったアルバムを本棚にしまって、下の棚にあるアルバムに手をかけた。

 「次は、キミだね」

 その中からお気に入りの一枚を手に取り、写真に鼻を近づける。

 「ぁ……そうだった……」

 もう、私は犬じゃないんだ。
 どうしよう、全然足りないよ。
 あとで、もう一度犬になれるか試してみようかな。
 そうすれば、きっと。

 「キミとももっともっと仲良くなれるよね。冬休みのボクくん」

 ボクくんがボクくんでいられる時間は短い。
 だから、私はキミたちとの時間を大切にして、キミたちの思い出の中で輝き続けるミミお姉ちゃんでいられるように、頑張るんだ。

 「ふふ……冬休みが楽しみ」




■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • みんなー!今すぐイラストレーターのX(旧:Twitter)を見るんだ!ワンピース下の水着が見れるぞ! -- 2023-12-20 (水) 21:22:32
    • 見てきた!!!とても好き!!!! -- 2023-12-20 (水) 22:30:56
  • TFモノかと思ったらほぼ夢オチだったけど、人間の姿をトランスフォームに載せなかったの偉すぎる -- 2023-12-20 (水) 23:00:34
  • おねショタの話だったのね しかもショタっ子は複数いるらしいという -- 2023-12-21 (木) 04:37:29
  • 巨乳・ぽっちゃり・高身長・TF・やばめのショタコン・・・あまりにも属性過多 -- 2023-12-21 (木) 10:04:05
  • 好きなんだけどこんなはっきりショタとか言って今時大丈夫なんか 好きなんだけど(強調) -- 2023-12-21 (木) 12:39:58
  • 八雲のストーリーの中でもダントツで怖かった。。。ゾッとした。。。 -- 2023-12-22 (金) 14:31:21
  • でっか、ふっと、エッロ -- 2023-12-22 (金) 17:50:40
  • ※全年齢対象ゲームです -- 2023-12-23 (土) 22:42:00
  • トランスフォームは絶対にケモ状態の水着姿でお願いします でも僕はストライクゾーン広いので人間でもギリOKです やっぱダメです -- 2024-01-02 (火) 20:29:45
  • キャラクターページでのコメント数ダントツで草 -- 2024-01-03 (水) 19:21:45
    • やっぱ皆ケモデカパイ好きなんすねぇ -- 2024-01-03 (水) 23:40:55
      • ショタになってこの子の濡れて水着が透けて見えるワンピースを勃起しながらガン見したい人生だった -- 2024-01-04 (木) 15:45:11
  • 田舎でデカくて白ワンピでショタコンってもしかして八尺様モチーフ? -- 2024-02-18 (日) 09:53:24
    • 言いたい事はわかるけど八尺様がショタコンってのはネットに毒されすぎでは -- 2024-02-18 (日) 16:29:58
      • 調べたら成人前の子供狙うって書いてたわすまん 有り得るかも -- 2024-02-18 (日) 16:31:10
  • 八咫烏鋼太郎よりウッキウッキで草 -- 2024-03-26 (火) 09:49:02
  • 例のエ○3Dのパロやろ。最近やっと中編出た -- 2024-05-10 (金) 22:41:04

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