【ドーナツ型惑星】

Last-modified: 2024-10-14 (月) 12:02:34

概要

DQ世界の惑星の形状にまつわる説の一つ。
DQに限らず多くのRPGでは【世界地図】の一番北の地点から更に北へ進んだ場合、世界地図の一番南の地点に出るわけだが、これは現実世界と照らし合わせてみると明らかにおかしいのだ。
 
現実世界で日本からまっすぐ北へと進んだ場合、シベリアを通って北極点に到達する。北極点を超えると、ずっとまっすぐ進んでいても針路は自動的に北から南に変わり、そのまま進めば今度は地図の北側、グリーンランド付近から現れ、さらに進むと大西洋の米国東岸付近を南へ向けて通ることになる。
しかしDQ3で【ジパング】からまっすぐ北へと進んだ場合、集落最北端の【ムオル】を通って地図の最北端にたどり着くものの、北極点?を通過しても針路は変わらず北のまま、地図最南端の同じ経度の場所に移動して、そのまま進むと南洋の【アリアハン】にたどり着いてしまう。
DQ3の世界が地球と同じであるならば、ジパングから北へずっとまっすぐ進んだ場合、ムオルを通過して最北端にたどり着いた後は、方向が自動的に南へ切り替わり、【グリンラッド】【商人の町】の東を南下しないとおかしいのだ。
 
つまり、DQ世界は「地図の左側と右側が繋がっている」だけでなく「地図の上側と下側も繋がっている」という、惑星として明らかに異様な形になっているのである。
 
そこで実際に世界地図をもとにDQ世界の構図を再現するには、まず地図を丸めて東端と西端を繋げ「地図の左側と右側が繋がっている」状態にする。
そしてその「筒状」になった地図の両端(南北の部分)を繋げて輪の形にする。
これで地図の「東西」と「南北」が繋がった状態となり、その完成した形が「ドーナツ型」(ドーナツ型の事を数学では「トーラス」というので詳しく知りたい方は「トーラス」でWikipedia等を参照)なのである。
これなら、少なくとも地図の左右だけでなく上下もループしていることの説明は付く。
同じような論説は、宝島社の書籍「空想科学大学」(江田康和著)(注:かの有名な「空想科学読本」シリーズではなく、いわゆる便乗本の類である)でも指摘されており、やはり「ドラクエの世界はドーナツ型惑星である」と結論付けられている。
 
ただし、その場合昼夜の概念などは現実世界のそれを当てはめることができなくなる他、それ以外の様々な面で説明が付かなくなる事態となるため、「DQ世界の惑星はドーナツ型だ」と完全に断じることはできない。
 
また、DQ世界の地図が一般的によく見られる「メルカトル図法」やその派生図法等ではなく、「正距方位図法」という形式で描かれているという説もある。
これは要するに、「世界地図の中心が『北極』であり、四方の果てが『南極』である」というもの。
これなら、一見すると世界地図の上方から下方に出てくる理由の説明は付くように見えるが、正距方位図法はそもそも円形に描画するものなので、長方形になっている時点でおかしい。
しかも、外周は極地、つまり一点になるはずなので、例えば北西端から西進して北東端から現れるという挙動は説明がつかない(本来なら、地図の中心の基準にした点対称の地点、つまり南東端から現れるはず)。
 
このように、すべての諸要素を矛盾なく完璧に説明し切ることのできる説は存在していないのが実情なのだが、その中で一つの解答として導き出されちょっと有名にもなっているのが「ドーナツ型」説なのである。
上記のように現実世界の地図にも様々な描画方式が存在するように、元々球体として存在する世界の地図を一枚の平面の紙の上に「完璧に」描くことはそもそも不可能。
結果的に「上下でもループする」という点で矛盾が生じてしまってはいるが、現実的には「地図の北端を北向きに通過したら世界半周分ほど横にズレた北端から南向きに出てくる」ようにした場合、それはそれでプレイヤーを変に混乱させかねなかっただろう。
そこは仕方がなかったと考えるべきなのだろう。
 
現在のところドーナツ型をした惑星というものは発見されていないが、「ドーナツ型の天体」に関して言えば実は宇宙ステーションの形状の1つとして検討されている。
興味がある人は調べてみてもいいだろう。

