鳴尾浜量産型投手

Last-modified: 2024-04-21 (日) 13:00:45

阪神タイガースにおける、「グヘ達」にすらなれない「僕達」投手陣の蔑称。

鳴尾浜」は1994年から阪神タイガースのファーム本拠地として使用されている阪神鳴尾浜球場のことを指す。


【目次】


概要

2000年代以降の阪神で一軍に定着できなかった投手たちは総じて球速・球質・変化球のキレ・スタミナなど全てのステータスが平均的で小さくまとまりきった傾向が強く、伸び代や魅力に薄く最後は頭打ちになって消えた投手が多かったためこの用語が生まれた。そこから転じて現在では“一軍半の壁を破れない投手たち”全般を指すようになっている。

また、以前阪神に所属していた投手が移籍後の球団で不甲斐ないピッチングをしたり、阪神相手に炎上した時には、その球団のファンから「鳴尾浜量産型」呼ばわりされることもある。


暗黒時代の阪神投手陣

話は暗黒時代に遡る。当時の阪神はドラフトでのクジ運の悪さに加えて、それ以前に目玉選手から指名をお断りされること*1も多かった。だが「そもそも球団自体が取りやすい選手(他球団なら良くておまけ指名か最初から見向きもしない選手)しか取らない」と揶揄される*2ような状態だったために選手層もお察し状態*3となった。

当時の暗黒投手陣の多くは、

  • 球速は最速でも130km/h台後半。
  • 変化球の精度は低く、決め球として使える球種は無い。
  • 基本的にノーコンで四球連発の末に飛翔して自滅、というパターンも多い。
  • 中途半端なコントロールがあれば逆にバッティングピッチャー化して大量失点。
  • 投球術にも見るべきものはなくただ逃げているだけ、その後は四球連発か飛翔で試合が壊れる。
  • スタミナは先発で5回投げ切れれば万々歳という程度、酷い時は1回ですでに3人目の投手をつぎこんでいることも。

といった有り様であり、「他球団なら一軍・二軍以前に整理対象」とまで言われた。
また最初は通用した選手でも、

  • 体力の無さが徐々に露呈し、最悪の場合そこから故障に至る。
  • 阪神病」とも揶揄される、慢心や油断から来るパフォーマンスの低下
  • 他球団に研究され頭打ちになって消えていく。

などの状況の繰り返しで、暗黒時代の原因の一つになる*4

こういった経緯があったため、「鳴尾浜量産型でもポテンシャル的には暗黒時代の投手陣よりマシ」と言われたりする。


暗黒時代の終焉 2002年以降

阪神の暗黒時代を知るファンは、鳴尾浜及び浜田*5と聞くとネガティブなイメージを持っている。しかし暗黒時代を知らないファンは“鳴尾浜で育った投手”と聞くと魔改造を最初に連想し「若手投手の育成に優れた施設」と捉えるため*6、ポジティブな意味で「虎の穴*7」とも呼ぶ。

なおこの言い回し自体は古くから使われ、開設当初の鳴尾浜の公式愛称は「タイガーデン(Tiger Den、denはspot同様に巣穴・洞穴の意)」だったが、他社(タイガー魔法瓶)の登録商標であることが判明したため2003年から「タイガー・デン(Tigers Den)」に改称されている。

しかし、2000年代後半から鳴尾浜球場の手狭さと陳腐化が問題視され二軍本拠地の移転話が浮上していた。2021年5月、阪神電鉄と阪神球団は甲子園球場および鳴尾浜球場のある西宮市の東隣である尼崎市と協定を結び、2025年2月を目処に二軍本拠地を鳴尾浜から阪神本線の大物*8駅と杭瀬駅の間にある尼崎市小田南公園へ移転することが正式に決定した。


派生語

1.鳴尾浜量産型打者

上記の用法から発展し、一軍半の壁を破れない阪神の打者陣、または絶不調時の打者を「鳴尾浜量産型打者」(言うなれば阪神版「二軍の帝王」)と呼んだりするようになった。
阪神時代の中谷将大を始め江越大賀(現日本ハム)・髙山俊あたりが特に言われる。


2.なるおじ(鳴尾浜おじさん)

阪神の二軍で伸び悩む中堅・ベテラン選手を「なるおじ」と呼ぶ場合もある。「鳴尾浜おじさん」の略称であり2020年から使われている。類義語は老害。2019年頃流行した「子供部屋おじさん」(こどおじ)の阪神バージョンである。
一般に整理対象となりやすい30歳台に達していながら優れた実績も秀でた一芸もなく、二軍の試合の成立要員*9として二軍球場のある鳴尾浜に居座り、若手の出場機会を奪うため*10、ファンからのヘイトを集めている存在である。

