2000年代前後の広島東洋カープのペナントレース順位が高確率で5位に収束していたことを「語彙力」に掛けて揶揄した言葉。
広島東洋カープの5位力
広島球団は創設経緯から慢性的に資金力に乏しく、2000年代においてもドラフトの逆指名・自由獲得枠およびFAで有力選手をほとんど獲得できず、逆にFAで自球団の主力選出の流出が相次いだ。これを受けて戦力が低下してしまった広島は1998年から2012年の間に15年連続Bクラスを記録。本期間中の5位は11回/15回(73%)であった。
この時期の広島の戦力では何度最下位になってもおかしくなかったが、2001年までの阪神タイガース、そして2002年以降の横浜ベイスターズという鉄壁の万年最下位チームの存在があったために5位を脱出しても翌年は必ず5位に戻るという状態に陥っていた。
後述するリーグ黎明期にも5位力を発揮したことがあるため、2023年時点で広島はリーグで5位になった回数が最も多い球団となっている*1。
そんな広島だが、2013年に初のCS進出を決めると、その後2016年から2018年に緒方孝市監督のもとセ・リーグ3連覇という快挙を成し遂げる。しかし2019年にCS進出を逃してからは再び不調に陥り、2020年・2022年にまたしても5位入りするなど時々「5位力」の再来が危惧されることもある。しかし、近年のシーズンでは4位入りすることもあり、現在は以前ほど強力な「5位力」を発揮しているとは言い難い。
また、この1998年から2012年にかけての広島を代表例とする「最下位にだけはあまりならないが、最下位回避によってかえってチーム改革が進まず安定して低空飛行を続ける」という状況は広島型暗黒と呼ばれ、後述する2013年以降の中日が近似的な該当例として挙げられる。
対照的に、たまに順位が跳ね上がることがあるものの基本的に最下位を爆走するタイプの暗黒は1987年から2001年までの阪神や2002年から2015年までの横浜になぞらえ阪神・横浜型暗黒と呼ばれる。
年 | 監督 | 試合 | 勝利 | 敗北 | 引分 | 勝率 | 順位 | 最下位 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1997 | 三村敏之 | 135 | 66 | 69 | 0 | .489 | 3 | 中日 | 20世紀最後のAクラス。5位は阪神。 |
1998 | 135 | 60 | 75 | 0 | .444 | 5 | 阪神 | ||
1999 | 達川晃豊*2 (達川光男) | 135 | 57 | 78 | 0 | .422 | 5 | 阪神 | |
2000 | 136 | 65 | 70 | 1 | .481 | 5 | 阪神 | ||
2001 | 山本浩二 | 140 | 68 | 65 | 7 | .511 | 4 | 阪神 | 勝利数で順位を決定するというこの年限りの特別ルールのため、 幻のAクラス入り*3となった。5位は中日。 |
2002 | 140 | 64 | 72 | 4 | .471 | 5 | 横浜 | ||
2003 | 140 | 67 | 71 | 2 | .486 | 5 | 横浜 | ||
2004 | 138 | 60 | 77 | 1 | .438 | 5 | 横浜 | ゲーム差無しの勝率9毛2糸(0.0092)差で5位入り*4。 | |
2005 | 146 | 58 | 84 | 4 | .408 | 6 | 広島 | 暗黒期間中唯一の最下位。5位は巨人。この年の横浜は3位。 なお、交流戦を除いて計算した場合は広島が5位。*5 | |
2006 | マーティ・ ブラウン | 146 | 62 | 79 | 5 | .440 | 5 | 横浜 | |
2007 | 144 | 60 | 82 | 2 | .423 | 5 | ヤクルト | この年の横浜は4位。 | |
2008 | 144 | 69 | 70 | 5 | .496 | 4 | 横浜 | 5位はヤクルト。 | |
2009 | 144 | 65 | 75 | 4 | .464 | 5 | 横浜 | ||
2010 | 野村謙二郎 | 144 | 58 | 84 | 2 | .408 | 5 | 横浜 | |
2011 | 144 | 60 | 76 | 8 | .441 | 5 | 横浜 | ||
2012 | 144 | 61 | 71 | 12 | .462 | 4 | DeNA | 5位は阪神。 | |
2013 | 144 | 69 | 72 | 3 | .489 | 3 | ヤクルト | 16年ぶりのAクラス*6。5位はDeNA。 |
中日ドラゴンズの5位力
広島と入れ替わるように、2013年以降は前年まで4回のリーグ制覇を含め11年連続Aクラス入りしていた中日が不調に陥る。
2015年以降の7年間で5度の5位になるなど5位力を受け継ぎ、2023年現在もその傾向が続いている。ただし鉄壁の最下位チームが存在したかつての広島と違い、期間中に最下位になったチームは固定されていない。主にヤクルトの極端に激しい順位変動*7が原因と言えるが、他に最下位を経験した阪神*8やDeNA*9もすべて翌年にはAクラスになるなど安定していない。なお、この時期の中日は「秋頃までAクラス入りの可能性を残すも、終盤の最重要局面でしっかりと撃墜される」というパターンが多かった*10。
