ローリングリリースとは (新)
Dolphinは、2024年7月から「ローリングリリース」という新しいリリース形態へと移行しました。
https://ja.dolphin-emu.org/blog/2024/07/02/dolphin-releases-announcement/
過去のDolphinには「安定版」と「開発版」、そして「ベータ版」がありました。
Dolphinはオープンソースで開発されており、世界中のプログラマーによる貢献によって成長してきました。しかし昔の開発環境はあまり整っておらず、例えば「一度でも貢献したことのある人は、ファイルの編集権限を永続的に手に入れることができる」というように酷いものでした。
そこでDolphinは「安定版」というリリースモデルを採用しました。「安定版」ではバグ取りが入念に行われ、正しい動作が確認されたバージョンを提供することで、私たちのようなエンドユーザーから見て安定したソフトウェア体験を維持できたわけです。
しかし時代は変わりました。今はGitHubという便利なものがあり、第三者からのコードの貢献もプルリクエストを使用すればすぐに終わります。これにより、数か月おきに比較的安定したバージョンを提供できるようになり、開発チームは2023年頃からこれを「ベータ版」として提供するようになりました。
そして2024年7月以降、開発チームはこの「比較的安定したバージョン」を通常リリース版として提供するようになったわけです。
平たく言えば、今後は「(旧)ベータ版」が「リリース版」として提供されるようになる、とお考え下さい。
5.0の時ような安定版ほど大規模かつ入念なバグチェックは行われませんが、優れたコード管理により比較的動作の安定が保たれ、動作も定期的に改善されていくようになります。
今後も開発版は提供されていきますが、新しく追加された機能やバグ修正などは数か月も経たないうちにリリース版に取り込まれるはずです。
その点で言えば、今までのように開発版に固執する必要はないと言えるかもしれません。
ここから下は過去の情報ですので、間違っている部分や過去のものとなった部分が多くあります。参考として一応残しておきますが、現状とは差異がある可能性が高いことに留意してください。
安定版と開発版
さて、ここまではDolphin安定版の導入について書いてきましたが、Dolphinには安定版の他にも開発版というバージョンがあります。
先ほど安定版をダウンロードしたページで下に出ていたやつですね。Dolphinをアップデートする時は、基本的にこの開発版を上書きしていく形になります。
Dolphinの開発には Git というバージョンを管理するシステムが使われています。このシステムを乱暴に説明すると、
誰かがDolphinのソースコードを1文字でも変更したら、1時間以内にそれをビルドしたバージョンがWebサイトからダウンロードできるようになる、というものです。
とはいえ、悪意のあるコードを仕込まれたり、初心者に下手なコードを書かれたりすると困るので、実際はDolphinの開発チームによって変更内容を審査するプロセスが間に挟まります。
しかし、ここで審査するのは基本的にコードの書き方が正しいかどうかだけです。ありがたいことに、現在もDolphinは1日に数回は更新されるほどの開発スピードが保たれています。
この状況下では、新機能の追加やエミュレーションの処理方式の変更があったときに、毎回「この変更が問題にならないか、全部のゲームの挙動を確かめてから出そう」というわけにもいきません。
つまり開発版というのは「おそらくこの変更は他の所に悪影響を与えないだろう。もし問題が発生しても、気づいた誰かがそのうち直せば良い」というスタンスでリリースされているということです。
要するに開発版にアップデートするということは、
新しい機能を使うことができたり、今まで動かなかったゲームが起動できるようになったり、動作が軽くなる一方で、アップデートを重ねる内に
便利だと思っていた機能が無くなったり、その前まで正しく動いていたゲームがおかしくなったり、設定やセーブデータが壊れたりするリスクがあるということになります。
「それでは、安定版が出た時だけアップデートすればいいのでは?」という声が聞こえてきそうですね。
たしかに、安定版はそれを出すと決まった段階で機能追加などは避けてバグ取りに専念され、どんな環境でも比較的問題が出にくいバージョンが採用されます。
しかし今回初めてDolphinを導入したという人以外はお気づきでしょうが、Dolphinの安定版の更新というのは1年に1回程度しかありません。
最近ではその頻度も徐々に長くなってきており、4.0 → 5.0 の場合、ほぼ3年ごしのアップデートになってしまいました。また、5.0はリリースされてから7年以上が経過していますが、その間安定版は一度も更新されていません。
その間に開発版・ベータ版ではUbershaderなどの新機能がいくつも実装されています。これでは開発版との差異が大きくなりすぎです。
また言い方は悪くなりますが、念入りにバグ取りをしているといっても所詮はフリーソフトです。商業ソフトのように何百人ものデバッガーが突然現れて手助けしてくれるわけではありません。
限られたメンバーで致命的なバグを直すのが精一杯、安定版であったとしても細かいバグや使い勝手の悪い部分までの全てに手が回ることはありません。
というわけで長くなりましたが、Dolphinの基本的な運用は、
最初に致命的なバグのない安定版を入れ、その後開発版をタイミングを見てアップデートしていく
のが良いかと思います。というか、公式でもコレが推奨されています。
上で開発版のリスクについておどろおどろしく書きましたが、4.0以降の開発版ではそれほど致命的な問題は発生していませんし。
なによりも、アップデートと書きましたが安定版と開発版というのは共存可能なのです!
長くなってしまいましたが、次のページで最後です。具体的なアップデートの方法を説明します。
ベータ版について
安定版や開発版とは別に、一ヶ月に一回程度公式チームによってリリースされる「ベータ版」というものもあります。
ある程度の動作の安定と、開発中の機能の実装を両立しているため、下手に開発版に手を出すよりもこちらのほうがよかったりもします。
