阪神タイガースにおける、「グヘ達」にすらなれない「僕達」投手陣の蔑称。言うなれば阪神版「二軍の帝王」。
「鳴尾浜」は1994年から2024年まで阪神タイガースのファーム本拠地として使用されていた『阪神鳴尾浜球場』のことを指す。
概要
2000年代以降の阪神で一軍に定着できなかった投手たちは総じて球速・球質・変化球のキレ・スタミナなど全てのステータスが平均的で小さくまとまりきった傾向が強く、伸び代や魅力に薄く最後は頭打ちになって消えた投手が多かったためこの用語が生まれた。
そこから転じて現在では“一軍半の壁を破れない投手たち”全般を指すようになっている。
また、以前阪神に所属していた投手が移籍後の球団で不甲斐ないピッチングをしたり、阪神相手に炎上した時には、その球団のファンから「鳴尾浜量産型」呼ばわりされることもある。
暗黒時代の阪神投手陣
話は暗黒時代に遡る。当時の阪神はドラフトでのクジ運の悪さに加えて、それ以前に目玉選手から指名をお断りされること*1も多かった。
だが「そもそも球団自体が取りやすい選手(他球団なら良くておまけ指名か最初から見向きもしない選手)しか取らない」と揶揄される*2ような状態だったために選手層もお察し状態*3となった。
当時の暗黒投手陣の多くは、
- 球速は最速でも130km/h台後半。
- 変化球の精度は低く、決め球として使える球種は無い。
- 基本的にノーコンで四球連発の末に飛翔して自滅、というパターンも多い。
- 中途半端なコントロールがあれば逆にバッティングピッチャー化して大量失点。
- 投球術にも見るべきものはなくただ逃げているだけ、その後は四球連発か飛翔で試合が壊れる。
- スタミナは先発で5回投げ切れれば万々歳という程度、酷い時は1回ですでに3人目の投手をつぎこんでいることも。
といった有り様であり、「他球団なら一軍・二軍以前に整理対象」とまで言われた。
また最初は通用した選手でも、
- 体力の無さが徐々に露呈し、最悪の場合そこから故障に至る。
- 「阪神病」とも揶揄される、慢心や油断から来るパフォーマンスの低下。
- 他球団に研究され頭打ちになって消えていく。
などの状況の繰り返しで、暗黒時代の原因の一つになる*4。
こういった経緯があったため、「鳴尾浜量産型でもポテンシャル的には暗黒時代の投手陣よりマシ」と言われたりする。
暗黒時代の終焉 2002年以降
阪神の暗黒時代を知るファンは、鳴尾浜及び浜田*5と聞くとネガティブなイメージを持っている。しかし暗黒時代を知らないファンは“鳴尾浜で育った投手”と聞くと魔改造を最初に連想し「若手投手の育成に優れた施設」と捉えるため*6、ポジティブな意味で「虎の穴*7」とも呼ぶ。
なおこの言い回し自体は古くから使われ、開設当初の鳴尾浜の公式愛称は「タイガーデン(Tiger Den、denはspot同様に巣穴・洞穴の意)」だったが、他社(タイガー魔法瓶)の登録商標であることが判明したため2003年から「タイガース・デン(Tigers Den)」に改称されている。
しかし、2000年代後半から鳴尾浜球場の手狭さと陳腐化が問題視され二軍本拠地の移転話が浮上していた。2021年5月、阪神電鉄と阪神球団は甲子園球場および鳴尾浜球場のある西宮市の東隣である尼崎市と協定を結び、2025年2月を目処に二軍本拠地を鳴尾浜から阪神本線の大物*8駅と杭瀬駅の間にある尼崎市小田南公園へ移転することが正式に決定した。なお鳴尾浜球場は尼崎移転後隣接する選手寮を含め解体され、跡地は物流倉庫として整備される予定となっている。
派生語
1.鳴尾浜量産型打者
上記の用法から発展し、一軍半の壁を破れない阪神の打者陣、または絶不調時の打者を「鳴尾浜量産型打者」と呼んだりするようになった。
阪神時代の中谷将大を始め江越大賀(現日本ハム)・髙山俊あたりが特に言われる。
2.なるおじ(鳴尾浜おじさん)
阪神の二軍で伸び悩む中堅・ベテラン選手を「なるおじ」と呼ぶ場合もある。「鳴尾浜おじさん」の略称であり2020年から使われている。類義語は老害。2019年頃流行した「子供部屋おじさん」(こどおじ)の阪神バージョンである。
一般に整理対象となりやすい30歳台に達していながら優れた実績も秀でた一芸もなく、二軍の試合の成立要員*9として二軍球場のある鳴尾浜に居座り、若手の出場機会を奪うため*10、ファンからのヘイトを集めている存在である。
2020年シーズンは伊藤隼太・岡崎太一・荒木郁也が代表例とされており、特に打てないばかりか守備走塁面でもまったく貢献出来ない伊藤を指すことが多かった。
その伊藤は岡崎と共に11月に戦力外通告を受け、荒木も翌2021年シーズン限りで戦力外となるが、伊藤と入れ違いで山本泰寛が金銭トレードで阪神に入団。巨人時代の有り様に加え、トレードに至るまでの経緯が経緯*11だったため、一部の阪神ファンは激しい拒絶反応を起こしなるおじ同様の扱いを受けた。しかし阪神では上本博紀が引退し、植田海と熊谷敬宥*12が伸び悩んでいたことなどもあってなるおじ扱いされることはなくなり、また2022年にはある程度打撃も良くなりスタメンで使われることも増えたため、(たまのチョンボに目を瞑れば)守備難内野手が多い阪神の中では評価されるようになっている。
しかし山本は2023年オフに阪神から戦力外通告を受けてしまい*13、今度は中日ドラゴンズに移籍。巨人・阪神・中日の「セ・リーグ御三家球団」を全て渡り歩くことになった*14。