2020年には久々のAクラス入り(3位)となったものの、新型コロナの影響で交流戦とCS*11がないシーズンであり、日本シリーズはセ・リーグ1位チーム(巨人)の無条件進出というルールになっていたために他球団の攻勢がどうしても例年より苛烈にはなりにくかったことも考えられ、やや評価が難しい。
2021年以降はまたしてもBクラス入りが連続し、2022年以降は5位と僅差ながら球団史上初となる3年連続のリーグ最下位となってしまうなど、現在では2010年代以上に暗黒の兆しを見せている。
年 | 監督 | 試合 | 勝利 | 敗北 | 引分 | 勝率 | 順位 | 最下位 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 高木守道 | 144 | 75 | 53 | 16 | .586 | 2 | DeNA | 最後のCS出場。5位は阪神。 |
2013 | 144 | 64 | 77 | 3 | .454 | 4 | ヤクルト | 12年ぶりのBクラス。5位はDeNA。この年の阪神は2位。 | |
2014 | 谷繫元信 | 144 | 67 | 73 | 4 | .479 | 4 | ヤクルト | 5位はDeNA。 |
2015 | 143 | 62 | 77 | 4 | .446 | 5 | DeNA | 14年ぶりの5位。この年のヤクルトはリーグ優勝。 | |
2016 | 谷繫元信→森繁和 | 143 | 58 | 82 | 3 | .414 | 6 | 中日 | 19年ぶりの最下位。5位はヤクルト。この年のDeNAは3位。 |
2017 | 森繁和 | 143 | 59 | 79 | 5 | .428 | 5 | ヤクルト | |
2018 | 143 | 63 | 78 | 2 | .447 | 5 | 阪神 | 10.0ゲーム差をひっくり返して5位入り。この年のヤクルトは2位。 | |
2019 | 与田剛 | 143 | 68 | 73 | 2 | .482 | 5 | ヤクルト | この年の阪神は3位。 |
2020 | 120 | 60 | 55 | 5 | .522 | 3 | ヤクルト | 8年ぶりのAクラス。5位は広島。新型コロナのためCS中止。 | |
2021 | 143 | 55 | 71 | 17 | .437 | 5 | DeNA | 最終戦で勝利して5位入り。この年のヤクルトはリーグ優勝、広島は4位。 | |
2022 | 立浪和義 | 143 | 66 | 75 | 2 | .468 | 6 | 中日 | 6年ぶりの最下位。5位は広島で、中日とは僅か0.5ゲーム差*12。 |
2023 | 143 | 56 | 82 | 5 | .406 | 6 | 中日 | 最終戦で順位が入れ替わって球団史上初となる2年連続の最下位*13。 5位を掴んだのはヤクルトで、中日とはゲーム差なしの勝率1厘差。なお、この年の広島は2位。 | |
2024 | 143 | 60 | 75 | 8 | .444 | 6 | 中日 | 2年連続で最終戦で順位が入れ替わり3年連続の最下位*14。 5位を掴んだのはまたしてもヤクルトで、中日とはゲーム差なしの勝率2厘差。 |
元祖5位力・広島カープ
広島の「5位力」が謳われるようになったのは近年だが、実は「広島カープ」と名乗っていた*15頃も1956年~62年の7年間で6度の5位、さらに1965年も5位となり、10年間で7度の5位を経験している。
この7回の5位の内最下位になったのは大洋(現DeNA)と国鉄・サンケイ(現ヤクルト)と、ある意味後の時代を予言しているとも言えなくもない結果であった*16。
年 | 勝利 | 敗北 | 引分 | 勝率 | 順位 | 最下位 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1955 | 58 | 70 | 2 | .453 | 4 | 大洋 | 5位・国鉄とは1ゲーム差。 |
1956 | 45 | 82 | 3 | .354 | 5 | 大洋 | 史上初の5位。前年までは3年連続4位だった。 |
1957 | 54 | 75 | 1 | .415 | 5 | 大洋 | 大洋とは0.5ゲーム差で5位。 |
1958 | 54 | 68 | 8 | .443 | 5 | 大洋 | |
1959 | 59 | 64 | 7 | .480 | 5 | 大洋 | |
1960 | 62 | 61 | 7 | .504 | 4 | 国鉄 | 球団史上初の勝率5割超え。 |
1961 | 58 | 67 | 5 | .464 | 5 | 大洋 | 4位・阪神とは1ゲーム差。 |
1962 | 56 | 74 | 4 | .431 | 5 | 国鉄 | |
1963 | 58 | 80 | 2 | .420 | 6 | 広島 | 11年ぶりの最下位、5位は大洋。 |
1964 | 64 | 73 | 3 | .467 | 4 | 中日 | 5位は国鉄。 |
1965 | 59 | 77 | 4 | .434 | 5 | サンケイ | |
1966 | 54 | 73 | 6 | .438 | 4 | サンケイ | 5位は大洋。 |