ゲーム内で確認できる公式設定

DQ世界の世界の形状に関しては、DQ3の【ルザミ】で天体望遠鏡を用いて空を眺める男が「じめんは まるくて ぐるぐる まわっているのです。」という発言をしている。
いわゆる現実世界における「大地球体説」と「地動説」をミックスしたような発言である。
一見先鋭的な話をしているように見えるが、DQ3には【ちきゅうのへそ】という洞窟があるので、少なくとも【ランシール】では地球、すなわち世界が球体(地面が丸い)であることはすでに常識になっているようだ。 
 
ちなみにこの台詞、DQ3発売当時の日本で(というか現代でもわりと)広く信じられていた「ルネサンス以前のヨーロッパでは大地平面説が主流だった」という誤解に由来している模様。
ただし実際には「天動説が主流だった」だけで、地球が球体のようだという認識は天文学がすでに確立していた古代からあった。地球が真ん丸ではなく楕円形らしいということは近世以降の事であったが。
 
また、作品によってはオブジェクトとして「地球儀」が登場しており、調べると平面の世界地図を見ることができるようになっている。
上記の発言や地球儀が作中で登場している以上、実際のところはDQ世界の惑星の形状や太陽・月、その他の天体との位置関係などは、現実世界の地球のそれとほぼ同じなのだと考えられる。
もっとも、地球儀の存在しない作品にはどうにも言えないが、よりにもよって、オブジェクトの地球儀を調べる事で世界地図が見られるDQ5で、『(世界地図の)北東に行くことで(世界地図の)南西にある島に行ける』という旨の発言がなされるのがなんとも…。
一般市民の間でも(世界地図の)北にずっと向かえば、(世界地図の)南から出て来ることが常識となっているようだ。

他作品の世界もドーナツ型惑星?

「地図を素直に受け止めると世界がドーナツ型ということになってしまう」のは何もドラクエに限ったことではない。
ファイナルファンタジーシリーズはもちろん、スターオーシャン2も、テイルズオブシリーズも、ヴァルキリープロファイルも、クロノトリガーも、スクエニ以外のその他大勢のRPGも、ワールドマップが存在するRPGの多くは、地図上の移動だけ見ると上下直結になっていて、ドーナツ型と解釈できてしまう。そもそも世界初のRPGであるウルティマがそうだったが、そのウルティマでは宇宙へ行くことが可能であり、宇宙から見た大地は球体になっている。
 
結局リアリティよりもプレイヤーが混乱しないことを優先した結果そうなっただけなので、ごまかす方法は【ドラゴンクエストモンスターズ キャラバンハート】のように手動では世界1周を不可能にするか、スターオーシャン3のようにワールドマップを採用しないことである。
やはり球を再現するのは困難なのだろう。
 
ちなみに、世界中を航海するゲームである大航海時代シリーズなどは、地図を南北方向に抜けることができない(極地に侵入できない)という仕様で対応している。
そもそも極地は極低温の世界であり、現代の科学技術をもってしても人間が簡単には侵入できない場所なので、この仕様がもっとも矛盾なく地球を平面に描ける手法だろう。
また、FC終期のRPG「ラグランジュポイント」では、スペースコロニーが舞台になっているため、ワールドマップもスペースコロニー型になっている(東西は端が存在しておりループせず、南北のみループする)。
地球一周が舞台の「桃太郎電鉄ワールド」は現実世界の地球を球体で再現しているが、南極は通過できず、北極圏はランアバウト形状の空路にすることで、リアルの地球を再現しながらも、北極を通過する移動の違和感を減らしている。
興味を持ったら調べてみるといいだろう。

やっぱり球体型?

なお、DQ世界がちゃんと球体の惑星であるという主張もないわけではない。
惑星の半球がすべて海である(例としてDQ3世界の場合、大西洋にあたる部分が地球の半分を覆っている状態)という説がそれにあたる。
つまり、地図で見るよりも海はずっと広く、陸地部分は惑星のごく一部にしかない、ということだ。これなら南北のループと東西のループが矛盾せずに両立する。
実際に他のRPGの中にはこの「海半球」を採用している例もある。
ただしこの説の場合、ゲーム中でループする時に通る海域がもっと広くないとおかしいという反論も成り立つ。
DQ8以降だと実際に地図の両端を繋ぐ海域がかなり広く設定されており、地図の東端から東進して西端に出ようとすると(もちろん逆でも南北でも)地図上の見た目よりもずっと時間がかかるので、「海半球」説を採用している可能性は高い。
 