2020年シーズンは伊藤隼太岡崎太一荒木郁也が代表例とされており、特に打てないばかりか守備走塁面でもまったく貢献出来ない伊藤を指すことが多かった。
その伊藤は岡崎と共に11月に戦力外通告を受け、荒木も翌2021年シーズン限りで戦力外となるが、伊藤と入れ違いで山本泰寛金銭トレードで阪神に入団。巨人時代の有り様に加え、トレードに至るまでの経緯が経緯*11だったため、一部の阪神ファンは激しい拒絶反応を起こしなるおじ同様の扱いを受けた。しかし阪神では上本博紀が引退し、植田海と熊谷敬宥*12が伸び悩んでいたことなどもあってなるおじ扱いされることはなくなり、また2022年にはある程度打撃も良くなりスタメンで使われることも増えたため、(たまのチョンボに目を瞑れば)守備難内野手が多い阪神の中では評価されるようになっている。
しかし山本は2023年オフに阪神から戦力外通告を受けてしまい*13、今度は中日ドラゴンズに移籍。巨人・阪神・中日の「セ・リーグ御三家球団」を全て渡り歩くことになった*14


関連項目


*1 1990年の小池秀郎(元近鉄→中日→近鉄→楽天)、1991年の田口壮(元オリックスBw→MLB→オリックスBs)など。
*2 野村克也氏曰く、「『阪神が他球団が注目しない選手ばかり指名していた』ことがヤクルト監督時代から謎だった」が、後に阪神の監督になって「指名選手が入団すると担当スカウトにボーナスが支給されており、そのボーナス欲しさに他球団が見向きもしない(=確実に獲れる)選手ばかりリストアップされていた事がわかった」とのこと。
*3 さらに言えばトレードも失敗続きであり、この頃の阪神で及第点以上の働きをしたトレード移籍選手は長嶋清幸・古溝克之・平塚克洋ぐらいである。
*4 特に麦倉洋一(1989年ドラ3)や舩木聖士(1995年ドラ1)は、ポテンシャルもあり将来を嘱望されていたが、二人とも故障してからは全く活躍できなかった。
*5 鳴尾浜以前の阪神の二軍本拠地。1975年に廃止された阪神電鉄国道線・甲子園線の車輌基地だった浜田車庫跡地を利用し1979年に開設。1993年まで使用し2016年に閉鎖解体。
*6 4年連続最下位から脱出した2002年以降のチーム防御率はリーグトップクラスを維持できており、他球団ファンからAクラス常連と呼ばれるようにはなった。
*7 梶原一騎の漫画『タイガーマスク』に登場する悪役レスラー養成機関(Tiger's Cave)。元ネタはかつてイギリスに存在した、ビル・ロビンソンやカール・ゴッチといった伝説の名レスラーたちも修行し、「蛇の穴(snake spot)」と呼ばれたプロレスジムのビリー・ライレージム、および故事成語の「虎穴に入らずんば虎子を得ず(『後漢書』班超伝)」より。
*8 読みは「だいもつ」。なお、阪神なんば線も尼崎駅から阪神本線と並走した後に、尼崎の隣駅であるこの駅から南東へ分岐して京セラドーム大阪や大阪難波方面に向かう。
*9 このように指摘される選手は阪神に限らず何人かいて、「(二軍所在地の)妖精」などと言われることがある。なお、それすら不足すると球団職員や二軍コーチなど、一度現役を引退した者が選手として復帰するという事例もヤクルトを中心に見られる。
*10 ただし、選手があまりにも少ないと試合が中止になったり、本来ならリハビリやトレーニング、体力作りに専念させたい選手を強制的に試合に出さざるを得ない事になるため、必要悪扱いされることもある。
*11 元は在京球団の選手であるが、在阪局・毎日放送の女性アナウンサーと同年9月にデキ婚しており、家庭環境を理由としたものと推測された。さらに山本は慶應義塾大学卒であり、加えて巨人・阪神間での直接的な選手の移籍自体が昔からあまりなかった(巨人→阪神は呉昌征や広澤克実、阪神→巨人はダレル・メイやカツノリ(野村克則)ぐらいしかいない。)こと、阪神電鉄が慶應閥の企業と指摘されることなどから「戦力外になった伊藤隼の代わりの慶應閥補充」などとネタにされた。
*12 両者とも内野手登録だが現在では外野に入ることが多い。
*13 監督の岡田彰布の方針もあって既に一軍の内野手のメンバーが固定されており、出場機会に恵まれず一軍出場なしに終わっていた。
*14 監督・コーチ経験者を含めると杉下茂(阪神で監督、巨人でコーチ歴あり)や西本聖(阪神でコーチ歴あり)など複数存在するが選手のみでこの3球団に在籍した前例は山本までなかったと思われる。