また仮に惑星の形状がドーナツ型であった場合、地平線や水平線は一部の地域でしか見られないもののはずである(地平線・水平線は地面が球体のように曲線を描いていなければ見ることができない)。
ゲーム中に地平線・水平線が一切登場しないのはFC(DQ1除く)・MSX・GBといったマシンパワーの低いハードで発売された作品ぐらい。
それ以外では戦闘画面の背景や、3Dで描かれるフィールド画面などに地平線・水平線が常に存在している。こんなにいつでもどこでも地平線・水平線が見られてしまうのは、ドーナツ型惑星ではありえない現象なのだ。
そして、ドーナツ型惑星に確実に存在するはずの「地面・水面が空に向かって続いている」という場所は、ゲーム中に一切登場しない。
そのため、上記を除くほとんどのDQシリーズ作品は、逆説的にドーナツ型惑星が舞台ということはあり得ないという結論になる。
 
星のドラゴンクエストではマップそのものが球体の惑星になっている。
 
なお、数あるゲーム作品の中には、少数だが『世界のカタチ』そのものが北欧神話やインド神話めいており、球形でなかったりする作品もある。

異説

一部では『あの世界は平面(もしくは惑星の中のごく一部)で、地図の四方は空間が歪んでシームレスに繋がっている。無限ループなんてのもあるし、そういうものがあってもおかしくは無いだろう』
『分かりやすい例として、DQ8で(地図上では)東端たる【アスカンタ】から西端たる【ふしぎな泉】に、あるいは南端たる【レティシア】から北端たる【サヴェッラ大聖堂】【ルーラ】しても、太陽や月は同じ位置にある。それも含めてあの世界は大地平面説(惑星の一部説)が正しい』という説が提唱されていたりもする。
ゲーム中の仕様だと言ってしまえる事象を説明に組み込み利用した、なかなか秀逸な仮説である。「離れた空間が直結ループしている」というファンタジーな理由での非現実・非科学的な大地平面説を肯定できるかが評価の分かれ目といえるだろうか。
ちなみに【エニックス】のゲームブックDQ2に登場する『伝説の北回り航路』では、北の果てには【船】を飲み込む霧の海があり、その霧を無事に抜けられれば世界の南端に出ると言うものなので、同作ではこの説を採用しているようだ。
この説はPS4版DQ11でも似た形で再現されている。地図の端を越える部分の景色は一切見えず、地図の端はどこもかしこも常に濃霧状態なのだ。
例えば、南西端にある【名もなき島】の西側の海域から北を向くと、地図北西側にある【クレイモラン地方】まで見通せるくらいに視界が良いのだが、カメラを反対に向けて南方向を見ると(北向きよりも距離は近いはずなのに)クレイモラン地方の陸地は全く見えない。そのまま船を南に進めて地図の端付近に達すると完全な濃霧に包まれ、周囲がほとんど見えなくなる。そして何も見えない霧の中でいつの間にか魔法のように地図の反対側にワープし、なおも進み続けて地図の端付近から抜けると霧も晴れ、地図北端の陸地が見えるようになる。
もちろん、南北方向だけでなく東西方向も同じ。さらに、空を飛んでいる時もこの現象が再現される。
 
また、上記で例として頻繁に挙げられているDQ3も【アレフガルド】という『地下世界』の存在を前提とすると、ドーナツ型惑星論を正しいとしても崩れてくる。
(※ただ、アレフガルドおよびDQ1~DQ2世界に関しては、そもそも『【精霊ルビス】によって作られた世界』であり、『DQ3時点で作りかけ』という設定もあったりもする。詳細はアレフガルドのページを参照)
さしずめあの世界は、大地球体説が否定された世界とでも呼べるだろうか。
あるいは、球体惑星の一部がDQ7の闇の封印のように区切られ、上述のようにシームレスループで隔離された世界なのかもしれない。
日本のどこでも同じ時間なら見える太陽の位置にそこまで差が無いように、上述のDQ8の事象に関してもこの説なら難なく説明が可能。
しかも、DQ8の世界で走る距離をkmに直すと異様に狭く感じる(ドラクエ8の【あるきかた】より、世界中の道という道を走破しても80km程度にしかならない)ことにも説明がつく。
地球儀に関しても、地球儀を調べると表示される地図が、その世界の全体図だなどとは一言も言われていない。
この仮説なら上記のルザミの男性の発言も矛盾せず、彼の“仮説”自体は正しい事となるが、世界(≠惑星)一周の実証とは結果が致命的に食い違う事になり、妄言と扱われての流刑も止む無し、だろう。